天体制圧用最終彼女   作:にわとり肉

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 三輪さんファンには申し訳ないことをしたなぁ


第六話 蹂躙に次ぐ蹂躙

 “トリオン伝達脳、破損”

 「!」

 

 機械音声のアナウンスが鳴った直後、ゼットンの手の内にあった頭部は、ぐずぐずに崩壊し、爆発的な白煙で彼女の周囲を染め上げる。

 戦いは呆気ない終わりを迎えた、

 

 「……」

 

 かに見えた(・・・・)

 次の瞬間、優しい青白き光が寄り集まり、人の形を形成していくのをゼットンは見た。

 

 「はぁッ……!!」

 

 そして、煙を斬り払い、雄叫びを上げて飛び出してきたのは、間違いなく終わったはずの、紫色の復讐鬼だったのである。

 しかし、彼の孤月は再び空間を斬り裂く。

 

 「ごはっ!?」

 

 そして、激しい衝撃が三輪の背中から胸を突き抜けた。

 

 “トリオン供給器官、破損”

 

 血潮のように、トリオンの奔流がとめどなく噴き出ていく。

 無慈悲な機械音声の告げる要因は、三輪の胸に生えてきた、黒いブーツのような、装飾の少ない脚。

 

 「……ぎっ!」

 

 後方へ踵を振り上げるが、求めた感触は返ってこない。胸をみれば、そこにはトリオンを噴射する大穴しか存在していない。

 そして、その穴が逆再生の如く修復、

 

 「ッ!?」

 

 その瞬間、三輪は顔面が何かに覆われたことに気がついた。

 

 (掴まれた____)

 

 嫌な浮遊感が彼の脳梁に危険信号を発した時には、時既に遅し。

 

 「____」

 

 なめらかな黒い指の隙間から見える訓練室の外壁が、まるで空間が曲ったかのように歪む。

 ヒュッと風切音と風圧を背に感じたのも束の間、

 

 「がっ……!!!」

 

 凄まじい轟音と圧力に押され、三輪は目を白黒させて喘いだ。訓練室の外壁に、彼を中心にして蜘蛛の巣のように亀裂が走った。

 狭い視界から見える“悪魔”を睨みつけた三輪は、すぐさまホルスターに手を伸ばし、銃型トリガーを取り出し、その瞬間に幾重もの閃光を走らせる。

 

 (変化弾(バイパー)……!)

 

 勢いよく地面を穿とうと突進すると思われた閃光は、突如として鋭角に軌道を変え(・・・・・)、目の前のゼットンの四方八方から殺到、

 

 「……」

 

 そして、閃光は透明な壁に突き刺さり、甲高い悲鳴を上げながらゼットンに辿り着けずに終わった。

 

 「もうこれで3回目ですが。まだ足りませんか?」

 

 “トリオン伝達脳、破損”

 

 額のオレンジ色の一房を発光させながら、ゼットンは物言えなくなった三輪へ語りかける。

 無論、その方向は一方向のみではないのである。

 

 「____」

 

 三輪の頭部が、再生の兆しを見せ、ゼットンへの回答とした。

 

 「……」

 

 蝉の鳴くような音を携え、ゼットンは静かに両腕を広げ、まるで全身を十字架に見立てたかのようにする。

 ふわり、と彼女の纏うドレスのような軟質装甲が持ち上がったと思えば、それに引っ張られるように、彼女の身体もまた浮かび上がっていく。

 

 「クソッ……!!」

 

 再生した目で三輪が見たのは、照明を背にし、逆光で真っ暗に染まる中、胸部と額の一房の前髪を妖しく輝かせるゼットンであった。

 

 “ピポポポポポ……ピポポポポポ……”

 

 その姿、まさしく神か悪魔か。

 

 「……」

 

 スピードで敗北、火力で敗北、防御性能すら敗北。

 三輪は賢い男ではあったが、同時に愚か者であった。

 対空するゼットンへ向けたのは、一部も曇らない、折れない、彼の心根であった。

 

 「……」

 

 ゼットンの側頭部に対になって存在していた砲塔(・・)に、血液のような煌めきが灯る。

 途端に、彼女の周囲に陽炎が生じる。

 この時点で、三輪の生存権は剥奪されたも同然であった。

 

 「な____」

 

 愚かな人の子の視界を、裁定者のメギドの炎の光が包み込んだ。

 

 “トリオン体活動限界”

 “トリオン体活動限界”

 “トリオン体活動____

 

