転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
近代、あるいは現代陸上戦において”
元ソ連軍の職業軍人亡命者の受け皿、ストレートな再就職先としての成立が”サンクトペテルブルグ
ドイツ国防法では(一部国民の強い反発も予想され)、元赤軍人の雇用は難しい。
なので現サンクトペテルブルグ大公に総督時代から私兵組織設立の権限渡して結成させたのが
だが、やはり人材は陸に偏っていて、海はどうしようもないにせよ空軍に関するものが驚くほど不足していた。
地上要員の育成目途は立ったが、肝心のパイロットがいなかった。
無論、0という訳では無い。だが、あまりに少なかった。
そこで建軍要請を受けた総督時代のフォン・クルス大公は、何とか自前で養成する方向へ舵を切る。
今やユーラシア大陸西部のあちこちで戦端を開いている
ゲーリングのいない今生のドイツ空軍は、サンクトペテルブルグの機嫌を損ねたらどうなるか?くらいは理解していたのだ。
そして、フォン・クルス大公も本来はCAS(Close Air Support:近接航空支援)やAI(Air Interdiction:航空阻止)などの空対地ミッションができる本格的な戦術空軍を作りたかったところだが、新米に何でもかんでもやらすのは危険と前世記憶込みでよく理解していたので、先ずは担当エリアの制空権を確保できる”防空軍”の成立を目指した。
かくて方向性は定まったのだが……
如何せん高射砲要員はともかく、戦闘機パイロットの適性持ちが予想以上に少なかったのだ。
そこでクルスは選択肢を前世記憶も絡めて拾う。
その過去の一つに、確かに『”
こういう所はルーシ思想というか日本的と言うか……
『男だけで足りないなら、女も候補に入れるしかないだろ?』
もう鶴の一声だった。
無論、反発はあった。
それもドイツ空軍から出向してきた教導隊からもだ。
『女を戦場に出す手助けはできない』
フォン・クルス大公的には実に古式ゆかしい倫理観というか、古き良き時代の価値観の発露に見えた。
悪い物ではなかったが……だが、現実を覆す物ではなかった。
だから、クルスは『女性パイロットを養成する気がある者』を選抜した上で、女性パイロットの採用枠を決めたのだ。
その中の一人がロスマンだった。
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とここまでは前提の物語。
銀髪をバルト海の風になびかせやってきた女こそが、”クリスティアーナ・フォン・ホーエンツォレルン”。
彼女には野心があった。
まず、クリスティアーナには二人の姉がいた。
長女は、とても”弱い”人だった。きっと表舞台に出ることはないだろう。
次女は活動的な人だが、看護師として人を救う道を選んだ。
別にそれを否定する気は無い。立派な仕事だとも思う。
だが、どうしようもなく自分好みではなかったのだ。
クリスティアーナは、祖父が皇帝だったと言われても、あまりピンとこなかった。
生まれたのが水兵たちがキールを練り歩き、祖父が皇帝でなくなった後に生まれたからだ。
故に『私が生まれる前に滅んだ国の名前』であるフォン・プロイセンを名乗るのは好きではない。
故に”フォン・ホーエンツォレルン”の姓を名乗る。
彼女は姉二人に輪をかけて活発な女の子だった。
そして、彼女の好奇心を満たしたのが、飛行機だった。
まあ、ドイツというのはお国柄的に下地はあったのだ。
なんせ先駆者、1937年に女性で初めてドイツ空軍の飛行学校に入学が認められ、その後に女性初のヘリコプター、ロケット戦闘機、ジェット戦闘機搭乗者となった才女、”ハイデマリー・ライチュ”の母国だ。
ちなみにウーデッドの最大の功績は「ライチュ女史を見出したこと」、「女性を空軍飛行学校に入学させるという前例を作ったこと」だと今生では認識されている。
