転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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という訳で前話のドロシーの予測通り、大公が早速動くみたいですよ?

どうやら珍しく自分から”出向く”みたいで……






第413話 ”バルト海条約機構(Baltische Vertrags Organisation:BVO)”の存在意義とは? ~フォン・クルス大公、歴史の転換点に動く。ポーランドの話題も少し~

 

 

 

 

【挿絵表示】

「ふん。バカ共がはしゃぎやがって」

 

 あのアホの娘との邂逅から特に何事もなく一夜明け、ワシントンから相対的に8時間未来にあるサンクトペテルブルグでは、魔王城の主たる男がそう呟いていた。

 

「シェレンベルク、NSRの非常用特別連絡機(エマージェンシープレーン)を借りれるか?」

 

Ja(はい). 可能な限り速やかに」

 

 NSR(ドイツ国家保安情報部)から出向という扱いでいたサンクトペテルブルグに常駐しているヴァルタザール・シェレンベルクは、サンクトペテルブルグ大公フォン・クルスが醸し出す気配に圧されるように頷いた。

 ちなみに”エマージェンシープレーン”とは、NSRが保有している「事前にフライトプラン提出のいらない(ただし誤撃墜を防ぐために事前通達は必須)航空機群」の事で、要するに”情報非公開の政府専用機”みたいな扱いだ。

 作中では、よくシェレンベルクの上司であるレーヴェンハルト・ハイドリヒがサンクトペテルブルグに来るのにちょくちょく使ってる”シューマッハ・カラーの機体”がその代表格だろう。

 まあ、あれはNSRというよりハイドリヒ長官専用機っぽいが。

 

「行き先は?」

 

「当然、”ベルリン”だ。悪いがヒトラー総統とハイドリヒ長官とアポイントメントを一緒に取ってくれると助かる」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 こうして、俺、ニンゼブラウ・フォン・クルスは一路機上の人となり、翌12月26日(夜間飛行はリスクが高すぎるので原則禁止になってんだよなぁ)にドイツ首都ベルリンへと入った。

 

「まさかクリスマス明け直後に、大公自らの申し出でベルリンで謁見することになるとはな」

 

 そうドイツ総統アウグスト・ヒトラーが返してきた。

 いや、クソ忙しい年末進行の中(ははっ、大公にクリスマス休暇なんてないぞ?)、俺も好きでベルリン詣したわけじゃないけどな。

 

「私も総統閣下と年の瀬に会うとは思いませんでしたよ。無礼無粋なのは承知の上ですが、そうも言ってられない状況ですし」

 

「”グリーンランド”だな?」

 

「ええ」

 

 まあ、他に話題などないだろう。

 

「単刀直入にお聞きしたいのですが、ドイツは米国によるグリーンランド侵攻をどういう対応で?」

 

「デンマーク主導の国連臨時総会で非難決議が採択されるのなら、喜んで賛同しよう。デンマーク王国は我らドイツの”友好国”なのだから」

 

(”友好国”ね。つまり”同盟国”とは言わないわけか)

 

 つまり、今の所は物理的手段で対抗する気は無いということか……

 

(賢明だな。ドイツにアメリカまで届く長い手はない)

 

「逆に聞きたいのだが、フォン・クルス大公……貴君こそ、何か”良い草案”があるからこそ、ベルリンまで来たのではないかね?」

 

「まあ、あるにはありますよ。極めて常識で面白味の無い方法ですが」

 

 あまり期待し過ぎないで欲しいんだが……

 

「言ってみたまえ」

 

 

【挿絵表示】

”バルト海条約機構(Baltische Vertrags Organisation:BVO)”の臨時会議を招集しようと思います。デンマークはBVOに正式に名を連ねている正規加盟国ですので」

 

 現状、”BVO”の加盟国は北欧三国のノルウェー、スウェーデン、フィンランド。バルト三国の北からエストニア、ラトビア、リトアニア。

 そして今や話題の中心のデンマーク。

 ポーランドは現状、バルト海へ抜ける”ポーランド回廊”の消滅に伴い内陸国家になったため、バルト海沿岸諸国には入っていない。

 一応、記しておくと国境線の微調整は未だに続いているが、現在、ドイツのケーニヒスベルクからバルト海沿岸の大都市”ダンツィヒ”から南へ”ブロンベルク(ビドゴシュチ)”、”ロッツ(ウッチ)”、”チェンストハウ(チェンストホヴァ)”、”カトヴィッツ(カトヴィツェ)”、旧チェコの”オストラウ(オストラヴァ)”を結ぶラインの西側がドイツへの編入地域という感じだ。

 どうやら首都ワルシャワを含む旧国土の東半分は無事に、”ヴィンツェンティ・シコルスキー”首相率いるポーランド正統政府(旧ポーランド亡命政府)に返還されたようだ。

 きっと今頃はソ連に荒らされ放題だった東ポーランドの統治に苦労している事だろう。

 そして当然のようにドイツだ。

 

「ほう。そういう方向性に舵を切るか」

 

 なぜ総統閣下が感心したような顔をするのか知らんが、

 

「国連臨時総会は参加国が多く手間がかかるので。国連工作はデンマークに任せるとして、それ以前にバルト海沿岸諸国の意思統一は図っておきたいってのが本当の所ですよ」

 

「意思統一とは?」

 

「そうですね……」

 

 妥当なとことしては、

 

「今回の”グリーンランド侵攻”に関する報復処置だけの話をするなら、直接的に敵視されているドイツだけでなく、”バルト海沿岸諸国全体(・・)”の領海におけるアメリカ軍籍艦の通行禁止と寄港禁止。アメリカ軍籍航空機の領空飛行禁止と全ての空港の使用禁止という所ですかね? 無論、避難的緊急寄港も緊急着陸も受け入れない方向で」

 

 なんかハイドリヒが意味ありげに笑ってるんだが?

