転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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予告詐欺発動w
ちょっと陸戦前に日本皇国の光景などを……





第344話 一方、その頃の近衛ししょーと広田サン。”新しい戦争のカタチ”とかボーキサイトの三角貿易の話題かな?

 

 

 

 さて、唐突に日本皇国首都、永田町……

 

「あの大公(アホウ)、よりによってロスケに一番言っちゃいかん類の大号令発しやがって……」

 

 首相官邸にて、皇国首相”近衛公麿”が珍しく頭を抱えていた。

 

「近衛君、そこまでの事かい? 何というか……いつも通りの来栖君、いや大公殿下というべきじゃないかい?」

 

 そう返す官房長官の広田剛毅だった。

 どうも彼もだいぶ、感覚が麻痺しているというか……クルスのノリに毒されているような?

 

「それほどの事なんだよ、広田サン。あのアホ大公、よりによって”枢機卿の法衣(カーディナル)”纏って一席ぶったろ? まず、枢機卿の本来の立ち位置ってのは、教皇の補佐って事になっているが、カーディナルの赤は『信仰の為に血を流す覚悟』の現れ、それが自分の血なのか異教徒の返り血なのかは区別はない」

 

 貴族で枢機卿というのも過去の英仏に実例はある。例えば、三十年戦争と謀略で有名なフランスのリシュリューは、正式には”枢機卿およびリシュリュー公爵アルマン・ジャン・デュ・プレシー”であり、枢機卿でありながら1624年から死去するまでルイ13世の宰相を務めている。

 

「んで、まず問題なのはクルス大公が、”ローマの枢機卿”ではなく、”サンクトペテルブルグ正教に新たに制定された枢機卿”であるから、『カソリックの枢機卿の”現代の在り方(・・・・・・)”』に縛られないって事さ」

 

 そして近衛は言葉を選びながら、

 

「にも関わらず、あいつは”深紅の法衣”を纏っていた。公式には明らかにされることはないと思うが……アレの出所、十中八九バチカンだよ。つまり本物の”枢機卿の法衣”だ。繰り返すが絶対に表向きにそうだとは言わないだろうが」

 

「……? 既にローマとサンクトペテルブルグに繋がりが?」

 

 だが近衛は首を横に振り、

 

「”宗派の壁”ってのは、日本人が思うより厚いもんさ。少なくとも建前ではな。じゃあ無ければカトリック vs プロテスタントの宗教戦争なんて何十年もやらんだろ?」

 

 そこで近衛は一旦言葉を切り、

 

「だが、いつの時代にも例外は存在する。サンクトペテルブルグ正教は純然たる東方正教会系で、ソ連に屈したロシア正教とは険悪だがギリシャ正教とコンスタンティノープル正教からは独立正教会として強い支持を受けている。そして、その二つの正教会の大御所は、俺たちが攻め込もうとしている国と地理的に近い」

 

「ローマ、つまりバチカン市国」

 

 広田の返しに近衛は頷き、

 

「そもそも、バチカンがムッソリーニ政権を支持していたのは、ボリシェヴィキやら共産主義者やらがお膝元に蔓延するのを防ぐためにファッショの力を必要としたからさ。しかし、ムッソリーニも今となっては、な? これから攻めようとしている日本皇国(おれたち)が言う台詞じゃないが」

 

 まあ、お察しくださいだ。

 半分くらいはチャーノのせいのような気がしないでもない。

 

「そこで颯爽と歴史の表舞台に出てきたのが、”共産主義者共の絶対的敵対者(・・・・・・)。サンクトペテルブルグ正教の守護者サマだ。そりゃあ繋がりの一つも持ちたくなるだろう? 枢機卿を名乗ることも赦すし、紅い衣を贈るくらいは普通にするさ。それも圧倒的なカリスマ性を持つなら尚更だろうな。そこで終わってくれりゃあ良かったんだがな……」

 

 しかし、近衛は苦虫を嚙み潰したような顔をして、

 

「だが、あいつは今回の一件で『新しい枢機卿の在り方』、いや『サンクトペテルブルグ正教の枢機卿としての在り方』を示しちまったんだよなぁ……世界中によぉ。それも正教の看板掲げて、バチカンのお墨付きを羽織ってだぜ?」

 

「ああ、そういうことか」

 

「これ、間違いなく”新しい宗教戦争のカタチ”になるぞ。神を信じない国際共産主義って”新興宗教”と、伝統を継承しながらサンクトペテルブルグに新たに生まれた”最新の正教”とのさ。そして欧州じゃあ、宗派は違えど未だにキリスト教の力は強い。かつてロシアって呼ばれた地も含めてだ」

 

 近衛は腕を組み、

 

