転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
さて、イタリア社会党・共産党連合は、何故に「日本皇国との
後世の歴史家も頭を悩ませる部分ではあるが、彼らの主張から一応は説明らしきものはできる。
”我々は民心を失った愚王を討伐し、フランス、ロシアに続く『
実はこの発言その物に、彼らなりの”打算”が含まれていた。
フランス革命は150年ほど前の出来事で、おそらく”近代市民革命の元祖”という意味程度でしかない。
まあ、引き合いに出されたフランス人ブチギレ案件ではあろうが。
ただ、実は19世紀に『日の沈まぬ帝國』として覇権を争っていた英仏だったが、”日仏同盟”ではなく”日英同盟”になった遠因がこのフランス革命だったりするのだが……
端的に言えば、
『ねえねえ、これから”立憲君主制国家”としてワールドデビューしようってのに、王様殺しの腐れ
流石は英国人。実に汚い。
それはともかく、重要なのは四半世紀ほど前の”ロシア革命”だ。
第一次世界大戦を戦勝国として終えた日本皇国は、(イタリアン・アカ視点から見ると)『容認した』のだ。
日露戦争以来の敵国ではあったが、”同じ帝政”であるのに日本はあっさりロシアを見捨てたのだ。
お題目はどうあれ、事実としてロシア共産勢力に対抗するためにアメリカが提案した「シベリア出兵」を、当時の皇国は「第一次世界大戦の疲弊」を理由に拒否したのだ。
であるならば、『今回のイタリア革命も見過ごすだろう』という目算があった。
実際、”北イタリア社会主義共和国”の首脳陣は、「これまでのリビアやギリシャの行動を見る限り、日本人は新王を担いでのイタリアの復興を優先する」と考えていたのだ。
実際、当初の日本皇国はこれといった派手なアクションは取っていなかった。
だが、「大きく動く」、それも予定にない事態で大きく動くのであれば、その準備や根回しには酷く手間暇がかかることを彼らは理解していなかった。
だからこそ、皇国軍が直ぐに動かなかった事で、『自分達は容認された』と勘違いしていたらしい。
結局彼らは、日本人というものを理解していなかったのだ。
☆☆☆
「仮にも祖父と叔父が殺されたというのに、意外と涙は流れないものね? 自分が思ったよりも薄情だったなんて、今更ながら気づいたわ」
王族らしい黒のドレスで喪に服すマリアンナ。
ここはローマ、目の前の”トレヴィの泉”での血塗れの乱痴気騒ぎから数日たち、静けさの戻ったポーリ宮殿だ。
「阿呆ぬかせ。本当の悲しみってのは浸透して涙になって出るまで時間がかかるもんさ。心が事実を受け入れるのを拒否するからな……直ぐに泣けるのは役者や詐欺師の領分だ」
そう返すのは
一応、前世で”それなりの経験”をした事が言葉の端っこから察せられる。
「……そういうものかな?」
「そういうものんだ。まあ、ウソ泣きも王族の有効スキルにはなるがな。特に女の涙は色々と強い。プリンセスともなれば猶更だ」
「色々と台無しよ」
クスッと微笑むマリアンナに、
「まあ、お前は涙より笑顔の方が似合うのは確かだろうな」
サラッと返すプリンス・カズヒトである。
「……ねぇ、カズヒト。貴方って女ったらしとかって言われない?」
「いんや。言われたことはないぞ?」
正確には『女より飛行機ばっかりにかまけてて、女の子と積極的に話す機会を設けてこなかった』が正解だった。つまり言われる機会自体が無かった。
この男の興味対象の堂々の第一位は当然のように飛行機であり、次に自動車。船舶関係はその次くらいか?
基本的に「自分の意志でコントロールできる物」を好む傾向があるようだ。
なので電車などは存外にランク外だが……女の子は、プリンス個人興味ランキング・ベスト10に入ってるか怪しかった(皇族の勤めェ……)のだ。
少なくてもこれまでは。
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それは決して枯れることも散ることもない万年桜が咲く、幻想の園……
「やあ、近衛。今回は物の見事な”負け戦”だったねぇ」
案の定、近衛公麿には宮内省からの”招待状”が届いた。
言うまでもなく、”桜の園の主”からの呼び出しだ。
「……お言葉ですが、戦争自体は負けていませんが?」
とはいえ、近衛も言われっぱなしでいる気は無い。
「
何故か”やんごとなき御方”は何が楽しいのか雅な笑みで、
「勝利条件である『イタリア王国旧王から新王への平和裏な禅譲』は永遠に叶わなくなったんだ。つまり、本来の”ローマは一日にして成らず作戦”の意義は失われたと言って過言ではないさ」
「むっ……それはそうですが」
「それにしても中々に朕を楽しませてくれるものだ。”イタリア
「それを私に聞かれましてもねえ」
「のう、近衛……朕はもしかして
(うわぁ~。実は陛下、めっちゃキレてね……?)
