転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
あ~、体がキツイっす(泣
さて、なんか半裸の王妃とアカの絶対敵対者たる大公で、何となく化学反応……いや、劇症反応じみた物が起る予感?
さて、ドロシーが半裸になろうが全裸になろうが夜が更けても会談は続き、
「アイスランドに進駐するついでに”
どうやら英国、アイスランドのデンマーク王国との同君連合を解消→独立国化かーらーのー、”
実は1944年時点でアイスランドというのは人口も少なくこれといった産業は無い。
しかし、コモンウェルスに組み込む以上は、駐留費を差し引いてもプラスになる何らかの採算可能な地場産業は欲しいところだ。
それこそ、英国本土経済におんぶにだっこでは、お先真っ暗だろう。
「アイスランドは”極北の火山島”ってレアな自然条件の島だろう? その地理的特性を活かすなら、先行投資で地熱発電と膨大な水量を活用する水力発電を整備して”安価な電力”を確保。そして、それが整えば後は時代的にアルミ精錬一択だろ?」
前に何度か触れたかもしれないが、アルミ精錬は別名”電気精錬”と呼ばれるほど膨大な電力が必要だ。
そして、多くの国でアルミ精錬が産業として定着できない理由の一つが、この電力量の確保……仮に発電量が足りるとしても発電コストの高い国ではとても採算性が悪いものとなってしまう。
実は史実の日本で、アルミ精錬が衰退して最終的に消滅したのは、この「一円玉を作るのに一円以上のコストがかかる」採算性の悪さ故だ。
「ふむ。妥当な判断だな」
そう鷹揚に頷くリチャードに、
「んー、ねぇっ! 戦後に”サンクトペテルブルグ大公国”を巻き込めるなら、ボーキサイトからの精錬に加えてアルミ素材開発にも手を伸ばしたいんだけど?」
ドロシーの脳内では既にソロバンが弾かれているようだ。
現状は軍事部門への最優先投入だが、戦後は確実に軽合金の需要は民需は特に跳ね上がる。
その需要は軍用の比ではない。
また、”この世界線”でも同盟国の日本は、超々ジュラルミン(A7075)やアルマイト処理などでアルミ合金の分野では世界のトップを走っており、英国も電子・電気分野でのトレードオフのようにその恩恵に預かっていた。
そして、原材料のボーキサイトもオーストラリアを中心に大量にとれるが、問題なのはその精錬技術が英本土はともかく、他の地域にはそこまで育っていない事だろう。
オーストラリアは国土こそ広いが発電量は、人口に比例して現時点でそこまで大きいわけでは無く、アルミ合金のサプライチェーンは大英連邦全体としてはその戦後の潜在需要に対して供給量を満たしていないというのが現状だ。
質以前にまず量を満たせないだろう。
「それに関しても(ドイツ保護領の)今から予備交渉を始めるならドイツと要相談だが……サンクトペテルブルグ大公としては吝かではないぞ? ぶっちゃけサンクトペテルブルグのアルミ生産量はこの先の拡大分も含めて”
実はこれもまたシュペーアを中心とするプロジェクトチームが概算を出しており、このまま大きな損失無く現状維持のままで終戦を迎えられたとすると、現状で定義される”レーヴェンスラウム”の総人口だけで1955年までに2億を突破する公算が大きい。
その時に想定される軽合金の民需だけでもサンクトペテルブルグのアルミ合金総生産量の年次ごとの予想増加分を加味してもなかなかに大変な量であるようだ。
つまり、レーヴェンスラウムの外側にサンクトペテルブルグ産のアルミ合金が出てゆくことは少なくとも1955年までには無く、その先も何やら軍民問わない”内需”だけで使い潰されてしまいそうな気配まである。
「まあ、英国にはせっかく電子産業が強いんだし、アルミ事業が軌道に乗ったら、半導体産業も根付かせるといいだろうな……あれも電気食うし。アイスランドの気候条件やクリーンな環境も向いている。地理的あるいは人口学的条件を考えれば、造船やら航空やら自動車やらの人も場所も食う他の産業は向かんだろう? ならばいっそ『なるべく多くの人間を食わせられる産業』に特化すべきだ。アルミと半導体なら規模的にも持続性でも最適だろう」
