転生したらネコちゃんだったから自由に生きていきます。   作:青メッシュ

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今回の見所!ネコちゃんたちには歴史がある!皆さんの知らない彼女たちの歴史が分かるかもしれない夏の日をご覧あれ!以上!

ネコリア「スライムの歴史……服を溶かす生き物……やっぱりエッチな魔物なのね」

わらびもちはこれをモデルに考案されたと昔の偉い人が言ってた気がする

リムル「二人のそういうところが嫌いだ、俺は」


夏の夜特別編3 貴方に会えたから、今がある

「今って、時期的に言うとお盆休みなのよぇ。というか……この世界にも先祖を祀る風習ってあるの?」

 

「御神体であるヴェルドラを祀ってるくらいだから、あるんじゃないか?多分だけど」

 

夏も後半に差し掛かる時期、リムルの庵で我が物顔で寛ぐネコリアの疑問に家主であるリムルは自身無さげに答えを返す

 

「御神体ねぇ……あのドラゴンを神扱いする神経を疑うわ…」

 

「あー、ネコちゃんは三百年もヴェルドラと暮らしてたんだもんなぁ。俺よりも彼奴の事には詳しいよな?やっぱり、ケンカとかしたりしたんだろ?彼奴、空気読めないとこありそうだし」

 

親友が御神体という形で祀られている状況に、実体を知るが故に呆れた様に笑うネコリアにリムルは興味本位から問いを投げかける

 

「したわねー、長い時は十年くらいは口を効かなかった時期もあったわ」

 

「十年っ!?何がどうなって、そんなにケンカしてたんだっ!?」

 

「色々とあったのよ。まぁ、そのおかげで面白い出会いもあったりしたんだけど」

 

全てを語ろうとはしないが、彼女には彼女也の歴史が存在し、自分の隣に居てくれる事を自覚する。もしも、あの出会いが無ければ、彼女が居なければ、この他愛もない時間も、御約束のやり取りもなかったのだと再認識し、自然と頬が緩む

 

「………………えっ?にゃに?にやにやして……またエッチな事を考えてんの?わらびもちみたいな也してるくせに、相変わらずエッチなスライムね」

 

「エッチじゃないやいっ!あとわらびもちでもないっ!!」

 

夏の昼に木魂するのはリムルの突っ込み。ジュラの森は今日も今日とて賑やかである

 

「わふ………あ、暑いんだぞ……」

 

毛皮で覆われた体故に暑さが弱点とも言えるエンカは木陰で項垂れ、流れる夏の空を見上げ、微睡んでいた

 

「エンカよ。我が主人が心頭滅却すれば火もまた涼しと言っておられた、お前も誇り高き牙狼族の姫君なのだから、如何なる時も強くある事を忘れるな」

 

同様に毛皮で暑さに弱いランガは妹とは裏腹に汗を掻くことも修行と言わんばかりに行儀良く座している

 

「アニサマ……父上に似てきたんだぞ…」

 

「む?そうであるか?ならば、族長としての貫禄も身に付いたという事だな」

 

「…………というか考え方とか小言が似てきて鬱陶しいんだぞ…」

 

(こ、これが反抗期というモノか!!)

 

((娘も複雑な年頃なのだな………精進するのだ、息子よ))

 

小言を鬱陶しそうにするエンカの反応にランガは心の中で、思い当たる現象に行き着く。その様子を亡き先代族長が見守っていた事を二匹は知らない

 

「……………そう言えば、母上と父上が亡くなったのは今時分の季節だったな」

 

「そうなんですか?私は覚えてません」

 

畑を耕していたライメイは、一息を吐くと夏の空を見上げ、物想いに耽る。妹のシオンは茶を啜り、姉の言葉に疑問符を浮かべる

 

「無理もない、お前が物心ついたばかりの頃だからな。今でも偶に懐かしくなる時がある……父上の作った野菜を母上が美味しく調理してくれてな」

 

「それはうっすらと覚えてます。母上の作る炊き込み野菜はすごく美味しかったです!多分!あ、もしかして姉上が畑馬鹿なのもそれが理由だったりするんですか?」

 

朧気に記憶に残る味を思い出すシオンは姉が畑を耕す理由が此処にあったのでは?と思い、問いかける

 

「誰が畑馬鹿だ。そうだな……畑を耕していると近くに二人が居る様に思えるんだ」

 

「姉上………さては寝惚けてますね?」

 

「妹。ホントにシバくぞ」

 

「シオンです」

 

先祖が居るから、自分が居る。彼等が居たから、一族に歴史が生まれる。何代にも渡り、紡がれ、やがて一つの国となり、家族となった。有り得ない事が現実となった新たな世界の縮図、其れを人知れず舞い戻った彼女は優しく見守っていた

 

(スライムさんとネコさんの作った国……約束通り、観に来たけど……すごい事になってるなぁ………此処は歓楽街か、名前がネコさんの名前になってるんだ)

 

友人たち(・・)の建国した国、生前の約束通りに彼女は訪れていた。共に過ごした時間は少ないが、彼女が出会った中では印象深い存在が彼等だった

 

