新ZOIDS伝説ー獅子皇の章ー   作:ドラギオン

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英雄のゾイド

「まさか、こんなことになるとは」

 

 地下の空洞を利用した牢屋。そこの鉄格子を握りしめながら、セオリが呟いた。

 

「どうしよう……」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 海辺の町の復興作業が始まり、その間にセオリ達は旅立つ事にした。

 目的地だが、アンナが避けたがっているミロードは候補から外し、ミロードを迂回して別の中立地帯に向かう事を決定した。

 

「……」

「……」

「……」

「偉く静かじゃないか? どうしたって言うんだよ」

 

 現在、セオリ達一行は、ミロードを離れるため険しい渓谷を歩んでいた。隊列を組んで戦闘にオウドライガー、後方にセイバタイガー、ディバイソン、カノントータスの順で移動していた。

 いつも煩いユース団三名が、不気味な程静かなのでセオリが気にかける。

「そ、そんなことないっすよ」

「あ、あぁ。それにいつもあたいは静かじゃないか」

 

 自分達も変だと思ったのか、大人組が慌てて話し始める。だが、アインの様子が急変した。

 

「駄目。アイツが来た。アイツが来たであります!」

 

 急に目に見えて震えだし、悲鳴を上げながら両腕を自らで抱き、シートの上で丸まる。現実から目を逸らすように塞ぎこむ。

 

「アイン! 気をしっかり持つっす!」

「この反応、アイツが近くに居るのかい?」

「アイン、アイン! どうしたんだ? 何が来るんだ?」

 

「ああ。いや、もうあそこはイヤー!」

 

 大人二人は、アインの様子に周囲を見渡し警戒する。だが、突然アインが悲鳴を上げ、セイバータイガーを走らせる。前方に居るオウドライガーを押し退けて駆けだすアイン。セオリはアインの豹変に呆然と立ち尽くす。

 駆けだしたセイバータイガーだが、少し進むと停止し、渓谷の上を見上げて後退りする。

 

「なんだあれ」

 

 セオリもアインの視線の先に目をやる。丁度太陽と重なり、目を細めると影だけが見えた。

 

 影は、鬣を持った四足歩行の大型ゾイド。背中に装備された煌めく巨大な太刀が光を反射して渓谷を掛け降りてきた。

 

(ライガー?)

 

 傾斜の激しい坂道を全速力で駆け降りたゾイド。その姿は、正にライガータイプだった。青と白の配色で背中に背負った大太刀が目立った。

 

「セオリ! 退きな‼」

「何で此処に」

 

 オウドライガーを睨むライガーに呆然としていたセオリの背後から、ディバイソンとカノントータスが飛び出した。二人には珍しく殺気が籠っており、カノントータスとディバイソンで砲撃を始めた。

 

 二機の砲撃に謎のライガーは、素早く回避した。渓谷の壁を走り跳ねながら距離を積める。まず最初に主砲を向けたカノントータスに対して、背中の大太刀の峰を向けた。 主砲を下から払い除けるように動かされた其は、ハットンの乗るカノントータスをひっくり返した。

 

「うわっ」

「よくも!」

『モォオオ』

 

 倒されたハットンの側で、蹄で地面を引っ掻きながらディバイソンが突進を始めた。

 

「……ハヤテライガー」

 

 謎のライガーに乗る男がコックピットの中で呟く。少年の声に反応して、コックピット内のモニターに印された古代文字が変異。其に伴い謎のライガーのボディを炎が包み込む。

 

 猛突進するディバイソンの角が炎に包まれたゾイドを突き刺す前にゾイドがオウドライガー並の早さで動いた。

 

「ちっ、はや」

 

 炎に包まれたゾイドは、素早い動きで攻撃を交わし、アンナの反応を越えた速度で両前足に装着された小太刀でディバイソンの足を切断した。

 

 ディバイソンが倒れた時、炎が高速移動に伴った風圧で消える。中からは、先程と違う赤いライガーが現れた。

 

「これって……エヴォルト?」

『ガォオオオオ!』

 

 セオリの戸惑いを端に、オウドライガーが目の前のライガーを威嚇する。だが、目の前のライガーは此方を気にはするも身動きのとれないセイバータイガーに向かって高速移動を始める。

 駆け出した途端、一気に400キロ近くまで加速した赤いライガー。

 

「拒絶。来るなであります!」

 

 セイバータイガーに乗るアインがビームガトリングを迫り来るライガーに向けて撃つ。 だが、怯えながら撃った攻撃は素早い動きで回避され壁を蹴り加速したライガーの前足にある小太刀にて一瞬でビームガトリングを切り落とされる。

