転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
「ドイツには、早期にモスクワを攻略するほどの余力はもはやないということであります」
それがノブゴロドの戦いを経て得たベリヤの結論だった。
「まず重要なのは、此度のノブゴロド奪還戦において我らの軍勢が数的劣勢に陥った後も、ドイツ北方軍集団の大半は大きな動きを見せず、追撃が行われたのはノブゴロドよりそう離れていないヴァルダイ/ボロゴエまで……そこが彼らの進軍限界であり、ドイツ北方軍集団はそこに駐留し、野戦築城にて要害を築いています。これは偏にそこより先に進軍する気は無いという意思の現われでしょう」
実はベリヤの判断は間違ってはいない。
追撃戦が行われたのは上記の近辺までで、そこから先の進軍は行われていない。
現在、ドイツ軍はヴァルダイ/ボロゴエ両所にトート機関を投入し、要塞化工事を行っていた。
また、ノブゴロドは戦後処理の傍らに両所への中継点となるべく巨大要塞から巨大補給拠点となるべく仕様変更工事に並行して入っていた。
その為、ノブゴロドから撤退したソ連軍とそれに追従できた赤衛国際革命旅団の敗残は、トヴェリにて再編が可能となっていたのだ。
「しかも、”スチームローラー作戦(Операция «Паровой каток»)”発動中、我々は北方軍集団のヴォログダ、中央軍集団のスモレンスク、南方軍集団のヴォロネジのドイツ軍の大軍勢を完全に抑え込むことに成功しています。事実、彼らは包囲された拠点から一歩も動けず、モスクワへの攻撃はおろか、ノブゴロドへの救援ですら軍勢を出せなかったのです!」
これも噓は言っていない。
単に、この時点で包囲を突破してモスクワを攻略する作戦計画自体が無かったのではあるし、そもそもノブゴロドあるいはサンクトペテルブルグ自体より「援軍無用」の知らせを受けていたのだが。
「加えて、ドイツは一時的に航空優勢をとったにも関わらず、爆撃を敢行できたのは些末な基地のみで、モスクワ、サラトフ、スターリングラードなどへの要所への爆撃は行われていません」
これも正解だ。
潰して回ったのは、「ノブゴロドを航空攻撃可能な基地とその補給拠点」のみである。
ドイツが、あるいはサンクトペテルブルグが行っていたのはあくまで防衛戦、強いて言うなら一部”アクティブ・ディフェンス”が入っていただけであり、余計な色気は出していなかった。
逆に言えば、それだけ消耗も少ないのではあるが……
「これらの事象が示すのは即ち、『ドイツが”
ベリヤ、鋭い!
いや、見識自体は外しているのだが……なんだろう、この『照準は外しているのに的に当ててる感』は?
厄介なのはこのベリヤという男の言葉は、額面通りに受け取ってはならない気がすることだ。
正直言えば、ドイツは主に人口的な限界からこれ以上の領土拡大は必要なかった。
というか”レーヴェンスラウム”、後の”マルク経済圏(仮称)”の維持発展は今の面積で十分だし、これ以上のロシア人の面倒を見る気はヒトラーも毛頭なかった。
この時点で国境線を確定させ、「ソ連側から」停戦を言いだせば、ヒトラーは喜んで飲んだろう。
まあ、どう考えても不可能ではあるが。
「ベリヤ君、つまりドイツ側からの攻勢は当面は無いと考えて良いのかね?」
「はい、同志書記長。小規模な物はあるかもしれませんが、モスクワやスターリングラードを攻撃するような大規模な攻勢は少なくとも今年中は不可能でしょう。彼らは戦線を広げ過ぎました」
本当にこのベリヤはベリヤなのかと疑いたくなるくらい鋭い。
ヒトラーはモスクワやスターリングラード攻略に無理を押して行うほどの価値を見出しておらず、機会があるなら陥落させようくらいにしか思っていない。
どちらかと言えば、ホットスポットになりそうな気配があるのはカスピ海方面とかではないだろうか?
