新ZOIDS伝説ー獅子皇の章ー   作:ドラギオン

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死神VSイオリ

ーーーーー私は……耐えられなかった。

 

(何に?)

 

-----人の業、それが導く結果に。

 

(何故?)

 

-------人を愛していた。けれど今は憎しみしかない。

 

(何があったの?)

 

--------憎い、にくい……憎い憎い憎い憎い憎い!憎い!憎い!死を死を死を死を死を!人類全てに死を!絶滅を!

 

(なな、あ、にくい? 何故? 殺したい、許せない。嫌だ。やめて)

 

---------お前も憎め、怨め、そして知れ。私の宿願を果たせ。

 

(うそ、やだ。……いや、殺さなきゃ、人類を全て……誰か助け)

 

「私の妹に、余計な手出しはしないでほしいわ。去るが良い、この子はアナタとは違う」

 

--------邪魔をするな。だから憎い憎い憎い。

 

(だ、誰?)

「誰でもない。これは夢よ、目覚めたら忘れなさい。こいつは私が押さえるから」

 

-------やめろ、やめ………

 

ーーーーーーー

 

「へにょ?」 

 

 急に眩しい光を浴びて、間抜けな声を上げながら起き上ったセオリ。何故か全身汗だくで息も荒い事に気が付く。

 

「っつ!」

 

ズキンズキンと頭が痛み、先程まで見ていた夢の内容が思い出せない。何か重要な夢だった気もするが、記憶にない。

 

「また、ベッドか」

 

ふと、自分の周りに気を向ければ、フカフカのベッドの上にいた。今いる場所は、扉ひとつと窓が二つの一室だった。自分の恰好は、いつもの民族衣装だった。

 

「これって宿? そういえば、帝王のゾイドと戦って……ギリギリ勝利してから気を失ってたのか」

 

 どうにか海面を抜けだし、止めを刺したあたりで意識が飛んだ事を思い出したセオリ。怪我は一切なく、以前シアンに負けたような体中の痛みは無い。あるのは、胸の奥で酷く気分が悪い何かが渦巻く感覚。何かが自分を飲み込んでいくような異和感だったが、徐々に薄れていく。

 

「アイン達は、外にいるのかな?」

 

 ベッドの傍にある靴を履いて、ドアの取っ手に手を掛けるとドアの向こう側から人の気配がする。そして、コンコンとノックしガチャリとドアノブが下るので手を放す。

 

「お譲さま、御目覚めのお時間ですy……ちがう、違う。セオリ! 起きてるか、おわ」

「アンナ、おはよう? 今何時?」

 

 ドアを開けて入ってきたのは、お盆に飲み物と大量のサンドイッチを乗せ、バランス良く片手で持っているアンナが入ってきた。入る途中までは、何故か優しげで上品な声色だったが直ぐにだみ声に戻る。起き上っている彼女に驚き、後ろによろけるが御盆だけは地面に並行していた。

 彼女の質問を聞きいれたアンナが、胸元から懐中時計を取り出し時刻を告げる。

 

「今は午前9時40分だよ。今回は短いとはいえ、半日以上眠りこんでたんだよ。これは、あんたとあたいの飯さ」

「あ、うん。ありがとう、座らないの?」

「……なんか給仕なんて久々だから、調子狂うね」 

 

 開いた手で、セオリを机の方へ誘導し座らせるとテーブルの上に御盆を乗せる。先にセオリが座ると、しばらく控えて立っていたアンナも座る。どうやら昔の仕事の影響が響いているらしい。ガサツな姐御肌のアンナが給仕している姿を想像できないセオリ。

 彼女の思考を読めたアンナが、じろりと睨む。

 

「今、似合わないとか思ったね?」

「え、いや、うん。……ごめん」

「いいさ、あたいも思ってた。そうだ、あんたが倒した海賊だけど夜が明けたら姿を消してたよ。なんか言伝頼まれた。アインとハットンは……少し用事だよ。海賊の船長が、また帝国に動きがあると情報を貰ってね。あんたが目覚めるまで自警団と掛け合って警備中さ」

「また帝国が攻めてくるの?」

 

 セオリの問に少しだけ考えたアンナ。言うべきか言わざるべきかと悩んだが隠す必要はないと感じ、正直に話した。

 