「そんな中でクルスが示したのは、サンクトペテルブルグ枢機卿の、『信仰の守護者として戦う戦闘系(・・・)枢機卿』って新しい枢機卿の在り方だ。そしてコイツはロシア人によくぶっ刺さる。いや、ロシア人だけじゃないかもしれんが」

 

 すると広田は面白そうに、

 

「ルーシの本質は”武”と”威”だからかい?」

 

 近衛は無言でうなずくと、

 

「それを示しちまったんだ。これ以上ないほどに。ノブゴロドの防衛に成功したら、いやどうせ十中八九は成功するんだろうが、そうなったら欧州は目に見える形かどうか知らんが動くぞ? その為に今回の戦い、あえて手を貸さずに固唾を飲んで見てるんだろうからな」

 

「ああ、具体的に動いてる国が”当事者”であるドイツとフィンランドだけなのはそのせいか?」

 

「あと”バルト三国”な。欧州の王サマたちだって、そりゃあ見極めたいだろうさ。久方振りに出てきた”戦う大貴族”の器って奴をさ」

 

 近衛は皮肉気に笑い、

 

 

【挿絵表示】

「なにせクルスが”本物”だとしたら、『戦う為に生み出された国家、プロイセン』を本物の国家に仕立てちまった漢、”フリードリヒ・デア・グロッセ以来の傑物(・・)になるだろうからな」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ところで広田サン、俺っちたちもあんまり笑ってられねぇって気づいてるか?」

 

 広田は頷き、

 

「だろうな。ギリシャやコンスタンティノープルが裏で動いているのなら、当然、”大公殿下の側近”に皇国籍の者がいることも知ってるはずだ」

 

「小野寺の小僧っ子もいつもで”皇国(こっち)側”にいるかわかったもんじゃねぇが、まあそういうこったな。実際、ギリシャはもう動いてるよ」

 

 近衛はそう一枚の書状を出した。

 

「これは? ギリシャ国王(グレゴリウスⅡ世)からの親書? いや、陛下あてのそれじゃないな……」

 

 家紋に見覚えはあるが様式が違うことに気付く広田だったが、

 

「それ、幣原(しではら)ご老公から野村サンルートで届いた『ギリシャ国王からサンクトペテルブルグ大公への密書』、非公開なだけで公式な『外交文書(・・・・)』だぜ?」

 

「げっ……」

 

 海千山千の政治的動物である広田も流石に嫌な顔をする。

 この”国王から大公への密書”がここにあるということは、『日本を経由して届けてくれた』と言われたということだからだ。つまりギリシャはガッツリと、

 

「つまり皇国が巻き込まれたと?」

 

「それだったら単純な話なんだが……ところがぎっちょん! あながち日本も無関係とは言えないんだわ」

 

 少し状況を話すと……史実でもこの世界線でもギリシャ王国は元々、どちらかと言えば欧州勢力の中では比較的独伊の枢軸寄りだった。

 だが、まずはイタリアにより侵略され、次にドイツに進軍され、ついでにどさくさに紛れて共産ゲリコマにも大暴れされたりと散々な目にあい、最終的にはギリシャ奪還と国王の復権は史実よりずっと早く成ったがドイツとの関係は今のところ表立っては改善あるいは関係修復の兆しは出ていない。

 

 まあ、戦後復興真っただ中のギリシャと、ソ連との戦争真っただ中のドイツは互いにそこに外交リソースを向けられる余力は無い、あるいは優先度は低いという判断だった。

 

 だが、東方教会の大御所あるいは宗家ともいえる”ギリシャ正教”が、サンクトペテルブルグ正教にいわば『暖簾分け』し、クルスが”枢機卿にして大公”という地位に上り詰めた事により状況は大きく変わった。

 「一国一正教の原則(ドイツにはドイツ正教がある)」に従い、もはやサンクトペテルブルグ大公領は戦後程なく”サンクトペテルブルグ大公国”となるのは必然であり、ならば今のうちに関係を構築しようとするのは当然と言えた。

 

「要するに今回はギリシャ国王とサンクトペテルブルグ大公との間の密書にかこつけた、『日本皇国を間に挟んだ”三角貿易(・・・・)のお誘い”』ってのが本質なんだわ」

 

「なるほど。概要は理解できたが……日本皇国(わがくに)ならともかく、ギリシャにサンクトペテルブルグと取引できる商材はあるのか?」

 

「それがあるんだよ。それもいかにもサンクトペテルブルグ、っていうかクルスが欲しがりそうな物が」

 

「ほう? それは?」

 

「”ボーキサイト”。アルミの原材料さ」

 

 そうなのだ。

 ギリシャは、実は欧州有数のボーキサイト埋蔵量を誇る産出国だ。

 だが、この世界線の日本皇国、史実の大日本帝国が歯ぎしりしそうだが、ボーキサイトにはまったく困っていない。

 なんせ世界最大のボーキサイト産出国のオーストラリアは、同盟国であるイギリス・コモンウェルスの一ヵ国だ。ちなみにインドもボーキサイトの埋蔵量が大きい。

 

