天体制圧用最終彼女   作:にわとり肉

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 前話の最後を少し書き換えてます。確認してくだちい


第十三話 兵器(ヒト)

 丁度曲がり角のようになっていた、隊室の扉が並んでいる通路にて、瀬戸が遭遇したのは、学ラン姿で赤いマフラーを巻いた、怨みのこもった瞳を輝かせる男。

 

 「……ここで何をしている」

 

 地鳴りのような低い声で言った男――三輪は、荒っぽい歩調で瀬戸(ゼットン)へ詰め寄り、傲岸に見下ろす。

 

 「大人しく研究室でモルモットをやってろ」

 「本部内では行動の自由が認められています。また、私はモルモットではありません」

 

 三輪の左下瞼が、ピクリと反応した。

 しかし、瀬戸はむしろ、その透き通る瞳で焦茶色の瞳を見つめ返し、

 

 「あなたは、肉親を近界民(ネイバー)によって奪われたと聞いています」

 「……ぎっ!」

 

 その瞬間、鬼の形相となった三輪の手がゼットンの襟を掴み、引き揚げた。

 しかし、彼を見つめる変わらない瞳が、乱れた息遣いをさらに乱す。

 彼は叫ぶ。

 

 「そうだ……!だからこそ、貴様がのうのうとのさばっているのを見ると気分が悪くてしようがない!!大勢の人間だって、お前が近界民(ネイバー)と知ればそうなる!!トリオン兵から人を守ったらしいが、そんなことで、お前に対するボーダーの態度は変わらないのだからな……!!」

 「別に、どうでもいいです」

 

 三輪に対しての瀬戸の態度は、一貫して冷え切っていた。

 

 「助けたいから助けただけです。他意はありません」

 

 瀬戸の細い手が、襟を握りしめる三輪の手首に伸び、静かに包み込む。

 

 「この間にも言いましたが、私はあなたの肉親を殺害したという近界民(ネイバー)ではありません」

 「……!」

 

 しかし、そこには不気味なほどに力が込められてなく、ただ、彼の皮膚に柔らかな感覚を与えているだけ。

 

 「私に対して殺意を向けるのは、お門違い、というものではないのですか。何故そのようなことをするのでしょうか。あなたが仮に私を殺したとして、何も変わらないと思うのですが」

 

 三輪は、穏やかな鼻息が当たっている程に、金色の瞳が近づいていることにようやく気がついた。

 

 「何故なのですか?」

 

 その時、

 

 「人は、あなたほど強くないのよ」

 

 色気のある女の声であった。

 

 「っ!!」

 「うわっ」

 

 何を思ったのか、三輪は急に血相を変え、鼻と鼻が擦れ合いそうになっていた瀬戸を突き飛ばすのだった。

 よろよろと千鳥足のように後退し、ようやく止まった彼女は、後ろに気配を感じた。

 

 「……加古、か」

 

 振り向いた先に居たのは、紫色の上着を羽織った、金髪を豊かに伸ばした艶かしい美人にして、

 A級隊員である上に、女性射手(シューター)の中ではボーダー最強を誇る女傑――加古望(かこ のぞみ)

 小さなほくろがチャームポイントの口には、絶えず笑みが湛えられていた。

 

 「あらあら、てっきり近界民(ネイバー)ちゃんを口説いてたのかと」

 「ふざけたことをいうなッ!!!……チィ」

 

 と、瀬戸に向けるものとは違う不快感を全開にして舌打ちした彼に、サイドの髪を片手でかき上げた加古は、うふふ、と声を漏らし、

 

 「じゃ、この子借りてくけど良い?」

 「……ん」

 

 いつのまに、瀬戸の両肩には、加古の滑らかな指がつたっていた。

 

 「……」

 

 加古の余裕に満ちた瞳と、ヘドロのようにへばりついた感情に溺れる瞳が交差する。

 

 「……はぁ」

 

 短い嘆息が、三輪の口から漏れ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あなたもA級隊員なのですね」

 「えぇ、これでも隊を率いている身なのよ?近界民(ネイバー)ちゃん」

 「瀬戸、もしくはゼットンです」

 

 二人分の足音が、誰もいない静かな通路に満ちていく。

 ふと、瀬戸は通路の先にあるものに感づいた。

 

 「ここ、研究室に続く道ですね。そこに私を連れて行って、どうするのですか」

 

 加古は、決して瀬戸の方を振り向かずに、

 

 「防衛任務、手伝ってもらおうかなって」

 

 再び、足音だけの静寂が戻った。

 数歩進んで、その薄氷のような均衡を打ち破ったのは、瀬戸の方である。

 

 「城戸や鬼怒田は反対しそうなものですが」

 「上はあなたを常用の兵器として扱うことに決めたらしいわ。なら問題ないでしょう?それに、警戒区域の中だけよ」

 

 そう言った加古の口角が、さらに高くなる。

 

 「私、あなたのこともっと知りたいのよね」

 

 瀬戸は、返事を返さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究室の一角。

 じゅるる〜と汚らしい音を鳴らす寺島の眼前の机に、一本のトリガーが置かれる。

 

 「防衛任務に協力……またとんでもないことをしようとするね」

 「だって……楽できそうだしぃ」

 

 小声で正気を疑うようなことを呟いた加古を横目に、その隣に突っ立っている瀬戸の方をみた寺島は、しばらくその無表情を見つめ、もう一度トリガーの方に目を戻した。

 加古の要望は、瀬戸のトリガーの不可逆性を排除しろ、とのことなのである。

 

 「まぁ、やっても良いけどさ」

 

 気だるそうに重たい身体を立ち上げた彼は、後方のデスクの方へトリガーを持っていき、引き出しから工具を取り出し、流れるような手つきでカバーを外した。

 

 「瀬戸、一つ聞きたいことがある」

 「……?」

 

 露出したトリガーの基盤に対して手捌きを止めることなく、まるで世間話かのように、寺島は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「星を滅ぼした時、どう思った?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瀬戸もまた、何もかも変化なく、

 

 「命令を行使しただけのため、何の感慨も抱きませんでしたが」

 

 と、平坦な声色で返した。

 ただ、加古の口元は真一文字を描いていたのである。

 1分もしない内に、瀬戸のトリガーに施された“リミッター”は外され、元通りにカバーが戻される。

 

 「はい」

 「ありがとう、寺島」

 

 差し出された、一見何の変哲もないトリガーを手に取った瀬戸は、無造作にジーンズのポケットに入れた。

 

 「……それを知って、どう思ったのですか」

 

 こぼれ落ちるように、瀬戸の口から言い放たれた質問に、

 

 「やっぱ俺たちとは違うものがあるんだな、とは思った」

 

 寺島は、あいも変わらずやる気のなさそうな表情であった。

 

 「ただ、俺にとってお前は、ただのゲーム壊すクソガキだ。それ以上でも以下でもない」




 ファントムばばあの口調が迷子
 寺島の口調も迷子

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