「ヤハは、ガスカ海中心に反帝国主義を掲げる反乱軍のメンバーらしいのさ。共和国とも違う第三勢力で、あの男はオウドライガー、つまり帝王の所持者を調べてたんだとさ」

「え? でもアイツ、そんなこと一回も」

「理由は違えど、帝王の所持者であるアイツも邪悪な人間が帝王に乗るのは危険だから、アンタと同じく破壊しようとしてたらしい。

 まぁ、アンタが悪人じゃない事は知ってたらしい。ただ、試してみて合格だったと言っていたさ」

 

 腕を組みながら指先でポンポンと腕を叩く。時々セオリから目線を外し、天井を見ながらヤハとの際を思い出すアンナ。

 

「逆に、シアンとの接触は最低だったらしいね。丸一日掛けて、周囲の海域を火の海にしながら戦ったらと言ってたよ。闘い続けて海底に引きずり込んで如何にかジェノリセッターを破壊したが、その時の戦闘でスキュラクィーンも傷付いてこの港で整備してたらしい」

「だから、此処に居たのか」

「此処からは、船長さんの言葉さ  死神は手応えがなくて生きてる可能性が高い、もしもう一度俺が戦えば確実に殺す。アイツは、危険思考を持った典型的な破壊者だ。恐らく俺に復讐を誓っているだろうが、万が一お前が狙われた場合は、逃げろ。 だそうさ」

「そうか……。あれ?」

「話が逸れたね。帝国軍は、セオリ、あんたを指名手配したらしい。正確にはオウドライガーを鹵獲する動きがある、だから一番危ないのはこの街なのさ」

 

 彼女がハッキリ言ったために、セオリも考え込む。以前のコロシアムでの一見以来、オウドライガーは有名になりつつある。もうじき、セオリが騒ぎを探らずとも、騒ぎの方から彼女の元に集まって来るのだ。

 

「帝国は、私を狙っているか……オウドライガーと旅に出たときから覚悟してたよ」

「どうするんだい?」

「とりあえず此処を出よう。でも、逃げるんじゃない、迎え撃つ準備をする」

「ただの戦闘じゃない。戦争になるよ?」

 

アンナの問いは、核心を着いていた。セオリが帝国と戦えば、それは戦争と他ならない。

 

「私の目的は、戦争じゃない。でも、帝国がオウドライガーを悪用する気なら、許さない。帝王のゾイドには、二度と神々の怒りを起こさせない」

「ふっ、そうかい。ついでにあたい達三人は、帝国に追われようが着いて行くから安心しな」

「そう言って貰えると嬉しいな」

 

モグモグとサンドイッチを食べながら、二人の会話は終わった。食後のコーヒーを飲みながら二人は次の目的地を考えていた。出来れば共和国の目が届いている場所が望ましい。だが、共和国は共和国でセオリを抱き込もうとするだろう。

 だから、共和国と帝国の境界線や中立国を中心に回ることにした。

 

「地図を見る限りじゃ、旅の目的地は……英傑国家ミロード公国だね」

 

ガチャンとアンナが手に持っていたカップを落す。中身は空だったがカップは床に墜ちて割れる。

「どうかしたの?」

「いや、でもミロードはやめて置いた方がいいよ。あの国は、頭の可笑しい奴がいっぱいさ」

 

 妙にミロード公国を非難するアンナを不思議に思うも、嫌がっている場所に連れていく訳にもいかず再び地図を確認する。陸で行けばミロードだが、海路を使えば選択地はいくつもあった。

 

「他に行くとしても、海路だと逆に逃げ場が無くなるんだよ。ヤハみたいに海賊を生業にしてるなら海でも逃げられるけど……」

「素人に海は危険だろうね。ちょっと考えなきゃならない」

 

 2人して溜息を吐いて、窓から海を眺める。海で襲われれば、エヴォルトしたオウドライガー以外は、戦闘不可能。セオリのみでも戦闘可能だが、船が沈められたら負けである。エヴォルトを行った後に訪れた疲労感は、エヴォルトでの長期戦闘が難しい事をものがたってる。

 

「あの船長捕まえておくべきだったね。海を渡る護衛させればよかったよ」

「いや、私あの男は苦手だからヤだよ。アインも相性悪そうだし」

 

