転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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今回は、ちょっと幕間的な話。
メインはタラントに至るまでの前日譚。
ただし……色気は皆無ですw








第8話 マッチング(ただしオッサン同士である)

 

 

 

 第一次世界大戦に参戦した日本皇国軍の評価は総じて、

 

 ・陸上では、攻めに見るべき部分はさほどあるわけではないが守りを得手としており、士気は高くなりにくいが反面下がりにくい。また、粘り強く戦い、崩しにくく崩れにくい。

 

 ・海上では、アドミラル・トーゴ―の神通力は、その弟子たちには受け継がれてはいない。投入した主力艦(戦艦)4隻のうち半分を、ジェトランド沖海戦で事実上失っている。弱くは無いが強いとも言えない。

 

 ・空中に関しては、一部のエースが目立ったが組織として航空機の運用に長けているとは言えない。また国産機の開発に出遅れており、未熟と言ってよい。

 

 とこんなところだろう。

 基本的に、攻勢より守勢寄りの軍隊……同盟国である英国でさえそう評していた。

 だからこそ、英国は断られるのを覚悟でタラント空襲、”ジャッジメント作戦”への協力を日本側に要請したとき、そのあまりにも”攻撃的な返答(・・・・・・)”に酷く驚いたという。

 

 

 

 史実通りに1940年11月11日から12日に行われた英国機動部隊による夜間空襲が敢行された。

 ここまでは良い。

 マルタ島を飛び立った日本皇国空軍の陸攻・重爆隊が主に英国雷撃機(ソードフィッシュ)が討ち漏らした無傷の敵艦を痛めつけたことも既に書いた。

 だが、ここで終わりなわけじゃない。

 ここで終わるわけはない。

 

「神様……」

 

 港の一角に据え付けられたブレダM35/20mm対空機関砲の装填手を任されていた若いイタリア人兵士、マルコ・ボカッティ一等兵は天を仰いだままそうもらしてしまった。

 確かに自分は日曜のたびに教会に通うような信心深さはないけど、ここまでの目に合うほど悪いことはしてないはずだと。

 

(二度も空襲したんだぞ!? もう十分だろっ!?)

 

 そう、彼の視線の先には、空冷エンジンの音を囂々と響かせながら爆弾を抱えて飛ぶ、数十にも及ぶ飛行機の姿があったのだから……

 そして、その翼には残らず”日の丸”が描かれていた。

 

「日本人は守りしかできないんじゃなかったのかよっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話は、数か月前……まだ英国首相がネビュラ・チェンバレンだった頃に遡る。

 

 フランスがドイツ人に屈服してほどないその日、英国地中海艦隊作戦部長バートランド・ラムゼー中将はジブラルタル基地からマルタ島を経由してエジプトの港湾都市”アレキサンドリア”へと赴いていた。

 それを出迎えたのは、現在、アレクサンドリアを母港とする地中海艦隊水上打撃部隊”H部隊”の司令官ジャック・サマーヴィル中将だ。

 

 軍港、あるいは要塞と称してよいその街の郊外には、広大な敷地の中に近代的だが厳めしい施設があった。

 

「”日本皇国統合遣中東軍司令本部”か……」

 

 軍の公用車として納品されたモーリステン・シリーズMのドアを開けつつ身分証を衛兵に見せ、二人は施設へと入っていった。

 

 

 

***

 

 

 

 日本皇国統合遣中東軍司令本部は、ドイツが再軍備を宣言した1935年より建設が始まり、1936年の終わりには初期機能を獲得している。

 その目的は、言葉の通り「日本皇国から地中海を含む(・・・・・・)中東へ派兵された陸海空軍全てを統括する司令部」であり、現状でも総兵力20万を超える中東・地中海方面に展開する皇国軍の中枢であり頭脳だった。

 それに相応しいだけの人員や各種設備が必要であり、そうであるがために巨大な施設と見合った敷地が必要とされた。ついでに言えば、本国からの段階的増援予定が組まれてる昨今、更なる機能拡張工事が続いていた。

 組織的には、この司令部の下に各地に設置されている海軍の艦隊司令部や陸軍の師団司令部や空軍基地司令部があるのだ。

 

 そして、日に日に悪くなる戦況で予想はしていたが……フランスが予想よりも早期に陥落。

 そのあおりを食らって日英問わず軍人たちに暇などないこの時期に、ご機嫌伺いや見学目的でわざわざ英国軍全体でも上位に位置する2人が、こんなところに来るはずはない。

 

「メルセルケビールに停泊するヴィシーフランス艦隊を監視だけに留めるのは大いに賛成ですな。味方は信頼関係を築けるのであれば、事あるごとに増やすべきですが、敵は可能な限り増やすべきじゃない。ましてや、」

 

 その福福しいと呼びたくなる柔和な風貌の男はティーカップをおいて、

 

「ましてや、中立を宣言した相手に殴りかかるなど英国紳士にあるまじき行為と言えるでしょうな。そうは思わないかね? ”小沢”君」

 

 すると隣に座っていた対照的に細身でいかにも切れ者という感じの男は頷きながら、

 

「司令の言う通りですな。英国紳士たる者、相手に先に手を出させつつ、優雅に捌いて強烈なカウンターを叩き込む気概が欲しいですな」

 

 司令官執務室の応接セットでラムゼーとサマーヴィルを応対する二人の日本皇国軍人……

 陸軍大将の階級章を付けた福福しい男の名は、”今村 仁(いまむら・ひとし)”。皇国中東陸海空三軍のトップである。

 そしてもう一人、海軍中将の階級章をつけるのは”小沢 又三郎(おざわ またさぶろう)”。中東・地中海方面に配属された皇国艦隊の司令官であった。

 

「ジェネラル・イマムラの耳は相変わらず早いようで何よりですな」

 

 とラムゼーが返せば、

 

「生憎と耄碌してる暇がない物でね。それは君たちとて同じだろう?」

 

「まあ、否定はできませんな」

 

 そうサマーヴィルが苦笑する。

 一通り諧謔を楽しんだところで、今村はこう切り出す。

 

「ところでラムゼー中将、サマーヴィル中将、ジブラルタルで激務に勤しんでいるはずの君たちが、いったい何用でアレキサンドリアまで出向いたのかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、日英の曲者が揃ってしまいましたw
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