転生したらネコちゃんだったから自由に生きていきます。 作:田中滅
「イフリートだった?アンタの目的はなに?」
顕現したイフリートに、会話を試みようとネコリアは目的を問う。すると左手を掲げ、吊られるように視線を動かす
「どうやら、話すつもりはないみたいだぞ…ネコちゃん」
リムルの言葉通り、イフリートに会話の意志は存在していない。上空に浮かぶ無数の火の玉から感じ取れるのは明確な殺意と破壊衝動のみである
「らしいわね。リムちゃんは取り敢えず、ランガちゃんで回避しながら接近しなさい。あの火の玉はあたしが何とかするわ」
冷静に思考を巡らせ、状況に適した策を提案するネコリア。その策を実行する為、リムルは自らの影に潜んでいたランガを呼び出し、飛び乗る
「頼んだっ!そう言えば、アイツらは……」
「あっちぃ!あっつ!?」
「カバルの服が燃えてるぅぅぅぅ!?」
「大丈夫でやすかーーーーっ!!!」
「……ネコちゃん、アイツらは放置な」
「そうね…」
三人組を心配するも杞憂だったらしく、それなりに立ち回っており、自分たちの策に集中する事に専念しようとリムルは駆け出し、ネコリアは魔素を高める
「(先ずは魔素を高めて、其れを形に………出来た!)喰らいなさいっ!仙法・
「水刃!」
撃ち出された無数の火球がイフリートの火球を相殺し、僅かに生じた隙を狙い、リムルが《水刃》を放つも、直撃する前に蒸発してしまい、攻撃が通らない
「我が主!ネコリア様!精霊種に爪や牙などの攻撃は通用しません!下位精霊であれば、雨などで弱体化するのですが……」
「雨か……ネコちゃん!仙術で雨を降らすことは可能か?」
「不可能ね、さっきの火球みたいな水球は大量に作れちゃうけど、流石に雨は無理。仙術は自然エネルギーを体内に取り込み、魔素と組み合わせることで使用可能な魔術に近しいモノなの。自然そのものを操ることなんて、今のあたしの魔素では出来ないわ」
「そうか………待てよ?大賢者!」
『告。魔法に寄る攻撃は精霊種に有効な攻撃手段に成り得ます』
何かを思いついたリムルが《大賢者》に呼び掛けると、その意図を理解したようで的確な返答が返ってくる
「そういうことなら……っ!エレンだったか?俺に水系魔法を打ってくれ!」
「うえぇっ!?リムルさんに向けてっ!?」
「頼むっ!」
「わ、分かった!
突然の発言に、驚きを隠せないエレンだったがリムルの眼の奥に何かを感じ取り、水系魔法を放った。すると、リムルが魔法を捕食し、いきなりの事に誰もが目を見開く
「リムちゃんっ!?」
「私の魔法を食べたぁぁぁぁ!?」
『告。「
「よし!
驚くネコリアとエレンを他所に、捕食した魔法を習得したリムルはイフリートに
「相変わらず……規格外なことするわね……」
「今度、ネコちゃんの仙術も食べていいか?」
「イヤよ。まあ、何せよ……邪魔は消えたわね」
「ああ、残るはテメーだけだ…イフリート」
『………
イフリートを睨みながら、
「主!ネコリア様!」
(熱いわね……でも丁度いいわ、この炎を逆に利用してやろうじゃない。にゃっふっふっふっ)
(あっ……悪いこと考えてる……でも、不思議と熱くないな。なんだろ?はっ!さては焦らしプレイかっ!)
