転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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今回は久しぶりに鉄砲(うぽって)にスポットライトが当たる話です。

FNC(ふんこ)”とか懐かしいなぁ~。





第89話 実用化された軍用銃としては世界初の構造を持つ”うぽって”とその製造元である勝ち組の”元”国家

 

 

 

 史実のレニングラード包囲戦では、いくつもの”伝説”と呼ばれる戦いがあった。

 もっとも、900日もの包囲戦を耐え忍んだこと自体が既に伝説的(ついでに人肉喰らいが横行した包囲中の市内はダークファンタジー)だが、それはさておき……その中の一つに、

 

 ”クラスノエ・セロの戦い”

 

 というものがある。

 セロはロシア語で”行政区”を意味し、基本的に小さな集落に付けられる。

 レニングラードから南西へ僅かな距離にあるこの小さな集落が伝説の戦いの舞台となった。

 

 レニングラード防衛最高責任者はヴォロシーロフ元帥は、自ら赤軍海軍歩兵を率いて先頭に立ち突撃を敢行し勝利をもぎ取ったという。

 その勇猛果敢の戦いっぷり(海軍歩兵は当時のレニングラードに配備されていた中でも最精鋭の歩兵部隊だった)と、その黒い制服からドイツ軍は欧州で猛威を振るったペストになぞらえて”黒死部隊”と恐れたという。

 

 

 

 しかし、ここは異世界だ。

 確かにこの世界線でもペストは猛威を振るったが、生憎と”彼ら”がそう呼ばれることは無いだろう。

 なぜならば……

 

「「「元帥閣下ぁぁぁっ!!?」」」

 

 1941年のとある夏の日……ロシア人にとり宝石のようなと評される恵みの季節に、史実では88歳まで生きたヴォロシーロフは胴体に3発のタングステン弾芯(コア)の特製弾頭を持つ”7.92㎜×94(・・)パトローネ弾”の直撃を受けた。

 その弾丸は彼らの警戒網の外側、700(・・・)mの彼方から前触れなく飛来したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 史実のドイツには、通称”パンツァービュクセ”と呼ばれる対戦車(対装甲)ライフルがあった。

 使用弾は、7.92㎜×94Patr.318(パトローネ)弾。口径こそ小さいが極端なボトルネックの大型金属薬莢により、音速の4倍近い速さで7.92㎜弾を発射できる代物だ。

 だが残念ながら、名前の通り対戦車ライフルとしては使い物にならなかった。

 貫通力も威力も低すぎたのだ。

 

 しかし、わざわざそのような兵器をこの世界線のドイツは作るだろうか?

 初期型のPzB38や発展型のPzB39をだ。

 

 答えから言うならNein(ノー)だ。

 ドイツは「自国の戦車の側面装甲すら貫通できない」武器を前線の対戦車戦闘で投入するつもりはなかった。

 そこで対戦車兵器は、クレタ島でも試作型ないし先行量産型が実戦投入された対戦車ロケットの”パンツァー・シュレーク”や、成形炸薬弾頭型擲弾である”パンツァー・ファウスト”を歩兵用対戦車兵器として採用したのだ。

 

 だが、ドイツ軍の中でこの極端な強装弾に別の使い道を見出した者達がいた。

 ドイツ特殊作戦任務群”ブランデンブルグ”の面々だ。

 不可能を可能とする作戦に従事する彼らは、このパトローネ弾に新たな活路を見出した。

 特製の10倍ロングレンジスコープを銃に装着して行う、相手の警戒範囲の外側から標的を射貫く”超長距離狙撃”にだ。

 

 後年、米軍のマクラミン社謹製の50口径ライフルの登場で有名になった分野だが、これを先取りした形になる。

 しかもブランデンブルグだけでなく、非対称戦や非正規戦を生業とする特殊作戦任務群を抱えるハイドリヒ率いるNSR(国家保安情報部)までも話を聞きつけ計画に乗ってきた。

 彼らもまた超遠距離から標的をしとめる長間合いの狙撃銃を欲していたのだ。

 

 そして、この両者が互いに仕様をすり合わせて開発を発注したのが、旧チェコにあるブルーノ造兵廠(アーモリー)だった。

 

 蛇足ではあるが……史実と違い、現ズデーデンの住人にとってドイツはお得意様、金払いの良い”時の氏神”だった。

 

 なんせバルバロッサ作戦直前にドイツは同じブルーノアーモリーから”MG27/30”の名目で現行型のZB27や輸出仕様のZB30の在庫一掃するほどの大量買い付けがあり、追加発注まで受けたのだ。

 幸い、ブルーノZB26系列の軽機関銃はドイツの標準小銃弾7.92㎜×57をオフィシャルな使用弾としており、弾薬面の補充も問題なかった。

 ちなみにこの決定は、北アフリカ戦線で遭遇した日本皇国軍との戦闘が非常に大きく影響していた。

 彼らは分隊支援火器として大体10人に1丁配備されていたチ式系列の機関銃にそりゃあひどい目に合わされた。

 特に日本皇国陸軍は標準小銃がZH29の発展型である半自動銃なので、これや擲弾筒との組み合わせは凶悪過ぎた。

 そして鹵獲した兵器を改めて検証するまでもなく、元々は自国に保護領として組み込んだチェコ産の銃器ではないか。

 という訳で、早速発注となったわけだ。

 ついでに在庫分のZH29半自動小銃も”Gew29”として残らず買い取ったらしい。

 

 ここで重要なのは史実のMG26(t)やMG146(j)ような「鹵獲した兵器を投入」したのではなく、正規の手続き/適正価格できちんと「購入」していることだ。

 この意味をご理解いただけるだろうか?

