転生したらネコちゃんだったから自由に生きていきます。 作:田中滅
「ネコリア。その情報は確かなんだな?」
執務室の机に広げられた地図を前に、リムルはソファに寝そべる相棒に問う。彼女は金色の双眸を静かに細め、ゆっくりと近付きながら口を開く
「紛れもない真実よ。クレイマンは軍を動かし、
その呼ばれ方で、自分は盟主から魔王となった事を自覚する。同様に魔王種へと至った彼女に魔王を名乗るつもりがない事は理解していた。盟主の役割を正式に受けた時も拒否したくらいに彼女は参謀である事を望んだ。故に、彼は笑う
「どうするもこうするもない。俺は何時もと同じことをするだけだ、欲望のままにな」
「了解しました、全ては陛下の御心のままに。このネコリア=テンペストは付き従いましょう」
傅き、
『ネコリア様、スイヒョウです。ブルムンド王国から使者の方が参られております』
「…………そう、分かったわ」
《心理意識》でスイヒョウから連絡を受け、彼女は眉を顰め、リムルに向き直る
「なんだって?」
「ブルムンド王国からの使者らしいわ。今更感が否めないけど、理由は言わずもがなだと思うわ。どうする?」
「………直接、話をするしかないだろうなぁ…これは…」
相棒からの全てを見透かした様な問い、リムルは罰が悪そうに頭を掻き、重たい息を吐く。友好関係にある他国からの使者という事はファルムス王国との戦に対する助力と考えるのが正解だろう、然しながら今となっては其れさえも過去の話。頭を悩ませながらもリムルは使者の元に向かう
「リムル殿!お久しぶりです」
その使者とは、ブルムンド王国
「やぁ、フューズ君。今日はどうしたんだ?
「何を仰る。我々は
普通に話し掛ければ、返ってきたのは忘れていた悩みを一気に想起させる。当の本人は揺るがぬ意志の元に駆け付けてくれた様だが、既に終息した事を何の様に伝えたものかとリムルは表情を顰める
「………………いや、あのだな?フューズ君。実はな……」
「どうしたんですか?まさか!
話を切り出せば、闘争心故に聞く耳を持たないフューズ。戦力差に圧倒的な格差あれども、自国の軍が如何に優れているかを熱弁する彼にリムルは結果を伝えるタイミングを失う。然し、彼女は違った
「
「……………………は?い、今なんと………?」
突然の発言にフューズは耳を疑い、リムルの隣に佇む黒髪の美少女に問う。彼女は特徴的な鍵尻尾をふりふりと揺らし、その口を開く
「だから、
「…………………い、いつ………」
「三日前」
時期を問えば、帰ってきたのは二度目の耳を疑う発言。フューズの問いに答えた彼女、ネコリアはフードに空いた穴から飛び出した猫耳をぴこぴこと動かし、真顔を崩さない
「ミョルマイルたちの話と明らかに矛盾があるじゃないですかっ!?」
「スイヒョウ。使者は送ったのよね?」
「はい。エンカの率いる護衛部隊の中でも足の速さには定評のあるセイテンを向かわせました」
「だったら……にゃぜ?」
「恐らくですが、セイテンが出発したタイミングでフューズ殿が出発し、行き違いになってしまったのではないかと……」
「にゃるほど。それよ、リグルド」
使者を送ったにも関わらず、現状を知らないフューズを前に疑問符を浮かべるネコリアにリグルドが言及すれば、彼女は納得したらしく、自己完結気味に頷く
「セイテン。今どこ?」
『えっ……うわぁ!?ね、ネコリア様!?びっくりしたぁ!いきなり呼び掛けんといてくれますっ!?心臓が止まるか思いましたよっ!いやまぁ実際には止まっとらへんのですけど、こういうのには順序があるんですから』
《心理意識》を飛ばし、渦中の元凶であるセイテンに呼び掛ければ、彼女は関西弁にも似た口調で捲し立てる様に意識を飛ばして来た
「さっさと質問に答えて」
『あっ、はい。今はブルムンド王国付近の街道です。それでなんかあったんですか?ネコリア様がわたしに連絡やなんて、今までになかったのに』
「アンタよりも早くにブルムンド王国側の使者が来たわ。よって、今回は帰って来なさい」
『……………え?い、今から?』
目が点になるくらいの無茶振りにセイテンは自分が聞き間違えたのだろうかと頭を悩ませる
「そうね………………それとも、にゃに?あたしの命令が聞けない?」
『い、今すぐに帰ります!真っ直ぐと!』
然し、主人からの凄みを感じる一言には抗えず、言い訳は通用しないと瞬間的に理解したセイテンは
