転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
・日本皇国軍はワールドワイドな組織として批准した国際条約を遵守します
・日本皇国軍は健全な組織運営を目指します
・日本皇国軍は(軍隊としては)ホワイトな職場環境を目指します
・日本皇国軍は可能な限りの福利厚生の充実を目指します
さて、皇国陸軍が目指す先はまずはナポリ、そしてその先にある首都ローマの制圧だ。
まず、上陸地点のポリコーロからナポリを目指すには、整備された街道を進みまずはポテンツァを目指す。
イタリア中央部にはアベニン山脈という山岳地帯が走っているが、実は本当に繋がった一本の山脈という訳ではなくまず北/中央/南に大きく三つに分割されるだけでなく、あちこちに”切れ目”があるのだ。
ポテンツァはそんな切れ目の一つ”パセンタ川谷”にできた街であり、タラント湾から半島中央部を通ってティレニア海方面へ抜ける中継地として発展した。
一方、陸戦隊を回収した皇国海軍は状態の良い艦船と部隊を抽出した選抜機動部隊を一度拠点に戻して補給と再編を済ませ、英国がほぼ掌握していたシチリア島を外側から回り込ませ、一路港湾都市”サレルノ”を目指して動く手筈だった。
それはまるで史実のアヴァランチ作戦を彷彿とさせた。
さて、皇国陸軍は海軍陸戦隊が奥地に向けて切り開いた進軍路を最新鋭の”三式中戦車”を前面に押し立てて進軍する。
無論、対戦車地雷源などを警戒して装甲化・自動車化した偵察隊や工兵隊を本隊前に先行させているが、現状、これといった要害や障害はなかった。
何というか……イタリアにとって本土決戦だというのに、準備不足感が半端ではない。
地雷源と呼べるものがほとんどないのもさることながら、最初のタラント湾周辺を除いて防衛線や防衛隊というものとほとんどエンカウントしないのだ。
『これはどういう塩梅だ?』
と順調すぎる進軍に首をかしげるのは、イタリア上陸軍総司令官に任命されたリビアでの勇戦から『砂漠の虎』、『アフリカの虎』と敵から恐れられ味方から称えられる”山下泰文”大将だった。
これも因果律のなせる業か? この名将軍、北方よりも赤道近くの南方の戦いの方が何故か強い。
ちなみに砂漠で強い将軍と言うと、この世界線ではドイツのロンメル、日本の山下、一段下がって(イタリア人を圧倒してロンメルに負かされた)英国のオコーナーの名があがりやすい。
要塞防衛線をはじめとする守勢の名手である栗林忠相大将は、どちらかと言えばジブラルタルの鉄壁、”モンティ”ことモントゴメリーと同じカテゴライズだろう。
ああ、あの陸海空合わせた皇国イタリア攻略軍統括の? あの人は今となってはマンシュタインとかと同じカテゴリーじゃないかな?
それはともかく、確かに妙と言えば妙だ。
上陸作戦発動から二日目、南イタリア上空は早速寂しくなっていた。
飛ぶのは日の丸をつけた飛行機ばかりになり、イタリア機はレア種族に成り果てた。
イタリア空軍や海軍飛行艇部隊も努力はしたのだ。
タラント湾に我が物顔で浮かぶ日本軍艦を沈めるべく空襲隊を送り出していた。それもイタリア空軍には珍しく都合三度も。
だが、それが航空機搭載型と艦船搭載型の電探網にことごとく捕捉され、上空警戒に当たっていた艦隊直掩機に空母より追加の迎撃機を上げられ、物理的に揉み潰された。
そして空軍部隊、特に戦略爆撃機隊は軍事的に意味のある目標にのみ標的を絞った爆撃を敢行していた。
これは言い方を変えれば、「ジュネーブ条約違反の明確な民間人居住地=都市居住区」を狙わなかっただけであり、基地をはじめとしたイタリア軍の施設のみならず発電所、精油場、軍民問わない燃料タンクや食料貯蔵庫、操車場や橋などの交通拠点も爆撃対象となっていた。
