転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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という訳で、皇国の殿下が初登場です。




第365話 ”泰山”と五男殿下の初めての海外出張? なお、銃使いの外交官が同行する模様

 

 

 

 さて、ここは”立川皇国空軍飛行場”。

 他の空軍基地との大きな違いは、単純な小型機から大型機までの整備や補修などの運用全般が行えるだけでなく、空軍の新型機開発ナショナルセンターの一つであり、試作機の試験飛行場に認定されている事だった。

 

 さて、1943年9月後半、ここに全体をアルマイト表面処理された超々ジュラルミン(A7075合金)で作られた巨大で派手な四発機が姿を現した。

 翼や胴体に描かれるのは日の丸と並ぶ菊の御紋……そう、皇族の使う”お召機”だ。

 

 この機体の名は”試製泰山(・・)

 そう、史実では飛ぶことのなかった機体の名を引き継ぐように、全く別の機体としてこの世界線の中島により誕生した。

 あー、細かい言い訳は止そう。

 ぶっちゃけ、この機体……”皇国版B-29”、それも性能的には後期改良型の”B-29B”だ。

 一応、立ち位置的には”深山”や”連山”の後継機なのだが……要するに中島所属の転生技術者の「いつものやらかし」だ。

 開発者本人曰く、

 

『本当はB-50やB-54作りたかったんだけどねぇ~。でもエンジンが現状、”誉”しか使えなくてB-29Bで我慢した。”富嶽”? いや、あれはエンジンがね。まあ、ジェット時代に名前くらいは蘇るんでねぇの? 知らんけど』

 

 とのことだ。

 では、お約束のスペックシートでも……

 

試製”泰山”

・エンジン:”誉”(空冷星形18気筒二段三速過給機+中間冷却器付。高高度セッティング)×4

 出力:2200馬力、水-メタノール噴射使用時2480馬力(高度8,000m)

 ・最高速度:660㎞/h(戦闘重量、高度8,000m、水-メタノール噴射使用時。未使用の場合は同条件で620㎞/h)

 ・航続距離:5,900㎞以上(最大爆装時。全て燃料に置換した場合の最大航続距離は9,000㎞以上)

 ・実用上昇限界:高度13,000m以上

 ・ペイロード:9,000kg(胴体内)

 ・武装:二式二十粍機関砲×10(短距離簡易電探連動遠隔操作連装砲塔。機体上面/下面それぞれ各2基、尾部1基)

 ・素材:A7075超々ジュラルミン(サンドブラスト/アルマイト処理。平頭リベット)

 ・プロペラ:4翅VDM電気安定式大口径プロペラ

 ・装備:防弾キャノピー、層流翼、完全与圧コックピット、各所内蔵型パラボラアンテナ・レーダーシステム、、セルフシーリングライナー付インテグラルタンク、タンク内不活性ガス発生装置、電波高度計連動式慣性航法装置、電波誘導装置、電波妨害/隊電波妨害装置(ECM/ECCM)、電波逆探装置(ESM)、高出力通信装置、電探/パラメトロン演算機連動射爆照準装置、開発中の各種誘導弾対応、空中酸素発生装置、推進式排気管、ハンドレーページ式発展型自動スラット、スロテッドファウラーフラップなど

 

 うん、まあスペック的には凄くB-29Bだ。

 とはいえ、細かく見ていけば割と違いはあって、自衛用武装はまるで違うし、砲塔配置はむしろ原型のB-29やB-29Aに近い。

 機能面では空対艦や空対地の各種誘導弾に対応できる設計的余地があるのが大きいだろう。要するにあからさまな戦略爆撃機の癖に陸攻の特性もしっかり持っているのだ。そのせいかちょっと控えめなバルジっぽいものが見えたりもしてるし、主翼はパイロンで誘導弾が懸架できそうな構造をしている。

 試製とはついているが、実際にはほぼメカニズム的には完成していて、後は量産に向けた細かいブラッシュアップを地道に重ねるだけだろう。

 もっとも、皇国はそこまで量産は急いでないので、形はそこそこ変わる可能性はあるし、量産型のカラーリングは間違いなくいつもの日本重爆、深緑になるだろう。

 さて、今回は言うまでもなく爆装無しのフェリー状態で一気に9000㎞を飛ぶわけだが……

 

「惚れ惚れするような良い機体だなぁ……やっぱり自分で操縦桿握っちゃダメかい?」

 

「ダメに決まってるでしょう。”殿下”、お立場をお忘れなく」

 

 飛行場に姿を現したのはいかにもな凸凹コンビ。

 片方は黒い軍服を颯爽と着こなし如何にもプリンス然とした雰囲気の長身の青年。

 ただし、”兄君”に比べると俗っぽい、というか人間っぽい。

 もう片方は、お付きの執事にも見える実直そうな中年男性だった。

 青年の方は言うまでもないかもしれないが……今上天皇の末弟、”天草宮 和仁(あまくさのみや・かずひと)”親王。

 1918年生まれで今年25歳、皇国空軍中佐でもある。

 そして中年男性の方は”日高信緑郎”。見た目は実直そうだが……果たして。

 どうでもいいが、どこぞのロックさんとは異なり、外交官なのに「自衛用・(殿下の)護衛用」という名目で帯銃許可を持っている”銃を持つ人”であり、スーツの下の左右のショルダーホルスターには、1丁ずつステンレスのベレッタならぬ”武35式拳銃(ブローニング・ハイパワーの皇国ライセンス生産版)”を仕込んでいる。

 いや、ちょっと待て。何かヘンだ。いや、よく見るまでもなくこれ似てるけど武35式じゃないや。

 なんせフレームはINOX、つまり陸軍ご用達のガンブルーではなく銀色に輝くステンレス製だ。

 細かく見れば、マガジンセフティがオミットされ、代わりにオートマチック・ファイアリングピン・ロックが入ってるみたいだし。

 スライドストップはセレーション付き、マニュアルセフティは大型化されているみたいだ……あれ? これってMk.Ⅲなんじゃね?

