転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
というか、今回はどちらかと言うと近衛しゅしょー虐?
まあ、事案が玉突き衝突して回り回って皇国に辿り着くのは割といつもの事ですしw
「噓だろ、おい……」
ここは日本皇国帝都東京、そこにある首相官邸執務室。
そして、この部屋の主であり、皇国の”表の主”とも言える近衛公麿は唸るように呟いた。
同盟国のイギリスから届いた外交電文、いわゆる正規外交書簡の先触れとも呼べる暗号化された内容は要約すると……
『アイスランド進駐の緊張緩和策として、米国に香港島とその周辺の租借権を売却する事となった。そこに在中米軍と国民党軍が駐留する可能性が極めて高い。その分、地理的に近い台湾島ならびに海南島の皇国配備兵力に負担をかけることになる事が予想される。その埋め合わせとして、英国は英領ビルマを日本皇国に割譲する用意がある。また、ビルマ割譲後に独立国化するとしても英国は関与も関知も干渉もしない事を約束する』
「ヲイヲイ……前世の”ビルマ国”の歴史再現をしろってか?
(いや、確かにビルマ独立国化の切り札とも言える”
実際に日本皇国は、戦後を見越して英国とビルマの独立国化について話し合う準備をしていたのだ。
だが、交渉を本格化させるのは世界情勢が落ち着く戦後を予定していた。
そして、近衛の視界には、「まるで英国からの外交電文に間に合わせるように」公式外交ルートを通じて送られてきた、正統フランス共和国(パリ政権)からの書状があった。
その内容は多くの皆さんの予想通りで、
『”仏保護領カンボジア”と”ラオス仏保護国”の日本皇国への販売の用意がある。なお代金は、リビア産を中心とした原油を希望』
つまりは、「管理しきれないカンボジアとラオスをくれてやるから油をよこせ」という事だった。
無論、フランスもベトナムのクォン・タム殿下と同じくカンボジアのロドム・シアヌーク殿下、ラオスのシークワーサーウォン陛下を国賓待遇で匿っていることを知っていた。
そして重要なのは、この英仏から出された案件が、「イタリア戦終結から程なく」、つまりある程度の戦後処理の道筋ができたこの1944年2月末日に届いているということだろう。
ここで”インドシナ半島問題”を英仏が連携して投げてくる意図は明白であった。
「つまり、”暇になったのだったら世界の安定化を手伝え”ってことかよ……」
事実、英国はつい先日のアイスランド進駐と取り込みで”
フランスはパリ政権(=正統フランス)とケベック一派(自称”自由フランス”)に分かれ、特に正統フランスは米国と交戦状態なので更に余裕はないだろう。
(ビルマは無料進呈、カンボジアとラオスは妥当な値段か……)
となれば、戦後にもたらされるであろうインドシナ半島の安定化による国益を考えれば、皇国首相としてこの誘惑から逃れるのは難しく……
「つまり、英仏そろって皇国を”第二次世界大戦から足抜けさせる気はまだない”ってことだろうな……」
どうやら日本皇国の第二次世界大戦は、未だに終戦を迎えられないようだ。
*******************************
1944年3月1日、日本皇国政府より一つの公式発表があり、世界を驚かせる……ことは特に無かった。
ベトナム王国新国王(予定)のクォン・タム殿下、”カンボジア・クメール王国”の新国王(予定)のロドム・シアヌーク殿下、そして法的には現役国王である”ラオス・ルアンパバーン王国”のシークワーサーウォン陛下、更には日本名”面田紋次郎”ことビルマ独立運動の旗手であるアウンサンが正装で一同顔をそろえての共同記者会見で発表されたのは、仏領ベトナムに続き、カンボジアとラオスの購入と英領ビルマの割譲。
更には独立国化への日本皇国の大規模全面独立支援だった。
これに元々ある伝統的に親日的なタイ王国を加えると以前あった英国王妃ドロシーの指摘通り、実に堂々たる”インドアシナ半島の君主連合+ビルマ”の誕生である。
とはいえ、前述の通り(最近の流れを知る)大抵の国に特に驚きは無かった。
