転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

425 / 439
はい。という訳で、クルスがまた無駄に評価を上げ……いや、上げてるのか?
少なくとも本人にとっては微妙な評価を増やすみたいですよ?

ちなみに伏線回収があったり、懐かしい話がでてきたり、爆弾発言があったりしますw







第422話 英国王妃から見た”クルスの器” ~同盟国相手とは言え、あっさり皇国のインドシナ半島将来戦略をばらす(予想する)元外交官がいるらしいですよ?~

 

 

 

「対日貿易で今や取引額トップに躍り出ているレアアース鉱石の輸出。”ノルマンディー”は流石に既定路線だろうが、『いつまでも金にならない欧州戦線』と『金のなる木が樹海作ってる中国』、米国資本層はどっちを優先したい? 例え、米国の赤色感染がどれほど重篤だとしても、あの国で最後に物を言うのは経済学。つまり、”どれだけ儲けられるか?”だ。まさに資本主義万歳だな」

 

 事も無げに『香港の租借権を米国に売り払って、そのままレアアースを餌に中華大陸に縛り付けようZE☆』作戦を提案するクルスであったが……

 

 

【挿絵表示】

「いや、ホントちょっと待って。ちょっと理解が追いつかないんだけど……それ、仮に福建に米軍や国民党が無事進出して金門島とかに基地とか置かれたら、滅茶苦茶日本を刺激しない? しかも、その原因が英国が香港を売却したことが原因となれば、日英同盟その物にヒビが入りかねないんだけど……」

 

 

【挿絵表示】

「そりゃそうだろうな。だから、英国は一つ譲歩した方が良い部分があるぞ?」

 

「どこだ?」

 

 そう聞き返すリチャードに、

 

「リチャード王……”ビルマ”ってそんなにキープしておきたいか? 新たに手に入れたボルネオ島とその周辺(=旧蘭領東インドの半分)アフリカの資源地帯(旧仏領赤道アフリカ+仏領西アフリカ+旧ベルギー領コンゴ)よりも魅力的か?」

 

「はっ?」

 

 予想外の返しに流石に少し驚いた顔をするリチャードだったが、

 

 

【挿絵表示】

「なーんで、そこでビルマやアフリカやインドネシアの話が出てくるわけ?」

 

 そうごもっともな怪訝な顔をするドロシーに、

 

「いや、前世で英国はビルマを最後まで独立させなかった、植民地に固執したからさ。今生でもそうなのか確認しておきたいんでな」

 

「流石にそこまで固執するつもりはないが……”大英連邦(てもと)”に置けるなら置いておきたいくらいか?」

 

 リチャードの返しにクルスは浅く頷き、

 

「なるほどな……その程度の執着なら、いっそ日本に割譲して独立させちまったらどうだ?」

 

「はぁっ!? 何言ってんの? もしかして”日本領ビルマ国”の歴史再現でもしたいの?」

 

 と今度こそ驚くドロシーに、

 

「そこまで変な話か?」

 

 史実の1942年、大日本帝国は当時の英領ビルマに進軍し、傀儡ではあるがビルマを正式に国家として承認、独立させたという経緯がある。

 

 

【挿絵表示】

「あー、そうか。”フランスの裏計画(・・・)まだロンドンにまで届いてなかったか……」

 

「えっ? ナニソレ……」

 

「単純にフランス、ああ勿論パリ政権の方な?が、原油と引き換えに”仏保護領カンボジア”と”ラオス仏保護国”を日本に売っちまおうって計画が水面下で動いてるのさ。まだフランス国内で根回ししてる段階で、日本への正式な打診はしてないが」

 

 

【挿絵表示】

「は……?」

 

「フランスは今後も油は山ほど欲しいが金欠で代金が無い。そして、日本はインドシナ半島の安定化はシーレーン込みで途轍もなく好ましい。無茶な取引じゃないだろ?」

 

