転生したらネコちゃんだったから自由に生きていきます。 作:田中滅
ネコリア「やっぱり、黒いミニスカ浴衣……でもこっちの白い着流しも………作者ちゃんはどっちが好み?」
………………(どくどく)←鼻血で戦闘不能
「んにゃぁ〜…………夏祭りをやりたいだにゃんて……欲張りにも程があるんじゃにゃい?」
何時もと変わらぬ時刻、目を覚ましたネコリアの耳に届くのは活気に満ちた町を行き交う魔物の声。この活気には理由がある、其れは遡ること一週間前に遡る
『この季節にまだ足りないものがある。何かわかるか?』
『そうね………はっ!もしかして、ネコリア大感謝祭!?』
『そう、日々のネコちゃんの働きに感謝するネコリア大感謝………って!ちがーーーうっ!夏祭りだよ!夏祭り!何を当たり前みたいに意味不明な祭りをでっち上げてんのっ!?』
『リムちゃん……感謝の心を忘れた時、思いやりの心は死ぬのよ』
『屁理屈を言うんじゃありませんっ!兎に角だ!お前たちには夏祭り基夏の宴の準備を進めてもらいたい。期間は一週間だ、出来るか?』
『「「「お任せください!!」」」』
そして、流れる様に時間は経過し、目標の一週間。見事に再現された夏祭りの風景にネコリアは相棒の欲深さに呆れ顔を見せる
「ネコリア様?いかがなさいました?」
「ううん、なんでもにゃい。ちょっとやりたい放題な盟主様に呆れてただけよ」
顔を覗き込む様に問いかけるのは、彼女を抱いた書記官のスイヒョウ。頼りになる右腕からの問いに呆れ顔のままで答えを返す
「リムル様はユニークな御発想の持ち主でいらっしゃいますものね。この前も、味噌?という調味料を考案なさったらしいですわ」
「にゃるほど……だから、フウとクウが味噌片手に走り回る姿を見かけるのね」
「味噌は何にでもピッタリ」
「……おいしい」
ちらっと横目で夏祭りの屋台を準備する双子を見れば、彼女たちの手の中には最近のお気に入りである味噌が入った桶が乗っていた
「そろそろ、着付けの時間ですわ。ネコリア様にお似合いになる可愛らしい着物を御用意いたしております」
「あら、そうにゃの?」
着付けの為に、シュナの織物工房に向かう。着せ替え人形となる事は火を見るよりも明らかであるが自分に似合う着物と聞いた瞬間、テンションが上がったらしく、愛らしい鍵尻尾が左右にふりふりと揺れる
「ネコちゃんも来たのか」
織物工房に足を踏み入れた瞬間、飛び込んできたのは目を疑う光景。男性である筈のリムルが女性物の浴衣に袖を通した姿だった
「………………リムちゃん。やっぱり、其方の趣味があったのね」
「ん?其方…………違う!違う!これは着せられたんだ!」
「大丈夫よ、安心しにゃさい。最近ではそういう趣味も受け入れられてるのよ」
「違うと言っとろうが!!」
有無を言わせる隙も与えずに放たれる相棒の理解ある発言にリムルは突っ込みを放つ
「にしても……メイちゃんとシオンちゃんが着ると新鮮味があるわね。何というか、楚々?として見えるわ」
「お褒めの言葉はありがたいのですが………どうも、着慣れない服は苦手です。これではいざという時にネコリア様を御守り出来ません!!そうであろう?妹よ」
「姉上の言う通りです!胸にサラシをギュウギュウ巻かれて窮屈です!あとシオンです」
「うふふ………知っていますか?大きなお胸は着付けに邪魔なんです」
「そうね……胸なんてのは脂肪の塊よ」
(…………なんだろう、殺気にも似た邪悪さを感じる……)
シュナとネコリアは笑っているかの様に見えたが、瞳の奥からは黒さが感じられ、リムルは心の奥で人知れず思う。然し、彼の心中を見透かした彼女だけはじろりと睨む
「にゃに?その眼は」
「い、いや………ナンデモアリマセン」
此れ以上の踏み込みは地雷を踏み兼ねないと確信し、片言で答えを返した
今回の夏祭りはリムルの思いつきとネコリアの知識から可能な限りまでの再現を行うことを目標としていた。だが、配下たちの頑張りのお陰もあり、完璧な夏祭り会場が再現されていた
「ふぅん……情報だけで、よくもまぁ再現出来たわね」
「はっはっはっ、ネコリア様にはダメ出しを喰らってばかりでしたが今回は御満足いただけた様ですな」
「そりゃあ、ここまでの再現をされたらね。ダメ出しする理由がないわよ」
立ち並ぶ屋台、盆踊り会場の櫓と舞台、締めに打ち上げられ花火の準備。事前に打ち合わせていた全てが再現された事に満足気に笑うネコリア、その呟きにリグルドが
「あら………ここはなんの屋台?随分と大盛況だけど」
「おっ!来たな!ネコちゃん!俺プロデュースのかき氷だ!かき氷機の刃はクロベエ謹製だ」
道を歩きながら、立ち並ぶ屋台を見ていたネコリアは一軒の大盛況な屋台の前で足を止める。すると人混みの奥から相棒に呼び掛けられ、屋台前に向かう
「ネコリア様も来たべか。今なら、出来たのリムル様味がおすすめだべ」
「そうにゃの?じゃあ、それを…………ん?リムル様味?」
屋台の中で、かき氷機で水を砕いていたクロベエにおすすめされた味を注文しようとするが、違和感を覚えた
「ブルーハワイを再現したつもりだったんだけどな……ホントは………」