『告。30騎の接近を確認、先頭はガゼル・ドワルゴです』
「ベスター……」
『報告したのですが、ガゼル王は弟弟子と妹分が魔王になったのを直に確かめると聞く耳を持たなかったもので………』
「状況を理解してるなら、説明を省けるわね。今後の方針についての対策会議の途中だったんけど、ガゼルちゃんも参加する?」
「ほう……聞きたいことは山ほどあるが、一先ずは会議に参加しよう。それにしてもネコよ、俺をちゃん付けで呼ぶのはお前くらいだぞ」
「別に良いじゃない。妹が兄をなんて呼ぶかは其々の主観次第な訳だし…」
「であるか。仕方あるまい、公共の場では今まで通りにガゼル王と呼ぶのだぞ?」
「分かってるわよ」
伝説に名高いドワーフの王でも、魔性の笑みには逆らえない。言葉巧みに言い包められ、最終的には公式の場以外では呼び名を許可するに至り、視線を横に切り替えれば、わなわなと震えるフューズが視界に入る
「ま、魔王………気のせいですかね?ネコリア殿………今、ガゼル王が魔王と言った様な気がしたんですが……聞き間違いですよね?」
「事実よ?」
「…………………一体どうなってるんですっ!?聞き捨てなりませんよっ!何がどう転べば魔王になるって答えに行き着くんですかっ!!」
「必要だったのよ。あたし
「退っ引きならないって今日日聞かないけど………そういう事だから、納得してくれるか?フューズ」
「………………分かりました。御二人にも退けない理由があった事は認めましょう……ですが!事の顛末については話していただきたい」
多くは語ろうとしない二人の瞳から何かを感じ取ったフューズ。それでも駆け付けた手前、事の顛末をブルムンド国王に報告しない訳にもいかず、彼は内側に踏み込む
「そうだな。俺も聞かせてもらいたいものだ、進軍中であった筈のファルムス王国軍が
「「……………はい?」」
流石にこの発言には、リムルも、ネコリアも自らの耳を疑った。
(どうやら、キミとスライムくんの虐殺を隠蔽しようとしてくれてるみたいよ。頭の良いキミなら、どうやって答えを返すべきかは言わずもがなじゃない?)
(えっ?リアねーさんは分かるの?あたし、よくわかってないんだけど)
(亜結は可愛いわね)
(えっ?そう?いやぁ、そうでしょ!何せあたしはネコリアの前世だからね!)
「…………………はぁ、遠回しにバカにされてる事にも気付かないとは………という訳で、フューズちゃん。ファルムス軍は行方不明よ♪」
脳内に響く声
「………………はぁ〜〜、どうやら強行軍で疲れている所為か幻聴が聞こえたようだ。ファルムス軍の件は了解した。その代わり……対策会議には俺の席も用意してもらいますよ。リムル殿とネコリア殿を疑うつもりはありませんが、立場的にも傍観は出来ませんからね」
「勿論だ。ネコリアも構わないよな?」
「ええ…それがリムル
「だそうだ…………それでだ、ガゼル王。其方の方は知り合いか?」
納得した様で頭を悩ませるフューズの会議参加を了承したリムルは、兄弟子の隣に姿を見せた
「娘から見目麗しい猫の魔物と知り合ったと聞き、もしやとは思いましたが………貴女でしたか。私を覚えておいでですかな?
「………………二百年振りね?
団体の中でも中核を担うであろう男性エルフのエラルドと呼ばれた魔導士と対等に会話を交わすネコリア。その姿にリムルは勿論、ガゼルさえも驚きを隠せない
「ぱ、パパとネコ姐さんが知り合い!?」
「えっ…!あの人がエレンの親父さん!?なんでネコちゃんと知り合いなんだ!?」
「そう言えば……彼奴、以前に喋る猫の魔物に仙術を叩き込まれたとか言っておったな。まさかそれがネコとは思わんかったが」
「エルフにまでパイプを御造りになっていらっしゃるとは、流石はネコリア様ですわ!」
「えっ!?わたしがおらん間に人が増えてる!?どないなってんの!?エンカ様!」
「わふっ!おかえりだぞ!セイテン!」
「あっ、ただいまです………って!質問の答えになってませんけどっ!?」
本日、何度目かになるかも不明な衝撃事実に対策会議の参加者は、更に増加する事になるのだが、其れは数時間後の話である
遂に揃った重役たちとの対策会議が幕を開ける………と思いきや、其処に登場したのはあの三人!殺虫剤を忘れずにね!
今回のハイライト ネコリアの服装:穴空きフード付きの桃色パーカー(萌え袖)、黒のチューブブラ、赤いミニスカート、黒のスパッツ、桃色と白の縞模様ニーハイ、黒のショートブーツ