転生したらネコちゃんだったから自由に生きていきます。   作:青メッシュ

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今日の見所!ネコちゃんが突っ込み役に回る!以上!


第四十一話 俺はこいつと旅に出る!黒猫がにゃん♪と鳴く

「んにゃぁ〜……こんな朝早くに…にゃによぉ〜……」

 

欠伸をしながら、会議室に向かうネコリア。朝が苦手な彼女にとって早朝会議は何よりも厄介な難敵と言える、しかし盟主であるリムルの呼び出しに「No.2」である自分が応じない訳にもいかず、船を漕ぎながらも歩みを進める

 

「ネコちゃん。相変わらずの重役出勤だな」

 

「重役………可愛くない響きね、もうちょっと可愛いくしにゃさいよ」

 

「可愛いく……?具体的な例をあげてくれ」

 

「可愛い重役」

 

「可愛い付けただけじゃん!!!」

 

今日も自らの可愛さに自信満々なネコリアにリムルは突っ込みを放つも、当の本人は気にせずに会議室内を見回す

 

「幹部全員集合だなんて、穏やかじゃないわね。何を企んでるの?リムル」

 

何時もの軽い言動とは正反対の参謀長としての視線と口調で相棒を見るネコリア。その瞳は全てを見透かし、彼の考えも見通しているかの様にも見える

 

「俺は人間の国に行こうと思う。でも、ドワルゴンとは違って、魔物を受け入れてくれるとは限らない。今回は人間に化けて潜入するつもりだ」

 

「お話は分かりましたが……リムル様御一人で旅立たれるというのは……」

 

「左様じゃな、万が一のことがあればジュラの大同盟も根底から崩壊するやも知れぬ」

 

不安を露わにするリグルド、冷静ではあるがリムルの身を案じるハクロウ。すると彼は口を開く

 

「なーに、ランガは連れて行くし、ソウエイの分身を連絡役に回してもらうから一人旅って訳じゃない。ネコちゃんの分身も同行してくれるしな」

 

「は?にゃによ、それ?あたし、聞いてない」

 

「今さっき思いついた」

 

何時の間にか計画に巻き込まれていた事に、驚きながらもリムルの適当さを誰よりも理解しているネコリアは、軽くため息を吐く

 

「はぁ………分かったわよ。その代わり!一つだけ約束して!」

 

「お、おう…」

 

ピン、と指を立て、念を押す様にネコリアはリムルに真っ直ぐと視線を向ける

 

「あたしの協力が必要な時は絶対に呼んで。分かったわね?」

 

「おう、約束だ」

 

相棒からの約束に笑顔で応じるリムル。その後、案内役には冒険者三人組を据えるという形で会議は終了し、静まり返った会議室でネコリアは軽くため息を吐いた

 

(ブルムンド王国………人間の国でありシズちゃんが生きた国………あたしみたいな魔物が足を踏み入れちゃいけない場所……あそこには人間しかいない……人間は魔物を嫌う………ダメねぇ〜……元は人間なのに……魔物の方が好きになってきてるみたい……)

 

心中に浮かぶのは、人間だった前世の頃には存在しなかった感情。スーパーヒロインを目指した穂川亜結とは掛け離れた姿、今の彼女を前世を知る者が見て、誰が彼女だと思うだろう。それでも彼女はこの姿が、自分を慕う配下が、頼ってくる国民が、笑い合える相棒と過ごすネコとしての生活を気に入り始めていた、人間だった頃には存在しなかった感情を愛おしいと思い始めていたのだ

 

「ホント………呆れるくらいに…人間臭いスライムね……リムルは…」

 

「わふ?人間ってくさいのか?」

 

「エンカ、ネコリア様の思案の邪魔ですわよ。アナタは骨でも齧っていなさいな」

 

「なにおうっ!」

 

素っ頓狂な発言を繰り出すエンカに空かさず突っ込みを放つスイヒョウ、それに反応したエンカが頬を膨らませる姿にネコリアは優しく二人の頭を撫でる

 

