転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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今回は、次兄と三兄にスポットライトです。
いや、これが「皇族のお仕事か?」と問われると、疑問符が付くのですが……

うん。「こんな事やってたんだー」的に読んでいただけると。



第391話 皇国皇族、陸式の次兄と海式の三兄 ~今明かされる「チ38式半自動歩兵銃」開発の舞台裏と将来型中間弾薬の展望、そして皇国海軍の次世代投入技術について~

 

 

 

「皇国はもう現行装備、全部じゃないけど戦後に改変予定の兵器群に関してはもう生産調整が入ってるから、そこまで余剰兵器は出ない……場合によっちゃあパラダイムシフトによる装備変更と並行しての友好国への兵器供与になるかもしれんのよ」

 

「分かりづらいよな……どこから話したもんかな? あのな、前に”天皇家には転生者(サクセサー)が多い”って話はしたよな?」

 

「”転生者”なのは兄上、照仁陛下や俺だけじゃないんだ」

 

「次兄の”康仁(やすひと)”親王、三兄の”信仁(のぶひと)”親王、四兄の”貴仁(たかひと)”親王……全員が転生者で、おまけに『軍の”技術畑(・・・)”』の所属なんだよ」

 

 正確に言えば、1902年生まれの雲取宮(くもとりのみや)康仁親王、1905年生まれの有栖川(ありすがわのみや)信仁親王、1915年生まれの和仁と一番歳の近い榛名宮(はるなのみや)貴仁という事になる。

 

 一応、『史実と宮名が異なる理由』はある。

 秩父宮にならなかった理由は、史実の由来となった「親王の邸宅(宮家)から見て北西に位置する武蔵国の名山」の中から「東京都の最高峰(標高2,000m以上)」である雲取山がより気宇壮大に思えたかららしい。

 高松宮ではなく有栖川のままなのは、『(史実同様に)断絶した有栖川家』を信仁殿下が惜しみ、成人の折りにその名を継ぐことを頼みでて照仁陛下が許したとされている。

 なので資料によっては”新有栖川”とされる場合もある。

 信仁本人によれば、「高松より有栖川の方が何か格好良いからそっちにした」らしい。

 

 そして、三笠宮の”三笠”は、「三笠山だけでなく日露戦争の戦勝記念艦”三笠”由来」ともされているのだが、貴仁殿下曰く「”記念艦”の名前を貰うのはどうにもな……人間なら退役して横須賀で余生を過ごしている訳だろ?」と言いだし、「どうせなら現役続けてる船の方が良いよ」ということで、三笠と同じ”山岳由来の名を持つ戦艦の”榛名”が選ばれた。

 榛名の選定理由は扶桑型2隻と金剛型の姉妹艦”金剛”、”比叡”が遣欧艦隊として第一次世界大戦に参戦している間、更に”長門”が就役するまで日本皇国海軍連合艦隊の旗艦を務めたという由緒が大きな理由となったとされている。

 他にも金剛型で”宮”と合わせて一番貴仁が語感を気に入ったのが”榛名”だったからという説もある。

 

「はぇ?」

 

「まず大前提を言うが……慣例として皇族の男子、特に直系の親王は皇国軍に服役する。だが、軍部としてみれば皇族に戦死されたら大問題だから、本国から出ない後方勤務にするのが通例。前世基準で普通に考えれば、”お飾り役職”が妥当なんだが……」

 

 和仁はちょっと悩まし気な顔で、

 

「だけど皇族直系、特に当代の兄貴たちは、そんな立ち位置を鼻で笑うような気質ばっかなんだ。おまけに能力もそうなるに相応しいの物があるのさ」

 

「はぁ」

 

 気の抜けたような返事をするマリアンナに、

 

「よく聞けマリアンナ。俺は本国じゃあ、『女の柔肌より鋼の翼を好む、飛行機と結婚した変人殿下』なんて呼ばれ方もされているが、それはいい歳して結婚どころか仕事が楽しすぎて浮いた話一つないから言われただけだからな?」

 

「どういうことよ」

 

「純粋な『技術者としての変人っぷり、変態っぷり』には、”既婚者の兄貴たち”に全然勝てる気がしない」

 

