転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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そりゃ言われるよ……






第346話 ”電撃戦(意味深)”、『雷帝』と呼ばれる所以の一つとなった戦いについて

 

 

 

「”蒼き聖なる花十字”の旗にかけ、全ての背教者に弾幕をっ!!」

 

”Урааааааааーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!”

 

 いよいよ出番と張り切るカミンスキーの大号令の元、彼我の距離が近くなり各種迫撃砲やロケット弾、無反動砲の砲撃、40㎜擲弾、12.7㎜と8㎜長短銃弾の発射音が響き渡る多重奏!!

 まさに”戦場音楽のフルオーケストラ”だった。

 特に印象的なのは37㎜や25㎜の対空機関砲の水平ないし俯角射撃だ。

 戦車砲を含む各種砲填兵器に関して原型は同じでもサンクトペテルブルグ製の火砲はソ連製に比べて明確なアドバンテージがあった。

 合理的な規格化や加工精度や素材品質の向上による作動信頼度/命中精度/耐久度の上昇はもちろんだが、水平方向ではなく仰角/俯角の垂直方向における可動域がソ連製のそれよりも大きくとられているのだ。

 一番わかりやすいのは戦車砲で、この時代のソ連戦車のそれは全般的に砲塔が元々搭載砲の割には小さすぎるのと人間工学をあまり考慮されていない内部レイアウトのせいで水平方向には砲塔の全周囲旋回はできても、垂直方向の可動域が極めて狭かった。

 だが、『常に数的有力な敵を迎え撃つ』事を配慮しなければならないサンクトペテルブルグでは、そういう訳にはいかない。

 丘陵などで車体を隠し、分厚い装甲の砲塔のみを稜線から出して砲撃を行う”ハルダウン”や車体を戦車隠蔽壕に入れて砲塔のみを露出させて砲撃する”ダグイン”などを多様する事を前提としなければならないため、上下の可動域が狭いのは運用上の致命傷になりかねない。

 お陰で、KSP-34/42の上下方向の可動域はM4シャーマン中戦車以上であり、そうであるが故に前話のように『土塁に車体をハルダウンさせての撃ちおろし砲撃』が可能となっていたのだ。

 ついでに言うと、水平方向の砲塔旋回速度も電気油圧式を用いているKSP-34/42は、砲塔重量がずっと重いのにT-34/76の倍以上の速度が出る。

 

 

 赤衛国際革命旅団どころかソ連正規軍のT-34/76の車体や砲塔の上面装甲を容易く貫通し内部爆発を起こす徹甲榴弾の嵐を加えた戦場のフルオーケストラ、あるいは砲弾と銃弾の集中豪雨に見舞われながら、しかし、それでも……それでも”赤い濁流”は止まらなかった。

 赤衛国際革命旅団は原始的だが、とても効果的な”正面突破法”を選択したのだ。

 

 それは正しく”肉壁戦術”。物理的に倒れた同志を地雷原や有刺鉄線にかぶせて、それを盾にあるいは防御膜にして進軍しているのだ。

 比喩でなく、遺体を敷き詰めた戦場を彼ら彼女らは走る。

 ”突撃支援薬”を使用した人間は、『もう、何も怖くない』な無敵状態のようだ。

 同志が銃弾や破片でマミられようと、自分がそうなろうともはや関係は無かった。

 何というか……転生者が視れば、『まるで”敵対的地球外起源種”じゃん!!』と言いそうな光景である。

 実は順番が逆で、”アレ”の元ネタが人海戦術であるらしいが。

 

 無論、ノブゴロドを守るサンクトペテルブルグ市民軍(ミリシャ)も、たかがその程度の疑似ゾンビ兵団に臆するような軟な信仰心はして……もとい。戦意(モラル)は低くはない。簡単に死なないなら、殺しきるまで弾丸を叩き込めば事足りる。

 そこ。『薬物人造狂信者 vs 天然のヤベー狂信者』とか言わない。

 少なくてもキルレシオは”アレら”よりはずっとマシだろう。

 片方は薬物強化されているとはいえ基本的にどっちも人間である以上、脚が無くなれば動けなくなるし、頭が吹き飛べばそこで命は終わる。

 であるならば、ミリシャが撃ち負けるはずはないのだが……やはり火力という数に対して、(恐怖心が欠如した)人数というのは中々どうしてしぶとく強い。

 それに後詰めで赤軍の正規旅団が来ていることがわかっている以上、ここで防衛戦力が消耗し過ぎるのもやはりよろしくは無い。

 なので、土塁線に赤衛国際革命旅団の先端が辿り着こうとしたその時、ノブゴロド防衛司令官であるヴァトゥーチン中将は

 

(今が大公殿下に賜った”権限”の使い時か……)

 

 ここぞという判断する。

 

”水門”を解放せよっ!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 それは三国志の下邳の戦いか、あるいは戦国時代の備中高松城の戦いの歴史再現だろうか?

