新ZOIDS伝説ー獅子皇の章ー   作:ドラギオン

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孤児院

どうにかゾイドの森を抜け出したセオリ達。後半では、ウジャウジャと沸いてくる野生のゾイドに対処できず撤退あるのみだった。森を抜け暫く進み漸く落ち着けるポイントでキャンプしていた。

 

「すごい大変だった……」

「本当にね。最後は死ぬかと思ったよ……さすが第二級危険地帯だね」

「生きてることが不思議っす。セオリさんには、感謝で一杯っすよ」

「感謝。セオリちゃんありがとうでございまする。このフレアナ草があれば、司祭様の病気も治りまする」

 

全員がくてーっと力なく腰掛け、収穫の確認と苦労を分かち合っていた。ギュッと薬草の入った瓶を抱きしめながらアインがセオリに頭を下げる。

 

「その薬草が必要な人の居る場所は、何処なんだ?」

「此処から一日もしたら付く場所っす。今日はもう寝て、明日向かうっす」

「特にセオリとアンナは、前線で頑張ったんだししっかり寝なよ。あたいとハットンで見張りをするからおやすみ」

 

 年長組の二人に諭され、2人はキャンプの中に入り寝袋に身を収め眠りにつく。二人とも前線で大型ゾイドと格闘戦を繰り広げていたために緊張感から、疲労が多く溜まっており何言か話しているうちに眠りの世界に入った。

 

 二人が眠ったのをアンナが確認し、焚火の前で寝ずの番をしているハットンの横に座る。

「二人は寝てるっすか?」

「ちゃんと寝てたよ……。今日は死ぬかと思ったけど、どうにか薬草を持ってこれたね」

「それで漸く、アーノン司祭に恩返しが出来るっすね」

「本当にね。……お嬢様と国を抜けて、5年。その間あの人にはお世話になったからね」

「薬さえあれば、すぐに治る病気っすからね。でも、アーノン司祭が完治したらどうするっすか?」

 

 焚火を眺めながら会話する二人。ハットンの質問にアンナは、しばらく考えた。彼らユース団は、本来は各地を旅しながら仕事をこなすギルド所属の人間だ。訳あって追われる身の彼らは、たまたま知り合ったアーノン司祭に助けられ、其処で新たな名前と立場を手に入れた。

 追ってから逃れるために、各地を放浪しながら生計を立てていた彼らだが、恩人である司祭が病気にかかったと聞き治療法を探っていたのが半年前。ようやく治療法が判明したが、彼等には手も足も出ないほど高価な薬草でしか治療で居ないと知り盗賊稼業に手を出そうとまでしたのだ。

 だが、たまたま最初の得物として狙ったセオリに完敗。彼女の優しさに甘える形で力を貸して貰う事で薬草を採取したのだ。

 

 この薬草を司祭に届けると彼らの次の目的が無くなってしまうのだ。

「それは、お譲様……アインに任せるさ。あたい達は、奥様にあの子を任せられたんだ。あの子が選んだ道について行くのがあたい達の使命さ」

「帝王のゾイドを中心に世界が回るって大佐が言ってたっすけど。僕ら、お譲様がセオリさんと出会ったこと自体が運命なのかもしれないっすね」 

「そうだとしたら、恐らくあたい達もセオリについて行くんだろうね。あの子は、友達を欲してたからセオリとは離れたがらない。まぁセオリもセオリで一人っきりでは放っておけないからね」

「結構気に入ってるんっすね。良い子だと思いますけど、純粋すぎる彼女が戦乱の世の中で生きていけるのか、些か疑問ではあるっす」

「そこは、周りが支えてやらないとね。あたいも眠いから寝るよ、4時間交代でよろしく」

 

 欠伸をしながら、アンナが自分の寝袋を丸めて枕にし、眠る。それを見ていたハットンは、疲れた表情をしながら呟いた。

 

「この5年で一番、強くなったのはアンナっすね」

 

 これから起こるであろう苦労と危機を予想して、頭を掻きながら疲れた表情で笑った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 次の日、天気は生憎ながら雲であったがユース団とセオリは、時間どおり出発していた。4機のゾイドが草源を走ること3時間。進んでいる方角に小さな街が見える。コロシアムのあった街よりは、俄然小さいが、レンガ造りの家が多く地中海付近の国のようであった。

 周囲も麦畑で囲われ、街の真ん中を大きな川が横断していた。恐らくこの川を進めば海岸線の街に辿り着くのだろうとセオリは考える。

 