そのライチュ女史と同類っぽい好奇心旺盛なクリスティアーナを特に夢中にさせたのがエアレース、そう第一次世界大戦で中断され、そして戦後に復活した水上機の祭典”シュナイダー・トロフィー”だ。
初めて自分の目で見たシュナイダー・トロフィーは、アメリカ人に奪われたトロフィーをイタリア機が奪還して開催されたファシスト党が全土を牛耳る前の1927年のイタリア、ヴェネツィア大会だった。
まだ二桁の年齢に届いていないクリスティアーナは、目を輝かせて水面から飛び立つ銀翼たちを見つめていた。
やがて、縁があり自ら操縦桿を握る機会を得た。娯楽の少ないこの時代、彼女は飛行機の操縦に夢中になった。
シュナイダー・トロフィーの影響からか、陸上機よりも飛行艇や水上機を好んだようだ。
ホーエンツォレルン城の南60㎞ほどのところにボーデン湖という大きな湖があり、その畔にはフリードリヒスハーフェンという街があった。
ここはフェルディナント・フォン・ツェッペリンによって飛行船開発が行われた街、いわゆるツェッペリン飛行船の発祥の地として知られているがホーエンツォレルン家の別邸があった。
クリスティアーナはこの別邸に住み込み、ある時期は毎日のように湖面から大空へ飛び立つ姿が見られたらしい。
今でも大切に保管されている彼女の愛機は、”マッキM.33飛行艇”と”カーチスR3C-2水上機”のレプリカ。
どうでも良いが、娘に誕生日プレゼント感覚で水上機を贈るあたり、ホーエンツォレルン家はどうやらガッツリ財産を維持しているらしい。
確かに、どっちもシュナイダー・トロフィーで活躍したエアレーサーではあるのだが……どうにもチョイスに何らかの意図を感じてならない。
カーチスR3C-2なら1925年大会の優勝機ということでまだ理解もできるが、マッキの方はそのカーチスからトロフィーを奪い返し欧州へ凱旋した”M.39”ではなく、あえて1923年大会でR3C-2の前モデルである”カーチスCR-3”に負けてトロフィーをアメリカへ持ってかれるきっかけを作った”M.33”をチョイスするというのは……しかもどっちも機銃が付いた”戦闘艇”仕様だし。
あー、多分、皆さんの中にもピンときた方もいるのではないだろうか?
実はこの2機、”ある共通項”があるのだ。もっと言えば、とあるアニメ映画の主役と敵役の愛機として登場している。
そう、アドリア海が舞台の空飛ぶ豚やら幸運のガラガラヘビやらが出てくるあれだ。
ちなみにマッキM.33ベースの機体は、映画では別の名前で登場する。
もしかしたらクリスティアーナは……いや、今は言及すまい。
いつか自分が出たいと思っていたシュナイダー・トロフィーはその頃には無くなってしまっていまい、シュナイダー・トロフィーで『女性としての初の優勝パイロット』となり、再びホーエンツォレルンの名を世間に燦然と輝かせる夢は儚く消えてしまったが……
だが、彼女は腐ったり曲がったりすることはなかった。
ライチュ女史に続けとばかりにドイツ空軍飛行学校の狭き門を叩き、
「ふふっ♪ いよいよ、”ホーエンツォレルン”の名が再び世界に轟く
長い髪では合格できないと知ったら、即座に切ることを躊躇しなかった。
長い髪より実戦パイロットになる方がクリスティアーナにはよっぽど重要だった。
「ふふん♪」
流石に実戦パイロットになることは当時の(十分にパイロットが用意できていた)ドイツでは出来なかったが、虎視眈々と腕を磨きつつ機会を待ち続けた。
事実、前述のライチュ女史は卓越した技量を持つ天才肌の御仁だったが、”テストパイロット”だ。
まあ、これは女好きで空軍テストパイロット部門の(お飾りの)長であるウーデッドがライチュ女史を手元においておきたかったからとまことしやかに囁かれているが……要は派手なデモフライトを航空ショーなどで行うアイドル的なプロパガンダ要員なのである。
実際、ライチュ女史をプロデュースしているのはドイツ空軍の宣伝広報部やリクルート部門と、ゲッベルス率いる宣伝省だ。
そして二十歳を過ぎてしばし……ようやくクリスティアーナは機会を得たのだ!