 そんな時だった。窓から覗く景色が一変したのは。

 窓の外に一筋の閃光が通り抜け、光の筋を追うように火柱が上がり、景色一面が炎に包まれた。

 

「なんだよ?」

「荷電粒子砲? 帝国軍か?」

 

 アンナとセオリは、窓から体を乗り出して外の様子を確認する。だが、遠くが燃えているために様子が見えない。だが、海岸が燃えているだけで、街に被害は及んでいない。

 街では、警報が鳴り人々が慌てて荷物をまとめて避難を始めている。窓の下で、非難する人々が大勢列になって進んでいく。

 

「御客さん! 今外で死神が暴れてるらしいんだ! すぐに避難しておくれ」

 

 部屋のドアを慌てて開けたポッチャリ体系の宿主が避難を勧める。2人は死神の名前に驚き、あの時争いを思い出す。完敗と言うには、酷く無残な負け様だった。

 ヤハの忠告通り、死神シアンとジェノリセッターは、訪れた。しかも、周囲を焼き払った事からも以前にも増して凶暴性が増加したと考えられる。

 ヤハに復讐を誓い、訪れたはいいが、ヤハは既に街に居ない。そうなれば、怒りに呑まれている死神は、街の人間を皆殺しにするかもしれない。

 

「今死神は?」

「自警団と、御客さんの仲間が食い止めてくれてるらしいけど……、ってそんな事より避難してください!」

 

 宿主に詳しい情報を聞き、2人は我先に走り出した。押しのけられた宿主がクルクル回っているが2人は構わず階段を下りていく。

 

「こら! 階段を使いな!」

「遅いんだよ!」

 

 一段一段降りるのが耐えられないセオリは、螺旋階段の中心から飛び降りた。行儀の悪さに怒鳴るが、今はそれどころでないとアンナも手摺を滑る。一階に辿り着き、ドアから飛び出した二人はゾイド保管庫に入り、それぞれの愛機に乗り込む。

 

「とりあえず乗り込んだけど、アンタはどうする気だい?」

「アイン達を助けて、死神を倒す」

「馬鹿おっしゃい! コテンパンにやられたあんたが勝てる訳ないだろうに」

「同じ轍は二度と踏まない! 行くよオウドライガー!」 

『ガォオオ』

「待ちな。たっく、あたい達も行くよディバイソン」

『モォオオ』

 

 先に飛び出したオウドライガーと後を追うディバイソン。先行したオウドライガーの方が圧倒的に速く、ディバイソンでは追いつけないが必死に追いかける。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 火の絨毯のような爆撃の中心。燃え盛る爆炎の中で一体の帝王が吠えていた。その咆哮や、威厳を誇り何人たりとも逆らえない声。

 

「あの海賊は何処だ? あの野郎は何処だって聞いてんだ!」

『キュイィイイン』

 

 次々に襲いかかる砲撃を両サイドの盾から発生したシールドで防ぎながら、龍帝が口内の荷電粒子砲で砲撃の元を一掃した。怒りに任せ発射された荷電粒子砲の威力は通常よりも高く、警備を務めていたモルガ部隊を消し飛ばした。

 

 だが、海岸を警備する自警団の戦力は思いのほか多く、地上のモルガ部隊、空中のシンカー部隊が計12名存在しており、数の暴力にて死神の侵攻を食い止めてた。

 地上のモルガ部隊の半数が壊滅。爆発する機体から逃げ出す自警団と彼らの間を縫って砲撃を続ける地

上部隊。さらに上空から爆弾を投下して翻弄するシンカー。

 

 その中に白いビームガトリングを連射するセイバータイガーと主砲で攻撃する茶色いカノントータスが居た。ジェノリセッターの荷電粒子砲の着弾点から少し離れた個所で攻撃を続けていた。

 彼らに自警団から通信が入る。

 

「あんたら、無事か?」

「はいっす。でも、そろそろヤバいっす」

「あぁ、死傷者は少ない。だが、一撃で何十と倒され、こちらの攻撃が無力なのは消耗戦になる」

「気合。なんとか、街の人が逃げる時間だけでも稼がないとならない」 

 

 自警団の言葉にハットンが答え、忍び装束に全身を包んだアインが喝を入れる。幸いモルガのほとんどは、隊長機の指示を聞くオートなので自警団の被害は機体のみ。予想以上にシンカーでの空中爆撃が有効で善戦を続けている。