「ここだよな?」

「正解。この商業都市セルティソンだ。我々は、至急薬草を神父に届けに行くが、セオリちゃんはどうする?」

「うーん、着いて行こうかな。それからだね、情報収集とついでに観光もする」

「なら、ぼさっとしてないで着いて来な」

 

 立ち止まる二機をほって先に進んだディバイソンとカノントータスがオウドライガーとセイバータイガーを急かす。アンナに急かされ慌てて走り出した二機。

 

 街の入り口付近まで到着すると、検問所があった。人や車が通れるサイズとゾイド用の大きな検問所である。先頭を行く年長者のハットンが、後ろの三人を静止してゾイドから降りる。

 そして、検問所の役員に歩み寄りながら何やら手続きをしている。

 

「検問通れるかな? オウドライガーは登録とかまだしてないから……」

「問題ないと思うよ。あたい達のゾイドだって登録はしてない。だいたい登録してるゾイドなんて役人か軍人のゾイドさ」

「無事。ハットンが帰ってきた。では、行くとしよう。セオリ、ゾイド用の大通りしか歩いてはいけないぞ」 

「子供じゃないからわかってます」

 

 ハットンがゾイドに乗り込んだのを見計らい、街の大通りをゾイドで進む。キチンと交通整理がされており、対抗からモルガやグスタフなどの小型ゾイド達が通過する。だが、衝突などなくスムーズに流れた。

 さらに、道の両脇にはたくさんの店が立ち並び、先程すれ違ったゾイドで大量に仕入れられている商品もあった。セオリはこう言った良い意味での活気のある町は初めてなので、目を輝かせていた。

 

(しらいない物いっぱいだ)

 

「商業都市って、いろんなものがあるね」

「興味惹かれるのは分かるけど、観光は後回しだって言っただろう。此処で止まってると後ろがつっかえるから急ぎな」

 

 つい商店に目を奪われ、足を止めてしまったオウドライガーとセオリ。後ろに並んでいたアンナが、ディバイソンの角でゴンゴンと突きながら注意する。言われている事は分かるが、興味深い物が多い中で少しも見て回れない事に不満気だった。

 ただ、病人が最優先だとセオリもすぐに移動を開始した。

 

 数分間進んでいると、先頭を行くハットンが止り、全員がストップする。セオリ達の横に見える大きな教会こそが、彼らの恩人の居る場所なのであろう。

「着いたっすよ。ゾイドは、其処の広場で待たせて欲しいっす」

 

 ハットンに連れられて、教会の後ろにある広場で、オウドライガーから降りるセオリ。すると、背後から「わー」と小さな子供の群れが集まってきた。

 

「ゾイドだ!」

「おっきいね」

「お姉ちゃんゾイド乗りなの?」

「このゾイドカッコイイ」

 

 子供たちが群がると、セオリを取り囲み、大人しくしているオウドライガーにぺたぺたと触りだした。恐怖感をあまり感じていないのか、問答無用で触りまくる子供達にオウドライガーが立ちあがろうとした。

 

「オウドライガー! ストップ! 暴れたら怒るからな!」

『ガゥ』

 ギリギリ静止が間に合い、ライガーが大人しくしてくれた。正直、こんな状況でオウドライガーが動いたら怪我人や死者が出る。それだけは防がねばと、必死だった。

 

「お姉ちゃんの言う事聞くんだね」 

「芸できる?」

「あ、えっと、その」

「全員セオリさんを困らせないっす。それとゾイドは危ないから、勝手に触っちゃ駄目っすよ」

 

 ただし、セオリ自身も10人を超える子供に詰め寄られあたふたしていた。すると、隣でゾイドから降りたハットンが子供達に注意を促す。

 

「あ、ハットンさんだ」

「帰ってきてたの!」

「皆返事は無いんっすか?」

「「はーい」」

 

 彼がそう言うと全員がハットンの言う事を聞いて、セオリから離れる。だが、子供達は目新しいセオリとオウドライガーの方をキラキラとした目で見続ける。

 

「ほらほら、あんた達、あたい達は用事があるから広場で遊んでな」

「質問。アーノン司祭は、どうだ?」

 

 アインの質問に明るかった子供達の表情が曇る。それは、言葉がなくてもよくないと伝えている。子供達の中で一番年長者らしい男の子が答えた。

 