『告。「熱変動耐性」の効果により炎の無効化に成功しています』
(だからかっ!ネコちゃんにエッチなスライム呼ばわりされないように……すん…すまし顔をしておこう)
(今絶対、エッチなことを考えてたわね……このスライム…)
意識を共有している訳ではないが、互いの考えを理解しあう関係性にある二匹はその考えが手に取るように理解可能である
「仙法・
『!!』
炎の中からイフリート目掛け飛来したのは巨大な火球。然も陣から発生した炎の渦を取り込むように、その大きさは増していく
「悪いわね?イフリート。アンタの炎を逆に利用させてもらったわ」
「お前の敗因は一つ、俺……いや、俺たちを敵に廻したことだ。シズさんは返してもらう」
その言葉と共にユニークスキル《捕食者》を使用したリムルに呑み込まれたイフリートは、自分の周囲が暗闇に支配された事に気付き、背後に気配を感じ取る
『観念せよ、イフリート。貴様にこの空間は破れん。リムルは我の盟友、ネコリアに至っては我と三百年の月日を過ごした親友だ。貴様の敵う相手ではないわ!!』
その気配、ヴェルドラは長年の友であるネコリアと盟友のリムルの力量がイフリートよりも上位であると語る。その威厳に気負けしたのか、遂に抵抗を辞めたイフリートは唖然とするしかなかった。一方で、呪縛から解放されたシズは倒れるように落下し、リムルをクッションに倒れる
「スライムさん……ネコさん……ありがとう…」
感謝の言葉にリムルは優しく笑い、ネコリアもふりふりと鍵尻尾を揺らしていた
「………リムちゃん、そろそろ交代の時間よ。寝てないでしょ?」
「大丈夫だ。ネコちゃんも殆ど寝てないだろ?今日は俺が付いてるから、寝ていいよ」
「なら、あたしも一緒に居るわ。寝てる間に目を覚ましたらイヤだし」
騒動から一週間、目を覚さないシズを二匹は入れ替わりで見守っていた。リムルは勿論ながら、何時もは睡眠時間の方が長いネコリアまでもが睡眠時間を削り、彼女が目を覚ますのを待ち続けていた
『告。イフリートとの同化が彼女を延命させていたようです』
「なっ……!?じゃあ、俺のやったことは……」
「リムちゃん、其れは違うわ。シズちゃんは気力を消耗してたから、あたしたちが行動しなかったら、イフリートに自我を支配されていたわ。其れをシズちゃんが望んでいたと思う?」
「ネコちゃん…」
《大賢者》からの申告に自分を責めようとしたリムルであったがネコリアからの説明で、彼女の優しさに触れる
「スライムさん…ネコさん…」
「シズさん!?」
「良かったわ、気がついたのね」
自分たちを呼ぶ声に振り向くと、うっすらと眼を開けたシズが居た。彼女が目を覚ましたことにリムルは喜び、ネコリアもふりふりと鍵尻尾を揺らす
「ずっと側に居てくれたの……?」
「ネコちゃんと入れ替わりだけどな」
「スイちゃんに水をもらってくるわ」
「ネコさん。必要ないよ……」
「え…?」
水を貰いに出ようとしたネコリアをシズが呼び止める。そして、その後に続いた言葉に彼女は自らの耳を疑った
「必要ないって、何を言ってるの?」
「スライムさんは分からないけど、ネコさんは分かってるんじゃない?私の命が…」
「うっ……そ、それは……」
「どういうことだ?ネコちゃん」
確かにリムルは理解していなかったが、ネコリアは知っていた。一週間の間にシズの中にある気力が薄れ始めていたことを、彼女が使用する仙術に必要な自然エネルギーを送り込み、命を繋いでいたが昨晩からその供給が拒まれるようになっていたのだ
「ごめんね……あたしの力じゃ……アナタを前みたいに元気にはしてあげられない…」
「良いの、ネコさんの優しさに甘えたくないから。其れにね?後悔はしてないの。何十年も前に、こっちに来て、辛いことは沢山あったけど、良いことも同じくらい沢山あった。最後は二人と出会えた、これって奇跡だと思うの。心残りがある訳じゃないけど……私はもう十分に生きたから」
次第に衰弱していくシズの体は年齢を重ねていくように皺だらけになり、体力も低下していく
「シズさん…俺たちに出来ることはないか?」
「心残りがあるなら、言って。何でも手伝うわよ」
「頼めないよ……二人の人生の重荷になってしまうもの」
「大丈夫よ、重荷くらい、背負ってあげるわ。そうよね?リムちゃん」
「ああ……」
「やっぱり……優しいね、二人は」
そう告げたシズは安らかに、眠るように息を引き取る。リムルはユニークスキル《捕食者》で自らの体内にシズを呑み込む
「………ネコちゃん、俺を見てくれ。これからはこの姿で………」
「なに?」
《人化》のスキルを得たリムルがシズに酷似した銀髪の少女に変化し、ネコリアの方を振り向く。するとそこには見覚えのない少女が佇んでいた。毛先の一部が薄桃色の黒髪ストレートロングに褐色の肌、そして金色の瞳を持つ美少女が其処には居た。彼女の頭上にあるぴこぴこと動く猫耳、臀部の上部分でふりふりと揺れる鍵尻尾、その二つでようやく気付いた
「まさか……ネコちゃん?」
「どう?人型のあたしも可愛いでしょ♪」
『告。個体名ネコリア=テンペストが仙術による人化を会得しました』
「仙術万能過ぎやしませんっ!?」
「どうでも良いけど、服は着たら?全裸で興奮とか、エッチなスライムね」
「エッチなスライムじゃないやいっ!」
かくして、人となる力を手にしたネコリアとリムル。二人の姿を見て、配下たちが驚くのはこの直ぐ後である
人型になったネコリアとリムル、そして其れを知ったエレンたち……果たして、この先に待ち受けるのは?
ネコリアの真骨頂その10 実は強い
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