 どうやら何やら軍納入品以外の皇国民間企業のライセンス生産版、その国産改良型かあるいはカスタムモデルっぽい。

 サイトはフィクスドのノバック・タイプだし実戦的な仕様は仕様なんだが……なんか外交官が護身用に持つには不釣り合いというか、些かマニアックすぎる。

 もしかしてこの男、”トゥーハンド”役も兼任している……のか?

 いや、性別は男だからどちらかと言えば”信じるは剛力のみな兄貴”の方か?

 

 だとすれば、この信緑郎(ロック)……ただの外交官というより護衛兼任の”特殊(・・)公務員”の可能性がある。

 いや、仮にも皇族のお目付け役なのだから、そのくらいスペシャルな人材がつけられても不思議じゃないが。

 そもそも今回は非公式ではないが非公開のミッション、戦時下ということもあり目立つような式典は無しで、むしろ扱いは密使に近い。

 その為、お付きは信緑郎を含め僅かな人数で、本当的な意味での護衛は皇国軍ローマ進駐部隊の直接的な治安維持は憲兵隊、本格的な”抹消”は「特殊なセクション」が行う手筈になっていた。

 

 ちなみに殿下も自衛用に懐に380ACP仕様の”ワルサーPP(こちらも皇国某社のライセンス生産品)”を仕込んでいたりする。携行しやすく軽く引っ掛かりが少なく、皇国空軍パイロットが好んで所持している拳銃だ。

 見た目はそこはかとなくノーブルなのに、服の下は割と武闘派なコンビであった。

 

「まあ、今は人生初の海外出張と洒落こむとするかな?」

 

「殿下、せめてここは優雅に”外遊”と言ってください」

 

 こうして奇妙な二人組を乗せた巨人機は日本を飛び立ち、一路イタリアへ……

 ”後に世間を(にぎ)わせる珍道中”はこうして始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ローマは一時の平穏を取り戻していた。

 嵐の前の静けさというより、ようやくあるべき姿を取り戻しつつあると言うべきか?

 もっと言えば、鳴りを潜めていた活気や喧騒が戻ってきていた。

 日本でいえば”東京節”の世界だ。

 

 未だに(主に皇国が担っている)配給の部分も多いが、本当に徐々にではあるが物流も回復してきていた。

 

 その街の郊外にあるローマ・チャンピーノ空港にイタリア人の誰もが見たことのないような白銀に輝く巨人機が、それも鮮やかな日の丸と菊の御紋が描かれた機体が降り立ったことはかなりの騒ぎになった。

 

 本来なら豪華な馬車でのお出迎えというところだが、今は一応は戦時下。

 お召車(?)は、軍部の高級将校用にかなりの数が納入されている黒塗りの”トヨタAA型改”。勿論、皇国ローマ進駐軍からの借り物だ。

 史実のトヨタAAをアメ車並みの精密プレス加工でボディの生産効率を上げ、エンジン出力もAC型並の75馬力となっている。

 何気にトヨタAAの発展改良型上位互換みたいな車を、機械による精密プレス加工の一般化で史実の同時代アメ車ペースでそれも高品質を維持して大量生産できてるあたり、何気に今生日本の基礎工業力の高さを物語る。

 

「それでもってなんで殿下がハンドルを握ってるんですかねぇ?」

 

「”泰山”の操縦桿握れなかったんだ。これくらいはやらせてくれよ」

 

 どうやら天草宮殿下、普通にローマの市街を鼻歌交じりにドライブしているようだ。

 走らせているのはグレゴリオⅦ世通り、行く先はサン・ピエトロ大聖堂であった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 教皇猊下と皇国親王殿下の謁見自体は、滞りなく進んだ。

 やんごとなき御方からの教皇あての返信は、「バチカン市国の物理的独立と宗教的独立性を最大限に尊重する」という、概ね満足すべき物だった。

 実際、皇国ともめれば「宗教戦争」的な意味を持ってしまうので、誰の得にもならない。

 むしろ、「神殺し」のソ連やそのシンパを喜ばせるだけだ。

 だが……

 

 

【挿絵表示】

「”トレド(トレヴィ)の泉”に行け、ね」

 

 どうやら殿下は、気になる伝言を授かったようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、天草宮殿下と硝煙臭がプンプンする鉄火場系外交官(?)な信緑郎でしたw

いや、ホント個性強スギィッ!な外交官しかいねぇなぁ~と。
まあ、こんな戦争なんてクソッタレな時代でまともに国益出そうとしたら、こういう一癖も二癖もある「普通なら使いどころに困るがピタッと状況と環境にハマると抜群に力を発揮する」タイプの方がむしろ使い勝手が良いのかも?
まあ、勢い余って一国の主になりかけてるのもいますがw

まあ、サンクトペテルブルグ在住のアヤツに比べれば、ガンスリンガーで鉄火場慣れしてるだけで信緑郎はまだサラリーマンっぽいかも。
時折、「私的な部下」を拾ってきたりする悪癖があるようですが、それが黙認されてるあたりお察しくださいな立ち位置みたいですよ?
……本当に外交官か? 信緑郎(コレ)
いや、身分は一応、外務省の職員の筈なんだけど、ある種の名義貸し疑惑ガガガ……

某皇国外務省高官:「い、胃薬を……誰か胃薬を早く」

とりあえず、次回はエンカウントを予定しております。
次回もどうかよろしくお願いします。




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