「さてと、あんた達の処遇をどうしようかな」
パンパンと両手を叩きながら、足元のグルグル巻きにされている3人組を見て呟く。
「この子、腕っ節俺より強いっす」
「不覚。……気を失っていなければ」
「この縄を早く解きな」
常々に文句を述べるユース団三名。その背後でオウドライガーに踏みつけられ延びているゾイド三機。数十分前、セオリとライガーを襲い返り討ちにあった三人の内、気を失っている女性二人は、大人しく縛られた。しかし、ハットンだけが気を失った振りをしてコックピットを開けた瞬間、セオリに襲いかかった。
ゾイドで勝てなくても、腕力でなら勝てると踏んだのだ。でも、セオリがカウンターに重いパンチを繰り出したため、あえなくノックアウト、気絶している間に縛られてしまったのだ。
セオリは、縛り上げた三人に、何故狙ったのか問い詰める。初めは騒いでいた3人だが、オウドライガーが睨み付けると正直に話だした。
「あんたら、私とオウドが狙いって言うか取り合えず近くに居たカモを狩ろうとしたと?」
「そうだよ。なんか珍しいゾイドの上にライガータイプは、高く売れるのさ」
「金欠。我らは目的がある」
「まぁ、こんな時代っすからね。一攫千金の方法があれば群がるものっすよ」
三人が、自白した内容によると大金が3人には、必要らしい。本来は、なんでも屋をやっているユース団だが、今だけは盗賊の真似事をしてでも金が欲しいらしい。ふざけた三人であるが、目は真剣であった。まるで何かを焦っていた。
「なんでお金がいるの?」
「そんなことアンタには関係ないだろうに!」
「黙秘」
「……実は、俺ら恩人がいて、恩人の病気を治すためには、めっちゃ高い薬草が必要なんっすよ」
「なんで喋ってるんだ!」
「反乱!」
黙秘する二人を傍に、年長者であるハットンが素直に白状する。それに女性二名が怒るが縛られているため口を塞ぐ事も出来ない。
「あんた、俺らを捕まえてどうするつもりっすか?」
「正直に言うと、対処に困ってる。共和国の憲兵に渡そうにも……初犯で失敗してるしね」
「逃がしてほしいっす」
「……ぶっちゃけあんたらを運ぶのは無理があるから、解放しても良いけど」
「なにか条件が必要ですか? なら、俺らが街まで送り届けるっす」
急に条件を提示してきたハットン。アンナとアインは、複雑そうな表情で話を聞いている。
「ここいらいったいは、ハンターの狩場っす。お嬢さんがこのまま闊歩すれば、街に着く前に5回はハンターに襲われます」
「実際にあたしらに狙われてるからね」
「危険。ハンターは、我らより凶悪で卑劣」
ハットンに続いて二人も危険だと言う意見に、セオリも思案する。先程は、上手くユース団を退けたが、何度も襲われれば『戦闘恐怖症』が発症し、動けなくなることも考えねばならない。セオリが東の街に行ったことがなかったのは、治安が悪い山岳地帯があったからだ。
もし昨日のように発症する事を考えると、手が自然に震える。
その様子を見たユース団は、いくら強くても女の一人旅は、心細いのだろうと同情し、襲撃した自分達を恥じた。
「言いたいことは判るけど、お前達の縄を解いたりしたら又襲ってくる気だろ」
「くっ」「絶句」
「お金にこまってるとはいえ、犯罪に走りお嬢さんを傷付けた事は、水に流せと言わないっす」
「だったら、どうして」
「厚かましい様ですが、俺達を信じてほしいっす。裏切らないって約束するっす。もし、裏切ったら俺達を殺していいっす」
「何か他に目的があるの?」
セオリが恐る恐る問いかけると、ハットンが真剣な表情で話した。
「俺達ユース団をお嬢さんと同行させてほしい。俺達がお嬢さんに望むのは、ライガーでの助力っす」
「助力?」
「恩師を救うのに必要な薬草が高級なのは、野生の大型ゾイドの巣にあるから、入手が困難なんです。俺達は、お嬢さんに力を借りれれば、自分達で取りに行ける。犯罪に手を汚さないですむし、お嬢さんは、道案内と俺達色々顔が聞くっす。だから、きっと役に立つっす」
