転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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という訳で、なんかクルスが魔王城(冬宮殿)で色々と考えてるみたいですよ?

まあ、陰謀という感じではなく、ある意味、「前世の歴史再現」かも……?




第414話 The Man of Saint Petersburg ~その漢、居城にて英国を氷国に引っ張り込む為の策謀(=お土産選定)を練る~

 

 

 

 

【挿絵表示】

「ほう。まさかこうもあっさり許可が下りるとはな……」

 

 ほぼとんぼ返りで翌12月27日朝のNSR非常用特別連絡機(エマージェンシープレーン)でサンクトペテルブルグの冬宮殿(きょじょう)へと戻ってきた俺は、件のデンマーク王国との個別会合の下準備と、いざ”英国王”への外交儀礼(貢ぎ物)の吟味に入っていた。

 

 正直、いきなり王家に接触できるかは分からない……というか、「会おうと思って会えないのが王族」の筈なんだが……

 

「それだけ”大公殿下”が注目されてるってことだろ?」

 

 本日は1943年12月28日、日本なら仕事納めの日だが……まあ、戦時下の大公にそんな悠長な暇はないわな。

 本日の訪問者は、一昨日会ったばかりの……ヒトラー総統閣下とさも当然のように同席してやがったレーヴェンハルト・ハイドリヒである。

 いや、コイツってドイツの重鎮の中で一番、サンクトペテルブルグの来訪率高くないか?

 

「まさか、この短期間で本当にデンマーク国王と英国王と謁見できるとは思わなんだ」

 

 信じられるか?

 年明け早々、俺ことフォン・クルスはデンマーク国王”クリスティエルンX世”との対面が決まった。

 そして、その1週間後を目途に、日本人的な言い回しだと松の内に英国王と謁見予定だ。

 

 えっ? ヒトラーも似たようなもんだって?

 ヒトラーにアポ入れて翌日には面会できるのだから、それも当然?

 いやいや、相手は他国の王族で、総統閣下は上司じゃん?

 

「してクルス卿、貴公は一体どんな話題をかのデンマーク王と?」

 

 芝居がかった言い回しで聞いてくるハイドリヒに、

 

「ああ、ネタ晴らしをしてしまうと……”BVO(Baltische Vertrags Organisation:バルト海条約機構)”の臨時会合前に話を通して、この機に『アイスランドを独立させてしまわないか?』って提案するつもりだ」

 

 ヒトラーの前で言わなかったのは、正直、まだアイデアが固まりきって無かったからなんだよなぁ~。

 ほら、『米国勢を純粋な民間輸送船以外をバルト海から追い出す』ってアイデアは伝えたろ?

 ただ、アレだけじゃあちょっとヤンキーに対するインパクトが弱いと思ってさ。

 

 戦争ってのは基本、政治の一手段だが、戦争の本質って突き詰めれば『嫌がらせ』だと思うんだよ。

 つまり、『相手の国が嫌がることを率先してやる』ってこと。

 そして、相手が『もう嫌がらせをやめてください』って”降伏”を言い出したら戦勝。

 普通はそれを武力でやるのが戦争なんだが……

 

(交戦状態に無いなら無いで、やりようはあるからな)

 

「アイスランドを? いや、しかし……この現状でアイスランドを独立させたら、みすみすヤンキーの前に餌を放り出すような物じゃないのか?」

 

「ああ、そうだな。普通に(・・・)アイスランドを独立させれば、確かにヤンキーの格好の標的になるだろうさ」

 

 だが、そこに外交の余地(旨味)があるんだよ。

 

「だが、アイスランドの独立希望勢力にある条件を突きつけようと思う」

 

「というと?」

 

英国軍の駐留(・・・・・・)さ。英国軍の駐留を認めるなら、デンマーク王国はアイスランドの独立を容認する……そういう”流れ”を作りたい」

 

「なっ!?」

 

 ハイドリヒ、そう驚くなよ。冷静沈着が必須条件(トレードマーク)のNSR長官の肩書が泣くぞ?

