天体制圧用最終彼女   作:にわとり肉

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第二十一話 友達大作戦

 「寺島、C級隊員のトリガーの起動履歴を見せてください」

 

 対ゼットン特設対策部署が設立されてから1日。

 夜通し山田や岩谷が意見交換で白熱していたり、気の弱い芳村が無口で強面な小野田に慄いて、小野田が困り果てていたり、随分とデスク周りが賑やかになった寺島に向かって、黒いジャージを上下に身につけた瀬戸(ゼットン)は、丸まっていた彼の肩を揺らしてそう言った。

 

 「……何故?」

 「少し、探したい人がいるのです」

 「はぁ」

 

 特に断る理由も無いため、寺島は開いていたデータファイルを閉じ、別のデータファイルにカーソルを合わせてクリックする。

 その瞬間、蟻の群れのような夥しい文字列が画面いっぱいに映し出される。

 

 「ほら」

 「失礼します」

 

 席をひいた寺島の収まっていた場所に、瀬戸の引き締まった恵体が入れ替わる。

 マウスを手に取った彼女は、おぼつかない手つきで、一つ一つファイルを開き、トリガーが“いつ、どこで起動したか”を確認していく。

 

 「……!」

 

 そして、十数件目にして、彼女が求めていたものが見つかった。

 

 【三雲修】

 

 それが、あの時にトリガーを起動していたメガネの少年の名前であった。

 

 「……ん?この三雲って奴、本部外でトリガー起動してるじゃん。何か知ってるの?」

 「生体サンプルを差し上げたことに免じて余計な詮索はしないでもらえますか」

 「……」

 

 寺島は、熟慮するも良心の呵責(あと少しの悲しさ)に敗北し、両手を挙げて意思表示した。

 

 「……」

 

 かくいう瀬戸も、良心の呵責に苛まれ、どこか落ち着かない様子をみせていた。

 しかし、それと同時に、彼女は別の理由からえもいわれぬ高揚感も感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カラスの馬鹿にしてくるような鳴き声と、人の往来の音が入り混じる、大型店舗や小店が立ち並んでいる通りに、一台の紫色の軽自動車が通っていく。

 運転手を務めるは薄紫のトレンチコート、そして黒い長ブーツの合間から覗ける生脚が魅惑的な金髪の女性。助手席には、ベージュのダッフルコートを羽織り、その下に白のケーブルニット、デニムとスニーカーで決めた、どこか幼さを感じる風体の、オレンジ色の一房の前髪が特徴的な黒髪の女性が座っていた。

 

 「行き先は“三門市第三中学校”ねぇ。友達でもいるのかしら?」

 

 ハンドルを握る金髪の女性――加古は、赤信号の待ち時間に乗じて、隣の女性――瀬戸に目線をやる。

 瀬戸は前の車のナンバープレートから目を離さずに、

 

 「友達になる予定の人がいます」

 

 と呟いた。小さなほくろがついている口元に薄く弧を描かせた加古は、同じように前を見据え、

 

 「そう……それは、あなたの隠し事(・・・)に関係するのかしら?」

 

 赤信号が青に変わり、目の前の車がゆっくりと動き出す。

 遅れてアクセルを踏んだ加古は、露骨に黙りこくっている瀬戸にちらりと視線をやった後、再び前を向いた。

 

 「昨日、迅さんとあなたが外出した時に、あなたはトリガーを解除しているでしょう?それと、破壊痕から未知のトリオン反応(・・・・・・・・・)が検出されているバムスターが活動停止した推定時刻が一致しているの。それに、極めて近い時刻に三輪隊があなたと二人の学生に会っている」

 

 瀬戸は、あくまで沈黙を守るだけであった。

 

 「……あなたは攻撃する際にトリオンを使わないから、反応が出るはずもない。ここから、あなたが未知のトリオンを扱う人間、つまり近界民(ネイバー)を庇っている、という事実が浮かび上がってくると思わない?」

 「……誰かが、私から聞き出してこいと?」

 

 瀬戸の切実な雰囲気の質問に、加古は柔らかい笑みを浮かべ、

 

 「単なる興味よ。未知のトリオン反応が出たーって少し話題になってたから、個人的にね」

 

 隣から、安堵したようなため息と、背もたれに寄りかかる音が聞こえた加古は、途端に苦笑いを浮かべる。

 

 「少しは疑わないと。私、嘘ついてるかもしれないわよ?」

 「加古は、そういう嘘をつかないと思います」

 

 しかし、背中から感じる細かな振動に揺られる瀬戸は表情を緩めてそう言うのである。

 そして、彼女はゆっくりと胸中を語った。

 

 「近界民(ネイバー)と仲良くなれと迅が言っていました。それが未来のためになると。昨日は顔を合わせただけなので、再び会って、今度こそ仲良くなろうとしているのです」

 

 その声色は、隠しようのない彼女の心根を表すように高らかであった。

 加古は思わず鼻を鳴らしてしまう。

 

 「なら、私は遠巻きに見守ってるわ。そういうのは一人の方が都合がいいでしょう」

 

 再三隣に目を向けてみれば、辛抱たまらずに身体を前のめりにさせている瀬戸が見える。

 それは、もし彼女に尻尾がついていたならば、ちぎれんばかりに振られているだろうと簡単に予想させるに難くない。

 

 (精神性はとことん子供なのねぇ)

 

 カーナビの画面に、目的地のアイコンが表示された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日中につき閑散とした住宅街の中に、三門市立第三中学校は建っている。

 

 「まだ学校終わってないっぽいし、車の中いなくていいの?」

 「はい、大丈夫です」

 

 加古の車から降り、第三中学校の染みついた校門の壁に背をついた瀬戸は、行き交う全てが一度は振り向きたくなるような様である。

 そんな彼女の脳内は、未だかつてないほど回転していた。何故なら、これは彼女からすれば、ボーダー最高幹部との会議に出頭することよりも重大な局面だからである。

 

 (友達が増えます)

 

 瀬戸は、今まで出会ったほとんどの人間をそういうふうに捉えている節があった(怖い顔をする三輪や城戸は流石に察しているが)

 さらに言えば、基本友達はなろうとすればなるもの、という認識でもあったのである。

 

 (まだでしょうか)

 

 もうどれだけ厚着しようと関係のない時期であるにも関わらず、彼女は白い息一つ吐かず、仕切りに携帯の時間を確認したり、こそこそ正門の奥の校舎を覗いて見たりなど、完全に挙動不審である。

 

 (……まだでしょうか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、空から黒い雷が、校舎側の校庭に降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……!」

 

 嫌に聞き覚えのある音が、瀬戸の表情を無表情に戻す。

 壁から背を離し、正門前に立って見てみれば、目線の先の空間に、縁にスパークを走らせた暗い大穴がこじ開けられていき、

 

 『ギチチ……!』

 

 紫色の体躯の自動車ほどのサイズのトリオン兵――モールモッドが、金切り音のような鳴き声共に這い出て、地面に砂塵を巻き起こさせていた。




 ゼットンの服装は加古さんチョイス
 
 生体サンプルを取る際、トリオンの刃すら通さないゼットンの素肌どうしようかなーと悩んでいた面々の目の前で、ゼットンが唐突に手刀で手首を浅く切って体液(赤)を提供したのが少し心にきた寺島

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