それこそが、サンクトペテルブルグで始まった『男女を問わない戦闘機パイロット』の募集だった。
そしてクリスティアーナは迷うことなくレニングラードから名が変わってそう時間が経っていないサンクトペテルブルグに赴いたのだ。
このご時世、エースパイロットは時代のヒーローとしてもてはやされる。
特技の飛行機の操縦スキルを活かして、”女流エースパイロット”として『ホーエンツォレルンの健在』をアピールするにはまたとない好機到来であった。
☆☆☆
選抜試験その物は、既に基礎的な操縦に加え初歩のACM(Air Combat Manoeuvring:空中戦闘機動)を見様見真似で出来たので、クリスティアーナが合格するのは自明の理であった。
むしろ、
『戦闘機パイロット初心者が、軽々しく”インメルマン・ターン”を使うな! 馬鹿者っ!』
と戦闘機動訓練初日でロスマン教官に拳骨を落とされたのも今となっては良い思い出だ。いや、つい最近の話だが。
そして、本日……
『ほう? 小娘の戦闘機乗りがどの程度かと思いきや、中々やるではないか!』
「わわっ!? ひ、”捻りこみ”っ!?」
異種機体訓練中、せっかく背後をとったはずなのに”Ju187”の急上昇→失速反転降下(そう、あの世界一有名な”空飛ぶ豚”の必殺機動だ!)でオーバーシュートさせられて、あっさり背後を獲り返され、あっさり撃墜判定を食らってしまう。無論、その姿はガンカメラに捉えられていた。
しかし……
☆☆☆
「少佐、新人相手に”十八番”を使うなんて、ちょっと大人げないんじゃないですか?」
そう後部座席からの苦言に、
「バカを言うな、ガーデルマン。機体性能もさることながら……あの娘、そうでもせんと引き剝がせなかったぞ?」
そう、本日は上層部と掛け合って実現した『サンクトペテルブルグ
あの、Ju187急降下爆撃機隊はソ連戦闘機を想定した、VG39を使うミリシャ航空隊はソ連のIl-2襲撃機を想定したACM訓練が趣旨だった。
「それほどでした?」
ガーデルマンは少し驚いた。
実はあの”捻りこみ”、爆弾を投下すれば身軽になり運動性は悪くないがどうしても速度で劣る”
D型以降のJu87は、主翼にMG151/20㎜機関砲×2を装備しており、オーバーシュートさせてしまえば敵戦闘機を撃墜できる可能性は十分にあった……というか、ルーデルは現時点でソ連機3機を返り討ちにしていた。
その十八番にして”切り札”を見せてやってもいい、見せてやる価値があると相方は判断したというのだ。
ルーデルはパイロットシートで頷き、
「ああ。生き残れれば良い狩人になれるだろうさ。だがガーデルマン、大人げないのはお前の方じゃないのか? 背後を取られていた間、ずっとMG131(後部旋回機銃)の照準、嬢ちゃんに合わせていただろ?」
流石は
基本、操縦桿のトリガーと連動したムービーカメラ、いわゆる”ガンカメラ”で捉えた映像で撃墜判定を行うルールの訓練で、実包は使われてないが……確かに照準するのは自由だ。それに後部機銃にはガンカメラは付いていない。
「そういう訓練でしょう? ですが、弾が飛んでこないとはいえ、後部機銃に狙われている事に気づいてなかった……まだまだですね。ロスマン大尉に改善要望でも出しておきますか」
「お前は良い教官になれるよ、ガーデルマン」
そう苦笑するルーデルは、
「あと2セットくらい新人どもを仕込んでやるか」
「そうですね。そのぐらいなら燃料も怪しくなってくるでしょうし。まだ出来立ての機体でどこに不具合が隠れてるか不明な以上、ある程度は慎重に飛ばした方が良いでしょう」
どうやら朝からずっと訓練で飛んでいたらしい。
しかし、精神力や体力ではなく燃料や機体の心配とは……何というか、本日も絶好調の魔王とその主治医だった。
実はサブタイがクリスティアーナの中身に引っかかってる件について(挨拶
なんかクリスティアーナ、滋野さんと気が合いそう。自由と放埓を愛しそうなあたりがw
いや、飛行艇だけでなく水上機も所有してるあたり、実はかなりミーハー?
歌姫や設計者な町娘よりも空飛ぶ豚やガラガラヘビなアメリカンの方が好みみたいですw
基本的にはノリと勢いで生きているホーエンツォレルン家のアホ娘担当ですが、でも乙女な部分は乙女な可能性が微レ存?
そしてそれなりに腕が立つ。
なんせ、ルーデルに”大人げない
いや、これって割と凄くね?
ただ、ガーデルマンは後ろに付かれてた間、ずっとMG131Zの照準合わせてたみたいですがw
まあ、二人にも訓練になったようで何よりです。
さて、次回も何やら新キャラが出てきそうな予感が……
次回もどうかよろしくお願いいたします。