「司祭様は、今月に入ってからベッドから出ていません。お医者様が言うには、このまま治療が出来なければ……」

 

 彼の現実味を帯びた言葉に、子供達はさらに暗い表情になる。

「わかったよ。あんた医者を呼んで来てくれるかい? 後薬剤師も」

「う、うん」

「他の子達は、お外で遊んでるっす。用事が終わったら遊んであげるっすよ」

 

 ハットンが優しく声をかけると、他の子供達も徐々に広場に向かい始めた。

「じゃ、行くっすよ」

「そうだね。アイン、顔布外してな。セオリは、初対面だから少し後ろにいな」

「了解。セオリちゃん、視差はいい人でありまするから緊張しないでいいでありますよ」 

「緊張してないよ」

 

 ハットンを先頭に教会に入って行く4人。教会に入ると初めに礼拝堂が見える。其処を右に曲がり進むと孤児院の入口に辿り着く。そこから階段を上がり、最上階の部屋の扉を開くと大きなベッドがあった。

 その部屋に居たのは、2人のシスターとベッドで力無く横たわっている高齢の男性だった。

 

「まぁ、ハットンさん達、帰って来ていたのですね」

「司祭様、ハットンさん達が帰ってきましたよ」

 

 シスター二人が、入ってきたユース団を見て声をあげる。そして、司祭と呼ばれた男に声をかけた。横たわっている男性は少しだけ目を開け、ユース団の事を見つめる。

「おかえり……。全員元気そうでなによりです……」

「アンタは元気が無さそうで、心配だね」

 

 優しい言葉に対して、アンナがいつもの口の悪い言葉で返す。それには、ハットンもアンナの肩を叩きながら嗜める。

 

「アンナさん、司祭様の体は以前よりも症状が悪化しています。あまり御身体に障るような事は」

「いいのだソフィー。むしろ、身体の事で気を使われる方が、私は悲しいよ。……所で、そちらのお譲さんは何方かな?」

 

司祭と呼ばれた男性は、ユース団と共に部屋に入ってきたセオリに問いかけた。それに対してハットン達が説明しようとすると、セオリが前に出て頭を下げた。

 

「初めまして。わたくしつい先日より、アインさん達と行動を共にさせていただいているセオリ・アンデルセンと申します。この度は、先に訪ねる旨を報告せず、直接訪ねてしまった事を申し訳ありません」

 

 となんとも畏まった挨拶を交わす。その様子にユース団の三人は眼を大きくした。彼らの知るセオリは、ガサツな男っぽい口調である。でも、今のセオリのあいさつとお辞儀や仕草は、両家の出を思わせるほど洗練されていた。

 

「これはこれは、ご丁寧にどうも。お前達、このお嬢さんを何処から誘拐したんだ?」

「いやいやいや、誘拐なんて滅相も無いっすよ」

「そもそも、こんなキャラじゃないよ! アンタどうしたんだい! 頭でも打ったのか?」 

 

 ジト目で睨まれた二人が大慌てで、弁解を始めセオリの肩を揺する。グラグラと揺すられたセオリが少しムスッとしながら言い返す。

「目上の人間には、礼儀正しくしろって教えられてきたんだよ! しつれいな!」

「えー」

「目上って、あんたあたい達には敬語なんか使った事ないよ」

 

 ハットンが呆れ、アンナが文句を言う。だが、セオリは、2人の耳に口を近づけ囁く。

「自分襲ってきた盗賊に、敬語付ける訳ないだろ。あの人に悪事がばれたくなかったら、私について言及しない方がいいって」

 

 その言葉に、2人は納得した。セオリとの出会いを正直に話せば、彼は悲しむだろうと。被害者側のセオリが自分達の意を汲んでくれているのだから、話を合わせようと考えた。

 

「説明。司祭様、私達オムニ草を取りに行こうとしてたのであります」

「まぁ、オムニ草を取りにって、お医者様達が言ってたゾイドの巣に行ったというのアイン!?」

 

 アインが、横たわる司祭の手を取りそう言うと隣に立っていたシスターが、悲鳴じみた声を上げる。彼女達も司祭の病気、プロタノン発熱病の治療法は聞いていた。

 

 ゾイドの巣と呼ばれる野生の大型ゾイドの密集区。軍隊が出向いたとしても被害が大き過ぎるために、近寄れない第一級危険地帯。だが、其処にしか生えていない希少な植物ゆえに、値段は豪邸が立つほど高価だと言う。