 

「実は総統閣下の前で話さなかったのは、デンマークと英国を動かす”最後の一手”がどうしてもあの時は思い浮かばなかったからさ」

 

 正確には、デンマーク国王には、交渉の余地はあった。

 いや、むしろグリーンランドがああなったからこそ。「守り切れないアイスランド」はデンマークの重荷にしかならないという方向で交渉を進めるつもりだった。

 事実、デンマークには「米国相手にアイスランド防衛」ができるほどの戦力は無い。

 いや、ドイツやサンクトペテルブルグを含めても、”BVO”諸国にそんな戦力は供出できないのが現実だ。

 何しろ、ドイツとサンクトペテルブルグにフィンランド、バルト三国はソ連と戦争中だ。

 残るノルウェーとスウェーデンは、基本的に「本国専守防衛の為の国防軍」編成で、戦力も装備もアイスランドで戦争するには全く向いていない。

 この現実を突きつければ、アイスランドの独立交渉はそうハードルは高くないはずだ。

 

「デンマークへの損失補填は、土地ではなく『デンマーク支援』にかこつけた”BVO”における時限立法的な関税優遇とかでもできるだろうしな」

 

 ぶっちゃけ無理にアイスランドを持つより「利のある話」は、調整と話し合いで用意できる。

 そもそも”BVO”を、『バルト海沿岸諸国の相互扶助組織』として機能させたいって目論見自体は前からあるし。

 

(しかし、問題は独立したてのアイスランドの安全保障だ……)

 

「英国は、米国のグリーンランド侵攻に危機感を持ってるはずさ。何しろグリーンランドに米軍基地が置かれれば、恒久的にカナダとの通商路が圧迫を受ける。だが、それだけじゃあ英国が動く理由にならない」

 

 

 

 多くの日本人は知らないが、実は前世でも英国は「アイスランド侵攻」をやってのけてるのだ。

 アイルランドの間違いじゃないぞ?

 アイスランドが独立国になったのは前世では戦時中の1944年、厳密にはアイスランドは”アイスランド王国”であり、デンマーク王国との同君連合体制下にあったんだ。

 ところがぎっちょん!

 胴元のデンマーク王国がドイツに侵略され、イギリスが航路防衛の必要上から、デンマーク占領以降中立を宣言していたアイスランドに対し、侵攻作戦を実施、全土を占領した。

 んで、そのまま同君連合は解消(デンマークはドイツの占領下で同君連合継続の手続きができなかった為)されて、44年にアイスランドは独立となった……ってのが大雑把な流れ。

 平たく言えば、前世でも「英国のアイスランド制圧が無ければ、アイスランドの早期独立は叶わなかった」のだ。

 

(だが、今生のデンマーク王国はドイツの制圧下ではなく名実共に主権国家のままだ)

 

 建前的には、ノルウェーやスウェーデン同じく”親独中立”。

 親独ではあるが、ソ連との戦争には参加していない。

 国軍はあくまで「国防」にのみ運用されている。

 

(しかも、ノルウェーがドイツに攻められていない上に、英独は停戦を成立させちまっている)

 

 だからこそ、英国は「これまでは」アイスランドへ侵攻する理由が無かった。

 

「英国が『アイスランドに派兵する・基地化する大義名分』が必要なんだ。いや、正確には『米国のグリーンランド侵攻への対処』って大義名分は自体は成り立つが、軍を国外に張りつける……ましてや恒久的に基地を置くとなれば、相応に金がかかる。つまり、その”損失”に見合うだけの”実利”が無ければ、英国は動かないってこったな」

 

「アメリカへの警戒心や不信感では足りぬか……」

 

「そりゃ足りないさ。英国は今、まさに”大英連邦(コモンウェルス)”の再構築でてんてこ舞いだ。余計な戦争に首を突っ込む余裕なんか軍事力はともかく政治的余裕はないさ」

 

 そう、ドイツとの戦争が事実上終了した英国は、カナダへの配備兵力の増強や新領地の治安維持などがあるが、実は英国本土軍に関しては少なからず余力があるのだ。

 

「だから、俺の腹案の肝は、『英国をアイスランドへ釣り出す”エサ”の確保』をどうするかだったんだ」

 

「なるほどな……それで、”エサ”は見つかったのか?」

 

「まあ、一応は……」

 

 多分、これで釣れるとは思うんだが……

 

