転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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今回はサブタイ通りグデーリアンの”頭痛の種”のエピソードです。
まあ、万事が万事うまくゆくことなんて早々ある訳ないのは、どこの世界でも一緒のようですよ?





第436話 ”虎のアキレス腱” ~あるいはグデーリアンの憂鬱。例え”世界線”が異なっていても、その脆弱性は頭痛の種だった~

 

 

 

 Ft356”ツェントール”とRe525”シェッツァ”の時と同じく、”KSP-44/44”の完成記念パーティーが”冬宮殿”にて催された。

 これは、その閉会後の出来事……

 

 

 

 

【挿絵表示】

「なにっ? VI号戦車(ティーガー)操向装置・変速機(トランスミッション)が不調?」

 

 ドイツ戦車、つかティーガーは何処の世界でもトランスミッションがアキレス腱になる呪いでもかかってるのか?

 いや、理由は分かるんだ。

 

(重量と馬力をメリットブラウン式のアレじゃ支えきれなかったんだろうな)

 

 ああクルスだ。

 今、”冬宮殿”の応接室でドイツ陸軍の機甲総監、”ハーラルト・グデーリアン”元帥から割と深刻なVI号戦車の相談を受けていた。

 

 あー、まず簡単に状況説明な?

 VI号戦車”ティーガー”のエンジンは、かつてユンカース社がJu86用などに開発したJumo205/207”2ストローク航空機用ディーゼルエンジン”をベースに開発が進められた。

 

 俺が覚えている限り前世のティーガーⅡのガソリンエンジンのスペックを書いておくな。

 マイバッハHL230P30:全長1310㎜ 全幅1000㎜ 全高1190㎜、重量1200kg、排気量23.1l、出力700馬力

 

 対してJumo207Aのスペックは、

 全長2184㎜ 全幅600㎜ 全高1326㎜、重量805kg、排気量16.62l、出力880馬力

 

 サイズはJumo207Aの方がやや大きいが、重量は400kgほども軽く、排気量が6.5lほど少ないのに馬力は180馬力も高い。

 ただ、航空機用エンジンをそのまま車両に搭載するわけにもいかないので、地上での使用を考えてより大量のラジエターや防塵エアフィルターが必要となり、他に車両用に色々手直しした結果、液冷対向ピストン型6気筒2ストロークディーゼルエンジンという基本構成は同じだが、エンジン単体重量で900kg、安全性と信頼性確保のためにあえてデチューンし出力830馬力という形に落ち着いたらしい。

 

 だが、肝心のトランスミッションがV号戦車パンターのヘンシェルL600C/”OLVAR”OG40-12-16の発展型”EG40-12-16B”だった。

 しかしこのミッション、ティーガー自体が史実のティーガーⅡよりティーガーIよりな重量だったために750馬力程度までなら何とか持ったが、それ以上の入力については繊細な機構ゆえに構造脆弱性が露呈してしまったのだ。

 加えて、ドイツ人らしからぬミスなのだが……そもそもこのトランスミッション、原型からして「大馬力ガソリンエンジン用のトランスミッション」であり、ディーゼルエンジン特有の低回転からの太いトルク特性や振動に対して最適化されているとは言えなかった。

 

(つまり、大馬力ディーゼルに対応できるトランスミッションを作ってるのはサンクトペテルブルグだけって事か……)

 

「あい分かった。グデーリアン閣下、大至急、サンクトペテルブルグに試作VI号戦車の車体を送ってくれ。今更設計変更は難しいだろうから、中身は”KSP-44/44”のミッションの中身を使って、先ずはガワをVI号のミッションケースに合わせた物を作成してみる。エンジン軸の入力部分と駆動転輪への出力部分もこっちで試作してみよう」

 

「できるのかっ!?」

 

 知ってる限り、VI号のミッションケース自体はデカいからかなり容量に余裕がある。

 理論上は”KSP-44/44”のオートマの中身を移植しても問題ないだろう。それに構造自体は史実のCD-850オートマチックトランスミッションの完コピ、実際に実測850馬力での安定正常動作を確認している。