真剣な彼の語りに耳を貸し、語りが終わるとアインとアンナが神妙な表情でセオリを見ていた。
「わかった。でも、裏切ったら酷いからな」
「はいっす、恩師に誓っても。でも、薬草採集の件はお願いします」
次の瞬間、セオリが腰に挿していたダガーナイフでロープを切る。
「交渉成立っすね」
「やっと楽になった……縄の後残んなきゃ良いけど」
解放され、体を解すハットンとアンナ。特にアンナは、何度も肌を擦りながらセオリを睨む。
セオリも睨み返すと、視線を逸らされた。
もう一人、忍者装束のアインはと言うとセオリの前で膝をついていた。
「主様」
「え? どうしたんだ急に」
「忠誠。主様に受けた恩情、キチンと返す……お返しいたします」
「うわっ、可愛い」
忍者装束で覆われた顔をさらけ出すアイン。アインの素顔を初めて見たセオリが思わず呟いた。お目目がクリクリで睫毛が長く、頬っぺたは赤みがかり、唇も綺麗な桃色で女性のセオリから見ても大変可愛らしい素顔だった。
「羞恥。恥ずかしゅうございます」
「あんま見ないであげな。アイン極度の恥ずかしがりやだから逃げちまうよ」
「あ、ごめん」
ジロジロ嘗め回すように見ていたセオリに、アインが顔を真っ赤に染め視線を逸らした。
なんやかんやで一時だけの旅の供を得たセオリとオウドライガーだった。
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あれから直ぐに4人は、ゾイドに乗り込み街に向かって進んでいた。正直のところユース団を味方にしたのは正解だった。
地理に明るい上に、ハットンは耳が良くソナー機能を最大限に活かせたのでハンター(盗賊)と鉢合わせる事もなかった。
「そう言えば、名前聞いてないんだけど」
「そうっすね。言ってないし聞いてない。俺はハットンっす」
「あたいは、アンナ」
「証明。アインであります」
3人が次々に名乗っていくのでセオリも名乗ることにした。
「ハットンにアンナにアインか、私は獅子王の村出身のセオリ」
「よろしくっすセオリ嬢」
「感銘。良きお名前ですセオリ様」
「あたいは、セオリって呼ばせてもらうよ」
「うん。他の二人も敬称いらない」
そうセオリが名前で呼ぶことを許可すると、ハットンは普通に呼んだが、アインは黙ってしまった。
「アインは、同年代の女友達いないから名前呼ぶのに照れてるのさ」
「羞恥。///////」
「私も女友達は居なかったな」
それから、暇潰しにと雑談で時間を消費しながら進む一行。ふと、セオリがハットン達に訪ねた。
「そういえばさ、帝王のゾイドって聞いたことある?」
彼女の問に3人とも言葉を失う。沈黙が続き気不味い雰囲気が続いたが、それを破ったのはハットンだった。
「知ってるっす。街で手配書が配られてたっす。帝国軍が追ってる犯罪者、死神の乗るゾイドが帝王だって聞いたっす」
「死神?」
「はい。死神は、恐竜型の帝王に乗り、至るところの村や街、あろうことか帝国軍の基地まで一人で壊滅させてるって話です」
「そんな危険なゾイド乗りが帝王のゾイドに……」
「どうかしたっすか?」「いいや、何でもない」
一瞬、オウドライガーも帝王のゾイドであると話そうか迷ったが、断念する。
「それで国際手配の死神が、一昨日。この山岳地帯で活動する大きいハンター組織と鉢合わせした帝国軍大隊を壊滅させたらしいっす。俺達もその後を見に行ったんですけど、地形が変わってゾイドの残骸すら残ってなかったっす」
「酷い」
「そうさね。やり過ぎって感じもする。きっと狂気にでも憑かれてるのさ死神シアンは」
アンナの発言にセオリは、思わずライガーの足を止めてしまった。最後の名前に聞き覚えがあったのだ。
(シアン……まさか、ウルティガのシアンじゃないよな)
新たな悩みが出来たセオリだが、気のせいと決めつけ日が沈むまで移動し、ユース団と夜を明かした。