転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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最近、北部イタリアでは射貫くべき「動く装甲標的」が絶滅危惧種になってしまい、すっかり手持ち無沙汰になってしまい、三式を持て余し気味な戦車乗りの憂鬱です。

閑話休題とも言うw





第385話 1943年11月時点における”一式戦車系列の最新形態”ならびに”メルカバ計画”

 

 

 

 ミラノへの玄関口”ピアチェンツァ”の制圧、イタリア王国の報道によれば『ピアチェンツァの”北イタリア社会主義共和国”を僭称する叛徒(・・)よりの解放』は作戦開始から72時間でなされたらしい。

 ピアチェンツァに限らず”北イタリア社会主義共和国”が主張する国境線の街、トリノ、プレシア、ベルガモ、コモも全て11月中旬までに軒並み皇国軍を中心とする新イタリア王国派の勢力により立て続けに陥落させられていた。

 やはり、”国籍剝奪並びに破門通知。および指名手配書(Avviso di privazione della cittadinanza e di scomunica e manifesto di ricercato)”の効果は殊の外大きく、これらの都市に巣食っていた赤色勢力は著しく内ゲバで減退しており、中には組織だった抵抗ができていない例もあった。

 

 

「しかし、次は本丸の”ミラノ”。これまでのようにはいかんかもな」

 

 そう皇国陸軍の装甲少佐である”西住虎次郎”は『鋼鉄の相棒』を見上げる。

 ただし、彼が乗り込むのは、ヴェスヴィオ山の麓で黒シャツ隊の装甲部隊を完膚無きにまで叩き潰した最新鋭の”三式戦車”ではない。

 

「やれやれ、また”一式”に乗ることになるとは思わなかったぜ」

 

 そう思わず呟いてしまう。

 

「西住隊長、厳密にはこいつは”一式戦車改Ⅱ試製都市戦対応型(・・・・・・)ですよ。ほら、一式や改の丸みを帯びた鋳造砲塔じゃなくて、最近開発された軽量”均質圧延装甲板(Rolled Homogeneous Armor:RHA)”の全溶接砲塔じゃないですか。ぶっちゃけ別物ですよ」

 

 そう答えたのは、本来は隊長車の装填手だったがいつの間にか西住の専属従兵ポジが定着しつつある、天然(パンチ)パーマがトレードマークの秋山軍曹だった。

 

「それに少数生産予定の車両ですが、個人的には『結構、重要なポジション』を皇国陸軍戦車開発史に遺すのでは?と思ってます」

 

「どういう意味だ? 単なる”旧式戦車の近代化改修(レトロフィット)”って訳じゃないのか?」

 

「いえ。ほら一式にせよ三式せよ、皇国戦車って『平原や砂漠なんかの起伏はあっても遮蔽物の少ない見通しの良い開けた土地での対戦車戦』を想定して開発されてるじゃないですか?」

 

「まあ、それが”戦車の本懐”って奴だろ? 少なくても皇国陸軍の機甲戦ドクトリンじゃそうなってるはずだ」

 

 そう小首をかしげる西住に、

 

「それはそれで間違ってはいないんですが、一式はともかく車格が大きく長砲身の三式って、どうにも路地が入り組んだ市街戦じゃ持て余す事が度々あったでしょ? でも、突入部隊は重装甲と高火力を備えた戦車で歩兵直協、平たく言えば戦車砲で火力支援をして欲しいってのも本音な訳でして」

 

 まあ、これは『計画当時の史実の第二次世界大戦中に恐竜的進化を遂げる(当時は敵対関係だった)ドイツや米ソの戦車を警戒し、その対抗策』として対戦車主体に立案・開発したという裏事情があったりするのだが。

 

「例えば、英国の歩兵戦車のようにか?」

 

「それも間違いでは無いんですが、少し方向性が違うというか……ああっ、西住隊長は昨年のドイツ軍によるムルマンスク攻略で、ロンメル将軍が都市戦を想定した”特殊な(・・・)IV号戦車”が投入したって事を知ってますか?」

 

 そう、クルスが”ドイツ版ガザ・スペシャル”とかって評していたアレだ。

 

「その後にドイツやサンクトペテルブルグから情報提供があって、上の方がどうやら興味を持ったみたいなんですよ」

 

 意外な事に、クルスがまだ来栖任三郎という外交官資格と皇国籍を持っていた時代に本国へと定期報告として送っていた『外交報告書というより駐在武官の兵器レポート』はそれなりに注目され役立たられていたらしい。

 

「そこで我が国でもそれっぽいの試しに作ってみて、効果測定に都市戦に投入しようってなったみたいで。少量生産前提なんで、溶接砲塔になったって経緯があるみたいなんですが」

 