 

(それに元々、トランスミッションは消耗品。生産能力は多めにとっている……)

 

 だから、増産は不可能じゃない。

 

「できると言えば、できる。だが、実際に作ってみないと上手く動作するか分からん」

 

 正直、マッチング問題ってのは電子機器だけでなくどんな機械の組み合わせでも発生する。

 

(それにティーガーは馬力はKSP-44/44と大差ないが、重量は15t重い……ギア比の変更は必須だろう)

 

「ダンケ。フォン・クルス大公、恩に着る」

 

「礼は実際に”まともに動作するトランスミッション”が完成してからでいい。とにかく、やれるだけやってみよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*******************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

「割と洒落にならんな……」

 

 

【挿絵表示】

「あれ? 大公様、もしかして割と深刻な問題発生?」

 

 そう聞いてきたのはパーティーも終わってちょっとセレブっぽい部屋着に着替え、おくつろぎモードでいたクリスティアーナだ。

 ちなみに正式に”サンクトペテルブルグ大公ニンゼブラウ・フォン・クルスの婚約者”という社会的地位になってから、表向きは権威、しかし本当はセキュリティの問題からクリスティアーナは、サンクトペテルブルグ市民軍(ミリシャ)航空隊の基地内にあるパイロット兵舎から、”冬宮殿”に居を移していた。

 ちなみにクルスの婚約者となっても別にパイロットを廃業した訳ではない。

 むしろ、”冬宮殿”から護衛付きのリムジンに乗って航空隊基地に通勤している。

 まさに”アホの娘”の面目躍如だ。

 

 それはともかく……そりゃあ特に”NSR(国家保安情報部)”とかからにしてみれば当然の配慮だろう。

 実際、”冬宮殿”の中は”ヴァルタザール・シェレンベルク”少将(実は特務少将で実質的にNSRのNo2)を筆頭に、最近は”やけにおとなしい”印象がある『クルスのお稚児さん』だの『側小姓』だのという認識されているアインザッツ、ツヴェルク、ドラッヘンのショタトリオも書類上は”ヒトラーユーゲント”に所属している事になっているが、実際の所属はNSRだ。

 他にも多くのNSR職員が”本当の身分”を隠して様々な仕事に就いているが、彼ら・彼女らにはある共通項がある。

 それは、”濡れ仕事”の技量が一定以上の者が集められているということだ。

 

 名前が出たついでに言うと、最近ショタトリオがこういう場面に中々出てこないのは、”決戦”が近いせいか裏も表も多忙になったというのもあるが、何気に『クリスティアーナが苦手』というのもそこはかとなくありそうだ。

 いや、同性愛や少年愛やらで(出自の関係で内心は毛嫌いしている女という生き物に)拒絶されるのならともかく、

 

 

【挿絵表示】

『ねえねぇっ! キミたちが大公様の愛人トリオなんでしょ!? リアル美形のオジサマと飼われる美ショタの絡みって、とっても目の保養というか……私的にご褒美だと思うの♡』

 

 と悪意の欠片もない、むしろ全肯定過ぎる満面の笑みでグイグイ来られたら対処とリアクションに困るというものだ。

 まさか、主人の婚約者を張り倒す訳にもいかないし。

 なので現在は対応と方向性が定まるまで、とりあえずクリスティアーナとは距離を置く方針のようだ。

 野良猫かなんかかな?