「えっ……それほどなの?」

 

「それほどだ」

 

 和仁は頷き、

 

「例えば、次兄の康仁兄。所属は皇国陸軍技術開発工廠、個人携行小火器研究部。具体的な成果を言えば、『皇国陸軍の現行制式小銃”チ38式半自動歩兵銃”が”64式モドキ(・・・・・・)”になった』のは大体、康仁兄のせい」

 

 

 

 何度か出てきた話かもしれないが……

 ”この世界線”の皇国陸軍主力小銃である”チ38式半自動歩兵銃”は、公式には『チェコのZH-29半自動小銃のライセンス生産改良型のチ29式/チ29式改型半自動歩兵銃をベースに設計された』物とされているが、大噓もいいとこだ。

 チ38式半自動歩兵銃を言い表すなら、『64式からフルオート射撃機能を剝ぎ取ってセミオート・オンリーにし、代わりにイタリアのBM59小銃に酷似した消炎器、制退器、擲弾発射器を兼ねたマズルデバイス”トリコンペンサトーレ(Tri-Compensatore)”を追加した物。また二脚は評判の悪かった64式ではなく同じくBM59に酷似したシンプルな物になっている』という感じだ。

 また、「小銃擲弾照準器を起こすと連動したガス規制子が動き発射ガスをカットオフする」という機能もBM59由来だろう。

 ただし、ロングストローク・ガスピストン/ティルトボルトあたりの造りはZH-29の「変わり種ティルトボルト」ではなく64式の「オーソドックスなティルトボルト」方式だったりする。

 

「まあ、オリジナルの64式と違って、レシーバーを削り出し加工から、『量産効率の向上と資源は大切になっ!』って思いから、補強リブ入り肉厚スチールプレートのプレス加工にして、他の金属部品の大半もプレス品にしたのは個人的に英断だと思う。ああ、あとチェンバー内のクロームメッキ処理や表面の防さび加工もか」

 

 

【挿絵表示】

「えっ、お兄さんって皇族なのにガンデザイナーやってるの? 現役の?」

 

「ああ。『フハハハハハ! カラシニコフもストーナーもナンボのもんじゃい! ブローニング? いや、あの真性の天才はちょっと……』とかいう人かな?」

 

「自信家なのか、そうでないのか微妙なとこね……」

 

「そういう人なんだわ。今は確か、英国と『フルオート射撃可能の次世代小銃弾』の協議やってるよ。多分、今度は”89式モドキ”とか作ろうとしてるんじゃないかな? 緩衝式ピストンがどうとか前に言ってたし」

 

 蛇足ながら、英国はドイツのStG42突撃小銃やサンクトペテルブルグのAG43自動小銃の開発・実戦配備に刺激され、前倒しで現在で言う”中間弾薬”、従来の小銃弾に比べて小口径軽量高速弾の『280ブリティッシュ弾(7㎜×43弾)』のコンセプトデザインが始まっていた。

 参考にしたのは意外にも、”この世界線”では日英同盟の兼ね合いであまり普及しなかった「三八年式実包(6.5㎜×51SR弾)」だった。

 この6.5㎜弾は本来、日本人の小柄な体格ではフルサイズの7.7㎜ブリティッシュ弾のようなフルサイズ/高威力の実包運用は難しいと言われ、有志達が「より小型軽量で日本人向きの実包」をコンセプトに開発したのだが、蓋を開けてみれば史実に比べても栄養状態の改善などで体格が良くなってる日本人兵士でも十分にフルサイズ実包が小銃弾として使いこなせることが明らかになった為、一部の特殊部隊を除いて使用されておらず、生産量の少ないマイナーカートリッジ扱いであった。

 しかし皮肉にもこの「一般的な軍用小銃弾より小柄で非力なマイナー弾」こそが、英国のテストで「人体に命中した場合、日本の6.5㎜弾が最もタンブリング現象を引き起こし結果的に殺傷力がある」という結果が出たかららしい。

 

史実における”280ブリティッシュ弾(7㎜×43弾)”は、「140グレイン(約9g)の弾頭を初速690~777m/sで発射する、運動エネルギー2200~2700ジュール程度の実包(参考までに従来の7.7㎜ブリティッシュ弾は弾頭重量10~12g、780~840m/s、3400~3600ジュール)で、小銃弾/機関銃弾として使用可能」というコンセプトだった。