 第一訓練所は、灼熱という表現すら生ぬるい地獄に変貌した。

 本来トリオン体を破壊できない、純粋な物理火力が、その理を乗り越えて三輪を痛ぶり続ける。

 上半身が吹き飛び、チリすら焼却され、足が消し飛んだと思えば、次弾により全身が残らず壁の染みとなり、

 吹き飛び、

 吹き飛び、

 吹き飛び、

 吹き飛び、

 吹き飛び____

 

 「……」

 

 そんな紅き死の槍を無感動に生産しては撃ち出す、を繰り返し続けるゼットンの琥珀のような眼が、静かに閉じられる。

 そして、数分ぶりの静寂が、焼き焦げた硝煙の香りに満たされた訓練室を慰めた。

 

 「もう十分ではないでしょうか」

 

 常人であれば、この言葉は、いかに平坦で味のない雰囲気であったとしても、慈愛に満ちたものに感じられるものである。

 

 「……」

 

 では、彼女の視線の先にいる紫の復讐鬼はといえば、脂汗を額に滲ませながらも、よろよろと老人のように立ち上がり、孤月の柄を掴んだ。

 彼の瞳は、いかなる苦痛をもってしても殺せないのであろうか。

 

 「すでに、あなたは125回私に殺害されています。勝敗は決している筈であり、あなた方本来の目的も果たされた筈では」

 

 情けない千鳥足で、彼は一歩踏み出した。

 

 「近界民(ネイバー)は……全て敵……だ……!」

 

 その時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「もうやめとけ、秀次」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……」

 「……」

 

 彼の歩みは、彼が最も嫌う男によって阻まれた。

 訓練室の扉が開き、その機能が全て解除されたのである。

 青い隊服に身を包んだ男――迅の表情には、珍しく余裕さがない。

 

 「……チッ」

 

 その舌打ちは、全ての存在に向けられているように思えた。

 

 “トリガー、解除(オフ)

 「……」

 

 つかつかと出入り口の方へ行き、迅に目もくれずに退室した、目のやり場のない男を直視した迅は、静かに効果を始めたゼットンに向き直る。

 

 「君が世界を滅ぼす力を持っているというのは、この部屋の惨状と記録(ログ)を見れば、上も納得するだろう」

 

 しかし、迅の言葉には、いつもの張りが存在していない。

 かけていたサングラスを外した彼は、優美に焦げまみれの床に着地したゼットンへ、複雑な表情を向けた。

 

 「君は、その力をセーブして使ってくれた。こっちが先に仕掛けたのにな……ありがとう」

 

 ゼットンは、相変わらず泰然自若とした空気を崩さないでいた。

 

 「新しい人間の側面を知ることができました」

 

 思わず伏せがちだった顔を上げる。

 

 「人の意志、それは、こうも強い力なのですね」

 

 瞬きの後、ゼットンは忽然と姿を消していた。




 天体制圧用汎用人型兵器“ゼットン”

 見た目:ウルトラ怪獣擬人化計画のゼットン

 兵装:・電磁光波防壁
    ・光波熱線
    ・高熱赤焔
    ・⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎のそれよりもはるかに威力が低い。せいぜい惑星ひとつを吹き飛ばす程度)
    ・徒手空拳

 主機関:・熱核エネルギー生体変換器官(ゼットンのそれを流用。スペシウム133を生み出し、元素の崩壊熱を火器に使う)
     ・対消滅機関(スペシウム133利用。主に生命維持のためのエネルギー生産に用いられる)

 概要:かつて“光の星”で使われていた、宇宙の秩序を乱すとして殲滅された宇宙恐竜“ゼットン”の生体サンプルを利用して造られた生物兵器。
 光の国から使者を送ることなく、本機だけを送り込み、本機を通してその星を監視、場合によっては原住生命に対する裁定を下す、という構想で開発されたため、マルチバース全域を通して“違和感のない”外観をしている。
 実戦投入後、その圧倒的な火力をもって⬛︎⬛︎種類程の原住生命に滅びをもたらしてきたが、生体パーツが多い故に生産性、整備性共に劣悪で、“⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎”に本機自身が耐えきれないため、再生産等諸々の費用が高コストである点、また、原住生命を逃してしまう事例が散見されてもいた。
 その後、それらすべての欠点を解決した“⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎”が開発され、全1⬛︎機で運用されていた本機は、経年劣化等の理由から、ブラックホールにより全て廃棄処分となった。

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