 

 まあ、これどれもそれもあれも、クリスティアーナが”転生者(サクセサー)で、尚且つ高確率で前世がBL、GLどんとこいの腐女子だった(腐っていた)のが悪い。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「まあな。ティーガー、ドイツの新戦車な? それのトランスミッションに問題発生ってこった。それをサンクトペテルブルグで製造することになったんだが……」

 

「あっ、聞いたことあるかも……”黒森峰”だっけ? GuPの」

 

「まあ、大体正解だ。形は決勝で副隊長が乘ってたやつだけど、重量はどっちかというと隊長のIの方にに近い。どっちにしろ重戦車だが」

 

 どうやら”この世界線”のドイツは、史実よりも「戦車を軽く作る」事に長けているらしい。

 要するに”不必要な部分の装甲を薄くする”などの設計努力だ。

 他にも国家が健全な状態で保たれている、ロジスティクスも工業基盤も死に体ではないので史実と比べ物にならないほど潤沢に高品質な装甲材(軽量均質圧延鋼装甲板)を使えるとか、地味に自機吸着地雷を米ソが使ってないことを理由にツインメリット・コーティングを使ってないことも大きいかもしれない(史実でツインメリット・コーティングが廃止されたのは1944年8月〜9月頃。VI号b型で塗布重量が200kgほどに達したという説がある)。

 

 

【挿絵表示】

「もしかして、作るのが難しいとか?」

 

 しかし、クルスは首を横に振り、

 

「いや、理論上は難しくはないんだ。”KSP-44/44”のトランスミッションは、前世の”CD-850”ってシリーズのほぼ丸コピなんだが、変速段数が少ない代わりに設計の自由度が高くてな。無理に変速段数増やしたり、技術的に背伸びして変な機能を追加したりしない限り、適応力が高いんだ。M48~60までの戦車の他にも水陸両用車や60t超えの重戦車にも採用されている」

 

 厳密に言えば、クルスがコピーしたのはシリーズの中でも”CD-850-6A”というモデルで、M60、M60A1、M60A2、M60A3、M48A3、M48A5の各戦車に採用された、M60戦車のターボディーゼルにも対応できる耐久性向上型だ。

 

「オートマチックトランスミッションの中身はいじらず、VI号に合わせたミッションケースに合わせたガワ作って、入力軸と出力をユンカース社のターボディーゼルに合わせる……作ること自体は可能だが、まず組み込んで”まともに動くか?”だな。そして、動いたとしても意味のある時間にどれだけ量産できるか……そこが問題だ」

 

 

【挿絵表示】

「時間との闘いってこと?」

 

 クルスは頷き、

 

「ああ。”まともに動くトランスミッション”を作るまでに時間がかかれば、それだけ生産に振り分ける時間が減る。元々、俺は戦車のエンジンやトランスミッションは消耗品だって考えている。パワーパック化して壊れたらユニットごとガパっと交換できるようにしたのは、その為なんだが……消耗品だって分かってるからこそ、製造能力には余裕、いや重点的に余剰分を入れて生産計画を立てていた。だから、設計さえ完成しちまえば中身が一緒である以上、製造を割り込ませること自体はできるはずだ」

 

 

【挿絵表示】

「戦車には詳しくはないけど……何だか大変そうってのは伝わった」

 

 しかしクルスは苦笑すると、

 

 

【挿絵表示】

「大変なのは、俺じゃなくて実際に使う兵士の方さ。ミッション壊れて戦車が立ち往生……それで死ぬのは彼らだ。そんな状況、許せるわけないだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




困った時の来栖大明神!(挨拶

という訳で、ティーガー登場前にいつかはやりたかった”虎のアキレス腱”ネタでしたw
いや、敵に破壊されるよりも、自重でミッションが自壊して立ち往生の方が遥かに多い印象の史実ティーガーⅡですしw

今だから書ける楽屋オチ(ネタバレ)ですが、実はKSP-44/44には他にもいくつかトランスミッションの候補はあったんですが……

「この時代に辛うじて作れそうで、ティーガー動かせそうなのってCD-850ぐらいじゃね?」

という感じで、実は「今回のティーガーネタが先にあって、KSP-44/44のミッションが決まった」というのが真相ですw
また、KSP-44/44がCD-850(前進2速/後進1速のオートマ)になった事で、やがて登場する”四式戦車”はまた別のトランスミッションが採用される事が決定です。
実はKSP-44/44と四式は、同じような車格と重量でありながら、設計思想の異なる「似て非なる存在」だったりしますので。

とりあえず、クルスとクリスは相性は良いみたいですよ?

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