 

 武器を失ったセイバータイガーは、逃走をしようと駆け出すが赤いライガーが前に回り込み小太刀を振るう。

 

「やめろ」

 

 素早い動きをするライガーの小太刀は、セイバータイガーに当たらず、漸く思考が戻ったセオリの刈るオウドライガーの爪に阻まれる。

 

 ギリギリと押さえ付けられた前足を動かそうとするライガー。しかし、体格もパワーもオウドライガーが上で身動きが取れない。

 

「アインは、私が守る。其によくも二人を」

 

「ムゲンライガー!」

 

 セオリの声を聞いたライガーのパイロット。彼は暗いコックピット内で再び名を呼んだ。

 すると今度は、赤いライガーが白銀の光に包まれる。眩しさからセオリとアインが目を閉じた瞬間。光の中から二本の大太刀が振るわれた。

 

「いった」

「うわぁああああ」

『ギャン』

『グォオオ』

 片方の大太刀は、峰打ちでセイバータイガーの頭部を殴打。もう一本の大太刀は、鋭い一閃をオウドライガーの右肩に振るった。

 

 セイバータイガーは、渓谷の壁まで吹っ飛び、オウドライガーの装甲は切り裂かれ右前足のメカが剥き出しになる。

 

「オウドライガーが、なんて切れ味なんだ」

『ガゥウウ』

「これが噂の帝王なのか、今のでも浅いか」

『ガォ』

 

 一撃を貰ったオウドライガーと白銀の二刀流ライガーは、互いに威嚇しながら距離をとる。

 ジリジリと距離を積めるセオリだが、白銀のライガーが二本の大太刀を自由自在に振るいながら隙を見せない。

 

(隙が見えない……其にエヴォルトするゾイドでライガーって言えば)

 

 セオリの脳裏に一つの答えが浮かぶ。だが、何故襲われているのか理解できず結論に至らない。

 

「でも、アインが怖がってる……とりあえず退ける」

『グァアオオ!』

 

 操縦桿をフルスロットルに入れ、オウドライガーを走らせる。馬鹿正直に突っ込んだため二本の大太刀がタイミングを合わせて振るわれた。

しかし、反撃を想定し直前でジャンプしたオウドライガーは、壁を蹴って方向転換した。

 

「速いな。だけどムゲンライガーの敵じゃない」

 瞬時にオウドライガーの動きに反応した青年。彼は上からのストライクレーザークローを切り返した大太刀一本で受け止め、もう片方でオウドライガーの足首を狙った。

 

「こん畜生!」

 

 オウドライガーの足首を狙った斬撃。それを空中で胴体を横に捻ることで回避したオウドライガー。セオリの気合に機体が答えた結果の回避だった。

 攻撃を外した白銀のライガーは、地面を足の裏にあるパイルバンカーで叩き反動で素早く後ろに跳んだ。

 

「ふぅ、どうにか戦えそうだ。伝説のゾイド……ムラサメライガーともね」

 

 セオリは確信していた。目の前にいる強敵こそ、獅子皇の村に存在しなかった伝説のライガーであると。其は、300年前に世界を支配しようと企んだディガルド武国との戦いで勝利を勝ち取った英雄ルージ・ファミロンの相棒、ムラサメライガーであると。

 

 当時や現代ですら解明出来ていないエヴォルトを搭載した不死身のゾイド。大太刀にて数多のゾイドを切り裂き、世界を救った偉大な機体である。其が何故に自分達を襲うのか解らないが、倒すしか道はなさそうである。

 

『グゥウウ』

後ろに跳びながら、ムラサメライガーのエヴォルト形態ムゲンライガーの胸部にある三連重力砲が発射される。

 

セオリも予想していた攻撃のため、体を伏せることで回避し、ムゲンライガーに向かって走る。

 

「ムゲンライガーでは、遅く。ハヤテライガーでは力不足だな」

 

 ムゲンライガーのコックピット内。その中にいる童顔で優しげな顔をした少年は、操縦桿を構えたまま考え行動した。

「行くぞ、ブシンライガー!」

 

 青年の声と意思に反応したコンソール内の古代文字が再び変異。ムゲンライガーは、虹色の光に包まれる。

 

 既に飛び出していたオウドライガーは、虹色の光に突っ込むようにストライクレーザークローを振るう。

 だが、ほんの一瞬の出来事で恐ろしいことが起こった。

 

「え」

 