あっ、
「あら? 素敵なアイデアじゃない♪ 英国には何かないの?」
「まず”英国病”に罹患しない事だ」
※英国病:1960年代〜70年代の英国で高福祉・高負担の「大きな政府」政策による労働意欲の低下、基幹産業の国有化、労働組合の強大化によるストライキ頻発が招いた慢性的な経済停滞現象のこと。
要するに国家の「緩い社会主義化」という側面だ。
またその根本には「技術はあるのに何を作っていいのかわからず産業のパラダイムシフトに乗り遅れた」という事もある。
「”
※ニューリベラリズム;「大きな政府」による市場の積極的に介入し、社会保障や格差是正を肯定して社会保障などを重視する。”社会自由主義(Social Liberalism)”や”社会的市場経済(Social Market Economy)”との親和性が高い。
※『ゆりかごから墓場まで』:政権政党となった英国労働党のスローガン。これを反映した各種政策により英国病の原因となった。
「過激ね~。よっぽどアカがお嫌いと見たわ♪」
クスクスと笑うドロシーだったが、その笑みはどこか挑発的に見えた。
しかし、クルスは意図的に軽口とは受け取らず、
「ああ、嫌いだね。どいつもこいつも例外なく
「ありゃま。これは思ったよりもマジだわ」
キョトンとするドロシーだったが、
「……あのさ、もしかして前世でアカに酷い目にあったクチ?」
「詳細は伏せるが、その認識で大体あってるぞ」
多重転生者であるクルスの前世の一つは、確かにこう同じ転生者相手でも話しづらいものではある。
「正直、妻がスマン」
デリケートな部分に突っ込んだことが分かったのか、素直に謝罪するリチャードが「しょぼくれたライオン」ぽくてちょっとだけ可愛い。
「いや、気にしなくていい。ただ、前世を深く詮索しないでくれるとありがたい」
「わかったわ」
そう『無自覚に、あるいは無意識にクルスを煽った』ドロシーも納得するが、
「それはさておき、英国政治の主導権をアカに渡さないってのは実際に重要だぞ?」
「ある
※ケンブリッジ・ファイブ:史実で戦間期から1950年代にかけてイギリスで活動したソビエト連邦のスパイ網。ケンブリッジ大学の出身者で、英国情報部、王室職員(エリザベス女王の従兄弟)、国営放送、外務省職員×2と国家要職に就いていた5名が中核メンバーだった。
「それは何より。まあ、油断はしない事だ。
「大公、貴方って本当にユニークで面白いわ♪ だから、話を聞きたくなるのよね~」
「そうか?」
「もっちろん♪ 他に何か提言ある?」
割とストレートな”おねだり”だが、ことクルスに関してはこれが正解だった。
別に誰でもという訳ではない。
クルスもリチャードもドロシーも理解していた。
『ドイツとイギリスの戦争が再開される”理由がない”』という事をだ。
「なら今のところ言えるのは、”
クルスは一度言葉を切り、
「であるならば『英国とその経済圏の居住者全員を十分に食わせられるエリア』まで成長させる事が出来れば、
それは半ば確信めいた、クルスが示す『英国の未来像』であった。
という訳で、クルスが示す”
まあ、クルスの「やらかし」はいつものことと言えばいつものこと(笑)だけど、それを無自覚・無意識に煽って強制起動させたドロシーちゃんという図式w
とはいえ、これでクルスはアイスランドの「永続的な地場産業の構築」を皮切りに「アカを徹底して排除して健全な国家運営の下地を作り」、「内需循環で国民の腹を満たせる独立した経済圏を成熟させる」という「戦後英国の明確なビジョン」を示した訳でして……
さて、英国国王夫妻は果たして”見過ごして”くれるかな?
さて、次回は多分、英国国王夫妻とクルスの〆になる……予定です。
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