 

「米軍の”軍艦”や”軍用機”ではなく?」

 

 総統閣下、何を言ってるんだ?

 それじゃあ制裁にならんだろうに。

 

「米海軍保有艦艇、米陸軍保有航空機のみならず、リバティ船だろうが砕氷船だろうが海洋観測機だろうが『米軍に一時的にも徴用されている・徴用されていた公民問わない艦船・航空機全て』を対象とするつもりですが?」

 

 いや、だってこれってヤンキーに対する「断固たる抗議表明」なんだぜ?

 「米軍に関わる全てを拒絶する」くらい言わないと、何も伝わらないだろうさ。

 

「別に米国に対してなんら禁輸する訳でもない、資産凍結をするわけでもない。ただただ、『今回の侵略行為(・・・・)になんら正統性はない』ってのをバルト海沿岸諸国連名で突き付けるだけです。我ながら幾分、”甘い処置”だと思いますが……相手が”君主殺し”のソ連って訳でもないですし、まず手始めはこんなもんでしょう」

 

 まあ、アメリカ船籍であれば、護衛船団を付けない”純然たる民間船・民間機”しかバルト海には入って来れないってだけの話だ。

 現状、大西洋を横断できるような民間旅客空路の定期便があるわけでもなし、実際のダメージは「軍に徴用された船」を保有する海運会社が割を食うだけだ。

 はっきり言えば、現状の米国に「直接的なダメージ」はさほど与えられない。

 

(とはいえ、『バルト海沿岸諸国はアメリカの正義を否定する』という意思表示が出来れば今は十分だ)

 

「……フォン・クルス大公よ。バルト海の最短幅は、スウェーデンとデンマークの間に位置するエーレスンド海峡の約7㎞……極めて狭い海だ。それが分かっている上での意見かね?」

 

 当然でしょうが。

 

「アメリカ海軍艦艇、徴用船舶をバルト海から締め出すって事でしょう? 今回のグリーンランド侵攻を除けばアメリカとは直接的な”戦争状態にはない”ですし、つまり元々バルト海に米軍艦が入る余地も必要もないんですよ。それを明文化したところで何の問題が?」

 

「いや、それは確かにその通りなのだが……」

 

 ヒトラー総統、なぜそこで表情を濁す?

 

「今回のアメリカのグリーンランドへの態度(侵攻)、これは完全にドイツの傀儡云々以前に『デンマークが何をやっても手出しできない弱小国家』だと無礼(ナメ)られたってことですよ。元外交官として言わせて貰うんなら、外交というのは『ナメられたらお終い』なんです」

 

 だからこそ、アメリカって国を”わからせ”ねばならんのだ。

 

「デンマークは確かに単体で見れば”バルト海の小国”でしょう。だが、同時にれっきとした独立国。国連加盟の主権国家であり、”BVO”の加盟1ヵ国だ。その土地に断りもなく足を踏み入れるというのは、”どういうことになるのか?”……それを身をもって知らねば、連中、同じ事を繰り返しますよ?」

 

 アメリカ人ってのは基本、「懲りる」んじゃなくて「今度こそ成功する」って方を優先する民族だしな。

 

「とはいえ、この程度で終わらすつもりは毛頭ないですけどね……」

 

「というと? これ以上、何をするのかね?」

 

「元外交官としてはお恥ずかしい限りなんですが……」

 

 いや、ホントにな。

 

「言ってみたまえ。大丈夫だ。バルト海沿岸の国家首脳部には、君がかつて”日本の外交官だった”なんて些末な事実(こと)を覚えている者などほとんどいないだろう」

 

 ヲイコラ、どういう意味だ?

 

「少々、デンマーク国王と”英国”王室と”繋ぎ”をとって貰えると助かりますよ。生憎、今の私にはこれといった外交ルートがないので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




相変わらずのクルスの外交センスの無さ、炸裂!(挨拶

ヒトラー、地味にドン引きしてるやん……
本人曰く「甘い処置」が、実は全然甘くない件についてw

”米軍と米軍と関わった全ての艦船と航空機のバルト海への立ち入りを禁じる”

ってアンタ……
しかも、「これだけで済ますつもりはない」ようで。
アメリカに「灸をすえる」つもりが「マグマを押し付ける」にならなきゃいいけどね~。
いや、ホントにデンマーク国王はともかく、リチャード(+おそらくドロシー)と何を話すつもりなんだか……

まあ、次回は「手土産(付届け)」の話かな?

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