転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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という訳で、血筋や身分的な意味で大物同士がエンカウントするみたいですよ?




第366話 ”ハイソなエンカウント”、そして”フリント・ロック”と双子の少女

 

 

 

 さて、日本皇国外務省はいくつもの頭痛の種、いや”爆弾”を抱えていた。

 その爆弾の具体例は”人材”。

 要するに『個性と癖がつよつよで扱いに困る面々』だが、そういうキャラクターに限って『状況と環境がハマれば信じられないような能力を発揮する』から始末に負えない。

 なぜかと言えば、史実の戦後日本のような……言い方は悪いが去勢された犬のような状態の国家ならともかく、今生の日本皇国のような『普通の国家(?)』が世界大戦なんてクソッタレな時代でまともな国益をあげようとすれば、こういう人材も使いこなさなければならない。

 戦争は政治の一形態であり、外交は政治の花形、時代は”外交消耗戦”。有限リソースで生き残ろうとする以上、もはや「適材適所が苦手」とか甘えたことは言ってられないのだ。

 だから各時代の転生者達は、特に国家的引きこもりなモラトリアムタイムが終わり、日英同盟締結を頂点とした外交が盛んになった明治以降の転生者達は日本外交を少しでもマシにするべく奔走した。

 その結果、勢い余って外交官御枠組み蹴破って一国の主になりかけてるのもいるが……その成果とも言うべき1人が、ローマ市観光名所のすぐそばに来ていた……

 

 

 

「やれやれ。殿下の奔放さも参った物だなぁ」

 

 言葉に反してあまり困った感じのしない、むしろ好ましいと言いたげな声色のそれなりに身なりの良い中年東洋人男性。

 そう、”日高信緑郎”だ。

 この男、実は外交官になって日も浅い20代の頃、要人を含む暗殺が頻発していた1930年代の欧州(特に東欧)のあちこちをドサ周りさせられていた経験がある。

 具体的にはフランスやオーストリア、何よりユーゴスラヴィアとルーマニアのあたり。

 どういう訳かやたらと血生臭い現場に縁があり、銃撃戦に巻き込まれることもしばしば。

 何せ朝の出勤中に爆弾テロを目撃、昼飯食ってたらテーブルを挟んでトラットリアで革命家気取りのチンピラ同士で突発性銃撃戦、銀行に行けば銀行強盗、帰り道ではデモ隊暴徒化に遭遇なんて事があった。

 特にルーマニアでは赴任中に38年と39年の二年連続で要人暗殺現場に居合わせたおかげで、火付けの信緑郎(フリント・ロック)なんて本人曰く大変不名誉な仇名まで賜っようだ。

 言っておくが彼が火をつけて回ったことはなく、何故か彼がいるところが着火点になることが不思議と多いのだ。

 ちなみに自動拳銃×2をはじめ武器を携行するようになったのはこの頃の経験もあるらしい。

 どうやら彼を守ってくれる優秀な女ガンマンはいなかったようで、なのでセルフディフェンスの方向へ舵きりした。

 幸か不幸か、どうやらトゥーハンドがいない代わりにガンスリンガーとしての才能はあったらしく、合法的(外交官特権)に拳銃を携行する身分になったようだ。

 まあ、その時代を不幸だと切り捨てられるかと言えば、どうやら必ずしもそうではないらしく……

 

「という訳で、”ヘーゼル”、”グレンダ”。周辺警戒を密に頼むよ」

 

 

【挿絵表示】

「「Si、マスター」」

 

 ひょんなことから「ルーマニアで拾って」しまった”双子の少女”。

 一卵性双生児なのか顔だちも背格好もよく似ていて、同じ白髪だが片方は髪が長く、片方は短い。

 縁があり、タイミングが合い、信緑郎(ロック)はこの二人を『私的な部下』として扱う事になった。

 無論、時代も違うし”あの双子(・・・・)”とは直接的には無関係なのは間違いない。勿論、「兄様/姉様」と互いを呼ぶこともなければ、カツラで入れ替わることもない。

 だが、もしも……もしも因果というものがあるのなら、「今度こそロックは救えた」のかもしれない。

 歪んだ性癖と娯楽目的の殺しの技ではなく、二人はエージェントに必要な高度な教育と戦闘術を驚くほどの短時間で吸収していった。

 親もなく、荒れた母国も守ってくれない故の「生きるのに必死」だったとしても、驚くべき習得速度だったらしい。

 肉体関係の有無は分からない。だが、二人は信緑郎と一緒に居れて確かに幸せを感じていた。

 

「ヤバそうなのがいれば、遠慮なく”抹消”していいぞ。責任は俺がとってやる」

 

「「はい♡」」

 

 例えスカートの下、両太ももに380ACP仕様の”ブローニングM1910(皇国ライセンス生産ステンレス版)”拳銃を仕込んだホルスターを巻きつける日々だとしても。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

【挿絵表示】

「やっほ」

 

 ”トレヴィの泉(トレドの泉)”のすぐそば、一人の少女が手持ち無沙汰げに座っていた。

 

「よお」

 

 何となく黒髪の青年は声を返し、

 

「暇そうね?」

 

「まあ、トレヴィの泉に行けって言われただけだからな」

 

「なら、付き合ってよ。暇ならお茶でもしない?」

 

「……”逆ナン”って奴か? 初めての経験だな」

 

 そう返すと少女はクスクスと笑い出し、

 

「奇遇ね? 私も自分から殿方を誘うなんて初めての経験よ?」

 

 そして、

 