 

 ジェノリセッターのコックピットで死神シアンは、苛立っていた。

 

「アイツはまだ出てこないか……ゴミ共もウゼェ。先に掃除してやる」

『キィインキュイイイン』

 

死神の男は、操縦桿のスイッチをカチカチと操作し、モニターにロックオンカーソルが大量に出る。

それら全てが、空中で旋回するシンカーと砲撃している地上のゾイドをロックする。

 

「ハーミットデストロイヤ」

 

死神が引き金を引くと同時。背部のブースターから小型の反射板が射出され、意思を持ったかのようにジェノリセッターの周囲を囲む。

其に目掛けて荷電粒子砲が発射され、反射板に命中することで屈折。

 

360度全方向、全標的に荷電粒子砲が照射された。

 

「なんだと」

「うわーー」

 

空中で戦うシンカー部隊は、一瞬で全機が落とされ多くのパイロットが脱出する。地上のゾイド達に襲い掛かった荷電粒子砲は、モルガ達を次々蒸発させ、アイン達にも迫った。

 

(まずい、逃げられない)

(不覚‼)

 

不意をついた攻撃で回避行動が間に合わなかった二人。

 

「はぁあああ!」

 

荷電粒子砲が直撃する寸前、二機の前に突如走ってきたオウドライガーが立ち塞がる。前に飛び出した時には、Tシールドが起動されており、ジェノリセッターの広範囲指定攻撃を全て回転する粒子が呑み込んだ。

 

「セオリさん! 目覚めてたんっすか」

「あぁ。ついさっき起きて、駆け付けたんだ。……まさか、アイツが来てるとは思ってなかった」

「歓喜。よかったであります!」

「喜んでないで逃げるんだよ!」

「あ、アンナ」

「だから、とっとと逃げる準備をしな! 死んじまうよ」

 

 セオリが目覚めた事に喜ぶ二人。だが、オウドライガーの背後で死神は殺意を向けていた。

「あのライガー、温泉街の時に居た……生意気な女の乗ってる」

(完全に破壊したと思ったが……ピンピンしてやがる。あのゾイドからは、海賊野郎のゾイドと似た気配を感じるんだが……あれも帝王なのか)

 

「試してみるか、期待は薄いがな」

 ロックオンカーソルをオウドライガーに集中し、主砲の引き金を引いた。口内から、ジェノリセッターの内部で圧縮された荷電粒子砲が照射される。

 一瞬でユース団とセオリを光が呑み込み、一瞬で爆炎が上がる。だが、目の前が光に呑み込まれる直前、呆然とする面々の中でセオリのみが、舌舐めずりした。特に意識せず、それどころか意識が薄れていくような感覚の中で操縦桿を前に突き出していた。

 

 

「ふん、杞憂だったのか。見た限り海賊野郎は居ねぇか……だが、海に出れば追いつける筈」

 一撃でセオリ達を撃破したと思い、海路に逃げたであろうヤハを追う算段を立てる死神シアン。

『ガォオオ!』 

「あ?」

 

 海を渡ろうとスラスターの出力を変更した途端。爆発の中から、猛スピードでオウドライガーがストライクレーザークローを交え飛び掛かる。

 正面からでも、警戒していない攻撃は避けられずジェノリセッターの首元の装甲が大きく破損する。迷う事の無い喉元への一撃にジェノリセッターの上体が大きく仰け反る。攻撃をまともに受けた部分は、内部の機械と回路から火花が噴き出してた。

 

「荷電粒子砲が発射不可能だと?」

『ガガ、kィイガガ』

 

 喉を抉られ、声が出にくいジェノリセッターが仰け反った上体を戻しつつ、シアンが瞬時に損害を確認する。

 

その間にもオウドライガーの第二撃が襲い掛かった。ストライクレーザークローを決めて着地すると瞬時にジェノリセッターの尻尾に噛み付いた。

噛み付いたまま、体を横に回転。尻尾を巻き込んでの回転でジェノリセッターを地面に叩き付ける戦法を取った。

だが、ジェノリセッターは、背部のバスタークローを地面に突き刺し受け身を取る。その不安定な体勢で両サイドのハサミをオウドライガーに突き出した。

 