「とはいえ、今のギリシャに大規模なボーキサイト採掘事業は予算的にもマンパワー的にも少々酷だ。先ずは食糧事情の再建が最優先だが……逆にその為に金が要る。しかし、その金を稼ぐのに最適なのがボーキサイト輸出での外貨獲得ときてる」

 

「堂々巡りか……ああ、それで”三角貿易”という訳だな?」

 

 近衛は頷き、

 

「そうだ。ボーキサイト採掘に皇国が全面支援を行う。機材でも人員でも、国内の鉱山屋(鉱業者)なら喜んで飛びつくだろう? ギリシャは当面、自国でのアルミ合金製造はほとんど行わないし、行えない。アルミの精錬には膨大な電気インフラがいるからな」

 

 バイヤー法とホール・エルー法を用いるアルミの精錬は「電気精錬」と呼ばれるように膨大な電力が必要であり、それを補うのは貧弱なギリシャの電気インフラでは不可能であった。

 そして、それを可能とするのが昔日には「ソ連の8割の電力を賄っていたレニングラード」を起源に持つサンクトペテルブルグの膨大な電力量であった。

 

「そこで先ずは皇国がギリシャより採掘されたボーキサイトの一括買い付けを行い、それに諸経費を付けてサンクトペテルブルグに売りさばく」

 

「乗るか? サンクトペテルブルグは」

 

「乗るさ。この話を飲むなら、我が国は交換条件に”超々ジュラルミン(A7075)”の製造方法を全面開示する」

 

「!? 近衛、本気か? 一応は皇国の最高軍事機密だぞ……?」

 

 すると近衛は不敵に笑い、

 

「だがいつまでも秘密保持できるわけじゃないだろ? 高値が付く間に有効活用するってだけの話さ」

 

 これは”転生者”である近衛ゆえに判断だろう。

 史実では7000番台アルミの製造法は戦後、世界中に広がったのだから。

 

「まあ、お前がそう言うなら良いが……サンクトペテルブルグに対する”テコ入れ”も兼ねているのか?」

 

「正確には『ドイツに対する』だけどな。高強度アルミ合金の安定供給が今以上に可能となれば、ドイツの戦力が底上げされる。そうなれば、最低限ソ連への嫌がらせ程度にはなるだろう?」

 

「そっちか」

 

「ヤンキーがレンドリースソ連支援なんてクソナメた真似してくれてんだ、このぐらい意趣返しせんと立つ瀬ってもんがねぇよ。国家ってのは侮られたら終いだ」

 

 

 

 冗談めかして言ってはいるが、その影響力は底知れないものがある。

 こうして、サンクトペテルブルグは膨大な電力量を背景にした超ジュラルミンである”A2024アルミ合金”に加え、超々ジュラルミンのA7075の大量製造を可能とする一大航空機用アルミ合金の欧州におけるナショナルセンターとしての成長ルートを入手した。

 そして、これは確実に未来へ繋がっていく道筋であり……

 

Ta183H-1”ヒュッケバイン”をはじめとする後年開発の航空機強化フラグが成立しました』

 

 まあ、そういうことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、日本皇国は日英同盟の関係で潤沢に手に入るボーキサイトですが、ギリシャ王国復興支援策の一環としてボーキサイトの採掘支援と一括買い上げを行い、ドイツ本体ではなくわざわざドイツ特別自治区サンクトペテルブルグ大公領への輸出が決まりましたw

これでサンクトペテルブルグに超々ジュラルミン(A7075)の製造レシピが公式に譲渡されることになりました。これでサンクトペテルブルグは少なくとも1945年まではドイツ圏唯一のA7075アルミ合金製造国となります。
また、サンクトペテルブルグの電力量とボーキサイトの輸出量から逆算して、A7075だけでなく超ジュラルミン(A2024)を含めたドイツ全体の航空機用アルミ合金全般の不足は、問題が顕在化する前に解消されたようです。
ついでに1943年後半からはリビア→フランスルートで航空機用燃料もより潤沢になるでしょう。

こうしてサンクトペテルブルグ大公国(仮称?)は、加工貿易を地場産業に加え、戦後も欧州屈指の高品質アルミ合金生産国・供給国として歴史に名を残してゆくことになります。多分。

うん。”嫌がらせ”だなw
どうでもよいけど、近衛に頭痛の種を供給してるのは、大抵が味方とか身内とか友好国とか、少なくても敵対存在ではない不具合w

近衛:「まあ、(米ソを除いて)誰も損をしないから良しとするか」

というオチでした。
さて、次回は今度こそ陸戦ステージですよ?

次回もどうかよろしくお願いいたします。

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