というのも世界の声は、
『いや、既定路線だろう』
『遥か彼方の地中海で戦争やって友好国作りまくってんだから、そりゃあ近場でもやるよな』
『インドシナ半島の安定化は、台湾島やシーレーン維持で必須じゃね?』
『むしろ、予想よりも遅かった。ベトナム王国復権宣言と同時にやるかと思ってた』
という具合だ。
何というか……良くも悪くも「植民地を片っ端から独立させる独立国化請負人」という”日本皇国の立ち位置”というものが国際的に認知されているようで何よりだ。
まあ、日本皇国も国策ではあるが、同時に欧州を中心とした宗旨国から放り投げられる形であり、「別に好きで、あるいは望んで率先してやってるわけでは無い」という事情は綺麗に無視されていた。
☆☆☆
無論、この発表に米ソは怒り狂った……というが建前だが、ソ連は『別に直接的な実害はない』という理由から。あくまで「日本の帝国主義的領土拡張政策云々」とそういう発言でポーズをとっただけで具体的な報復政策は無かった。
米国の方が反応は劇的であり、対抗措置として英領扱いの香港租借地に続きフランスの中国租借地である「
これは対立関係のあるパリ政権、国際認識でどっからどう見ても正統な方のフランスを大いに刺激することになるが……
実は広州湾租借は日本皇国が押さえている海南島の目と鼻の先にあり、とんでもない緊張を招く可能性もあったが……
「もう好きにしてくれ。思う存分、中華を耽溺してればいいんじゃねぇか?」
この近衛の言葉に代表されるように、皇国の反応は至って冷静……いや、むしろ冷淡でさえあった。
現状の日米関係では、史実の太平洋戦争、あるいは1944年の太平洋戦域のようにはなるはずもないので、もう日本政府としても領土近々に米軍施設が増えるとしても、割り切ると決めたようだ。
いや、もう日米開戦するような事態になるなら腹をくくるしかないと覚悟を決めたという方が正解だろうか?
無論、米国との戦争は望ましいことでは無いが……起きる時は起きるものだと特に皇国の”
ちなみにこの「日本皇国が米国の広州湾租借権購入について大きな反応を示さなかった」件について、米国では様々な検証がされたようだ。
最も有力なのは、「イタリア戦を終えたばかりの日本には、米国と正面切って武力衝突を起こす余力が無い」という可能性の示唆だが、これはある意味において正鵠を射ていた。
事実、皇国の主力と呼べる戦力は現状、地中海に集中しているのだ。
ただ、ここにインドシナ半島の独立国化に向けた治安任務や国土復興を考えると、予備役の動員解除はどうやら先延ばしになりそうである。
実際問題、”この世界線”では力強い見栄えの良さと”真珠湾攻撃やミッドウェー海戦”のような空母が圧倒的な存在感を魅せる状況が少なかった為に一般市民には未だ「海軍の花形」と認識されている戦艦を例に出すと、現在、日本近海に残っているのは最新の大和型しかない。
しかも、大和型の4隻のうち、きちんと戦力化されているのはネームシップの”大和”と2番艦の”武蔵”のみで、3番艦の”信濃”は1944年3月現在公試運転中で、4番艦の”甲斐”は1944年4月に竣工予定という状況で戦力化は45年に入ってからとされている。
また、日本初の装甲空母”大鳳型”は、44年3月時点で4隻が就役しているが残る第二次世界大戦勃発の影響で予算が認められた追加建造分の2隻は未だに公試運転中で戦力化には至っていない。
また、それ以外の正規空母は今は練習空母扱いの蒼龍、飛龍を除けば、主力空母である翔鶴型やその簡易量産型といえる”雲龍型”も全て地中海やその間の航路に船団護衛として欧州航路に投入されている。
また、大鳳型の拡大簡易設計版と言える基準排水量36,000tを誇り、4隻同時建造という日本では稀な建造方法がとられた”改大鳳型”は、まだ1隻も竣工されていないのが現状だ。
新型艦ばかりと言えば聞こえは良いが、新しすぎて「欠点や弱点が出尽くしていない」あるいは「まだ戦力化できていない」船が舳先を並べているのが今の日本近海だ。
