転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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明日は午後勤で、帰宅するのは夜遅くでヘロヘロになって(泣)そうなので、今のうちに深夜アップします。

今回は珍しくシリアス寄りな転生狙撃者視点のエピソードだったり……

先に言っておきます。
”北イタリア社会主義共和国”の本丸ミラノ攻略戦なのに、全く”華”は無いです。
淡々としているというか乾いているというか……地味なエピソードですよ?







第386話 ”救われぬ魂に、願わくば死による解放がなされんことを”

 

 

 

 この世で”最悪”とは何を示すのだろうか?

 それは人によりよりけりだろうが……少なくとも、唯一神が信仰されていた地で、そこに暮らす人々が『神に見捨てられた』と思うのは、その一端ではなかろうか?

 

「ここは地獄だ……比喩でなくな」

 

 それが俺、下総兵四郎がミラノに入った時の最初の感想だった。

 何しろ、絨毯爆撃を食らったわけでもないのに、街が丸ごと”瓦解”してるんだぜ?

 かつてのイタリア、いや欧州屈指の繁栄を誇った”華麗な都”の面影は無く、あちこちの建物は燃え上がり、路地には死体が散乱し、放置されていた。

 俺の知ってる前世の歴史じゃ、ミラノは第二次世界大戦で繫盛に空爆を食らい、都市の1/3が消失し、40万人が家を失い、死者は2000名を越えたとされてっけど……

 

(死者数だったら確実に上回ってるだろうな……)

 

 そんな確信があった。

 そして、そうなった原因は”国籍剝奪並びに破門通知。および指名手配書”が発端なのは間違いないけど、それで起こった”北イタリア社会主義共和国”の内ゲバが、想定以上に激しくなったって感じだ。

 

(本当に『誰が敵で誰が味方か分からない』って状態になったんじゃねぇかな?)

 

 疑心暗鬼ってのは本当に怖いもなんだぜ?

 秩序崩壊なんてあっという間、ほら、スターリンが前世でも今生でもあそこまで同志とやら含めて大粛清やった原動力ってのは疑心暗鬼らしいしな。

 

(根本的にアカってのは、陰謀策謀に密告と粛清で成り上がるのが鉄板だから、疑心暗鬼に陥りやすい傾向があるんだよな~)

 

 平たく言えば、『自分が汚い手を使ってのし上がった自覚があるから、相手も同じ手を使ってくると思い込む』って奴だ。

 スターリンに至っては、「どいつもこいつも自分を蹴落とすことを狙ってる」って考えてたみたいだし。

 

「それを招いた皇国人が言う台詞じゃないだろうけど、どいつもこいつも”マイクロ・スターリン”になっちまったってこったな」

 

「? 餌バラまいて太鼓叩いた奴よりも、それに合わせて踊り出す方が間抜けって事でいいじゃないですか」

 

 小鳥遊君、ドライじゃのー。

 

「それも確かに戦争の一側面なんだけどね」

 

 と言いつつ俺は愛銃、あんま声に出して言いたくないけど”試製下総43式狙撃銃”の照準を合わせる。

 俺的には試製と付いてる以上はまだ”下総43式”ってのは制式名ではなく仮称だと信じている。

 えっ? 往生際が悪い? ほっとけ。

 

「とりあえず、今はお仕事しましょーや。おっ、ニワカ仕込みのスナイパー発見」

 

 そのセリフと共に小鳥遊君から大まかな方向と距離が伝えられる。

 そして、俺はスコープにオンサイトして引き金を絞る。

 

”タァーーーン……”

 

命中と死亡を確認(スプラッシュ)。相変わらず一撃必殺ですなぁ~」

 

「慣れだよ、慣れ。さあ、動くぞ」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 ああ、言うの忘れてたわ。

 俺と小鳥遊君は今、「犯人への狙撃」はSSTやSAT狙撃隊の紳士諸兄に譲り、『ちょっと特殊な狙撃任務』に就いている。

 端的に言えば『対狙撃手狙撃作戦』、所謂『カウンタースナイピング・ミッション』ってやつだ。

 

 ほら、俺も小鳥遊君もバディ組んで狙撃歴はそれなりに長いだろ?