「”マリアンナ”。家は『噴水の後ろ』にあるわ。寄っていくでしょ?」

 

(”ポーリ宮殿”ね……)

 

「ただの”和仁”だ。”連れ”もいるが構わないか?」

 

「構わないわよ? ゲストルームの空きはそれなりにあるもの」

 

 ”様式美”、ふとそんな単語が浮かぶ瞬間だった。

 そして、この二人は気がつくと完璧な『現代日本語(・・・)で会話』していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、こんな”ロマンス”と呼ぶにはあまりにも生臭い、人為的に作られた”偶然の出会い”を演出(・・)された二人だったが……

 状況は、そんな逢瀬をのんびり追っていけるほど状況は暢気では無かった。

 

 ミラノの”スフォルツェスコ城”を王城と定めたイタリア王国旧王、自称”サヴォイア朝ミラノ・イタリア王国”国王ヴァレンティーノ・エマヌエーレⅢ世と宰相(ドゥーチェ)ムッソリーニを守る兵力は王党派の軍人と軍属、私兵組織、ムッソリーニの私兵でファシスト党の軍事部門である”黒シャツ隊”を含めて15万、多く見積もってもざっと20万というところだ。

 対してイタリア社会党・共産党連合民兵組織は三派11流28団体合計で100万人以上。

 独ソ戦の規模から考えると少なく見えるかもしれないが、北部イタリア人の多くが「家族を海外に置き去りにした国王を支持するのも御免だが、暴力的なアカの味方するのも御免」という心理が動いているからだろう。

 まあ、それらの市民も無抵抗である訳でもなく、共産パルチザンや無頼漢その物の黒シャツ隊に対抗する為、武装して自警団や都市防衛隊を結成していたりするのだが。

 

 そして救いが無いのが、その自警団の中核となったのが各都市に利権や地盤を持つ名士や退役軍人の要職者、警察などの地元警察組織である。

 イタリアが”統一運動(リソルジメント)”で正式に統一国家となったのは日本皇国(今生の明治政権)樹立と大差ない19世紀後半の1861年、まだ100年も経っていない。

 その前は小国群雄割拠状態で、これではまだ統一国家への帰属意識は十分に育ってないだろう。

 今回の一件、不幸中の幸いでスムーズに自警団が組織できたのは、歴史的経緯からこの手の事態の記憶が消え去ってなかったせいもある。

 まあ、それ以前に第一次世界大戦後のイタリアは、ムッソリーニが掌握するまでは社会党員が富裕層を襲撃して女は犯し男は殺すことが日常茶飯事の世紀末的世界観だったから、”万が一の備え”はしていたのかもしれない。

 

 ちなみに旧王とムッソリーニが北イタリアで寡兵でも頑張れてる原因の一つも実は統一前の歴史が関係していて……サヴォイア家の出元は元々はサルデーニャ島と北イタリアにあった”サルデーニャ王国”の王家、つまり先祖代々の地盤があった。

 厳密にはサルデーニャ島とイタリア北西部のピエモンテ州が本来のサルデーニャ王国領土で、旧王都はトリノだった。その後にミラノを含めた北イタリアを統一したサルデーニャ王国がイタリア全土を統一してイタリア王国を立ち上げたという流れだ。

 

 故に地の利が味方したし、それがわかってるゆえにエマヌエーレⅢ世とムッソリーニはミラノを新たな王都に選んだ。

 トリノまで下がってしまえば、どう足搔いても逆転の機会は無くなるという意識もあった。おそらくは一気呵成に〆られてお終いだとも。

 サルデーニャ島なら尚更、いやむしろ英国あたりが嬉々として、『隔離の時間だな』と海上封鎖を始めるのが目に見えていた。

 

 

 

 だが、如何に先祖が力を得た土地とは言っても、その効力は永続的な物の筈はない。

 所詮は「戦わずして敗残兵」となった旧国王とムッソリーニ一派。言ってしまえば最盛期のイタリア軍の「絞り粕」だ。

 ワインの絞り粕を使ったイタリアの蒸留酒である”グラッパ”は、銘酒になれる素養があるが、流石にこっちは……

 

 勢いは確実に”赤い叛徒”の方にある。

 決着と終末の時は、刻一刻と近づいていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうしよう? 舞台は第二次世界大戦中のローマのはずが、冷戦終結後のロアナプラにしか見えなくなってきた(挨拶

という訳で、”鉄火場の信緑郎(フリント・ロック)”さん、最初は巻き込まれだったんですが、外交官(?)になりたての20代の頃に”バルカンの火薬庫”とか欧州の危なっかしい場所にばっか行かされ続けたことで自衛スキルを身につけたようですよ?

そして戦前の最後の赴任地であったルーマニアで”双子の少女”とエンカウントして、ひょんなことから日本に連れ帰ってきたみたいです。
まあ、欧州で活動することがこの先も多いと考えたロックは、「現地人に紛れこめる白人の少女は使い出がある」ときっちりと教育と訓練を施して、今回のミッションで起用って感じです。
そして、ルーマニア出身で舞台はイタリアというのが、微妙にオマージュだったりw
何気に拳銃がマスターとお揃いのブローニング系だったり、何となく愛が重そう?



そんでもって殿下とマリアンナ、無事にエンカウント。
実は「偶然の出会いを装う」のは古式ゆかしい貴族の嗜みであったり、某有名”ローマを題材にした映画”のパロディだったりしますが……もう二人そろって”現代日本語”で会話しているあたりが、ね?

さて、次回は和仁親王とマリアンナの会話シーンでも……
次回もどうかよろしくお願いします。






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