 

 ”この世界線”でも英国から似たようなコンセプトが提出されたのだが、そこに待ったをかけたのが康仁親王だった。

 転生者で前世を知る殿下は、

 

『いや、既に近代的な機関銃用のリムレスカートリッジな8㎜マウザー弾(7.92㎜×57)を採用してるんだし、新たに開発する小口径軽量高速弾は、おそらく性質的に遠距離での威力や命中精度を出しにくい。だから新型実包は、より「自動小銃のフルオート射撃に最適化したコンセプト」にしないか?』

 

 と言い出した。

 とはいえ、やたら開けた場所の多いアラブ世界で友好国できてしまった日本皇国、史実の中間弾薬のパイオニア”5.56㎜×45”では些か不安がある。特にアフガニスタンなどの米軍の苦闘を知る転生者なら尚更だろう。

 そこで康仁親王は、「英国の7㎜ブリティッシュ弾の薬莢サイズを変えず弾頭の口径を0.2㎜小さく、重量を1gほど軽くし、その分初速を上げて威力を稼ぐ」という改良コンセプトを対案として提出した。

 なんの事はない、これ参考にしているのは間違いなく史実の”6.8㎜×43SPC弾”だろう。何しろこの6.8㎜弾のスペックが「370㎜銃身から発射した場合、弾頭重量120グレイン(7.78g)、銃口初速750m/s、運動エネルギー2300ジュール前後」なのだ。

 そして、皇族の威光も存分に使った康仁親王のプレゼンは功を奏して、無事に”270ブリティッシュ弾”改め”268ブリティッシュ弾(6.8㎜×43弾)”として開発が進められた。

 弾頭形状は空力特性が良好だった7.7㎜弾/Mk.8のボートテイル構造を継承し、銅製弾殻の内部は前方インサートに貫通体としての鋼鉄製コア、後方に重い鉛合金インサートがあり、構造そのものはSS109弾に酷似しているが、実は「弾殻の前方を軽い素材、後方を重く素材を使う二重構造」は既に7.7㎜ブリティッシュ弾でも採用されていた技術なので、それを発展させたとも言える。

 

 将来的な話になるし、あくまで予定として聞いて欲しいが……皇国軍の将来装備の”(仮称)50式自動歩兵銃”の450㎜標準銃身で射撃した場合、「8g弾頭を銃口初速800m/sで発射でき、運動エネルギーは2560ジュール」であり、ブルパップ式でより長い623㎜銃身を持つ英国”EM-2自動小銃”から発砲した場合は、「同じカートリッジで弾速845m/s、運動エネルギー2856ジュール前後」を発揮したらしい。

 低伸弾道性能に優れ、ドイツ系の8㎜クルツ弾はソ連の30ロシアンショート弾の有効射程が300mが限界だったのに対し、268ブリティッシュ弾の有効射程は「砂漠地帯で500m以上」だったというデータが残っている。

 まあ結局、この差は単純な優劣よりも「何処で戦うか?」の想定の違いによるカートリッジ特性の差で、実際に近距離でのマンストッピングパワーなら1mほど口径の大きいドイツやロシアの弾の方があったとする供述もある。

 

 

 

「まあ、康仁兄の設計した銃がきちんと量産されて前線に行き渡れば、その分、銃撃戦での自軍戦死者は減るだろうから御の字だな」

 

 

【挿絵表示】

「……ところでカズヒトって陛下以外は”○仁兄”って呼ぶのね? 何だか可愛いわ♡」

 

 確かに照仁のみが”兄上”呼びだったりする。

 まあ、あの御方のみ兄弟の中でも”別格”なのは感覚的には理解できなくもない。

 中身は割とヲタで俗物っぽいけど。いや、あれも演技の可能性もあるのか?