笑みは一切崩れてないし、特にこれと言った顔芸を披露しているわけでは無いが……近衛は本能的にそう嗅ぎ取った。
「ここまで朕を楽しませてくれたのだ。余興の返礼くらいはしないとなあ。のう? そうは思わぬか?」
「御意に。如何なる”祭り”をご所望でしょうか?」
内心で溜息を突きながら、近衛はそう聞き返した。
こうなってしまったやんごとなき御方を止められる者などこの世に存在しないことを、近衛は理解していた。
「大きな祭事を行うのだ。相応の名分は必要であるだろうな」
「というと?」
「朕の弟が、旧王の孫娘と随分と親しくなっているそうではないか? まあ、祖父の死が良い”鎹(かすがい)”になったのであろう」
「……よくご存じで」
こういう所が近衛が”陛下”を苦手とする理由の一つでもあった。
どういう理屈かはわからないが、このやんごとなき御方は、遠く離れた場所の事象を正確に把握している時があるのだ。
その理由を聞いた時があるが、
『ふむ。近衛よ……”
そう返された途端に追及を緊急停止させた。
ちょっとだけ「ネーミングが中二臭いな……」とは内心思ったが。
人間には迂闊に踏み込んではいけない領域があることを、近衛はこの時初めて自覚したらしい。
「朕の弟の”将来の嫁”の祖父が非業の最期を遂げたのだ。仇は討ってやらんと示しがつくまい?」
「……皇太后(こうたいごう)様のお許しは?」
「母は反対はせぬよ。寧ろ末弟が婦女子に興味を持ったことに驚き、喜んでおられる。人種など些細なことだ。血筋的にも問題はなかろう」
いや、大正天皇のお后様は本気で「女性に興味を示さず、かと言って男色でもない」和仁親王の将来を「もしかして人間自体に興味が無いのでは?」と心配していたらしい。
「そういうことであれば。下拵えやお膳立てはお任せください」
「弟の方は朕に任せよ。なに、”宮内省”は『この手の色花』を創造するのは慣れておる」
色花、要するに”いろけのあるはなし”だ。まあ、皇族に婚姻話は付き物だし。
「……陛下。それは流石に身も蓋もない」
そう呆れてから、
「”
皇国法において”統帥権”、「国家総動員令」は議会の承認が必要なのだ。
それほどに重いが……だが、必要ならば直ぐに議会工作を行わねばならない。
「
”統帥権”が発令されるとはそういうことだ。
正しく「撃ちてし止まん」。そういう戦いになる。
「ただし、”念入り”に」
「はっ!」
「だが、これは言わねばならぬであろうな……」
やんごとなき御方は真っ直ぐに近衛を見る。
それだけで心がざわつく感覚がするのは何故だろう?
「”勅”である。近衛、逆賊どもを討伐せよ」
泣けないプリンセスと無自覚なプリンス。
嗚呼、昭和ロマネスクの香りがw
それはともかく……
”統帥権”は発動されなかったのは救い(?)でしょう。
何せ、内閣と政府の承認で法的な裏付けを得た状態で”北伐の勅”が発動したら、本当にイタリア北部が「無人地帯」になりかねませんし。
だからこそ、この”勅”はあくまで近衛首相個人に出したものですし、近衛もそれは理解しています。
なので、此処から先は表向きは「ローマは一日にして成らず作戦」の続行ですが、中身あるいは根底は「戦争から討伐」に変更されます。
だって、”勅”が出ちゃいましたし。
まあ、この先はどうなるかは置いておくとして……
とりあえず、”陛下”はガチな異能持ちだった件についてw
実はこの世界線の皇族、特に直系の転生者は多かれ少なかれ”力を持っている”可能性ガガガ……
まあ、ご存命の中では今上陛下が桁外れの異能を持ってそうな気配がしますが。
「お行儀のよい戦争」は店じまい。次回からより拗れます。
だってもう戦争じゃ無くなってしまったのですから。
次回もどうかよろしくお願いします。