「リムちゃん。其方の趣味が板に付いてるのは構わないけど、バニーを着るには明る過ぎるわよ」

 

「だから、これは着せられたんだよっ!」

 

街を歩きながら、物想いに耽っていた彼女の視界に飛び込んできたのは自分を模倣した姿の友人と彼をジト目で睨む猫耳の美少女の姿だった

 

「前にも言ったけど、最近ではそういう趣味も受け入れられてるのよ。自信持って♪」

 

「違うと言っとろうが!!」

 

有無を言わせる隙も与えずに放たれる相棒の理解ある発言にリムルは突っ込みを放つ

 

(す、スライムさん……そういう趣味が………やっぱり男の人なんだなぁ………あとネコさんはすごく可愛いくなってる…ふふっ、相変わらずだなぁ)

 

外見は変わっても、内面は自分の知る二人と変わっていない事が嬉しかったのか、彼女は優しく笑う。もしも、生きていたなら、自分も彼等と笑い合えたのかなと思うが、今となっては叶わぬ事であるのは理解している

 

「クウ。何見てる?」

 

「……黒髪のリムル様がいた」

 

「リムル様は其処。そっちは誰もいない」

 

誰よりも純真無垢な心を持つクウ、彼女は見えないものが見える。故に彼女には黒い髪の女性が、井沢静江が見えたのだが双子の姉であるフウに突っ込まれ、再び目線を向けると其処には誰もいなかった

 

義姉さん(・・・・)。井戸水はどうですか?」

 

「ありがとう……ですが、無理をして義姉さんと呼ばなくてもよろしいんですのよ?リグル」

 

水を汲んでいたリグルは目の前を通り掛かったスイヒョウにコップ一杯の水を差し出す。彼女は受け取りながらも、微笑を浮かべ、彼の呼び方を咎める

 

「こればかりはやめろと言われてもやめませんよ。今でも、貴女が兄の婚約者である事には変わりありませんからね」

 

そう笑うリグルの表情の裏には、今は亡き兄の死を悲しむ気持ちが見えた。ネコリアと出会い、名を得る前に死に別れた大切な人、スイヒョウにとっても彼の死は辛いものだった

 

「…………懐かしいですわね。貴方とあの人、ハルナの四人で泥だけになるまで、遊んだ頃が」

 

脳裏に浮かぶのは、幼い妹の手を引き、日暮れ時まで遊び回った子ども時代の情景、常にその側にはリグルと彼が居たのを今でも鮮明に覚えている

 

「ええ、父上には怒られましたけどね」

 

「ネコリア様やリムル様が以前に一族には歴史があって、私たちのいる今が存在するのだと仰っていましたが……あの人が生きていたなら、違う道があったのでしょうと思う時がありますわ」

 

有り得たかも知れない未来を想像し、寂し気に笑う彼女にリグルは口を噤む。然し、彼等は、二人の主人たちである彼等は違った

 

「あら、知らないの?この世に偶然はないのよ?全てが必然だからこそ、今のあたしたちが、この国があるの」

 

「そう考えると面白いよな、誰かと繋がってるってのは」

 

「リムル様………ネコリア様……そうですね、そう言われるとそうなのかもしれません」

 

「御二人は何時もながら、前向きですわね」

 

(ていうか、ハルナとスイヒョウが姉妹なのを知らなかったんだけど……)

 

(だな……リグル兄と婚約者だったのか……スイヒョウは…)

 

意外な関係性を知る夏の夕暮れを感じながら、井戸水を飲むネコリアとリムルであった。やがて、日は落ち、夏の夜に毎度お馴染みの宴が行われ、騒がしくも楽しい夏は過ぎゆく

 

「リムちゃん。線香はなかったけど、似た感じのお香と茄子に胡瓜を持ってきたわ」

 

お盆休み最終日、簡易的に作られた恩人の仏前に手を合わせていたリムルにネコリアが声を掛ける

 

「ありがとな、ネコちゃん。形だけでも……お盆っぽくしないとな」

 

「シズちゃん。まだまだ約束通りの国造りには程遠いし、課題もたくさんだけど、何時かきっと現実にするからね…」

 

「その時は、この姿と能力を受け継いだ御礼をするからな」

 

(充分だよ、私の姿で楽しく生きて、ネコさんと何気ない毎日を送ってくれているなら……終わったはずの人生に、思いもよらない素敵な贈り物…ネコさんといつまで仲良くね……あっ!でも恥ずかしい格好は控え目にしてね!約束だよ?)

 

懐かしくも暖かい何かが触れ、誰かの声が聞こえ、振り返るも其処には誰も居ない

 

「ネコちゃん………夏の昼に怪現象だ!俺の格好を注意する声が聞こえた!」

 

「にゃるほど……其れはきっと、エッチなスライムに聞こえる幻聴よ」

 

「なるほど、だから俺にしか聞こえなかっ…………って!エッチじゃないやいっ!!」

 

これはある日の日常。まだ二人が魔王になる前の平和でありふれた日常を綴った日記の一頁である




次回は普通に本編を………暑い日々が続きますが皆様も体調にはお気をつけください……この台詞も三回目だな

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