 全速力の突撃。それを更に上回る速度で動いた七色の光と前足と後足の小太刀、背中に背負った大太刀3本の7本の刃があった。

 セオリすら反応できない別次元の動きに、オウドライガーのボディは至る箇所が斬られ、その場に横たわるように倒れ込んだ。

 

「かは」

 

急なカウンターで頭を打ったセオリは、薄れていく景色の中で七色に輝くライガーを見た。

 

「みんな、こっちに来てください。ちょっと予想外のものが見つかりました」

 

 七色のライガーに乗る青年は、通信で仲間を呼んだ。目の前で倒れたオウドライガーを見下ろし、その後にセイバータイガーを見て微笑んでいた。

 

「何年ぶりかな、姉上。ずっと探していたんだ」

 

 その声を聞きセオリの意識はブラックアウトした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なんでベッドの上なんだ? 最近多い気がする……」

 

 目が覚め、身体を起こすと今までに無い程の綺麗な部屋だった。ベッドもフカフカで寝心地は最高である。もう一度寝ようかと思案するが、頭に巻かれた包帯が全て思い出す切っ掛けとなった。

 

「何故かムラサメライガーに襲われて、負けて……」 

 

 手も足も出ない事にショックを受けていると、ドアが開きメイド服を纏った女性が優雅に入ってきた。部屋に入るなり、頭を下げて言った。

 

「御目覚めですね。王子がお待ちですので、此方に」とドアの方向に誘導されるがままに歩かされる。

 

 廊下を歩いて、大きな扉を開けて入る。そこは大きなテーブルと煌びやかなステンドグラスやシャンデリアが広がる空間だった。

 そのテーブルの先に、赤茶色の髪をしたセオリから見て年下くらいの少年がいた。

 

「ご、ごめんなさい! 俺、つい君も妹を誘拐した奴の仲間かと思って……怪我は大丈夫?」

 

 少年は、セオリの頭を見ながら申し訳なさそうに言った。どんな奴かと思い警戒していた所に謝罪から入った少年。セオリは思考が再び吹っ飛んだ。

 

「姉上の友達を攻撃させた上に怪我させるなんて……早とちりしてすいませんでした!」

 

 テーブルに頭をつけて謝り続ける少年。その姿を見てセオリがクスリと笑った。

 だが、彼の言っていることが理解できない。不思議に思い首を傾げると彼も気が付いたように説明してくれた。

 

「あぁ、セオリさんだよね。俺は、ミロード公国第一王子、エージ・ファミロン。君の前でアインと名乗っていた姉上アインスフィア・ファミロンの弟なんだ」

「は?」

 

 一呼吸で話した彼の言葉は聞こえたが理解が追い付かない。

 

「王子?」

「うん」

「アインが妹?」

「そう、アインスフィアは、この国の第一王姫になる。まぁ、説明はするから食事をどうぞ」

 

 召し上がれと椅子に座らされたセオリの前には豪華な食事が並ぶ。お腹が空いていたセオリは食べようか迷うが、「安心してどうぞ」とアインの兄が勧めたため食す。

 

 前菜から頗る美味しく、テンションが上がり続けナイフとフォークの速度がどんどん上がっていく。

 

(何これ旨いんだけど。どんな高級食材?)

 

「気に入ってくれたんだ。説明はするから食べながら聞いてくれ。妹は体調が悪いから今は外してる。本来は妹を交えて話したかったんだけど、仕方ない」

「?」

「何処から話そうかな……。6年前、僕らの母が亡くなった年に姉上は、突然この王宮から姿を消したんだ。姉上付きのメイドが誘拐したのだとすぐにわかったよ。 

 でも、姉上の捜索は、進まなかった。計画された誘拐で逃げる速度が異様にスムーズで多くの手引きした奴等がいた。ソイツ等のせいで姉上は6年前から昨日まで行方知れずだった。

 でも、帝国軍と戦うオウドライガーと一緒に行動する集団の中で姉上と思わしき人物がいると聞いて、海辺の街の後にミロード付近を通ると思って網を張ってたんだ 」

「オウドライガーは、そんなに有名なの?」

「あぁ、大陸中に広まってるよ。獅子皇オウドライガーは、目新しいゴシップだから広まるのも早いよ」

(なんか、いい奴ぽい。けれど、アインの取り乱し方は、異常だった……このミロードに何かあるのか?)