『グウウアァアウ』

 

突き出された二本のハサミ、それを片方は前足もう片方は牙で受け止めたオウドライガー。その瞬時の判断や技術は、死神を驚愕させた。追撃にと地面に突き刺していたバスタークローを頭部に向けると、空いた方のストライクレーザークローで付け根のアームを破壊された。

 

宙を舞い、地面にバスタークローの片方が落ちる前にもう一方のバスタークローからレーザーが発射される。至近距離で発砲されたレーザーは、オウドライガーの頭部にヒットする。たまらずオウドライガーが大きく後ろに跳んだ。

命中した頬箇所が焦げており、オウドライガーに確かなダメージを与えたことが垣間見れる。

 

「覚悟は出来てるんだろうな」

距離を取ったことで余裕の出来た死神が憎悪をオウドライガーに向ける。

「ふふふ、何の覚悟かしらね」

 

するとオウドライガー中から、女の笑い声が聞こえ死神の神経を逆撫でする。

 

「てめぇ」

「死神だか何だか知らないけど、性能に頼って甘ったれてる奴に私は倒せないわ。坊や」

 

コックピット内で豹変したセオリが、挑発と共にオウドライガーを走らせる。数歩走らせ、すぐにジャンプさせる。

突撃を予期した死神は、操縦桿を引きスラスター逆噴射で後ろに移動する。

着地地点にいるジェノリセッターが消え、空中で無防備なオウドライガー目掛け、死神が両サイドの鋏盾に備わった小型荷電粒子砲とバスタークローのレーザーを同時発射した。

 

 空中では幾ら速くても回避不可能。それを過去の戦闘から学習している死神が見逃すはずはない。洗練された射撃センスから繰り出された魔弾。

 

「基本は弁えてるのね。でも、教科書通りじゃ駄目よ」

『ガォオオ! グウゥウ、ガアアア』

「避けやがった」

『ガガ、キィイン』

 

 空中で回避不可能な攻撃、それをセオリは、オウドライガーの四肢にある粒子噴出口から粒子を噴出し、空中にて直角に飛んだのである。右前脚と後脚からの噴射で曲がり、左足で地面を蹴りながら、再び右サイドから激しい粒子の放出で回転と加速を伴った爪がジェノリセッターの右鋏盾に激突する。

 回転の伴った全力の一撃は、ジェノリセッターを吹き飛ばすに十分だった。

「覚悟はいいかしら坊や?」

「貴様!」

 

 勢いよく吹っ飛んだジェノリセッターの右鋏盾は醜く歪んでおり、使用不可能になってた。現在武器を3つも破壊されたジェノリセッターの脅威は半減している。セオリは、ニヤリと笑いながら操縦桿を巧みに操作した。

 

 地面を蹴りながらも、粒子噴射で予測不可能な軌道で縦横無尽に動き回るオウドライガーを捕える事は、死神やジェノリセッターにも出来ないでいた。

「ぐぉおおお」

『キィイイ』

 

 まさに、ラッシュだった。超高速な上、変則的な攻撃でジェノリセッターをストライクレーザークローで攻め続けるセオリ。以前、死神シアンがアインとセイバータイガーにやったように、一度も地面に着地させにまま何度も殴打していく。ジェノリセッターの装甲も頑丈だが、ストライクレーザクローで何十回も攻撃されれば、徐々に内部から破損していく。

 

「つまらないわね」

「殺す殺す! いつまでやられてやがる‼」

 

休む暇なく続く猛攻。時々聞こえてくる女の笑い声が死神の導火線に火を着けた。死神の怒りをジェノリセッターのゾイドコアが受け取り、活性化が始まる。

ジェノリセッターの目が光輝くとオウドライガーは、尻尾による一撃を受けていた。

 

「? ふふ、ついに本気になったのね坊や」

 

尻尾による一撃を受けつつも、体勢を立て直して着地したオウドライガー。上にいるジェノリセッターを見上げるとジェノリセッターもオウドライガーを見下ろしていた。

 

「この子の動きが見えるようになったのかしらね」

再び飛び上がり、謎めいた軌道で攻撃するセオリ。だが、ジェノリセッターは、高速移動するオウドライガーの前足を見事に前腕でキャッチし、スラスターで加速したまま、落下する。

 