 それを取りに行ったというのだから、彼女達の驚きは計り知れない。

 

「平気。大丈夫であります、セオリちゃんが手を貸してくれたのであります」

「何が大丈夫ですか! 危ない真似に関係の無いセオリ様まで巻き込んだのですか」

「……。それは」

 

 シスターの叱責にアインが言葉を失う。やはり、どれだけ追い詰められていても人様に手伝わせる事ではないと分かっているが故に反論できない。

 すると、シスターたち近づきセオリが援護した。

 

「いえ、巻き込まれたのではなく私も偶然、目的地に向かう途中でしたし、彼らに協力して貰っていたのは私です」

「協力ですか?」

「えぇ、私は女の一人旅をしていたので、彼らとの同行をお願いしたんです」

「まぁ、一人旅を……、それは大変ですわね」

「ですから、お世話になったのはむしろ私の方で、その礼にと協力させていただいたんです」

 

 ペラペラと嘘を交えた真実を話していくセオリ。次第にシスター二人も彼女の話に納得の色を示していく。

 

(セオリさん、結構頭良いんっすね)

(予想外だったけど、これはいいね。まぁもう少し頭の緩い娘かとはあたいも思ってたよ)

 

 こそこそと後ろで話すハットンとアンナに、セオリは「バラしてやろうか」と思案していた。

「と言う訳です」

「まぁまぁ」

「そんな事があったのですか」

 

 セオリが説明を終えると、二人は納得していたが唯一人司祭だけが顔を曇らせていた。すると、言い訳が思いつかなかったアインが、ビンに詰めた薬草を手渡す。

 それを受け取った司祭がアインを見つめる。

 

「これは?」

「治療。オムニ草であります。私達、取ってこれたのであります」

「え、取ってこれたのですか?」

「あそこは、軍隊ですらあきらめていた場所なのに?」

「説明。セオリさんは、とても凄いゾイド乗りなのです。だから、怪我もしてないのですよ。お説教は後で聞きますから、どうか先に御身体を」

 

 アインが司祭に詰め寄りながら、説得する。だが、優しげな司祭の顔は、厳格な表情にかわっていた。

「アイン、ごめんよ」

 

 そう言うと彼は、アインの頬を軽く叩いた。乾いた音が部屋に響き、頬を押さえるアインが不思議そうな目で彼を見る。 

 

「叩いてすまないねアイン。だけどね、私の身体を気遣ってくれた君達の優しさは嬉しいよ。でも、君達を危険な目に合わせてまで、私は生きようと思わないよ」

「そ、そんな言い方ないんじゃないかい! あたい達がどんな気持ちで」

「わかっている。だが、私のような老いぼれの命に、君達やセオリさんを危険に晒していはずがないのだよ……ごほごほ」

「司祭様!」

「大変、お医者様を!」

 

 アインを庇うアンナにも、司祭は厳し言葉を残す。すると、彼は急に咳込み口から吐血した。それを見た御世話係のシスター二人が慌てて彼をベッドに寝かせ医者を呼びに行こうとする。

 

「医者なら俺が呼んでくるっす。さっき、孤児院の子に医者を呼んでくるようにっておいたのですぐに、ア、アイン!」

ドアを開け、すぐに走り出そうとしていたハットン。彼を突如、全速力で走りだしたアインがつき飛ばし、階段を駆け下りながら何処かに消える。初めは彼女が呼びに行くのかと思った一同だが、窓から見える広場でセイバータイガーが起き上り何処かに走って行くのが見える。

 

「アイン、何処にいくんっすか!」

「ハットン、アインの事は後でいい。先に医者呼んで来な! 薬の元はあるんだ、飲ませりゃ治る!」

 

 アインの行方を気にしていたハットンを、アンナが叱責。すぐに医者を呼びに行かせた。

 

「なら、私とオウドライガーでアインを連れ戻してくる」

「……アンタが一番早いか、アインは南西の方角の湖に向かってる筈だよ。あの子は昔から拗ねると其処に行くんだ。司祭が落ち着いたらあたいも行くから、頼んだよ。って、何処から行くんだい!?」

 

アンナからアインの向かった場所を聞いたセオリは、三階建ての窓から飛び下りた。それには、アンナも声を出して驚き窓から下を覗く。すると、セオリはピンピンしており広場まで走って行った。

 

「呆れた」

 

 アンナは、走って行くセオリの背中を見ながらそう呟いた。

 

 

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