「仲良くしなさい」

 

「「はい!」」

 

「…………はっ!会議はどうなった!?妹!」

 

「とっくに終わりましたよ、まさか寝てたんですか?姉上。あとシオンです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!じゃあ留守は頼んだぞ」

 

会議から数時間後、案内役である三人の休憩も挟み、最初に中継地点となるブルムンド王国に旅立たとうするリムルを一目見送ろうと幹部陣と国民が見送る為に町の入り口に集まっていた

 

「リムちゃん。約束を忘れないでね」

 

「分かってるさ。なっ?ネコツーちゃん」

 

「にゃー」

 

「人の分身に勝手に名付けしないでくれる?自我を持たせるつもりなの?アンタは」

 

「にゃ?にゃにゃにゃん」

 

「はぁ…あたしはうれしーじゃないのよ、全く。良い?最初に言っとくけど、渡してある仙術ポーション以外は与えないでね、絶対に!」

 

「分かってるって。じゃあ行ってくる!」

 

リムルの背が見えなくなるまで手を振り続ける国民たち、その姿に呆れながらもネコリアは思い出していた。三百年前に転生し、ヴェルドラと出会い、共に長い時を過ごしたある日、彼女の前にスライムが現れた。その出会いから始まった建国譚、月日は一瞬、瞬く間に二年の時が過ぎ、気付けば一つの国を治める立場、不思議とネコリアの頬が綻ぶ

 

「ねぇ、リグル」

 

「どうされました?ネコリア様」

 

「あの日、アンタがあたしとリムルを見つけたのは必然だったんじゃないかなって思うの。世界がそうする様にあたし達を繋いだんじゃないかって……」

 

「かもしれませんね」

 

そう言ったネコリアの横顔は嬉しそうだった。リグルも当時を思い出したのか、優しく笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?にゃんですって?」

 

旅立ちから数日後。盟主代行を任されたネコリアはイングラシア王国に到着したリムルから近況報告を受け、耳を疑った

 

『だから、教師になったんだよ』

 

「ごめん……話が全く呑み込めない……」

 

『えっとだな』

 

リムルからの報告はこうだ、イングラシア王国で自由組合総帥(グランドマスター)の神楽坂優樹と会い、五人の子どもたちの近況についての話を進めて行く中で、彼等と分かり合うには教師が相応しいという事になり、現在に至るとの事である

 

「で?あたしに何をしろって言うのよ」

 

『精霊の棲家を調べてくれないか?上位精霊が其処に居るらしいんだ』

 

「え〜………にゃんで……あたしが……」

 

『やってあげるにゃー、本体(ネコリア)

 

「そうは言うけどね、分身…………はい?」

 

リムルからの依頼に不服そうにするネコリアに呼び掛ける一匹の黒猫、一度は答えを返し掛けたが直ぐに違和感に気付き、水晶玉を二度見する

 

「ちょっと待って!にゃんで、分身が自我を持ってんのよっ!?まさか名付けした訳っ!?」

 

そう、その言葉を発した黒猫とはリムルに同行させていたネコリアの分身体だったのだ。本来は鳴き声しか発さない筈の分身が言葉を発したという事は自我を持ったという事を意味する。魔物の進化に伴う過程は名付け、つまり分身体にリムルが名を付けたという解答に行き着くのが適当だ

 

『あ〜………いや…生徒に名前を聞かれた時に……』

 

『分身改めネコツーにゃん!ツーちゃんって呼ぶにゃ♪』

 

「………………リムちゃん?次に会った時にオハナシがあるわ♪」

 

しゃきん、と音が鳴りそうな勢いで爪を立てるネコリアは笑顔であるが瞳の奥が笑っていなかった。かくして、ネコリアは盟主代行と精霊の棲家の入り口探しという大役を任される事になった




盟主代行も板につき、暇を持て余すネコリアはハクロウの訓練に顔を出す。そこに居たのは一人の狐耳少女……

スイヒョウの真骨頂その5 実はエンカと仲良し

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