 だから、『狙撃手がどう移動し、どういう狙撃ポジションを好むのか?』ってのがある程度は予想できる

 。

 そして、ミラノみたいな入り組んだ古い都市はアーバンスナイピングに最適で、小銃の一つもあればできる簡単なお仕事、「インスタント・スナイパー」がどこの組織ものべつ幕無く粗雑乱造されてるのが現状だ。

 そして、俺の前世ではさっきも言ったみたいにミラノは空爆で半壊していたんだが、

 

(今生では「街の壊れ方」が違うんだよなぁ……)

 

 絨毯爆撃じゃなくて、内ゲバ……個人携行火器や爆発による損傷、そして放火なんかだ。

 あちこちの壁に弾痕に路地やらには爆発跡、ついでに燃え切った家々の残骸などなど。

 無論、腐乱しかけた死体も満遍なく転がっている。

 要するに更地にまでなった場所は少なく、街並みを残したままぶっ壊れてるって感じだ。

 

(ホント、隠れ場所には事欠かない感じの廃墟があちこちにできちまってまぁ)

 

 そして、これが傍迷惑なのだ。

 これが皇国軍に向かって適当スナイピングしてくるならまだ良いのだ。

 その場合は、対スナイパー戦の正攻法、「狙撃地点と思わしき場所にありったけの火力を叩き込む」だ。

 スナイパーが潜んでる廃墟を文字通り瓦礫にしちまえば大抵は事足りる。撃つことも隠れることも逃げることも未熟なインスタントな狙撃手なら尚更だ。

 

 それを思い知った……民兵装備では”遠慮のない正規軍”には太刀打ちできないと理解した連中は、手段を変えた。

 そう、『皇国軍以外に対する”無差別狙撃(・・・・・)”』だ。

 特に格好の標的とされたのが、皇国軍本隊に合流または投降しようとしたイタリアンだ。

 そこには一般市民も同志も関係無い、本当の無差別だ。

 

 ”日本人に近づけば撃たれる”

 

 そういう恐怖支配めいた評判が広がれば連中にとっては御の字だろう。

 要するに『革命思想とやらに則った”抵抗の意思”』を示せれば十分ってことなんだろう。

 いやさ、俺だって「どうしてそうなった?」とは思うよ。

 

 まず前提から言うと、アカとは関係無い圧倒的多数派の「保護を求めてきた一般市民」は保護したそばからミラノから脱出させている。

 先に奪還したトリノ、プレシア、ベルガモ、コモなんかにベースキャンプを張り、制圧後の治安維持と秩序回復に勤しんでいるイタリア王国正規軍の皆さんに護送付きで引き渡している。

 では対して”国籍剝奪並びに破門通知。および指名手配書”に個人情報記載は無くても”北イタリア社会主義共和国”の人員名簿には名前を連ねている皆さんはどうしたかと言われれば、基本的な対処は変わらない。

 ただ、武装解除してイタリア王国軍に引き渡し、その後は臨時に作られたらしい”特別収容所”送りになるようだ。

 ”特別収容所”と言っても別にガス室とかある「最終処分場」って訳ではなく、だだっ広い原野に建てられた「有刺鉄線と地雷原、それに機関銃座、ペットの可愛い軍用犬や警察犬に囲まれた長閑(のどか)な集合住宅群」という感じらしい。

 余生を全てそこで過ごせる、あるいは全員が生きて出られる訳じゃないだろうが、やらかした事を考えれば(今のところは)有情な判断って感じだ。

 

 これは聞きかじっただけだが、見事”国籍剝奪並びに破門通知。および指名手配書”にリスト入りを果たした300人のうち、実際に捕縛されて報酬(報奨品)が支払われたのは半分程度らしい。

 残り半分は、”行方不明の生死不明”だ。

 ユーゴスラヴィアが”赤化難民”を極秘裏に受け入れてるって噂もあるが……

 

チートなチトーのことだから、『気軽に使い潰せる労働力』程度としか考えてないんじゃないのか?)