 そして、クルスは更に続ける。

 

「元々、日本は”阮朝大南の宗室(ベトナムの皇太子)”を擁立しているだろ? 近衛首相も前に行っていたが、クォン・タム殿下が”ベトナム王国(・・)”に凱旋するのは1941年の時点で既定路線さ。また、親日路線のタイ王国は言うまでもなく、とっくに皇室外交のリストに載っている」

 

「……もしかして、日本ってASEAN、じゃないわね。『インドシナ半島版の”君主連合”』の結成を狙ってる?」

 

 クルスは今度は大きくうなずき、

 

「今はまだ”努力目標”程度の認識だろうが、パリ政権がカンボジアとラオスの売却を言いだせば、一気に現実味を増す。”カンボジア・クメール王国””ラオス・ルアンパバーン王国”の歴史への華麗なる復帰だな」

 

 ちなみにベトナムのクォン・タム同様、仏領化されたカンボジアとラオスに関しては1944年時点で旧王朝の王位継承者である若き国王となるべく日々自分を磨いている”ロドム・シアヌーク”殿下と、現役のルアンパバーン国王とされる”シークワーサーウォン”陛下が、日本皇国国内で『国賓待遇(ゲスト)として』、”来るべき日(・・・・・)”に備えて保護されていたのだ。

 

 そして誰もが忘れている”死に設定(笑)”と化しているが、クルスは元日本皇国外交官であり、そのあたりの事情を熟知していた。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「あー、大公が言わんとする事が見えてきたわ。日本が警戒してるのは前世の、”戦後の急速なインドシナ半島の赤化(・・)って訳ね?」

 

「なるほどな。ならばビルマを引き合いに出したのも合点が行く」

 

 ドロシーの言葉にリチャードもそう追従した。

 

「日本は……いや、近衛政権は”ポルポトの暴虐”を見過ごす気など毛頭ないだろうからな。将来の禍根は今のうち断つくらいは平気でやるさ」

 

 事実、日本皇国は偶然の可能性は高いが……リビアの将来の禍根を既に生まれる前に始末しているっぽいのだ。

 

 

【挿絵表示】

「しかし、ビルマの王国化は難しいだろう? あそこは王族を失って久しい」

 

 流石はその今はビルマと呼ばれる地にかつて存在した王国、”コンバウン王朝”を三度にわたる”英緬戦争”で完膚なきまで叩き潰した張本人である英国、その現役王様だ。

 面の皮の厚さが違う。

 

「まあ、無理に王国にする必要はないさ。なんせ日本は面田紋次郎(アウンサン)氏を押さえてあるし」

 

 いや、だれ?と皆さんは思うかもしれないが……

 史実の”面田紋次”とは、アウンサンの日本名である。

 そう”ビルマ建国の父”と国名がミャンマーに変わった今でも敬愛されている人物で、現代だと”アウンサンスーチー”女史の父親としても有名だ。

 実際には逆で、ミャンマーでアウンサンスーチー女史が「民主化の旗手」とされたのは、実は父親のアウンサンの影響が大きい。

 

「あー、そういえば日本に避難してたわね。あの独立過激派……でもアウンサンって共産主義者じゃなかったっけ?」

 

 事実、史実のアウンサンはビルマ最古の共産党、ビルマ共産党(Communist Party of Burma:CPB)の初期メンバーだった。

 

「ああ。あれってビルマ独立を勝ち取る為の方便だぞ? 『皇国の国是として共産主義者に一切協力はできない』と告げたら、あっさりイデオロギー放り投げたし」

 

 どうやら”この世界線”のアウンサン氏も史実と似たような感じで、今やシリアやレバノンという熱砂舞う、物理的にもある意味政治的にも”熱い”地帯で活躍する石射猪之助と親交がある。

 ちなみに外交官時代のクルスは、石射と先輩後輩として面識があったり……

 

 

【挿絵表示】

「えっ? ナニソレ……」

 