「……なるほど」

 

このままでは、凄まじい勢いで地面に叩き付けられるオウドライガー。だが、コックピット内の豹変したセオリは、余裕の顔だった。

 

「オートパイロットにしたのね」

「ぐああ」

 

オウドライガーが地面に激突するコンマ1秒。それを狙い粒子の最大噴射で回転。巴投げのように逆にジェノリセッターを上から叩き付けた。

『ガグ、キィイキィイン』

 

自身の速度も利用された一撃にジェノリセッターもダメージを負ってしまう。

それでも帝王であるジェノリセッターは、倒れない。残った方のバスタークローを杖にし起き上がり、前腕の小型キャノンと背部のミサイルを全てオウドライガー目掛けて解放した。更に残った鋏盾を射出し、自動操作で向かわせる。

 

「もう、タキオン粒子の内蔵量が少ないわね。セオリと違って私じゃ精製は出来ないのね……避けれるかしら?」

『ガォオオ』

 

虫の息と思えない猛反撃。コンソールに写ったデータを見る限りオウドライガーのエネルギーが落ち始めていた。

故にTシールドを展開できず、避ける事になった。セオリ?の問にオウドライガーが「愚問だ」と言わんばかりに返事し駆け出した。

攻撃の雨を掻い潜り、ジェノリセッターへの雪辱を果たすべく前へ。

 

ーーーーーーーーーーーー

一方のユース団はと言えば、機体にダメージが残り動くことが叶わず帝王同士の戦いを見るしかなかった。

彼らの目には、ジェノリセッターを翻弄し、攻撃を掻い潜るべく地面を走り回るオウドライガーが映っていた。

 

「セオリさん、急に強くなったっすね」

「なんか、話し方も変わって……あれは本当にセオリなのかい?」

「疑問。この前、ステルスゾイドに襲われた際も性格が変わって相手を圧倒してたであります。其にいつもは、オウドライガーから感じるのは、勇気や暖かみなのに……今は、殺意と暴虐、そして深い愛を感じるであります」

 

三人は、豹変したセオリに困惑していた。自分達だけでない、セオリも何か訳有りであると考えていた。恐らく、今のセオリは、訳有りなのだろう。

 

「あのシアンとジェノリセッターを相手に常に優位ってどれだけ強いんっすかね」

「元々、素質は高いと思ってたさ。ただ、経験や訓練不足で無駄が多い所が有る。でも今は洗練されてる」

 

ユース団は、一生に一度見れるかわからないレベルの戦いに感動すら覚えていた。

敵の砲撃の中を針に糸を通す如く潜り抜ける様は、芸術にも見える。

 

すると、突然セオリからアインに通信が入る。

「何故。せ、セオリちゃんでありますか?」

 

アインがセオリに質問をすると、セオリは攻撃を避けながら答えた。

「違うわ。貴方は妹のお友達だって思ったから連絡しておこうかなって」

 

画面の向こうにいるセオリは、希にアインを見ながら戦闘を続けている。

「質問。今妹と言ったでありますね? もしかして」

「そうよ。私は、イオリ。いつも妹(セオリ)が御世話になってるわ。訳は説明できないけど、この死神は、私が退けるから安心してね。そうだ、妹に私が表に出たこと言っちゃダメよ? 今私を意識すると不味いのよ」

「……。確かにややこしそうであります」

「だから、お願いね。一つだけ教えてあげる……私は絶対にセオリの味方よ」

 

画面越しにセオリ、いやイオリは微笑み掛けながら通信を切った。それと同時にギリギリまでジェノリセッターとの距離を詰めたオウドライガーが飛び掛かる。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「てめぇ、勝ったつもりだろうが、あめぇよ」

「まぁ!」

 

飛び掛かるオウドライガーに対して、死神は機体制御をジェノリセッターに授与。ジェノリセッターのOSがオウドライガーの速度や動きに反応し対処、逆にシアンが火器全てを制御し操る戦法で対処したがオウドライガーの猛攻は止められなかった。

だが、止められなかったにではなく、止めなかったのだ。

 

オウドライガーが飛び出すのを見計らい、シアンはジェノリセッターの破壊された荷電粒子砲の引き金を引く。壊れていた筈の兵器は動かない。

 