実際、大和型や大鳳型が欧州に派遣されない理由は、「不具合が起きたら直ぐにドッグに入れるような状態にする為、本土からあまり遠洋へ征かせられない」という事情があるからと言われている。
流石に皇国政府もこの状況はマズいと思ったのか欧州に出ずっぱりだった天城型2隻をオーバーホールと近代化改修を行うためにスエズ運河を抜けて本土へ回航させているが、それでも加賀型2隻と長門型2隻、金剛型巡洋戦艦4隻と皇国戦艦の半数以上がは地中海にとどまっている。
純粋国防(本土・領土の専守防衛)に関しては、最も初期の対艦誘導弾ファミリー、空対艦や艦対艦だけでなく最近は地対艦型も加わったとされる”イ号一型”シリーズや熱赤外線パッシブホーミング型対艦誘導爆弾である”ケ号爆弾”シリーズの配備開始により、伝統的な漸化的多層迎撃に徹すればある程度はどうにかなるだろが……
それでも、ハワイに総司令部を持つ米国太平洋艦隊、加えてパナマ運河を抜けてくるであろう”おかわり”、米海軍大西洋艦隊まで相手するとなると如何にも心許ない。
”この世界線”では真珠湾攻撃から始まる太平洋戦争(日米戦)が無かったせいで、パナマックス(運河通過可能最大量)が本来の計画通りに順調に拡大され、その概要は
・全長:366m(史実+72m)
・全幅:49m(+17m)
・喫水:15.2m(+3m)
・最大高:57.91m(史実と変わらず)
・航行可能排水量:65,000~80,000t(最大)
つまり米国最新鋭戦艦、全長282m、全幅37m、喫水11.2m、基準排水量63,000トン超(満載排水量71,000t)の”モンタナ級”すらも余裕を持って通れるということだ。
とはいえ、元から”この世界線”では米領である山東半島や遼東半島に加え、香港租借地に加えて広州湾租借地まで米軍配備となると……確かに日本皇国にとっても脅威と言えば脅威だが、何気に中国大陸に張りつけなくてはならない戦力が指数関数的に増えていく気配がある米軍は、果たして欧州の戦場にどれだけ投入できるのか……
そもそも、地味にカナダへの配備兵力を増やしてる英国も決して無視できない現状があるのだ。
世界は、この東亜の土地でも緩やかに変質してゆくのだった……
いやでも、史実の大日本帝国の東南アジア侵攻の因果を考えれば、「政治的に形を変えただけ」と言えなくもないか?
「なあ、誰か教えてくれ……俺は、
近衛の問いに答える者は誰もいなかった。
そう、何かを教えてくれるモノは”ゼロ”だった。
何故かラストの近衛しゅしょーのセリフがグリリバVoiceで再現される罠w(挨拶
近衛首相:「最近、何故か無性にツインバスターライフルが欲しくなる瞬間があるんだよなぁ……」
まあ、同盟国の英国を筆頭に独仏がコンビ(トリオ?)を組んで、皇国の”第二次世界大戦からの一抜け”を阻んでいるストレスフルな環境なのでw
ちなみに吉田欧州統括もどこぞの英国古狸同様に12年物のオールドパー(ブレンデッド・スコッチウイスキー)と葉巻の消費量が増えたようですよ?
ただ、米軍の東亜戦域の配備兵力が増えても日米衝突の可能性が比例して減る不思議。
米国鉱業資本:「へへっ! 稼ぎ時だZE! 欧州戦線? 知ったことかっ!!」
ゴールドラッシュならぬレアアースラッシュ(皇国限定)の予感?
ちなみに皇国は、まず東南アジアに最適化した「改正”緑の革命”=農業の機械化と近代化」を持ち込んで、根底的で根本的な飢えをインドシナ半島から駆逐することが、当面の目標になりそうです。
地下資源開発や工業の近代化はその後かな?
近衛首相:「まあ、国民が食えなきゃ何も始まらんしな」
真理だけど……そういうとこやぞ?
結局、近衛も皇国もクルスと大差ない
流石は元母国とその首相ってとこかな。
ご感想、高評価、お気に入り登録してくださると大変嬉しいです。
次回もどうかよろしくお願いいたします。
追伸
唐突ですが、キリが良いので次話から次章に入ります。
楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。
次章もどうかよろしくお願いいたします。