転生したらネコちゃんだったから自由に生きていきます。 作:田中滅
「ネコリア様。お目覚めの時間です」
「ライメイ?ネコリア様を起こす役目は書記官である私の役目ですわ。新参者のアナタが、出しゃばらないでもらえる?」
「朝だぞーっ!ネコリア様ー!」
「エンカ!静かにしろっ!すまねぇ!アネキ!」
「んにゃぁ〜………朝から賑やかねぇ……」
オーガを配下に加えた翌日、寝息を立てていたネコリアの耳に騒がしいやり取りが聞こえ、ゆっくりと瞼を上げる
「ネコリア様。おはようございます、今朝も御可愛いですわ」
「にゃーっはっはっはっ!当たり前よ♪」
「寝所で騒いでしまい、申し訳ありません。お加減はいかがですか?ネコリア様」
「お腹が空いてる以外は絶好調〜…………んにゃ?誰?」
スイヒョウの褒め言葉に気を良くし、高笑いするネコリア。其処へ、一人の女性に問いを投げ掛けられたので、答えを返すも、見覚えのない彼女に首を傾げる
「アナタ様の剣となる命を受けたライメイにございます」
「ライメイ……昨日のオーガちゃん?」
「左様です。今は進化し、鬼人となりました」
そう述べるライメイの体型は筋肉質だった体型が細身になり、すらりとした長身が目立つ穏やかな雰囲気に変化していた
「鬼人………リムちゃんが名付けをした子達も同じ進化をしたの?」
「はい。若君がベニマル、姫がシュナ、爺がハクロウ、我が愚妹がシオン、そして残る二人がソウエイとクロベエの名を頂戴し、鬼人に進化を遂げました」
「くっ……ウチだけ名前をつけてもらってねぇ……!!!」
「残念ねぇ?カイリン」
「お肉食べるか?カイリン!」
「ありがとよ、エンカ。スイヒョウはあとでシバく」
「仲良くしなさい」
新たな配下を加え、騒がしさを増す周囲に呆れながらも僅かに表情を綻ばせるネコリア。この四人が後に彼女の配下で最も有名になるのは少し先の話である
「聞いた?」
「聞いた、聞いた。オークロードが出たんだよね」
此処はジュラの大森林の中央に広がるシス湖。その周囲に広がる湿地帯を歩く二匹の魔物、その種族は蜥蜴と人を掛け合わせた姿をした
「ん……妹たちではないか。どうかしたか」
「「兄者」」
二匹を呼び止めたのは、彼女たちよりも遥かに大柄な体躯をしたリザードマン。種族の中で唯一のネームドモンスターである彼の名はガビル、次期族長と名高い存在だ
「父上が兄者を探してた」
「呼んでたよね」
「親父殿が?嫌な予感しかせんが、知らせてもらい感謝する。夜も近い、直ぐに帰るのだぞ?」
「「分かった」」
ガビルを見送り、二匹は帰路に着く。とはいえ向かうのは兄と同じ方向である為にその後ろを追随する形になり、気付いたガビルは歩幅を合わせるように足取りを僅かに遅くする
「兄上。中で父上がお待ちです、妹たちは私にお任せください」
父である族長の部屋前に来たガビルを待っていたのはもう一人の妹。二匹を彼女に任せ、扉に手を掛ける
「うむ」
「兄者がんばれ」
「また遊んで、兄者」
「うむ……ではな」
妹たちに見送られ、ガビルは中に入っていく。その後ろ姿を二匹は瞳に焼き付ける、兄であり憧れの男の背を、その小さな眼に焼き付けた
「さあ、御夕飯にしましょう」
「姉者のご飯」
「おかわりある?」
「もちろん」
この幸せに終わりが来る事をこの時点では誰も予想していなかった。そう、ある出会いがもたらす変革と共に……
「仙術を習いたい?本気なの?」
「「はいっ!」」
「わふっ!」
「おうよっ!」
それは唐突だった。何時ものように寝息を立てていたネコリアの元に配下の中でも其々の役職を与えられた四人が尋ね来たのだ