無論、投入されるのは戦略爆撃機隊だけでなく、イタリア南部制空権を確保したことにより、マルタ島やイタリアに比較的イタリアに近いギリシャのパトラやザキントスから双発爆撃機隊なども反復爆撃を繰り返していた。
異彩を放っているのはやはり”疾風”であり、同じ空軍の”飛燕改”が主に制空任務を請け負っているのに対し、疾風は胴体下に250kg増槽を取り付け、両主翼の下には250kg集束爆弾×2と12発の空対地型RP-3改ロケット弾(ジャイロ安定装置を組み込んだ60ポンドHEAT-MP弾頭)を懸架し、対地制圧任務をこなしつつ制空戦/防空戦にも参加するという臨機応変の器用な戦い方をしていた。
この状態でも2500㎞程度は飛べるというのだから、イタリア軍にとってはたまったもんじゃないだろう。
どうやら加藤達のバトル・オブ・ブリテン→アグレッサー教導官組は、暇を明かしてか空対地訓練も相応に積んだらしく、中々の空対地攻撃の腕前を披露していた。
無論、ここに海軍の彗星改ピンポイント急降下爆撃隊が加わるわけで……
まあ、そりゃあ空にも陸にも撃つべき敵は枯渇するよね?って話である。
ちなみにタラント湾周辺に展開していたイタリア陸軍部隊は上記の空襲と、それを擦り抜けても内陸部への進撃路打通のための橋頭保を確保していた海軍陸戦隊に返り討ちに合って撤退していった。
その海軍陸戦隊は陸軍が展開し始めた事で役目を終え、展開した全てではないが一部は回収され次なる作戦(サレルノ上陸作戦)の準備に入ったのだが……入れ替わり入ってきた皇国陸軍機甲師団が南イタリアで見たのは、既に敵が引き上げた長閑な田園風景だったという。
☆☆☆
とはいえ、だからといって作戦目的を達成すべく進軍が止まることはない。
ちなみにポテンツァ打通に向けて陸軍主力が動く傍ら、敵影無く安全が確保されたと判断された土地から順に装甲化あるいは自動車化されてはいるが斥候メインの軽装部隊にエスコートされ、郷土部隊化された”イタリア解放軍(リベリツォーネ・イタリアーノ)”が一応は「占領/治安部隊」の名目で送られていった。
現地に残る皇国陸軍は基本的に少数部隊だが、必ずイタリア語の日常会話が成立させられる下級法務士官資格保有者や占領地民生委員資格保有者が同行する決まりになっていた。あと通信士や偵察要員、何より軍警察隊は必須だ。
要するに彼らは皇国軍への”連絡員”であり、同時に目と耳であった。
そして、郷土連隊として入ったイタリア解放軍は、まず主要地点に連隊ベースキャンプが皇国軍工兵隊/施設隊により設営され、そこよりローテーションで「帰郷の為の一時休暇」が許される。
つまり、一度は家に戻り家族や恋人に顔を見せて無事を知らせてこいという配慮だ。
太っ腹なことにベースキャンプには小隊ごとに1台の野戦小型四輪駆動車や軍用トラックが支給され、現在のイタリアの食糧事情を鑑みて帰郷に関してボーナス(慰撫品)としてそれなりの”土産用食料とワイン1本”が配給された。
ただ、ベースキャンプはあくまで現状は占領統治用の施設であり、定期的な民衆への食糧配給は計画されていない。
当たり前だが、大量な物資が必要な戦時中なため食料自体より
ただし、現地皇国軍人員が飢餓などの発生を確認した場合は、まとまった量の緊急食糧支援を行う準備はしているのだ。
民衆の暴徒化は一気に治安状況を悪化させる為に未然に防ぐ必要があった。
この辺りは、「まず量を満たすことを優先させる」史実の米軍とは考え方が大分違う。
そして、休暇を終えたイタリア解放軍の仕事は担当地区の治安維持、具体的には現地治安組織と折衝/交渉してのパトロール任務がメインとなる。
まあ、そういう交渉の為に法務士官などがいるのだ。
皇国軍は自分達が”余所者”であるということを(過剰なまでに)肝に銘じていた。
原住民の反感を食らうような真似は厳しく律していたし、ローカルルールも可能な限り遵守するように心がけていた。
そうしていると必ず、「新たな支配者」にご当地の”
どういうことか?
