新ZOIDS伝説ー獅子皇の章ー   作:ドラギオン

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地獄竜

その後、バーナーの招待でコロシアム内の食堂に入ったセオリ達。

 

「まさか……オジサンが、ダーザの前のチャンピオンとは思わなかった」

「人は見掛けに寄らないだろ」

 

椅子に腰掛けながら、酒を注文するバーナーとハットンとアンナ。空かさずアインとセオリが、酒の注文を取り消した。

 

「何でキャンセルするんだい」「お前ら酔うとポンコツになるだろ!」

「言い返せないっす」

 

と完封され怒りながらも納得せざるを得なかったのだ。そして、バーナーに向き合いながら話を始める。ちなみにダーザは、医務室に運ばれていた。

 

「あんたダーザに負けたって事なのかい?」

「いいや、だから半年ばかり仕事で此処を離れてたら、いつの間にか蚤が涌いてた」

「当然。バーナーがあれに負ける筈がない」

 

元々知り合いだったユース団とバーナーの会話に混ざれないセオリは手元のドリンクをストローで飲んでいた。

 

「おっと、新チャンピオンが置き去りにされてたな。改めて自己紹介しよう。バーナー・フィンだ。年は見た通りオッチャンだよ……ユース団とは、2年位の付き合いかな」

 

「あたい達がこの街に来たときから世話になってるのさ。こいつ腕っぷしもゾイドも両方強いから頼りになるんだよ」

 

アンナが誉めると照れているのか頭の後ろを掻きながら、バーナーは笑う。

それからバーナーとユース団の出会いと付き合いを聞かされたセオリは、壮絶な出会いだったんだなと呆れた。

「まぁ紹介はこれくらいにして本題に入るか」

すると、バーナーが真面目な話を始める。

「セオリちゃんが、ダーザの野郎に求める情報だが、アイツは錯乱してる。おかげで会話すらまま成らないだろうな」

「だよな……結局ふりだしか」

 

 頭を抱え落ち込むセオリにバーナーが提案する。

「だから、代わりと言っちゃなんだが俺が酒場で、教えてあげた以上の情報をやるよ」

「どうして、急に?」

「コロシアムに蔓延る虫を叩きのめしてくれたからな。それで情報なんだが、街から東に50キロ程行った所に海がある。港町もあって現在そこに停泊してる海賊、カッシュルール海賊団のヤハ・カッシュ=ルールって男が数十日前に正体不明のゾイドをサルベージしたらしい」

「正体不明?」

「あぁ、お譲ちゃんのオウドライガーと同じで珍しく、常軌を起した強さらしい。裏業界の噂だが、帝国の植民地にされてた島を解放するために、デススティンガー3機を瞬殺したらしい」

「デススティンガーって帝国の主力ゾイド? 化け物だね」

「だから、ヤハの乗るゾイドこそが帝王のゾイドじゃないかって噂がある。」

「それ本当?」

「あくまで噂だが、火の無い所に煙は立たない。アンナ達の目的、ゾイドの巣も進行方向にある。一見の価値はあると思うぞ」

 

 バーナーが肉料理を食べながら、情報を話してくれる。その内容が非常に興味深く聞き入っていた。海賊団船長のヤハ、この男に会えば帝王について何かがわかるかもしれない。その期待に希望を見出すと同時に海賊という裏稼業の人間が帝王を使っていることに危機感を感じた。

 だが、ユース団との約束には、人の命がかかわっているので急を要する。セオリは、ヤハを探すことに決め、先にユース団の恩人に必要な薬草を取りに行くことにした。

 

「よし、決めた! 海賊団を探すために海に行く。でもその前にアイン達の用事を済ませる」

 

 元気よく宣誓したセオリ、「急にどうしたんだいこの子は?」と訝しげな目で見るアンナ。だが、自分達の協力を最優先してくれる彼女の決断に感謝もしていた。

 

「決断は早いに越した事は無いな。そういえばアイン達のディバイソンとかは、どうしたんだ? あのコマンドウルフは軍のだろ? 最初コロシアムの奴らに狙われてたぞ」

「まじっすか?」

「そういえば、軍のゾイドで違法賭博の会場に行ったらだめだったね。迂闊だったよ」

 

 今さら指摘されて、顔色が悪くなるハットンとアンナ。となりでウンウンとアインが首を縦に振っているが忍者装束から僅かに見える肌に冷や汗が浮かんでいた。

 恐らくアインも気がついていなかったんだなと、ジト目で見るセオリ。

 その後、ユース団3名のゾイドは、先日の戦闘で破損し現在修復中だと説明した。

 

