天体制圧用最終彼女   作:にわとり肉

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 進ミ遅シ!作者反省ノ色見セズ


第十七話 邂逅

 瀬戸は、迅悠一という男を、無駄なことはしない男だと認識していた。何故ならば、彼が度々本部に訪れては、上層部の面々と会話しているのを見ていたり、寺島から彼のSE(サイドエフェクト)について聞き入れているからである。

 つまり、今回自身を外へ連れ出したのも、相応の理由ありきなのだろう。そう確信していた。

 「何か欲しいものはないか」とのことで、三門市郊外のショッピングモールにて、服屋や小物屋を回り、結局何も買わずに終わったのも、何か裏があるのだろうと思っていた。

 「ゲーセンに行こう」とのことで、共にショッピングモールのゲームセンターを小一時間ほどで制覇したのも、何か裏があるのだろうと思っていた。

 「お腹が空いた」とのことで、フードコートでジャンキーなファストフードを食べたのは、本当にお腹が空いているんだろうと思った。

 「腹ごなしに歩こう!」とのことで、彼女がたまに子供たちと訪れているおかげか、最近人の巡りが良い商店街、落ち着いた雰囲気のある住宅街と回って行ったのも、何か裏があるのだろうと思っていた。

 そして、時刻は午後2時を過ぎた。

 

 「……そろそろ、何か目的があるのなら話してくれませんか?」

 「え?いや別に……何もないけど」

 

 彼ら以外に誰もいない公園に、北風に煽られたブランコのチェーンが軋む音が響いた。

 ちょこんと隣に腰掛ける瀬戸の視線にたじろいだ迅は、慌てて、

 

 「嘘!それが来るまで時間空いてたから暇潰したの!楽しかったでしょ!」

 「楽しかったです」

 

 瀬戸の素直すぎる回答に胸を撫で下ろした迅は、膝の上に片足を乗りかけさせ、風雨でボロボロのベンチの背もたれに寄りかかる。

 

 「一人、近界(ネイバーフッド)からの来訪者がきてる。ソイツと君が会ってる未来が見えたんだ」

 「その方と私の遭逢が、良い未来に繋がるということですか」

 

 死んだように禿げた街路樹のさざめきが、迅の肯定を代理で請け負う。

 そして、風の止んだ公園に、一瞬の静けさが訪れた。

 

 (人と人との関わりが、未来を動かす上で重要なんだ)

 

 迅は当てもない雲の流れを見上げ、瀬戸から表情を隠す。

 

 (そう。だから、可能な限り人と関わりやすい環境に仕向けた。君は沢山の人を知った筈だ)

 

 その青い瞳は、雲の移ろいを映しているようで、何も映り込んではなかったのである。

 

 (だというのに、君は何故、壊れた街に立ち尽くして(・・・・・・・・・・・)いるんだ?)

 

 「迅、迅」

 「……あ、あぁ」

 

 夢現であった迅を、静かな声色が現実に立ち返らせる。

 そんな彼をしばらく見つめていた瀬戸は、寂しい風景に視線を戻し、

 

 「……やはり、私のことで、何か未来に起こることでもあるのですか?」

 「……!」

 

 瀬戸は、別に勘が鋭くないわけではなかったのである。

 迅の心中に、罪悪感の奔流が押し寄せた。

 そんな彼とは対照的に、彼女はどこまでも背筋が曲がらないでいた。

 

 「私がこの星に手を下すのであれば、それはあなた方が行動を起こした後です」

 

 しかし、と、瀬戸は自らの手を、起伏のある胸の上にそっと起く。

 

 「……」

 

 そして、口を開こうとするが、彼女の口はうまく動かず、真一文字となってしまった。

 それを見ていた迅は、思わず小さく吹き出し、

 

 「うん、ないない。そんなことには絶対させないよ」

 

 瀬戸も、そこで初めて、ベンチの背もたれによりかかって、安心したようにため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『(ゲート)発生、(ゲート)発生。誘導誤差7.66、市内の方々はご注意下さい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、けたたましいサイレンが静寂を打ち破り、緊迫感の波を波及させた。

 

 「おっ、これだな」

 

 ちらりと隣に目を向ければ、既に彼女は立ち上がっていた。

 

 「トリガー、解除(オフ)

 

 瞬間、プラズマが逆再生されていくかのように、瀬戸の頭部からつま先にかけて流れ、その姿は、二対の角を生やした黒い異形に変貌した。

 それが、今では心強く見えるのは気のせいではない。

 

 「厳密には違うが、近界民(ネイバー)仲間だ。仲良くね」

 

 あと、と迅は人差し指を立て、薄ら笑いで、

 

 「もう一人にもよろしく」

 

 前髪のオレンジ色の部分に光を迸らせたゼットン(瀬戸)は、頷いてサムズアップ。

 そして、一陣の風にかき消されるように、その姿を消した。

 

 「……」

 

 一人残された迅は、しばらくその残穢を眺め、再びベンチに寄りかかるのだった。

 

 (……後は、“鬼怒田さんとその仲間たち”の頑張り次第、かな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三雲修(みくも おさむ)は、三門市に住む男子中学生である。

 彼には裏の顔があった。

 それは、三門市、ひいては世界を守る組織、【界境防衛機関】通称【ボーダー】に、C級隊員ではあるが所属していることである。

 しかし、彼に戦闘の才は無く、一度は試験で落第するほどであった。

 それでも、彼がボーダーに所属したのは、“そうするべき”と確信したからなのである。

 そして今、彼は“そうするべき”と思って行動したことにより、命の危機に瀕していた。

 浮世離れした転入生が不良に絡まれているのを庇い、警戒区域内でリンチを受けていた時であった。

 

 『シャァアア!!!』

 

 突如として空間に空いた孔、(ゲート)よりいでし純白の巨体。近界民(ネイバー)の襲来に巻き込まれたのである。

 不良達は、警戒区域内に侵入した高いツケを払わされることとなったのである。

 ただ、この場には三雲修がいた。

 

 「僕はアイツを助ける……!!」

 

 そう言い放たれた転入生は言う。

 

 「アイツら自業自得じゃん、なんで助けに行くんだ?」

 

 その問いに、三雲は当たり前かのように言うのである。

 

 「僕が、そうするべきだと思っているからだ……!」

 

 そして、彼は独断でトリガーを起動。規定違反覚悟で近界民(ネイバー)へ突撃する。

 しかし、やはり才能の無い彼は、トリガーをもってしても近界民(ネイバー)に歯が立たず、得物すら落としてしまう始末。

 手の届く範囲を見誤り、必要以上に失う、愚かな行動である。

 

 「トリガー、起動(オン)

 

 そんな行動が、転入生――空閑遊真(くが ゆうま)の心を動かした。

 三雲は目を見張った。空閑が制服では無く、黒の中にオレンジのラインが走った、パワードスーツのような格好となって、

 

 「せー、のっ!!!」

 『ゴアッ……!?』

 

 たった一撃。それだけで、自身が全く歯が立たなかった近界民(ネイバー)を破壊したのだ。

 

 「よう、平気か?メガネ君」

 

 砂塵の中から聞こえた声は、三雲の記憶の中に色濃く残る、()と重なっているように感じられるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「こんにちは」

 

 そんな彼らに、黒い少女の平らな声がこだました。




 次回、禍特対+巨災対的組織、登場(予定)

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