事情を聞けば、強くなる為に仙術を学びたいというてはないか、流石のネコリアも驚きを隠せない
「私は書記官、本来は戦闘に赴くような役職ではありません。しかし、今回のような事態が起きた場合にネコリア様のお役に立てないことの方が私にとっては心の痛み……故に仙術を教授願いたいのですわ」
「私は……仙術を学ぶことで未だ見ぬ新たな強さの境地を知りたい……如何なる修行にも耐えます!ですから、御教授くださいませんかっ?!」
「アタイはもっともっと強くなりたいんだっ!そしたら、アニサマと一緒にいっぱい頑張れるからなっ!」
「ウチは職人だけどよ。素材集めとかで色んな場所に行くだろ?そん時に仙術が使えたら、もっと色んな事が出来るんじゃねぇかと思ったんだ」
「にゃるほど……」
配下からの其々の理由に、ネコリアは頷きながらも品定めする様に四人を視姦する。そして、優しい笑みを浮かべる
「あたしの修行は厳しいわよ?それでもやるなら、教えてあげる」
「「「「お願いしますっ!!!」」」」
「良い返事ね♪」
「「「可愛いですっ!ネコリア様っ!」」」
「はうっ!?アネキのウインクっ!!!」
ぱちりとアーモンド型の猫目をウインクさせるネコリア、その愛くるしさに彼女の虜であるスイヒョウ、エンカ、ライメイ、カイリンは目をハートにしながら悶える
「あっ、ネコちゃん」
「あら、リムちゃん。何かあった?」
ぽよっ、という音が聞こえ、振り向くとスライム姿のリムルが居たので、ネコリアは問いを投げ掛ける
「ソウエイからの報告を伝えに来たんだ。リザードマンがコッチに向かってるみたいだ、何か策はないかな?ネコちゃん」
「いきなり言われてもね……まあ、考えてはみるわ」
「ありがと。そうだ、お昼をシオンが用意してくれたらしいんだがネコちゃんもどうだ?」
「………り、リムル様?今なんと……?」
仙術の修行の為に、座禅を組んでいたライメイが表情を引き攣らせながら、リムルに問う。その額からは大量の冷や汗が流れている
「だから、シオンの手料理だよ」
「ネコリア様……悪い事は申し上げません。此処はリムル様に生贄になってもらいましょう」
「どしたのよ?メイちゃん。せっかくのお誘い有り難いけど、まだ修行の途中なのよ。また今度ね」
「分かった」
去り行くリムルの背にライメイは何度も頭を下げ、その行く末を見送る
「それで?メイちゃん。シオンちゃんが料理すると何か不味いの?」
「不味いだけなら、良かったんですよ……そのあの……えっとですね…何と言いますか……簡潔に言うとですね?…妹の料理は……酷いんです」
「酷い……味がよね?それは」
「味〝も〟です。何度か亡くなった祖父が手招きする川に行きかけました」
遠く見るライメイの瞳には、僅かな涙が浮かぶ。かなりの酷な経験をしたに違いない
「メイちゃんは料理できるの?」
「出来ませんね。普段は畑の野菜に塩を振って、生で食べてました」
しれっ、と真顔で答えるライメイ。彼女の逞しさを垣間見ながらもネコリアは呆れた眼差しを向ける
「…………メイちゃんには料理も教えてあげるわね」
「ネコリア様の料理!?私も教えてください!」
「味見役なら任せとけだぞっ!」
「アネキ、ふりふりのエプロンとかいるか?」
「あーはいはい、三人にも教えるわよ」
かくして、配下達に仙術と料理を教える事になったネコリア。彼女が後に食仙猫と呼ばれるのは少しだけ先の話である
町に攻め込む新たな種族、その名はリザードマン!あら?小さな女の子が二匹……?
ネコリアの真骨頂その14 実は料理上手
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