 

「プライベートじゃな。そのあたりは流してくれると助かる」

 

 指摘されて照れたのか、ちょっと顔は赤い和仁であった。

 

「次は海軍艦政本部勤めの”信仁兄”だが、俺は艦船はさほど詳しくはないけど、まあ、多彩にして多才な人なのは間違いないな。うん。ちょっと前まで主に空母用と潜水艦用の”艦船用次世代動力(・・・・・)”の研究やってたし」

 

「それって原子力……」

 

 和仁は小さくうなずき、

 

「信仁兄の凄いところは、『使用済み核燃料や廃艦なった後の核動力の船体や原子炉の処理』まで包括的に計画練ってたところだな。実際、科学省の原子力関連の科学者や技術者ともよく会合してたみたいだし」

 

 軍用と平和利用の民生用と掲げる看板は違っても、核動力も原子力発電も根っことなる技術は同じ、というか原子炉を使うこと自体に差異はない。

 ならば問題となる部分も共通項が多く、結局、使用後は使用後の放射性廃棄物や放射能残留物、放射能汚染物の後処理が課題になる。

 これを疎かにしていると、とんでもないしっぺ返しが来るというか……例えば、『英国 原潜 末路』と打ち込んで検索をかけてみると良い。

 「後先考えずに建造するとこうなる」という典型例が見れること請け合いだ。ちなみに「世界 原潜 末路」で検索すると更に素敵な現状が垣間見える。

 

「ただ、最近ではそっちに目途が付いたってんで、”和製NTDS”、”海軍戦術情報システム(Naval Tactical Data System)”のコンセプト構築と必要となる技術の洗い出しの陣頭指揮執ってるって話だ」

 

(トランジスタも量産体制に入ったみたいだし、目測は立ったって感じかな?)

 

 皇国空軍も広域防空統合ネットワークシステム、技術的には実在した米軍の”SAGE(Semi-Automatic Ground Environment:半自動式防空管制組織)”、もっと言うと皇国版の”BADGE(Base Air Defense Ground Environment:自動警戒管制組織)”を構築しようと躍起になっているので、おそらくは空海で緊密な開発連携がとられているはずだ。

 そもそも史実の”BADGE”システムの出所は、元々は前述の米海軍のNTDSから派生したTAWCSという防空システムをカスタマイズしたものなので、この二つの戦術システムには深いつながりがある。

 

 無論、原子力関連にせよ艦隊システムネットワークにせよ陸上防空ネットワークにせよ、レーダーを始めとする電気/電子先進国で、”レッドパージ”がほぼほぼ完了した英国(例えば、マルコーニ社なども含め)と共同研究が精力的に進められていた。、

 

 これも蛇足だが、NTDSは海軍の統合情報システムネットワークの先駆けであり、これがシステムとして完成・構築しなければイージスシステムもNIF-CAも産まれなかったと言える。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「んでラストは、貴仁兄なんだが……」

 

 和仁は不意に真面目に顔で、

 

「ぶっちゃけ、俺はあの人が一番ヤベー技術者だと思ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※注意:この物語はフィクションであり、史実の皇族の方々とはなんの関係もございません。

なので、宮名まで違うという。
というか、リアル皇族がここまでかっ飛んでたら流石に怖いw

いや~、書いてるうちにどんどん長くなって、気がつくと5000字越え。
なので次兄と三兄で一端切りました。

康仁親王殿下とかはベトナムのジャングルで起きた、「M16に(ジャムで)殺された米兵」の事を知ってそうですし、割とガチに鉄砲作ってる気がします。
なんか、「雲取宮殿下が設計した小銃」とか書くと、下手に”菊の御紋”が入ってるより効果がありそうw
でも使用弾から考えると、むしろ開発予定の”仮称50式自動歩兵銃”って89式小銃の上位互換のような気も……

そして、信仁親王ェ……なんてモンを作ってるんでしょうかw
いや、確かに皇国が「外洋型の戦略海軍」を志向するなら必要な装備なんでしょうけど……
ただ、「有栖川」を継いだ宮様と書くと、何となくそつがない印象が?
あと、徹頭徹尾、コスト管理をしっかりやってそうw

そして、和仁曰く「技術者として一番ヤベーのは四兄の貴仁殿下」らしいですが果たして……?

次回はある意味、真打ちの”貴仁兄のエピソード”の予定です。

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次回もどうかよろしくお願いいたします。

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