「なあ、ハイドリヒ……今、英国が一番欲しがってる、じゃないな。”必要な兵器”はなんだと思う?」

 

「?」

 

米国に叩き売った北アイルランドに配備された戦略爆撃機基地を『有事の際に即応的に叩ける武器』なんてのは、流石に食いつきが良いとは思わないか?」

 

「おい、それってまさか……」

 

「ハイドリヒ、悪いがこれは”持ち帰り案件”で、ヒトラー総統閣下と検討してくれないか? ”現物”、いや”試作品”くらいはもうあるんだろ? せめて設計図の供与を受けられるなら、交渉の武器になる」

 

「……良いだろう。検討しよう」

 

 まあ、「お断り」のサインじゃなさそうか。

 

「無論、サンクトペテルブルグからも『ドイツの許可』を取った上で、”献上品”を用意する。英国王相手には必要だろう?」

 

 一応、サンクトペテルブルグでも英国が欲しがりそうなものはあるし。

 

「……それにしても、”アレ”をまさか交渉材料にする気とはな……確かに英国には所縁があるだろうが」

 

「少なくとも、”(前世と)同等”の物なら、英国に渡しても問題ないだろ? ”あれら”はあくまで『始まりの一歩(ファーストステップ)』に過ぎないんだから」

 

 ”巡航型(ひこうばくだん)”と”弾道型(ロケット)”……あれらは戦後全ての同族(ミサイル)の基礎となった装備だ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「相変わらず枢機卿猊下はトンデモネー事考えるでヤンスねぇ~」

 

 ああ、どうも。

 お久しぶりの領事権限を持つ日本皇国駐サンクトペテルブルグ大公領武官、小野寺誠っスよ。

 一応、これでも日本皇国の軍人ですぜ。

 

(まあ、正式に許可が下りたら、事前に吉田統括(えいこく)へ報せといた方が良い案件でしょうなぁ……)

 

 英国を釣ろうとするなら、”撒き餌”は必要でしょ?

 

(俺が聞いてるのはわかってるのに会話を続けてるってのは、そう言うことでしょうから)

 

 権謀術数が常套手段なのが外交ってもんですが、まあ、おっかない世界ってこってすよ。

 

 

【挿絵表示】

「とはいえ、だからこそ暗躍のし甲斐があるという物。そうは思いませんか? シェレンベルク卿」

 

「オノデラ、君も大概だと私は思ってるよ?」

 

「いえいえ、とんでもない。小生は所詮、小物でして。フォン・クルス大公殿下にして枢機卿猊下には及びもつきませんて」

 

 精々、『時代の主役』たるフォン・クルス枢機卿猊下と居並ぶドイツ系綺羅星三羽烏参謀団(シェレンベルク、シュタウフェンベルク、シュペーアのことな)の背後に立つモブ程度の存在でやんすぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうやらクルス、デンマーク王にアイスランドを放棄(独立容認)させて、アイスランドには独立と引き換えに英軍を引っ張り込んで駐留させるつもりみたいですよ?

書いておいてなんですが、一言ツィートしたい。

”外交官とやらが考える外交とは根本的に視点がちゃうやんけっ!!”

うん。もう普通に外交官の発想じゃなくて、「正統派覇権主義国家の君主」の視点からの外交だよなぁ~とw
えっ? 今更?

まあ、でも「他国の君主と自ら交渉役となって渡り合おう」としてるあたり、大公(くんしゅ)としての無自覚の成長と外交官としての後退を感じてならないという。
でも、本人はきっと、

クルス:「おお、なんか久しぶりに元外交官らしい役割が……」

とか思っていそうですが、外交官はアポ一つで総統閣下や国王陛下とは会えませんのであしからずw
ついでに国家元首と取引なんて以ての外。

オノデラ:「それができるのは基本、同じ”国家元首”のみなんでヤンスよね~」

お久な小野寺君も相変わらず良い空気吸ってるようで何よりw
追記:小野寺君の良い感じのイラストが出来たので追加します。
いや~彼のイラスト化は難しかった(泣

ちょっと次回はどの視点から描くか未定ですが……

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次回もどうかよろしくお願いいたします。



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