 

 大河であるヴォルホフ川からマーリ・ヴォルホヴェッツ川に注ぎ込む部位を遮断し、マーリ・ヴォルホヴェッツ川とそこから枝分かれするレヴォシュニャ川を干拓していた巨大な水門……ほとんどダムと言ってよいそれが緊急解放され、人ではなく本当に水の奔流が干上がった二本の川に急速に本来の姿を取り戻させたのだっ!

 

 だが、それだけだったらそこまでの殺傷力はない。溺死というのは河川では本来はそこまで多くは発生しない。

 全身に重い装備を施せば、確かに人体の浮力で浮かぶのは難しいが、幸いと言うべきか? 赤衛国際革命旅団の装備は極めて貧弱、いや軽装だった。

 干上がった川を渡っていた面々は確かに水に飲まれたが、運良く川面に流れ着き岸へ上がれれば当然、生き延びることもできる……はずだった。

 

 ここで少し話をしよう。

 ノブゴロドには、かつてソ連全体の電力の8割を賄っていたサンクトペテルブルグから地上/地下二系統からの200kV超高圧送電線(220KV級超高圧送電自体は1920年代のアメリカで成功していた)より電力供給が行われ、ノブゴロド自体にもいざ外部からの電力供給が立たれてもある程度スタンディングアローンで戦えるように小規模発電所に加え、軍用の大型ディーゼル発電機が無数に頑丈なブンカー内に設置されていた。

 つまり、ノブゴロド自体の電力は潤沢なのだ。

 

 関係無い話題に聞こえるかもしれないが……日本では21世紀に入り、『家庭用の100V電源を440Vまで昇圧した鹿よけの自作電気柵が切れて川に落ち、たまたまそこに遊びに来ていた家族連れがそうと気づかずに川に入り感電死する』という痛ましい事故が起きたことがある。

 

 ここは1943年、第二次世界大戦中のノブゴロド。今は三国志の時代でも戦国時代でもなく、むしろ21世紀に近い。

 もう何が言いたいかわかっただろう。

 

”神の雷(Гром Божий)”を発動せよっ!!」

 

 そうヴァトゥーチンの声が響き渡った!!

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 それはあまりに陰惨……というより”異常な光景”だった。

 ノブゴロドの電力供給が自前の複数小規模発電所と多数のディーゼル発電機による”予備電源”に切り替わり、サンクトペテルブルグから送電されてくる超高圧電流は分派され、予め地中を通って二つの川の川底付近に伸びた無数の”偽装端子”により一斉放電されたのだ。全く減圧されないまま……

 そしてその際、アースとなったのが鋼鉄製の”チェコの針鼠”……

 そう、これは当初よりノブゴロド防衛計画に盛り込まれていたサブプランであったのだ。

 

 その結果は……この時点で川に入水していた全ての赤衛国際革命旅団の人員の「全身に火傷跡の"電流斑"が残る感電死」という凄惨な物になった。

 おそらく『同時感電死者数の世界記録』であり、今後もおそらく破られることは無いだろう。

 何しろ初撃だけで、万に達する感電を死因とする戦死者が生まれたのだ。

 相手が電気である以上、メタンフェタミンやアンフェタミンなど何の意味もなかった。

 

 

 

 だが、本当の悲劇はここからであった。

 この時代、世界的に見て電気というのが一般に普及した国はまだ少数派であり、電気の性質やそれによる感電死を理解している人間は更に少数派だった。雷に打たれて死ぬということが体感的に知っていても、それが「電気による感電死」という原因に結びついていないのだ。

 故に見た目からは何が起きているのかよくわからない。

 川の水に触れただけで死ぬという意味不明な事態がただただ起きていたのだ。

 

「ど、毒だぁっ!! 川の水が全て毒だぁーーっ!!」

 

「違うわっ! 呪いヨ! これだけの水が全部毒なわけ無いわっ!! 川の水に呪いがかけられてるのよっ!!」

 

 そして、赤衛国際革命旅団人員の出身国は大半が電気が普及してない場所が大半で、またこの状態を一発で見破る知識人階層(インテリゲンチャ)はあまりに少なかった。

 

 しかし、二本の川に飲み込まれた者は、例え感電死が待っていたとしても幸運だったのかもしれない。

 悲惨なのは二本の川の間にある中州に取り残された者、そして外側の川であるマーリ・ヴォルホヴェッツ川東岸で止まってしまった者である。

 

 戦車で川面を強行突破しようとした者がいた。

 確かに大気中なら、金属でできた箱に電気を流すと箱の表面を伝って地面に落ち、箱の内部には電気が流れないという理屈も成り立つ。

 電気とは電位差、流れにくい物から流れやすい物へ流れる性質があるからだ。

 しかし、この時代の戦車は防水処理などまともにされてないのが普通であり、川に入れば容赦なく浸水が起き……結果は同じだ。

 

