転生したらネコちゃんだったから自由に生きていきます。 作:田中滅
「……………」
静かに目を閉じ、流れゆく魔素を体内で高める事で猫又が持つスキル《仙術》の力を更なる高みへと昇華させる為にネコリアは、町から離れた森の中で、ひっそりと寝転ぶ
「ネコちゃ〜〜ん」
「………あら、リムちゃん。どうしたの?」
名を呼ばれ、閉じていた眼を開くと相棒のスライムが、ぽよ…っと音を鳴らし、此方に向かって来るのが見えた
「お客さんが来たから、ネコちゃんにも会わせたくてさ。シズさん、この子はネコちゃんことネコリア=テンペストだ。俺たちと同郷なんだよ」
そう告げるリムルの隣には、確かに見慣れない人物が佇んでいる。だが、ネコリアは彼女を知っていた。それは何故か?数日前に《千里眼》で見た光景に映っていたジュラの森を目指す一行の中でも一際に目立っていた人間だったからである
「そうなんだ。初めまして、ネコさん。私はシズ、スライムさんに助けてもらった冒険者だよ。出身は日本……アナタもなんだよね?」
「そうよ。転生してから、三百年になるけど……同郷に出会うのは、アナタで二人目になるわね。まあ、そのもう一人が其処のエッチなスライムな訳だけど」
「エッチじゃないやいっ!」
「仲良しなんだね、スライムさんとネコさんは。二人はどうしてこの世界に?さっき、ネコさんは転生とか言ってたけど、私みたいな召喚とは違うんだよね?」
スライムと猫又という奇妙な二匹、その組み合わせにシズと名乗った女性は問い掛ける。人間だった筈の二匹が、この様な姿になった理由が気になっているようだ
「前世で刺されちゃってね。その時に色々と考えてたら、今みたいなスライムボディになったんだ」
「刺された?なに、下着泥棒をした報い?」
「してないっ!」
「なら、覗きか」
「してないって言っとろうが!!!だいたい……そういうネコちゃんは、この世界に転生したんだ?俺よりも前に死んだんだろ?」
「うっ………べ、別にいいじゃない」
流れるようにリムルの死因を捏造していたネコリアであったが、自分の死因を聞かれた瞬間に言葉を濁し始める
「いや、教えてもらいたいね。シズさんもだよな?」
「う、うん…出来れば知りたいかな?」
「溺れたのよ……」
外方を向き、呟くネコリア。その声が聞き取れないリムルは彼女に近寄る
「えっ?なに?よく聞こえないんだけどー」
「だから!溺れたのよ……」
「なんだってー?」
「溺れたのよっ!なにっ!?カナヅチが悪いことっ!?別に良いじゃない!泳げなくても生きていけんのよっ!!!」
何度も聞き返されたのが、腹に立ったネコリアは遂に大声を発し、更に開き直ってみせる
「どうして、溺れちゃったの?」
「子どもを助けたら、逆に投げ出されて、そのまま溺れたのよ……。あたし、昔から筋金入りのカナヅチだっていうのに、正義感が先走っちゃったのよ」
「ほう、ネコちゃんが人助けとな。珍しいこともあるんだな」
「引っ掻かれたいの?リムちゃん」
しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった
「シズちゃんだった?アナタは見る限り、召喚者よね。前に聞いたことがあるわ、あたしとかリムちゃんみたいな存在よりも定期的に現れる異世界からの転移者、其れを召喚者って呼ぶ……そうよね?」
自分とは異なり、人の姿を持つシズ。其れは彼女が転生者とは異なった存在、即ち召喚者である事を指している
「ネコさんは物知りだね。うん、私は召喚者……ずっと昔に、この世界に召喚された。最後に見た光景は辺り一面の炎だった……怖い音が鳴り響く中で、住み慣れた街は紅蓮に染まっていた」
「もしかして……空襲か?」
「戦争時代の生まれなのね。話から推測するに、きっと東京大空襲のことじゃない?」
「多分。私の教え子……その子も日本出身なんだけど歴史の授業で習ったらしいね」
「リムちゃん。思念伝達を使えば、記憶にある世界を見せてあげられるわよ」
「そうなのか。じゃあ、いっちょ張り切って!」
《大賢者》に呼び掛け、スキル《思念伝達》を使用し、自分の記憶にある光景を映し出す
「見えるか?」
「うん……えっと誰かの部屋かな?」
「テレビの前に箱ティッシュがあるわ」
「それ違うっ!今の無しっ!見せたいのはこっち!」
映し出された部屋は、如何にも男の一人暮らしという雰囲気の場所だ。ネコリアは見覚え無いが、リムルは心当たりがあるらしく、即座に光景を切り替える
「これがあの……炎に包まれた町……?」
「シズちゃん。確かに人は争い、傷つけ合うこともあるかもしれないわ。でもね?奪うだけが人じゃないの。何かを生み出すのも、人だから成せる事なのよ。だからこそ、あたしとリムちゃんは皆が楽しく暮らせる町を作ろうとしてるの」
「目指すは摩天楼っ!町が出来たら、遊びに来てくれよ?同郷のシズさんが第二の故郷って言えるような立派な町を作るからさ」
「……ありがとう、その時はお邪魔するね。私の教え子たちと一緒に……」
その時だった、シズに違和感が生じたのは。《仙術》の影響で五感が強化されていたネコリアは、その違和感に気付き、素早く距離を取る
「どうした?ネコちゃん」
「リムちゃん……ヤバいのが来るわ。魔力の量が明らかに増大してる……!!!」
「どういうことだっ!?大賢者っ!」
『告。個体名ネコリア=テンペストの証言通り、対象の魔力が大幅に増加。警戒してください』
そして、シズの体が宙に浮き上がっていく。同時に体からは纏うような火柱が上がり、獲物を狙う獣の如き殺気が溢れ始める
「まるで別人じゃないか……」
「シズ………聞いたことがあるわ、前に。爆炎の支配者シズエ・イザワ、それが彼女の本当の名前。そして、体内にイフリート、つまりは炎の精霊を宿す最強の
「「「シズさん……っ!!!」」」
ネコリアが保有する知識から、彼女の正体をリムルに教授していると火柱に気付いたシズの仲間である三人の冒険者が慌てた様子で姿を見せる
「お前たちっ!離れてろ!」
「リムルの旦那……悪いが、そんな訳にはいかねぇよ。俺たちは冒険者だ、仲間を放っておける程、甘くはねぇ」
「そうでやす。力をお貸しするでやす」
「ほっとけないわ!……なにこのネコちゃん!?すっごく可愛い!!!」
心強い味方、彼等の決意に押され、共闘を黙認するリムル。一方で金髪少女のエレンも決意を固めるが視界に入ったネコリアの姿に眼を奪われた
「あら、見る目あるわね?あとで特別に毛繕いさせてあげるわよ」
「お願いしますっ!」
「エレンさんっ!?状況を考えてもらえるかなっ!?」
「うっさい。バカカバル」
「んだとっ!?」
状況が二転三転する中で、リムルとネコリアは只管にシズを見据えていた
「さて…イフリートだったか?お前の罪を数えろっ!」
「アンタの悪運……試してあげちゃう♪」
イフリート、上位精霊を前に二匹は実力を最大限に発揮!果たして、シズを救えるのか!
ネコリアの真骨頂その9 実はカナヅチ
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