転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
さて、今回はダイレクトに前話の続きになるエピソードです。
というかフォン・クルス大公とは何者なのか……?(哲学
そして地味にヒトラー虐概念が……
ドイツNSR(Nationaler Sicherheitsnachrichtendienst des Reiches;国家保安情報部)の所属でありながらドイツ国防軍の参謀資格を持つ男、ヴァルタザール・シェレンベルク少将(本当の階級と立ち位置は”特務少将”にしてNSRのNo.2)は、ドイツという祖国を愛していた。
虚実を器用に使い分けながら、”独裁者”という派手な看板を掲げながらその実、堅実な国家運営を行うアウグスト・ヒトラーという「権力に飲み込まれない」稀有な資質を持つ
しかし、同時に……
(こういう『
「”V-1”と”V-2”の設計図がもう届いたか。どうやら
資料を読みながらそう満足そうに呟くクルスに、
(”Ninseblau von Cruz dir Erzherzog Sankt Petersburg”は伊達ではないということか……)
ドイツ語において、一般的び”大公”を表す言葉は”Großherzog(Grossherzog)”、英語の”Grand Duke”と同じ意味だ。
しかし、Erzherzogは別の意味がある。
本来はハプスブルクの血を継ぐ大公、例えば”オーストリア大公国”の君主のような立場にある者がErzherzogだ。
しかし、かつて「バルト海沿岸の
あえて言うなら……「かつてオスマン帝国と対峙したハプスブルク家の役割」、再び現代で「今度は共産主義に対する
(
☆☆☆
そう、クルスが読んでいるのは史実では”
・”V-1”パルスジェット推進式巡航弾
・”V-2”ロケット推進式弾道弾
史実での正式名称は、それぞれ”Fi103”飛行爆弾、”A4”ロケットというらしく前者は空軍、後者は陸軍が管轄したそうだ。
しかし、”この世界線”では誘導弾関連の技術は、その機密性の高さから全てが国防軍最高司令部(OKW)の直轄機関の元で一元管理され、研究開発が進められている。
ヒトラーを通じて、クルスはそこから資料を取り寄せていた。
「まあ、英国王への手土産としては上々だろう」
(とはいえ、ヒトラー総統閣下に借りを作りっぱなしというのもイマイチ落ち着かんな)
そう考えたクルスは真新しいノートを取り出し、いくつもの数式やら化合物の配合や化学式やら、挙句は簡易図面や模式図まで記しはじめ……
「シェレンベルク、これをNSRの連絡員に持たせてベルリンへ送ってくれ」
「これは?」
「今、思いつく限りの”V-1”と”V-2”の改良プランさ」
(この設計図を見る限り、今のところは前世のV-1、V-2と大差なかったが……)
「おそらく、現場では改良はこの図面より進んでいるだろうが……まあ、ちょっとした”返礼”だよ」
☆☆☆
「
そう大笑いしたのはレーヴェンハルト・ハイドリヒだった。
クルスが送ってきた”メモ書き”の内容は、”
”
という一文から始まった。
記されていたのは、
・”V-1”に電波高度計とそれに連動した簡易式ジャイロ型慣性航法装置の搭載(パラメトロンないし真空管を用いた簡易回路図付)による命中精度の向上。
・”V-2”のロケット燃料をアルコール(エタノール)と水の混合推進剤+酸化剤として液体酸素から同じ液体燃料ながら貯蔵期間の延長と含有エネルギーが大きい推進剤”非対称ジメチルヒドラジン(Unsymmetrical dimethylhydrazine:UDMH)”+酸化剤として”赤煙硝酸(Red Fuming Nitric Acid:RFNA))”に変更。また、その製造が難しい場合は既に製造法が確立されている「推進剤:ケロシン+酸化剤:硝酸」を過度期的ロケット燃料として推奨(史実のスカッドA準拠)
また、近将来的な改良案として”V-1”のエンジンとして「いずれ発展性が行き詰るサンクトペテルブルグ製の遠心圧縮式ローコスト・ターボジェット」の採用(無論、売り込みを兼ての発案)、”V-2”により維持管理が楽で安定的な燃焼が可能となる固体ロケット燃料の導入などが示唆されていた。
ちなみにクルス、”種子島”での誘導弾開発進捗状況など全く知らずに、前世知識を頼りに。「今生ドイツの現状技術を鑑みて実現可能な」この”草案”を纏めたようだ。
そして、ヒトラー総統は難しい顔で、
「……今更ながら、ホント何なんだろうな? あの”
「”
「ああ、言い得て妙だな。とにかく、私や”レーヴェ”、君とは『根本的に何かが違う』事は確かだろうな」
「それはそうだろう。あの”異質”さ……理論上は存在してもおかしくない『複数の
「いわゆる”多重転生者”か……」
どうやらドイツの首脳部も、”フォン・クルス大公”の本質(特異性)に気付き始めたようで何よりである。
「とりあえず、『現状、独ソ戦の真っ最中』の
「”深入りし過ぎない”は良好な人間関係の基本ではあるな。”針鼠のジレンマ”を甘く見るべきではない」
無茶苦茶常識的なことを言い出すヒトラー総統。
カリスマとかではなく、存外、こういう部分がこの総統閣下が史実のよく似た人物より「そこはかとなく人望がありまくり」な理由かもしれない。
「デンマーク王”クリスティエルンX世”のアポイントメントは既に取り付けた。後はクルスとデンマーク王室との日程調整を行えば事足りるだろう」
ドイツ外相コンラート・フォン・ノイラート氏、大活躍である。
「まあ、デンマークとしても会談に文句はないだろう。事態が事態だし」
「意外、と言えば良いのか……いや、それとも当然か? ”英国王”は至って乗り気のようだな? ”あの妻”共々」
何か胃薬を飲みたいようなレアな表情のヒトラーにハイドリヒは苦笑し、
「想像しただけで濃い空間……いや、クドい絵面だな」
「私はその空間には1分たりとも居たくは無いが」
実はヒトラー、第一次世界大戦中にリチャードIV世とエンカウントした臭いのだが……
「やはり、”
「ああ。苦手だな。何というか生物として根本的に嚙み合わない気がする」
「もしや、それが英国との本格的な開戦を避け、早期停戦した本当の理由だったりしてな」
するとヒトラーはふと真面目な顔で、
「言われてみれば存外、的外れではないかもな。私自身、あの男と本気で戦うことを嫌がっていることは否定できん」
歴史とは意外と、誰も予想もしていない小さな理由やきっかけで変わるものなのかもしれない。
「……よっぽどトラウマになったのだな。”キング・リチャードのバレットダンス”が」
「……レーヴェ、お前も一度見れば理解できると思うぞ?
うん。我ながら脳味噌が理解をしようとする字列だw
いや、本当にクルス、何やってんでしょうね?
ちなみに将来☆MISS!(So ein Mist!)は総統閣下シリーズではなくマリカーのワリオのセリフだったり。
まあ、ドイツ的にはクルスプランを実行しても英国と戦争していない関係で、ブッパするのはのは史実とは反対方向、”東の方”だけでしょうけど。
それにしてもシェレンベルク、戦後に国籍移しそうな予感w
まあ、それはシュペーアやシュタウフェンベルク、小野寺君もその兆候があるけど。
さて、次回は多分、クルスのデンマーク国王との謁見かな?
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