「まあ、石射さんがアカに味方するとは思えんし、現実主義の政治家なんてそんなもんだろ? 目的達成のために思想(手段)を変えるってのは基本スキルってこったな」

 

「あー、つまり日本はアウンサンを手懐けたってこと?」

 

「断言はせんが、その可能性は高いな。ならば”インドシナ半島の君主連合”+1というビルマを組み込むことは可能だと思わないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*******************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまあこんな感じで、ロンドンの夜は更けていった。

 そして場面は結局、バッキンガム宮殿にクルスが泊まることになり、彼がゲストルームに引き揚げた後に移る……

 

 

【挿絵表示】

「参ったわ……脱帽よ。ある程度予想はしたけど、まさかあそこまで大公が”ユニーク”な人物だとは思わなかったわよ。ホント想定外もいいとこだわ」

 

「まあ、今後の日本のアジア方針予想を知りえただけでも僥倖と言えるが……」

 

 リチャードはそうフォローするが、

 

「確かにそれはプラスだけど、でもリチャード……気が付いてる? ”大公の器”って、額面通りに大公の枠に収まるようなものじゃないわよ? 彼の視点・立ち位置・思考からもはっきりそれがわかるわ」

 

「というと?」

 

「端的に言って、リチャードと同じ”王の器”よ。それも古い時代の専制君主寄りのね」

 

「納得はいくな」

 

「ホント、よくもまあああいうキャラで、ちょっと前まで外交官なんてモロに実務官僚をやっていられたもんだと変に感心するわよ」

 

「まあ、それは言えるか。とはいえヨシダ統括をはじめ、日本外務省のトップ外交官は曲者揃いの印象があるが……」

 

 ※酷い風評被害ですっ! 大抵の外交官は日本人らしく生真面目で仕事熱心なのですっ!!by 日本皇国外務省(公式)

 

「それでも大公は規格外ね。アレ、生まれる時代と場所が変わっていたら、世界に覇権を唱えてもおかしくないキャラよ?」

 

 何やらクルス、とんでもない評価をされているが……

 

「それで? ドロシーはどう判断した?」

 

「無論、せっかく縁を繋いだんだもの。戦時中(いま)から関係を継続しつつ、戦後にサンクトペテルブルグが独立国化したら、王室外交も絡めて一気に関係強化一択だわっ♪ だってつるめば確実に国益になるわ♡」

 

 ドロシーは満面の笑みで、

 

 

【挿絵表示】

「サンクトペテルブルグ大公ニンゼブラウ・フォン・クルスなんて貴重な”資産(じんざい)”、”汎マルク経済圏(レーヴェンスラウム)”だけに独占させるなんて選択肢、我らが”大英連邦(コモンウェルス)”には存在しないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クルス:「中国(台湾海峡沿岸)に米国引き込む穴埋めにビルマを皇国にくれてやったら? 日本、インドシナ半島を(君主連合を軸に)安定させたがってるし」

う~ん……このクルス、マヂでクルスw
特に皇国の負担とか意図的に無視してるあたりがw

クルス:「ASEANまとめるよりゃ、インドシナ半島一つくらい楽なもんじゃね? 必要な”駒”は大体、国内に揃ってんだし」

そりゃ英国にとっては、客観的に見て負担軽減で「得しかない」取引ですし、皇国にとってもインドシナ半島の安定化はシーレーン維持には確かに必要なんですけどね?
ドロシーの、

「ホント、よくもまあああいうキャラで、ちょっと前まで外交官なんてモロに実務官僚をやっていられたもんだと変に感心するわよ」

作中のセリフが真理かも?
ついでに”専制君主寄り”の”王の器”ってあたりも。

とにもかくにも、クルスが無事に英国国王夫妻にロックオンされたようで何よりですw

ご感想、高評価、お気に入り登録してくださると大変嬉しいです。
次回もどうかよろしくお願いいたします。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。