リビアからの石油がフランスを通してパイプラインでドイツ本土に流れ込むようになれば、無理にバクー油田を獲る必要はないが、別にあえて放置する理由も無いだろう。
「幸い、今回は赤軍本隊へのダメージは極めて軽微なのです。今は冒険的な戦闘を避けて、来年の”バグラチオン作戦(Белорусская операция)”へ向けて力を蓄えるべき時でしょう」
この世界線における”バグラチオン作戦”は、史実の規模を遥かに超えるかもしれない……何故なら、その戦略目的が史実と異なるからだ。
もしかしたら、参加人数だけならノルマンディー上陸作戦すらも凌駕するかもしれない……
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そしてモスクワに隣接するベッドタウン、閑静な街並みの”リュベツイ”にある豪奢な”人形の館”にて……
「戻ったよ」
「「「「おかえりなさい♡ ご主人様♡」」」」
嬉しそうに出迎える身重な幼女たちに、ベリヤはささくれだった精神を心底癒される。
この(少なくても見た目は)幼い娘たちだけが、ベリヤが本来守るべき世界の全てだった。
(そうだとも。この”楽園”が守れるならば、何人死のうと知った事ではない)
だから、ベリヤはスターリンを全力で補佐する。
何故なら、この楽園を維持するために何より必要なのは、
(だが今回、大きな収穫はあった……”突撃支援薬”、あれは売れる)
そう内心でほくそ笑む。
ベリヤの持つネットワーク、”ミングレル・ネットワーク”もしくは”グルジアン・マフィア”とも呼べるそれは、むしろ国内よりも国外に広く深い。
その最大の”狩場”となっているのが、新大陸……世界で最も豊かな国だ。
スターリンがベリヤを切り捨てられない理由の一つが、その膨大な資金力とアメリカにおける浸透力にあった。
彼のネットワークでありマフィア化した組織は、インターナショナル・コミンテルンの組織を通じてアメリカに深く浸透し、根付き盛大に
以前に”黄金の三角地帯”の話をした事があったと思う。
だが、麻薬ビジネスで最も儲けるのは、麻薬の生産者でも麻薬を輸出する現地の犯罪組織でもなく、実際に先進国で麻薬を売りさばく”商人”たちだ。
そして、ベリヤはその「最も儲かる層」の一員であった。
だが、彼自身は金への執着はない。
ベリヤが執着するのは、自分との性交渉で腹の中に新しい命を宿し腹を膨らませた見目麗しい幼き少女だけだ。
自分に依存し、自分がいなければ満足に生きていけない「自ら進んで鳥籠の中へ入る身重の幼女」は、ベリヤにとりこの世で唯一価値のある物だった。
だからベリヤは稼いだ金を”楽園の維持”に必要な分以外の全てをソ連という国家に貢ぐのだ。
ある意味において、ベリヤとはとても純粋な存在であった。
「もう安定期に入ってるよな?」
「「「「はい♡」」」」
「では服を脱ぎ、四つん這いになり並び、精一杯私に媚びなさい」
「「「「ご主人様♡ 壊れちゃうまでえっちしよ♡」」」」
幼女たちは満面の笑みだった。
何故なら、ベリヤの寵愛こそが、この”安全だけど閉ざされた小さな世界”の全てなのだから。
そして純粋無垢に見える幼女たちも十分に壊れていた。
何しろその小さな胸には、「今夜お相手する予定の”当番”の娘たちからベリヤを寝取った」歪んだ喜びに満ちていたのだから。
今日もベリヤの狂乱の夜は続いてゆく……
何はともあれ、ノブゴロドを巡る戦いは全て終わりを迎えた。
この戦い自体に大きな意味はない。
何故なら、これは戦争の趨勢に決定的な影響を与えるような類の戦役ではないからだ。
だが、これ以降、この戦争においてソ連が積極的に外国人を大量動員する事態は減ってゆく事になる。
当然と言えば当然の結果だが……それがどのような意味を持つのかは、今は誰にもわからないが。
季節は夏、暦は1943年8月を迎えようとしていた。
いや、ホントにベリヤって何者なんでしょうね?
我欲に突っ走る転生者で、生粋のロリコン? ペドフィリア?なのは確かなんですが……なんというか、刹那主義の快楽主義者、つまりは破滅願望も見え隠れしてるような?
いや、ヤベー奴なんですよ?
なんだけど同じ転生者の国家トップ、クルス大公、ヒトラー総統、リチャードIV世陛下、近衛首相とかと明らかにヤバさのベクトルが違うんですよ。
ロクデナシなのは確かなんですが、実は作者的にも「つかみどころのない不気味なキャラ」だったりしますw
それはさておき、クッソ長かったノブゴロド篇もこれにて終了です。
途中で評価がだだ下がりして萎えた時もありましたが、それでも高評価を入れてくださる皆様が居て、評価が少し持ち直すと同時に何とかモチベーションも回復して走り抜けることができました。
本当にありがとうございました。
さて、次回からは新章、いよいよ43年後半にして最後の”大規模戦イベント”……
そう、日英による”イタリア攻略戦”です♪
いや~、どこかおどろおどろしくて陰惨だった東部戦線(?)と違い、ノリをガラッと変えて地中海の風のごとくカラッといこうかな~とw
いや、でもイタリア相手だと絶対に計画通りにいかないという謎の信頼ガガガ……
まあ、おそらくは斜め下の方向にgdgdになる公算が高い次章ですが、どうかよろしくお願いいたします。