 

 丁寧に説明しながら自身も食事をするエージ。微笑みながら話す彼が裏では別人の可能性も考慮した。アインが誘拐されたのなら、何故今までアインはミロードに戻らなかったのだろう。

 自由に旅をしていたアインからは、誘拐されたような素振りは感じなかった。

 

「そう言えば、アイン誘拐の犯人はどうしたの?」

「あぁ、メイドは捕らえたよ。君と行動していたディバイソンのパイロットだね」

 

 やはりかと、セオリは立ち上がりエージの顔を見た。以前からアンナには、今も側に控えるメイドのような仕草が見られた。あの違和感は、アンナの過去に繋がっていたのだ。

「アンナがアインを誘拐?」

「そう、あの女は母の指名で姉上の専属だったけど 、母が死ぬなり裏切ったんだ」

「そんな訳ない。だって、アインはアンナのことを」

「可哀想にね。姉上はメイドに洗脳されてるんだ。だから、帰りたくても逃げられなかった」

 

 目の前で食事を続けるエージ。彼の話を聞いてセオリは怖くなった。彼女の見ていたアンナとアインは、誘拐犯と被害者等ではない。アインはアンナを信頼し、アインは時に母のような情を彼女に向けていた。そんな二人が偽りなら、セオリは人を信じられない。

 

「アンナは、誘拐なんてする人間じゃない。其はハットンだって知って」

「あぁ、親衛隊隊長ハットン・ド・ザルツさんは、姉上誘拐の重要参考人だけど俺が余所見をした隙に逃げてた。彼はアンナ・ヘルシングと共謀した可能性があるから捕まえたかったんだけど」

「親衛隊隊長? 重要参考人?」

 

 次々に語られるユース団の過去。アインが姫でアンナがメイド、ハットンは親衛隊隊長。想像をもしていない肩書きに唖然とする。

 

「アンナは?」

「地下牢に入ってもらっている。本来は即死刑になるところだけど、姉上が泣きながら止めてくるから……今は拘留だけ」

「アインに合わせて貰えるの?」

 

 セオリが立ったまま、エージを見下ろす。彼は特に気にした様子もなく首を横に振る。

 

「今は会わせられない。さて、セオリさんに聞いておきたい事があるんだ」

「な、なに」

急に態度が変わった彼にセオリが距離をとる。距離をとると言っても少し下がるだけだが。

 

「あなたとオウドライガーの力をミロード、敷いては世界のために使いませんか?」

「はぁ?」

「この国は、300年前に世界を救った俺の先祖が、周りの人間に持ち上げられて作られた国。

御神体のムラサメライガーを祀り崇めてきたんだ。そして、今のご時世第二のディガルド武国といえるシュセイン帝国が悪政を敷き、我がミロードは本懐を果たすべく立ち上がったんだ」

「本懐?」

「英雄の子孫である僕らが、再び帝国を打ち倒し、世界を救う。ミロード公国は、新たな伝説を築こうとしている。俺は一族でご先祖様以来初めてムラサメライガーに選ばれたから、いつも帝国と戦ってる。

そして、この戦争の重要点である古代兵器帝王と呼ばれたゾイド達の一機であるオウドライガーを戦力に加えたいんだ。

 英雄の子孫の俺とムラサメライガー、そして、帝王オウドライガーと君が居れば帝国なんか相手じゃない、他の全ての国々の戦争だって蹴散らして世界中に再び英雄が誕生したことを知らしめ、二度と自分勝手な国を出さないようにする」

 

 セオリは、寒気を感じた。彼の言うことは、正しくも聞こえる。だが、なにか気持ち悪いのだ。生理的に嫌悪感を感じる正論。そんな気がした。

 

「戦争に利用するってこと?」

「平和のため、敷いては全ての国々の人に理解させるためだよ」

「それって独裁になるんじゃないのか」

「……今現在世界には、帝国と言う悪がいる。それを倒した正義こそが秩序になるんだ。他の国々も感謝し、ミロード公国の傘下に入るだろう。そして、皆を導き正せば平和は遠くない」

「もし、逆らったりお前の理想に共感できない奴がいたら? 私みたいに」

 

 セオリが疑問と挑発を混ぜて言うと彼はクツクツと笑い、セオリを優しい目で見てこう言った。

 

「手荒な事は嫌なんだ。本来オウドライガーだけでもいいんだが、ムラサメライガーと同じく君だけしか乗れないゾイドなんだね。

 姉上の友達だし、君の考えが変わって手を貸してくれるなら言って欲しい。今は俺の理想を理解できてないだけなんだよ、時間はあるからもう一度考えてみて欲しい。

一つ結論を言うね。帝王を他国や帝国に渡すつもりはない、全てミロード公国の所有物とし平和の礎として使わせて貰う」

「お前、英雄の子孫って肩書きに、人生観も人格も歪められてるだけじゃないか! アインがお前を怖がる理由やアンナが言っていたことがわかったよ」

「へぇ」

「お前だけじゃない、この国の人間は過去の栄光と指名に酔ってる……そして、強迫観念に苛まれてる。

 この国に協力はできない。帝王は戦争に使わせる訳には行かない、仮に戦争に参加しても其は守るためだけだ」

 