「凄いなお前ら、帝国軍に4機で挑んで、しかもシオンと戦っても死ななかったのか!? となると、オウドライガーが第4の帝王じゃないかって今日出来た噂は、真実かもな」

「っ」

「もう、そんな噂が?」

「早いね……」

「伝達。そんなすぐに帝王と判明するのだろうか?」

「何お前ら、その反応。……まさか、まじ?」

 

 4人の話を聞き笑いながら今日の戦闘で出来た噂を話したバーナー。だが、4人の反応があまりにも、おかしく、地雷を踏んだことを悟る。すると、彼は周囲でこっちを見ているキナ臭い連中から隠れるように4人に言伝した。

 

「気をつけろ、俺らの話を聞いてる奴がいる。早い所、軍曹とやらの所に戻れ、ハンターの狙いはセオリちゃんのオウドライガーになりそうだ」

 小さい声で4人に警戒を促し、誘導するバーナー。セオリ達もすぐに頷き、ゾイド保管庫に向かいオウドライガーとコマンドウルフに乗り込む。

 

「注意。セオリちゃん、周囲の人間から悪意を感じまする。バーナーさんの言葉に従って正解であります」

「みたいだな、早く行こう。飛ばすけど着いて来てよ後ろの二人」

「はいっす」

「わかったよ。ほら、早く行きな」

『ガォオオ』

『ガウウ』

 顔布を外したアインの進言の通り、周囲でオウドライガーを見ている者の目が欲に塗れていた。すぐに、軍基地に帰るとコマンドウルフに乗る二名に通信を入れる。後ろの二人も周囲の視線を感じ、先に飛び出したオウドライガーを追いかける。

 

「やっぱり10機以上のゾイドがこっちを追い掛けて来てるな」

「そのようっすね。こっちが高速戦闘用ゾイドだって知っててか、相手も高速戦闘用みたいっす」

「でも、これがあたい達の最高速度だよ!? これ以上どう飛ばすのさ」

「否定。山道しかも森で最高速度が出せるわけがない。相手が山道の効率的な走り方をしってるだけであります!」

 

 山道を駆け下りながら、速度を上げていくオウドライガーとコマンドウルフ。オウドライガーとコマンドウルフのレーダーにずっと多くの影が映り続けていた。その影は段々とオウドライガーとコマンドウルフに迫り囲うように旋回していく。

 

「囲まれるな……どうする? 迎撃に出てみるか?」

「馬鹿言うんじゃないよ。数で負けてる上に、あたい達に有利な作戦もないんだ」

「質問。オウドライガーとセオリちゃんなら勝てるでありますよ!」

「それこそ、相手はオウドライガーの性能を知ってる。あたい達の時のように行かないってことさ! 初見殺しは相手に見られるだけで封じられるのさ」

「お、オウドライガーならどんな敵だって……」

「ゾイドは、ただの兵器じゃない。生き物なのさ、さっきの激戦の後ですぐに戦闘なんてしたら壊れるかもしれないよ?」

 

 女性陣が通信で言い争いをしながらも、全力で走っている中、一人コマンドウルフに備え付けた集音マイクの音を聞き取っているハットンがいた。

 女性陣が揉める中、必死に一つの音を拾っていた。それは、レーダーに突如現れた巨大な影である。その影も敵であるかをゾイドの足音と泣き声を聞きほくそ笑む。

 

「3人とも、応援が来てくれた見たいっすよ。それも最大級の」

「「「?」」」

 

 得意気に話すハットンに全員が首を傾げると、背後の方角から凄まじい咆哮が響き、大地が揺れる。思わずオウドライガーとコマンドウルフが足を止めてしまう。

 

 ドドドと地響きが起こり、後ろを振り向いた4人の前の森が大きな火柱を上げた。木々に遮られ詳しくは見えないが巨大な火柱と共に3機のヘルキャットが空を舞う。

「ぐわああ!」

「うぉおお」

「た、たすけてー」

 

 宙に打ち上げられた3機は重力に従い急降下する。すると、再び咆哮と共に32本の赤い電光が空中のヘルキャット達を襲い跡形も無く消しさる。さらに空に発射された電光は、意思を持ったかのように地上に降り注ぐ。

 

『グゥウウ』

「オウドライガー? やばい、Tシールド全開!」

 