 

 噂が事実だとしても、最低でも関係悪化を招かない為に皇国政府と密約するくらいの根回しはするだろうし。

 ああ、話がずれたな?

 

 ともかく、今やミラノの住人の大半は保護を求めてきて脱出したか、あるいは降伏して身柄を拘束されてイタリア王国軍に引き渡されたかだ。

 だが、タイミングを逃したのかそれとも躊躇ってるのか別の理由があるのかは知らないが、特に抗戦の意思が無くともミラノに残っている者と、そして「支離滅裂な徹底抗戦を試みる者」に大別できる。

 

 いやさ、実は徹底抗戦派も全く理解できない訳じゃないんだ。

 俺は前世も多分、日本人だ。

 安田講堂によど号にあさま山荘……革命の夢破れて立て籠もった連中の末路はどこか似ている。

 刹那的と言うか破滅的。望んだ革命は起きる気配もなく、居場所を追われ逃げ場すらなくなり、もう縋るものが「立て籠もり革命思想と共に抵抗の意思を示す」ことしかないのかもしれない。

 

 とはいえ、皇国軍は「治安回復」名目でわざわざミラノまで来てるのだ。軍事作戦としては「無差別ライフル魔」のテロリストなど邪魔でしかなく排除するしか選択肢はない。

 そこで「ライフル魔を狩る猟師」として駆り出された一端が、俺と小鳥遊君ってわけ。

 

 やってることは、対潜戦闘における”ハンターキラー”に近い。

 索敵する”ハンター役”と射殺する”キラー役”がペアになってミラノを徘徊してるのだ。

 哨戒じゃない。本当に「撃つべき敵(スナイパー)を探すために廃墟だらけの街を巡ってる」んだ。

 

「|لعل الموت يجلب الخلاص للأرواح غير المهتدية.《laeala almawt yajlib alkhalas lil'arwah ghayr almuhtadiati》(救われぬ魂に、願わくば死による解放がなされんことを)」

 

 せめてそのくらいは祈ってやる。

 

アッラーフ・アクバル(Allahu Akbar)……!」

 

 そして俺はまた引き金を絞った。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 こんなどうしようもない戦い、戦争ですらない何かは程なく終わるだろう。

 そんなことはわかっちゃいるが……

 

(今は無性にナーディアの顔が見たいな……)

 

「? 大尉殿、どうしたんです?」

 

「いや、相手が”格下の同業”とはいえ狙撃は狙撃、本職は本職だ。街中で戦車戦やらせられてる西住少佐とかよりかはマシかなってな」

 

「あー……戦車には乗ってるけど、戦車じゃない物ばっか撃ってるみたいですしね」

 

 まあ、西住さんとはクレタ島での初エンカウント以来、何となく縁があるんだよなぁ~。不思議なことに。

 

「まあ、とりあえず仕事の続きをするとしようか」

 

(さっさとリビアに帰る為にもな)

 

 

 

 そして、ミラノにおける”都市掃討戦”は、程なく最終局面へと入っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ミラノ、本当に世紀末的な情景だった……

史実の空襲被害より遥かに死者が多いであろう、”死臭漂うミラノの終末的景色”を皆さんに伝えられたでしょうか?

小鳥遊君じゃないですが、存分にあるいは必要十分以上に血が流れているのに”乾いた(ドライ)な地獄”なのが、『”この世界線”の1943年11月後半のミラノ』だったり。

なので珍しくシモヘイが”渇望”を感じたようですね。
どうやら本人が思ってる以上にメンタルダメージが入ってるのかな~と。
まあ、「テロリストというよりライフル魔」を街を彷徨いながら延々と駆除してりゃあ心も渇くかと(最低野郎(ボトムズ)

付け加えると、西住隊長がヤサグレてる姿が目に浮かびそうなw

まあ、こんなgdgdな「闘争の終焉」も、ある意味イタリアらしいかなと。

次回からは「イタリア戦の終戦」に向けたエピソードですが……
すみません! ストック切れました! まだ次話は現時点で1文字も書けてないです(泣

なので気長にお待ち頂ければ幸いです。
次回もどうかよろしくお願いいたします。


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