しかし、それは通常のゾイドにのみ言えることで帝王は省かれるのだ。

喉元の損傷が瞬時に再生し、ジェノリセッターの荷電粒子砲が発射された。

 

「こ、こいつ!」

「予想外だったわ。帝王は謎が多いのね……妹、セオリよりアナタずっと強いわ。でも、坊y、シアン君、私は負けないわ、妹のために」

 

至近距離の最大火力荷電粒子砲を正面から受けたオウドライガー。イオリは、飛び出す前にTシールドをいつものように上にではなく進行方向に回転させた。

其は即ち膨大な粒子竜巻のドリル。その中心でオウドライガーもストライクレーザークローを使用しながら回転し、突撃する。

高速回転する粒子シールドとその中央で超高速回転する必殺技。それは、ジェノリセッターの荷電粒子砲を削りながら、真っ直ぐにジェノリセッターに迫る。

黄金に輝く竜巻は、見事に ジェノリセッターの胸部捉えボディを削り上昇していく。

 

『キィインクィイイン』

『ガォオオオオオオオ』

「ばかな、また俺が」

その威力や凄まじくジェノリセッターの装甲や武装を一瞬のうちに粉々にして行き、素体のみが残っていた。

それでも上昇をやめないオウドライガー。激しく回転しながら咆哮をあげる 。

 

「強いだけじゃ、勝てない事もあるのよ。憎しみだけじゃ、誰も救われないのよ」

「うわ、く」

 

オウドライガーの渾身の一撃『キングストライク』を受け、ジェノリセッターのコックピットのコンソールが爆発した。

オウドライガーのタキオン粒子も尽き、威力が無くなって落下するも機能停止したジェノリセッターだけは、遥か彼方に飛ばされた。

 

『ガォオオオオオオオ。ガォオオオオオオオ』

「この技を思い付いてなかったら死んでたわね。お手柄よセオリ」

 

ドーンと高高度から墜落風に着地したオウドライガーは、屈辱を晴らし天高く咆哮をあげる。コックピット内でだらりと力が抜けイオリ。

彼女の視線の先には、メモが張り付けていた。そこにオウドライガーの必殺技と記され、先程のキングストライクやシールドアタックなどが記されていた。

セオリがオウドライガーの力を引き出すべく編み出した必殺技。イオリは、それを実践し勝利を掴んだのだ。

まだ技術で劣るセオリの案を、技術で勝るイオリが使用することで実験したのだ。

 

「もう、限界ね………ん? また気が付いたら景色が、シアンは?」

 

眠そうなイオリが目を閉じ、再び開けたときには、元のセオリに戻っていた。状況が理解できず困惑する彼女だが、何故かジェノリセッターとシアンを退けたのは、自分だと自覚があった。

 

無意識だったが、手や足が勝手に動いている感覚があり、疲労感を感じていた。

 

「何なんだよ……私の体が私のじゃないみたいだ。ん……そうだ、アイン達は?」

 

勝手に動いていたであろう自身に恐怖から震えが来る。だが、それ以上にユース団の安否が気になりオウドライガーを走らせる。

走り出して直ぐに、地面に倒れている3機を見つける。

 

「みんな、大丈夫か?」

スピーカーで呼び掛けると三機のハッチが開き無事な姿が見える。

 

「報告。全員無事でありますよ~。セオリちゃんこそ」

「怪我はしてない」

 

セオリもハッチを開け、3人に手を振る。

その後ハットンは、使用可能なゾイドの再起動に勤めアインがオウドライガーに同乗し、戦闘後の生存者を探した。

アンナはと言うと、唯一問題なく稼働したディバイソンで街の様子と応援を要請に向かった。

 

「感知。そのモルガのコックピットに人が居るです」

 

後部座席に座るアインが、忍者装束を脱いで肌で気配を察知する。言い方は悪いが死人や残骸は、全て感知できず息のある人や動いているゾイドコアの発する微かな電磁波を受信している。故に生存者探しには最適なのである。

 

素早いオウドライガーと感知能力があるアインで、次から次に生存者を見つけていく。

アンナが呼んできた応援の協力もあり、多くの人間が救出された。

 

「これが死神を倒したゾイド、凄いな」

 