 セオリがエージ、強いて言えばミロード公国を拒絶すると彼は手を叩きドアの外に控えていた兵士を呼ぶ。

 

「しばらく牢に」

「畏まりました」

「は、放せ」

 

大柄の兵士に羽交い締めにされたセオリが抵抗するが、頭が傷み力が入らない。

 

「そうだ、もう一つ教えておくね。オウドライガーの過去をミロード公国は知っている。あれは、数千年前に世界を滅ぼそうとしたゾイドだ」

「何だって?」

「隣の海にある海底神殿の文献に残ってたのさ。星崩し女王と呼ばれたオウドライガーの所有者が神々の怒りを引き起こした。そして、暴走するオウドライガーに致命傷を与え、最後は獅子皇の神殿に封印したのが、星崩しの女王の弟とムラサメライガーなのさ。だから、オウドライガーじゃムラサメライガーに勝つことはできない。無駄な抵抗をするならムラサメライガーが再びオウドライガーを封印する」

「やってみろ! 私は二度とお前なんかに負けない!」 

 

 その言葉を残し、エージの呼んだ兵士に連行される。連行されるがまま、地下牢に入れられる。ガシャンと金属製の鉄格子を閉められ、牢に閉じ込められる。

 牢屋の中は、広めだが石畳みの上でひんやりとしており木製の簡易ベッドの上に薄い毛布がかけられ、灯りは蝋燭と天窓から入る光のみだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーそして、現在に至るのだった。

 

「うーん、此処を脱出してもオウドライガーに乗り込めるかな?」

 

 牢屋でポツンと立つセオリの問いに応える者はいなかった。……事も無かった。

 

「無理だね。仮に牢を抜けられてもオウドライガーは、ミロード城の保管庫に厳重に保管されてるよ」

「うきゃ!」

 

 誰も居ないと思っていた牢屋で、別の声が聞こえ悲鳴を上げる。右側から声がして、そちらを向くと蝋燭の僅かな光だがアンナらしき女性が居た。

 

「け、怪我してるのか? あいつら、抵抗できない女に」

 

隣の檻で手足に枷をつけられ、頬から血を流しているアンナ。傷は深くないが殴られたのだろう唇が切れている。

 

「アインを、お嬢様を苦そうとしたんだけど捕まってね……あたい達の事、聞いたんだろ?」

 

「うん」

「王子の言ったら事は本当さ。あたいがお嬢様を誘拐し外の世界に連れ出した」

「何で、そんなことに?」

 

セオリの問にアンナは、苦笑する。だが、彼女の口から答える気はなさそうだった。

 

「説明。私が答えるであります」

「ア、アイン」

「成功。上手い具合に抜けだしたであります」

「お、アイン譲様、言ってはいけんません。セオリに、この国の事情に巻き込んでは……」

「いや、もう手遅れだし」

 

 突然、地下牢の扉を開けて入って来たのは、忍者装束を脱ぎドレスを纏ったアインだった。いつもと違い表情に影があり、目元は赤く腫れている。

 

「ですが、セオリはまだ王子に協力的なフリをすれば助かるんです」

「拒否。駄目であります! 兄上や重鎮たちは、セオリちゃんを利用する事しか考えていない……。セオリちゃんには全て知る権利があるであります」

「ですが」

「アンナを勘違いさせたまま、誤解を解かないなんて嫌です。それに弱気なアンナなんて……嫌です」

「……話を聞くにしても、先に脱出しないといけない」

 

セオリが両手で檻をガシャガシャと揺らす。それを見たアインは、裾から鍵を取り出す。

 

「内緒。セオリちゃんを説得する名目で、警備室からくすねたであります。それに今脱出してもどうにもならない」

「私達の相棒が捕まったままだもんな。保管庫って厳重なの?」

「肯定。並大抵の攻撃では無傷であります。好機を待つことをお勧めするであります」

「好機って……」

「信頼。私達には、ハットンが居るであります。彼は逃げたのではないです、必ず戻って来てくれます。ハットンが来るまでの辛抱でありますよ」

 

ニッコリとセオリを励ましながら、アインは話始めた。このミロード公国で起こっていること、これから起こるであろう未来の話を。

 

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