「そう………で、エンちゃんたちが食べてる味は?にゃんか黒いけど」
「黒蜜だな、あれは」
「わふっ!ネコリア様の色だぞっ!」
「何と神々しい………そして愛らしい御色!正にネコリア様色ですわ!」
「美味い!流石はネコリア様味!」
「…………………ねぇ?にゃんか聞き慣れない呼び名をされてるんだけど」
「わかる……怖いよな……時々だけど」
「…………そうね」
色が同じであれば、即座に名前が自分と同じ認識される怖さに怯えるリムルにネコリアも同意を示す
「ハクロウちゃんとゴブタは金魚すくいなのね」
「これはこれはネコリア様にリムル様。なかなかに集中力のいる遊びですな、この金魚すくいというのは」
次に目に入ったのは、ハクロウとゴブタがを営む金魚すくい屋。麦わら帽子を被り、如何にも祭りに馴染んだハクロウは優しく笑う
「ふっ、どうだ?ネコちゃん。ここは一つ、音速のポイと呼ばれた俺と勝負するか?」
「良いわよ?安値で食費を浮かせるにはちょうどいいものね」
「そう、安値で…………えっ?金魚を食べるの?」
「唐揚げとか竜田揚げがおすすめよ」
勝負を持ち掛けたのも束の間、相棒の口から放たれた衝撃発言にリムルは耳を疑い、当の本人は「素揚げも良いわね〜」と言いながら、鍵尻尾をふりふりと揺らしている
「ネコ様。金魚の味付けにお味噌がおすすめ」
「お味噌はおいしい」
金魚片手に涎を垂らすネコリアに呼び掛けたのは向かい側の屋台で味噌を売るフウとクウ、呼び掛けに気付き、足を運ぶ(注意その1:彼女は特殊な訓練を受けています。金魚は食べないでください)
「あら、フウちゃんにクウちゃんはお味噌屋さんなのね」
「おすすめはライメイがくれたきゅうりにお味噌を塗ったお味噌きゅうり」
「リムル様にもあげる」
「ありがとな。クウ」
差し出された味噌きゅうりを受け取り、リムルが優しく撫でるとクウは満足そうに笑う
「そう言えば、ソウカちゃんは?」
「姉者はソウエイと一緒」
「仲良し」
「ほう………先を越されたな?ネコちゃん」
「引きちぎるわよ」
「なにをっ!?」
謎の文句にリムルは突っ込みを入れ、二人は出店を回る。トレイニーのつたくじ屋、ライメイの野菜直売所、スイヒョウの紙芝居屋、エンカのお散歩屋(注意その2:彼女は屋台の趣旨を理解していない)などがあり、粗方の店を回る頃には盆踊り開始時刻になっていた
「兄者が踊ってる」
「キレキレ」
「何をしてるんだ………あの馬鹿兄は……」
舞台上で目立つ様に踊るガビルと配下たち、その姿に次女と三女は尊敬の眼差しを向けるが、長女は頭を抱えていた
「ネコリア様!リムル様!如何でしたか!我々の踊りは!」
「あら、ガビル。こんなとこにいたの?」
「良かったなー!皆と踊れて楽しかったよな」
渾身の舞いを主人と盟主は見ていないという事実にガビルは肩を落とし、その後は三日間も不貞寝した事は言うまでもない
「わふっ!デカいなー!なんだこれー?」
「コイツは神輿って言うんだ。上にあるのはアネキとダンナの張り子、ウチの力作だぜ」
「みこし?よくわからないけど、カイリンは上手だなー」
「これは!ネコリア様の愛らしさを最大限に再現しておりますわね」
「確かに。特にこの尻尾が素晴らしい」
「私は耳が素敵だと思います。ネコリア様の御耳を忠実に再現してます」
「にゃーっはっはっはっ!あたしの可愛さに一才の澱みはないわっ!」
「ネコちゃんはホントに自分大好きだなー」
夏の夜に配下から自分の神輿を褒められ、気を良くする相棒の姿にリムルはほっこりとした表情で茶を啜る
「よっしゃぁ!打ち上げと行こうぜ!オヤジ!クロベエ!」
「ド派手に行くか」
「んだべ」
祭りを締め括る花火を打ち上げる鍛冶師親子とクロベエ、真夏の空を彩る艶やかな火の花に誰もが空を見上げる
「そーいや、たまやって叫ぶけどさ。あれって意味とかあるのか?ネコちゃんは知ってる?」
「ん〜確か、花火師の屋号じゃなかったかしら。高校時代に図書館で調べた時にそんな感じのことが書いてたわよ」
「なるほど………」
「…………今、《大賢者》に聞いたでしょ」
「ソンナコトナイヨー」
じろりと睨む相棒からの言及にリムルは片言で答え、夜空を見上げる
「わふ〜…綺麗だな〜」
「そうであるな。我が妹よ」
「父上にも見えてるかなぁ」
「うむ。きっと、見えている」
初めて見る花火に瞳を輝かせるエンカ、妹の様子にランガは満足そうに頷き、突然の言葉にも顔色を変えずに返答する
(息子に娘よ。ワシの事を思い出してくれておるのか………生前はあんなにもキツく接したというのに………感謝しよう、スライム殿に猫又殿。我が子たちをよろしく頼んだ)
「ん………にゃんか、聞こえなかった?今」
「えっ?なにが?」
「エッチなスライムには聞こえないのよ。多分だけど」
「引っ叩くよ?ネコちゃん」
帰れないからこその募りゆく懐かしい気持ち。それでも二人は我が儘を通し、今日も往く。笑える明日を目指し、彼等は騒がしくも楽しい毎日を過ごして往く
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