軽傷の自警団員の一人がオウドライガーを見上げて、感慨深そうに感想をのべる。後に他の自警団員や街の人々が、「街を救ってくれて有難う」「お嬢さんに助けられたよ」「旦那を救ってくれてありがとうございます」などセオリやユース団は、感謝され気恥ずかしい目に遭っていた。

 

なんと、今回の戦闘で死者は、居なかったのだ。重傷者や意識不明の人間は多いが、死神が手加減したのとモルガの頑強さ、オートパイロットの機体が多かった事から、帝王を相手にしたにしては、無傷と言っても良いレベルだった。

 

その後、街を出るまでの間、セオリ達は英雄だと祭り上げられていた。

ーーーーーーー

 

場所は一変して、シュセイン帝国帝都。巨大な作戦本部のような場所にて、大きなモニターに3つの映像が映っていた。

 

一つは、全てを焼き払うジェノリセッター。もう一つは海の支配者スキュラクイーン。最後の一つは、ジェノリセッターを倒しているオウドライガーが写し出されていた。その横にセオリの盗撮写真が映っていた。

 

「えー、帝国軍上層部の皆様。今日お集まり頂いたのは、新たに現れた帝王のゾイドについてです」

 

司会者らしき初老の男性が頭を下げ話始める。彼の周囲には顔は見えないが大勢の人間が映像を見る。

 

「予てより予見されていた第四の帝オウドライガーが復活し、此にて帝王は全てを蘇りました。

最初の帝ジェノリセッターが目覚め、我が軍に壊滅をもたらして以来、帝王について研究してきた。そこで判った帝王のこの世に存在し得ないテクノロジーを求め捜索してきました」

 

男が話続けると、議会の壇上にいる男から声が掛かる。

「前置きは良い、用件のみを話せ」

「こ、これは殿下失礼しました。おほん、オウドライガーなる帝王の所持者は、女であり未熟であると報告があり、早急に写真の女を取り込むかオウドライガーを奪取することに着手するべきです」

「なにゆえ?」

「帝王の所持者が成長すれば、それだけで驚異となります。まだ目覚めて間もない帝王と未熟な所持者のオウドライガーならば、楽に手に入れられるかと。ですのでジェノリセッターとスキュラクイーンに向けた盧確部隊も召集すべきです」

 

男の発言にざわざわと議会がざわめく。帝王が欲しい帝国にとって、オウドライガーは最優先にすべき捕獲対象なのだ。しかも、所有者は無所属で介護もないため共和国や反帝国国家に取り込まれては不味い。

 

「わかった。至急指令を出そう。獅子皇捕獲作戦を承認する」

「有りがたき幸せです」

 

殿下と呼ばれた赤髪で強面の男性は再び席に座り、指で台座を叩きながら、隣にいる同じく赤髪の優しげな青年に声をかけた。

 

「今宵の作戦、お前の出番が来るかもしれんぞ。覚悟しておけクロード」

「……」

 

男が声をかけるも、男より若い青年は画面を見たまま反応しない。

 

「聞いているのか! クロード・シン・シュセイン! 帝国一族として自覚を持たんか‼」

「……可憐だ」

 

青年は隣で怒鳴る男の言葉が耳に入らず、画面に写るセオリを見て呆ける。

 

「この馬鹿者をなぜ父上は、皇子などに認めたのか……」

 

男は顔を押さえながら、溜め息を吐いた。それと同じタイミングで3の男女がセオリの写真を見てそれぞれ別の行動をとっていた。

 

 

「やはり、お前が敵に躍り出るか…」

 

 赤髪に金と銀の瞳を持つ、金獅子の騎士団の団服を着た青年は、無表情で写真を眺め、すぐに部屋の外へと歩き出す。

 

「ほほほ、まさかこのような場でお前を見つけるとはの。これも宿命じゃの」

 

 

 もう一人は、白髪に曲がった腰の白衣を着た老人だった。彼はセオリの写真を見て長年探して居た物を見つけた喜びにほくそ笑む。

 

 最後の一名は、先の二名と違っていた。オレンジの腰まで伸びる長髪と顔の上部を覆う鉄の仮面から覗く朱眼がセオリの写真を怨みの籠った目で睨み、グシャグシャと写真を潰すと脚で踏みにじった。

 

「うふふ、私の前に現れたのが運の尽きね……セオリ」

 

  

 そこで議会は終わりを迎えた。

 

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