 秋山は、どうやら事情にかなり詳しい……というか戦車マニアなきらいがあるようだ。

 まあ、鋳造砲塔というのは大量生産には向くのだが、初期投資になる鋳型を作るのにコストも手間もかかり、逆に少数生産を前提とすると無駄が多くなってしまう。

 溶接砲塔だと一体成型の鋳造品のように「避弾経始抜群の強い丸みの帯びた砲塔」を作るのは難しいが、結局は装甲板を溶接でつなぎ合わせるだけなので、初期投資が低くなるうえに機材とその技能を持つ溶接工が手配できれば即座に製造が開始できるメリットがあった。

 ただ、大量生産ともなればそれに比例した人員確保が必要となるので、どちらも一長一短があった。

 

「車体のベースはまんまサイドスカート付の一式改みたいですが……確かに砲塔に丸みは無いですが砲塔前面はちゃんと傾斜してますし、砲塔正面は95㎜のRHA使ってる筈ですから、むしろ原型より防御力上かもしれませんよ? 防盾は同じくザウコップの鋳造110㎜だし。それに重量は大差ないのに砲塔容積が一式より一回り大きくなってるんですよ」

 

「? 大きくする理由ってのはなんだ? 被弾面積が大きくなるのは返ってデメリットだと思うが……」

 

「一番の理由は搭載砲弾の増量と搭載兵器の増設でしょうね。主砲は同じく75㎜45口径長砲、英国人の言う11ポンド砲ですが……高速徹甲弾(APCR)を搭載しない代わりに対装甲用に成形炸薬(HEAT)弾や粘着榴弾(HESH)が追加されてます。あれ、構造物破砕にも効果ありますし。砲塔上面の機銃はチ37式(VZ37のライセンス生産品)がリモコン化されて車内から操作可能になってる上に加えて盾付きのビッカースの50口径が追加されてます。あと八九式重擲弾筒と同じ八九式榴弾使う”三式五十粍後装式車載擲弾筒”も内部に追加されてますね」

 

 八九式重擲弾筒は史実にも存在した兵器であり、射程は最大670mで威力は当時の手榴弾の倍以上とされており、実質的に『個人携行できる軽迫撃砲』という趣の武器だ。

 その重擲弾筒専用の擲弾として開発されたのが八九式榴弾で、”三式五十粍後装式車載擲弾筒”はこの榴弾を車内で装填/操作できる後装式擲弾筒として設計された物で、車載型だけではなく歩兵用装備として軽迫撃砲として再設計された”三式五十粍軽迫撃砲”という兄弟装備も存在している。

 また対人榴弾だけでなく、信号弾や照明弾、発煙弾なども同時に開発されたようだ。

 

「あと、砲塔周囲に沢山ステーが溶接してあるっしょ? あれに増加装甲をボルトオン装着する感じです。多分、徹甲弾対策ってより成形炸薬弾対策でしょうね。んで、その増加装甲の内側に隠すように”Sマイン”の簡易発射筒を取り付けるって感じになるみたいです」

 

 どうやら日独の通商関係は改善著しいらしく、”Sマイン”の皇国内ライセンス生産が既に始まってるようだ。

 なんか、サンクトペテルブルグ在住の某”領事権限を持つ駐在武官”の影がチラホラ見える気がするのだが……

 

「”都市戦対応型”ってそういう……いや、そんだけ積んでまともに砲塔回るのか?」

 

「それは問題ないかと。重量増加も一式改と比較するならそこまで大きな重量増加になってないみたいですし、元々、一式の砲塔駆動は電気油圧式で余力ありましたし。それにエンジン自体は変わって無いですが、過給機がスーパーチャージャーからターボチャージャーに変更になって排気系や冷却器も対応したアップデートされてますんで、最大出力が40馬力以上あがったみたいですよ?」

 

 まあこれは、一式が開発された時代はいくらガソリンエンジンに比べてディーゼルは排気温度が低くハードルが低かったとはいえ、高耐久の排気タービンを作るには技術とノウハウが不足していて実現できなかったが、最近になりようやく制作にこなれてきたので採用に踏み切ったらしい。

 実際、三式戦車の後継となる四式戦車には、三式のエンジンをツインターボ化したものを採用するようだ。

 それはともかく最大出力は一式の365馬力から410馬力まで向上しており、重量増を相殺して最高速は原型と同じく45㎞/hを維持できているらしい。

 また元から将来への発展的余地としてトランスミッションは440馬力、サスペンションやシャーシは空虚31tまでの耐久試験には合格しているので、許容範囲と言えるだろう。

 

「それに照準器も”三式”と同じオートスレイブ撃発装置(二軸安定化された照準器の軸線に一軸安定化された砲が合致した時に発砲される電気回路)が組み込まれたそれにアップデートされてるから、命中精度自体も上がってると思いますよ? なんでもHESHはともかくHEATは通常徹甲弾より測距がシビアだって話ですし、ありがたい話ですよ」