 大地に雷光が降り注ぐと同時に、凄まじい振動と熱そして衝撃波が迫る。危機を察したオウドライガーとセオリが四肢の噴出口から放出する粒子の回転で物理からエネルギー兵器まで全てを呑み込むシールドを発生させ、コマンドウルフを守る。

 シールドを張った事で、膨大なエネルギーがセオリ達を傷つける事は無いが、数十秒後にシールドを解除した時、セオリは絶句した。

 

「な、なにこれ」

 先程まで周囲に生い茂っていた森が灰になり、焦土と化してた。地面はマグマのように熱を発し、地獄のような有様となっていた。そして、先程の攻撃の発生源に目を向けると……山のような大型ゾイド。巨大な体躯で地面に両足を降ろし、そびえ立つ深紅のギガノトサウルス型ゾイドが其処に居た。

 

「ゴジュラス?」

 セオリはそのゾイドを見た事が無かった。唯一偶然に見たゴジュラスというゾイドに似て居たためにそう呟く。すると、通信相手であるハットンが首を振る。

「あれは、ゴジュラスの進化機体、ゴジュラスギガ。この大陸で5本の指に入るクラスのゾイドで、通称、原初の地獄インフェルノギガっす」

 

 ハットンの説明を聞きながらも、セオリはインフェルノギガから視線を外せないでいた。シューシューと熱で周囲が焼かれ、ギガ自身のボディも熱で融解している。真っ赤に輝くボディの正体は、膨大な熱量による発光現象であった。

 本来ゾイドなら、オーバーロードし爆発してもおかしくない状態でありつつも、インフェルノギガはセオリ達に向かって歩み寄って来る。

 

 ズシンズシンと山のようなボディが動くたび、足元がジュージュー音を立てる。良く見れば、ギガの足元には、溶けて動かなくなったゾイドの残骸が残っていた。

 

『ガゥウウウウ!』

 

 今までにない程、オウドライガーが警戒し身構える。ギガから来るプレッシャーはジェノリセッターにも負けず劣らない。どうにか隙をついて一撃を決める手段をセオリが考え、操縦桿に力がこもる。

 

「無事。セオリちゃん、戦っちゃ駄目であります。インフェルノギガに乗っているのはバーナさんであります」

「バーナーは、インフェルノギガでコロシアムのチャンピオンだったんすよ。もう安心っす」

 

 二人の説明に、固まっているセオリとオウドライガーを端に、近くまで来たギガの頭部のハッチが開き、バーナーが手を振って来る。

 

「おまえらー、追っては適当に片付けた。しばらくは、コロシアム周辺に来ない方が良い、ちょっとばかしお別れになるから挨拶に来たぜ、頑張れよ」

 

 バーナーはそう言って、唖然とする4人に笑いかけながら、インフェルノギガでコロシアムの方角に帰って行った。インフェルノギガの歩んだ道に地獄を残しながら。

 

「は、派手な見送りだな」

 

 額に汗を掻きながら、離れていくインフェルノギガの後ろ姿を見たセオリだった。

 

 

 




インフェルノギガ(ゴジュラスギガ改)
基本情報
型式 RZ-064
所属 コロシアム
モチーフ ギガノトサウルス型
スペック(格闘モード)
全長 305.5 m
全高 170.0 m
全幅 不明
重量 3600.0 t
最高速度 80.0 km/h
スペック(追撃モード)
最高速度 120.0 km/h
武装
ギガクラッシャーファング
ハイパープレスマニピュレーター×2
ロケットブースター加速式クラッシャーテイル
32門ゾイド核砲
ハイパーEシールドジェネレーター
クラッシャーテイル用脚部補助アンカー×2
テイルスタビライザー

 略歴
 通常のゴジュラスギガより一回り大きい改造型ゾイド。本来一機につき一つのゾイドコアを計33個内蔵し巨大化したモンスターマシン。全てのコアが爆発的な出力を記録しており、内部から熱融解現象が発生し稼働している限り高熱を発する。本来であれば溶けて消えてしまうようなエネルギーだが、大量のゾイドの自己再生能力が融解と並行しているため稼働し続けている。ゴジュラスギガの命を捨てて発射する32門ゾイド核砲もゾイドコア一つに付き一門を担当し、威力が大幅に上昇した上で連射が可能となった。
 その一撃や全てを灰や塵に変え、地形そのものを地獄と変える。唯一の欠点は、コックピットが高温で長時間乗ると脱水症状を引き起こす点。

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