 そして、そんな状況を理解できてない赤軍正規部隊より、「川に怯んだ」と認識された赤衛国際革命旅団を背後より撃たれる事となる。

 別にソ連正規軍が悪いというよりも、元々彼らが現場教導役、平たく言えば”赤衛国際革命旅団に対する督戦隊行為”が任務に含まれていただけであり、一概に彼らだけを糾弾する訳にはいかないだろう。

 

 無論、この状況であってもノブゴロド防衛隊の火線が緩むことはない。

 土塁の前を流れる復活した川に落ちれば命が無いため気を付けるが、それは火力投射を緩めるのと同義ではない。

 つまり、赤衛国際革命旅団の三大選択肢は……

 

 ・ノブゴロド防衛隊に正面から撃たれて死ぬか

 ・赤軍により背後から撃たれて死ぬか

 ・目の前の川へ飛び込んで感電して死ぬか

 

 だった。

 意図してそうなったかは別にして、”同志”に押し出されて川面に落下し感電する者が多発した。

 そして、究極の選択を拒否し、逃亡を図る者も少なくなかったが……だが、当然のように「敵前逃亡は現場銃殺」が原則だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少しだけ未来の話をしよう。

 このノブゴロド攻防戦で最終局面で発生した”異常な数の戦死者”の理由や詳細が明らかにされたのは、戦後しばらく経ってからの話だった。

 というか、この戦闘の詳細を聞きたがった周辺諸国が、戦後の国際連盟の臨時安全保障会議に(その時点でどのような立場かは濁すが)クルス大公を特別ゲストとして招待した事により明らかになった。

 皮肉なのは、その大義名分が各国のマスメディアに潜む反動的左派勢力や、その元締めである国際共産主義とやらの胴元が『戦時中に大量の毒物を用いられた形跡があり、ハーグ条約やジュネーブ条約違反』の恐れがあると騒いだ事と端を発する。

 まあ、各国代表は「雉も鳴かずば撃たれまい」状態の自発的赤色活動を行っているマスゴミはいつもの事として、胴元連邦国家に対しては「条約に調印してない上に、国連から追放されたまんまの奴が何を言ってやがる」と思いはしたが、真相を知りたいのは自分達も同じだったので、「たまにはアカも役に立つ」と都合よくそれを招聘の口実としたのだ。

 事情聴取ではなく、あくまでゲストとしての扱いで。というか、「クルス大公を裁ける人間ってこの世にいるの?」というのが、参加者たちの無言の総意であった。

 難色を示したり、機嫌を損ねたりしたらどうしようという懸念もあったが……クルス本人はいつも通り何食わぬ顔でジュネーブへとやってきて、この時点では懐かしさすら感じる”電撃”の概要を公開した。それが発表された時、

 

 ・大規模な治水工事に膨大な水量と電力量が必要

 

 なこの作戦はあまりに使える状況が限定され過ぎていて、とても一般化できないという結論となった。

 というか、これが出来そうなのって他には水も電気もノブゴロド以上に豊富なサンクトペテルブルグぐらいじゃないだろうか?

 そして、クルスはこう付け加えたのだ。

 

『感電死による殺傷ががハーグ条約やジュネーブ条約違反だというのなら、電気椅子での処刑を「絞首刑より人道的」という理由で採用しているどこぞの国(アメリカ)も同じく条約違反でしょうな。まあ、あの国は未だ国連未加盟で、条約にも未調印なようですがね』

 

 共に、この計画を原案から作成したクルスは、

 

雷帝(・・)クルス”

 

 の二つ名(俗称?)を、永遠にあるいは不動のものとしたのだった。

 

 ただ一つだけクルスの為言い訳させて欲しい。

 この電撃(物理)作戦、本来の名称は”雷(молния)”であり、間違っても”神の雷(Гром Божий)”では無かったということを。

 いや、現場は違和感なく受け入れてるあたり、何をいわんやではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、”電撃戦”の意味が違う戦いでした。
いや、物理的に電撃(超高圧電流)を放ってどうするという……

治水工事の話で三国志や戦国時代の水門の話は連想した人は居ても、流石に”感電死”コースは予想外だったのではないかな~とw

まあ、こういう事を考えつくあたり、クルスがクルスたる所以でして……実際、本人が語ってましたが作中での元ネタはアメリカの処刑方法の”電気椅子”だったりします。

まあ、どれだけ火力が高くても15万の防衛兵力で大半がドラッグブースト状態の200万以上の敵兵を押し戻すのは、「普通の方法」じゃ流石に厳しいかと思いまして。
実はノブゴロド攻防戦を構想したときからあったアイデアだったりw

まあ、おかげで被害はとんでもない事になりそうですが。

さて、次回は撤退戦(?)の様子など……
それでは次回もどうかよろしくお願いします。





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