 

「あー、技術面は分かった。ようするにアレか? ”アカ湯でマカロニ”共に三式で撃つ装甲的は残って無いだろうから、”都市ゲリコマ蹂躙戦用(カチコミ)戦車”を試しに使ってみようってことか?」

 

「……西住隊長、そりゃあまりにも身も蓋もないっすよ」

 

 

 とまあ、こんな”特殊な都市戦対応戦車”の実戦テスト運用を西住の装甲部隊は任されたようだ。

 この背景には、イタリア北部には既に脅威となるような敵対的装甲戦力は残っておらず、三式戦車を積極的運用するような状況が少ないという判断がなされたようである。

 そして、ちょうどよい機会だからと「コンセプトモデルを実戦仕様にした都市戦対応装甲戦力」の試験投入を決定し、白羽の矢が立ったのが押しも押されもせぬ戦車戦のエースの西住虎次郎だった。

 まあ、元上官の西竹善准将が強烈に推薦したというのも大きいかもしれないが。

 

 そして、この都市戦対応となった試製一式改Ⅱ型が、まさにミラノに向けて出立し、その惨禍を振り撒こうとしていた……

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 余談だが……

 この試製一式改Ⅱ型に限らず、「将来の都市装甲戦」に対応した包括的装備開発計画は、何故か一部の装甲関連技術者から通称メルカバ(・・・・)計画”と呼ばれていた。

 確かにヘブライ語で”古代戦車(チャリオット)”を意味し、語源をたどれば旧約聖書の『エゼキエル書』に登場する「神の玉座」に行き着く由緒正しいメルカバという単語だが、何というか……もう確実に転生者が関わっている開発計画名である。

 というか、何をどう開発したいかが露骨なほど伝わってくる。

 きっとそう遠くない将来、『世にも珍しいフロントエンジンの生存性特化型戦車』とか出てきそうだ。

 

 しかもこれ、陸軍だけではなく、「密集した都市でも使える防御力に秀でた車両」が欲しいと海軍陸戦隊も興味を示していた。

 アサルト・ランディングが必然あるいは前提となるだろう今後の揚陸戦を考えれば、確かに欲しい装備ではあるかもしれない。

 

 とはいえ、今は目先の戦争を終わらさねばなるまい。

 それに対して異論がある皇国軍兵士はいないだろう。

 

 イタリア北部平定戦、通称”北伐”はいよいよ最終局面に入ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エンジンパワーも車体重量も半分だけど、やっぱり和製メルカバ、正確にはそのご先祖様だわw

とりあえず、これの相手させられるミラノで都市ゲリコマごっこしてるアカい元イタリアンにナンマイダー。
まあ、西住隊長は「一式への出戻り」で微妙な顔をしている(そもそも戦車討つ戦車って感じじゃないし)ようですが、パンチ秋山従兵(笑)が言うように、”一式改Ⅱ”の構成自体は「都市戦対応のエポックメーキングな車両」だったりします。

まあ、皇国陸軍の戦車科の「生粋の戦車兵」は「アウトレンジやロングレンジで敵装甲をぶち抜く正統派の戦車」を好みそうですが、クッション艇とかが実用化して強襲揚陸作戦とか
に使えるようになれば、海軍陸戦隊とかは「フロントエンジンの都市戦対応生存性特化型戦車」を喜びそうw

あれ? 下手したら、皇国の戦車開発って二系統化する?
何とも贅沢な話だ事で。

さて、次回はどうやら北部イタリアのみならず、イタリア全イベント戦のラストステージである”ミラノ攻略戦”が始まりそうです。

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お久しぶりの(忘れそうな)設定覚書(プチ)
鉄道の話

”この世界線”の日本皇国は、日英同盟の関係もあって鉄道面で強く英国面、じゃなかった英国の影響を受けていて、史実の大日本帝国が狭軌(レール間1067mm)が広く普及していたが、日本皇国では国有鉄道や私鉄の主要路線は英国式の4フィート8 1/2インチ軌間の標準軌(レール間1435㎜)で統一されていて、狭軌はローカル線などに使われるだけだ。
レール間の幅が広いほど敷設に金がかかる分、「大きく重い列車が走らせられる」ので貨客輸送力が高くなる。
なので、戦車の国内移送が鉄道輸送がメインだったこの時代において、史実ほど戦車の重量でうるさく言われないのは、このおかげでもある。

また、戦後、第二次モータリゼーションの到来に合わせて大幅に行われた道路交通網の近代化で、高速道路を始め主要幹線道路の「走行可能重量制限の引き上げ」が行われたようだ。
「道路事情に合わせて戦車を小さく軽くする」のではなく、「国防要求に合わせて道路を強くする」方向に戦後皇国は舵を切ったようだ。

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