”帰還兵”には、「本物の名家の出自、本物の有力者の子息」が多くいたのだ。
当時のイタリア軍は、未だに「貴族的な名門の武人」を優遇する傾向があった。
一時帰郷ないし帰宅から原隊復帰した彼らの情報とコネクションは、日本皇国にとって値千金の宝となった。
何しろ「占領統治に必要な付き合う人種の選別」がスムーズにできるのだ。
実は皇国軍は当初、帰郷したまま退役を願い出るか、あるいは逃亡する者がある程度出ることを予想していたし、それらは容認するつもりだった。
軍警察は同行させているが、彼らのリソースは有限だし、あれだけ戦場で酷い目にあった上に祖国から見捨てられたのだ。
里心がついて軍隊に戻りたくないと思っても仕方ないと。
しかし……日本人はイタリア男の強かさをナメていた!
いや、何しろ色々事情が厳しい戦時下だというのにちゃんと仕事をしてれば普通に十分な量の食事は出るし、休日には量は少ないがワインの配給もある。ついでに食事もイタリア基準でも十分美味いし、ワインはフランス産の安物であることを除けば不満はない。
更には正規軍人扱いで、高額ではないが階級に応じた給料も出る。
ただ、日本円や英ポンドでもらっても意味がないので、金額に応じた嗜好品も含めた現物支給という形だが……これが休日の帰宅や帰郷の良い土産になった。
どうも日本人は「品行方正な占領地政策」を意識し過ぎていたせいで、「独裁者が失策続きで他国からこぞって敵対されて孤立した国家とその国民」の懐具合というの失念していたらしい。
ぶっちゃけ、この状況は「現在のイタリア軍の待遇」よりずっと良い。
これをイタリア解放軍の面々は嫌というほど理解していたのだから、安易に離反なんてするわけないのだ。
☆☆☆
まあ、最低限のリスクで占領地域の治安を回復できたと思えば結果オーライだが……
事態は思わぬ方向へ動き始める。
まず、最初にやってきたのは、一度撤退して再起の機会をうかがっていたイタリア正規軍敗残将兵だった。
彼らはどこからか”イタリア解放軍とその待遇”を聴きつけて投降してきたのだ。
そう、「経歴書とイタリア解放軍への”
それはやがて、南イタリア全体の「日本人と交戦していない部隊」にまで波及して行くことになる。
そう、皇国陸軍の主力がポテンツァを陥落させる前に、戦争は新たな局面を迎えつつあった。
英国人(暗黒笑み):「だーからイタ公を甘やかしすぎるからこうなるんだっての」
日本人:「だがなあ、そうは言うがジュネーブやらハーグやらに照らし合わせて、捕虜でなく元捕虜で編成した『帰還事業を兼ねた進駐軍』として使おうと思ったらこんな感じにならないか?」
某リチャード:「いや、少なくとも欧州ではならんな」
アオスタ公:「うむ」
今村:「えっ?」
さあ、戦争が壊れて行く足音が聞こえてきましたw
しかも、”イタリア解放軍”から退役しない(人数減らない)のは、待遇面が良すぎてこれ以上の職場が現在のイタリアでは見つからないからw
イタリア解放軍兵:「戦争には負けたけど、俺たち勝ち組~♪」
ちなみにイタリア解放軍、事前に「休暇内に戻らなければ自動的に退役とみなす」と通告してるのですが、そのほとんどが律儀に期間内に原隊復帰するんですよ。イタリアンなのにw
イタリータイムは何処へ行った?
次回はちょろっと名前が出てきた今村さんを久しぶりに出そうかな~と。
それでは次回もよろしくお願いいたします。
☆☆☆
あー、ちょっとだけ言い訳を。
この作品、誤字が多いです。
特に最近は前より頻度が上がってるかもしれないです。
また、直近の感想欄で書かれた場合を除いて、基本的に過去の誤字はあまり修正しません。
というのも、誤字報告で直せばいいと思うかもしれませんが、マルチ投稿の関係上、直すとしたらマスターデータから直す必要があり、また「何人もの人がそれぞれの話をバラバラの箇所とバラバラのタイミングで誤字報告」となると対処は困難です。
正直、今は仕事が忙しく執筆にかけられる時間が限られていて、休日に書き溜めるのがやっと、それもモラトリアム時代の書き溜めがあって何とか連日投降が成立していたのが現状で、それもそろそろ限界かもしれません。
上記のように誤字修正はやたらと手間と時間がかかり、ならばそのリソースを新話執筆に使った方が良いかなと。
昔からの読者の皆様なら、この作品が何度か更新が止まっているのご存知でしょうが、一度更新が止まると再開するのは新連載よりパワーが必要だったりするので。
なので更新を最優先いたします。