 チェコは保護領化された後も、ドイツに大量の武器弾薬のみならず民生品までも安定供給できる優秀な大工業地帯として存在していたのだ。

 無論、輸出なども普通に行なわれ、旧チェコの企業は事実上民営化したブルーノだけでなく他の企業もチェコ時代の物も含めて海外からのライセンス料が滞りなく入るように格別な配慮が行なわれていた。

 また例えばシュコダ社もソ連に技術が流されることもなく、また彼らの製造する自動車”タトラ”シリーズが飛ぶように売れていた。

 ちなみにタトラ愛好家(フリーク)の第一人者、このTシリーズをベンツ同様にこよなく愛していたのが、実はヒトラーであった。

 史実と異なりより廉価な国民車”ビートル”の大量生産が始まっているのに、これは凄いことだ。

 何とも皮肉だが、旧チェコは全土がドイツの保護領になることにより、民族問題は(多少力技であっても)解決され、工業国としては新たなマーケット(それも欧州全域)を手に入れ、ヒトラーがスラブ人を見下さない政策、つまりは近代的なドイツの法と秩序と税制下におかれたことにより、それが浸透するうちに返って工業国として息を吹き返し……むしろ戦争特需の波に乗り工業力を活性化し、チェコスロバキア時代より大きく住民の生活水準や地域内総生産を向上させていた。

 

 史実と異なり、ユダヤ人の(表向きの)扱いはともかく、旧チェコの住民のほとんど(・・・・)は以前より充実した公共サービスやトート機関などによる大規模公共工事やインフラ整備の恩恵を受け、今は「仕事が遅く決断力に欠けた頼りにならない旧チェコ政府よりずっとマシ」な状況を生きていた。

 自分達が作った武器で、ロシア人の血が何トン流れようが知ったことではなかった。

 明日の飯を心配しないで済む生活を守る方が、よっぽど重要だった。

 

 まあ、ヒトラーが心底望んだのは、「労働者も含めた旧チェコの良好な工業力」なのだから、これは当然と言えば当然の結果だった。

 労働モチベーションの重要性は、今生のヒトラーは十分に認識していたのだ。

 

 ”だが、共産主義者。テメーらは駄目だ”

 

 ドイツにおいて(ドイツに限った話ではないが)共産主義活動は違法、完全なご法度。

 赤色勢力に組する者は、処刑か国籍剝奪の上の国外追放(受け皿は開戦前のソ連。NKVDの紳士諸君がお出迎え、労働キャンプが待ってるゾ♪)の選択がとられた。

 

 

 

***

 

 

 

 そんな中で舞い込んだ”新型長距離狙撃銃”の開発にブルーノは新たなビジネスチャンスと意気込み、併合前から研究していた対戦車ライフルをベースにした弾倉と引き金の位置が通常とは前後逆の、全長の割に銃身を長く持てる”世界最初のブルパップ(・・・・・)式軍用銃”を完成させたのだ。

 

 その名を”PzB/B.NSR.41”。

 史実の”PzB M.SS.41(対戦車銃41年式:親衛隊向け)”のそっくりさんだが、コンセプトが全く異なる。

 まず対戦車ライフルを示すPzBがつけられたのは、そのコンセプトを悟られぬ為の欺瞞工作だろう。

 もっともオリジナルと異なるのは、先に述べた倍率10倍の特注ロングレンジ・スコープを標準搭載とし、命中精度を最優先として念入りに設計/製造されていることだ。また、そのコンセプトから10連発弾倉ではなく、伏せ撃ちしやすい短い5連発弾倉が標準となり、バイポットもそれに合わせて短く頑丈な物が装着された。

 対戦車ライフルは普通、威力や貫通力が優先で撃つ相手が人間よりずっと大きい戦車の為、命中精度はそこまで求められてはいない。

 ある意味、真逆のコンセプトだった。

 PzB/B.NSR.41は、射程に関係するため威力はあるに越したことはないが、「相手の警戒網外から人間を仕留める為」に作られた銃だ。

 ちなみにBはブランデンブルグ、NSRは無論、国家保安情報部の事だ。

 ただし、資料にはその用途を隠す為に”PzB41(対戦車小銃41年式)”と書かれている事が多い。

 

 そして、生まれた世界初のブルパップ式軍用銃にして、同時に世界初の超遠距離狙撃を目的とした小銃は初の実戦投入で、ブランデンブルグの過酷な訓練で選ばれた狙撃手4名+観測手2名の二つの狙撃チームにより運用され、最高のデモンストレーションを行うことができたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実は圧倒的じゃなくてもこの先もかなりの勝ち組の予感がする旧チェコw
軍門に下った国は、割とちゃんと面倒見るドイツです。

つまり、シュコダ社とかブルーノ・アーモリーとかは現在、工場の位置とか変わらないのに”ドイツ製”として輸出できるんですね~。

戦後は「ドイツ製=高品質、高性能、その分高価格」が世界的に定着するので、笑いが止まらないだろうな~とw

ご感想などお待ちしております。



***



ありえるかも知れない未来(あくまで可能性の一つ)
195X年、ドイツ連合(仮称)の一ヵ国スロバキアは、旧チェコに

「またチェコスロバキアとしてコンビ組まない?」

と呼びかけた。
盟主ドイツは、

「まあ、旧チェコ領域の人がそうしたいって言うなら、特別に(分離独立&コンビ再結成)許してもええよ?」

と答える。
しかし……

「なんで今更貧乏国家(スロバキア)と組まなあかんのですたい! うちの国の特産品は高級ブランド”ドイツ製”で売っとりますさかい、一昨日来やがれですわ」

と92%の地域住民が反対して否決されたという。
その後、ドイツはスロバキアをなだめるのが大変だったという。
盟主の苦労は、平時にこそ味わう物だったりする。
身内の利害調整に苦労が絶えない日々が続くドイツであったw

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