無知で無垢な銃乙女は迷宮街で華開く   作:ねをんゆう

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115.5人目

「と言う訳で、連れて来たんだけど」

 

「……シアン・アーリアです、よろしくお願いします」

 

「どうでしょうか。スズハさん、クリアさん」

 

 

 マドカと朝食を取った後、リゼはシアンを連れて部屋に帰って来た。昨日までは一先ず事情聴取のためにとギルドで夜を過ごしていた彼女であるが、その後も特に目星い情報を得ることが出来なかったため、今日こうして正式にリゼ達の元に送られた訳だ。

 

 それに部屋は狭いとは言え、小さな女の子1人を面倒見るくらいの余裕はある。事前にスズハとクリアにも説明はしておいた。……とは言え、実際に会って見なければ反応は分からないというもの。その辺りの心配はあるようです無いようなものではあったものの、どんな反応が返って来るのか緊張はしていて。

 

 

「……62点。クリアは?」

 

「80点、勝った」

 

「くっ、やっぱこういうのでアンタには勝てそうにないわね」

 

「ふふふ、約束」

 

「分かってるわよ、奢ればいいんでしょ。はぁぁ、変な賭けするんじゃなかったわ」

 

 

 

「……あの、2人とも?」

 

「賭けって、何してたんですか……?」

 

「ん?リゼが次に連れて来そうな女を予想する賭け」

 

「負けた方がみんなにプリンを奢るって」

 

「な、何をしていたんだ君達は……」

 

「というかそれで80点取れたクリアさん凄過ぎませんか……?」

 

「ふふ、余裕」

 

 

「……?」

 

 

 どうやらリゼの知らないところで2人は変な賭け事をしていたらしく、その結果よく分からないがプリンをスズハに奢って貰えるらしい。

 ……80点取れたクリアも異常だが、64点取れたスズハも十分におかしいことを忘れてはならない。なにせこの賭けは何の情報も無い時に行われたものなのだから。予想出来たことさえ意味が分からない。

 

 

 まあ、そんなことはさておき。

 

 

「まあ事情は聞いてるし、アンタが連れて来たんなら文句は無いわよ。スズハよ、よろしく」

 

「うん、リゼが良いなら私も良いと思う。クリアスター・シングルベリア、クリアって呼んで。よろしく」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

「なんだかそう言われると私への責任が重いと言うか……」

 

「まあまあ、これも信頼の証ですから」

 

 

 段々とクラン員達からの自分への期待とか信頼が大きくなって来ていることは、まあきっと良いことなのだろうけれど、責任も感じてしまうリゼ。

 しかし予想通り、スズハもクリアも彼女のことを受け入れてくれたようだ。特にシアンは背が小さいからか、幼さを感じるのかスズハも優しく頭を撫でていたりする。

 

 

「シアン、貴女いくつ?」

 

「……15歳、です」

 

「あら、やっぱり最年少なのかしら」

 

「いえ、私も15歳ですよ。スズハさん」

 

「嘘!?18くらいだと思ってたわ、レイナ」

 

「私は17〜」

 

「ああ、クリアは私と同い年なんだね。私も17歳だよ」

 

「えぇ……なんか改めて聞くと21の女としてはショックなんだけど。歳の差感じるのってキツイわぁ」

 

「い、今こうして言われるまで歳の差を感じたことあんまり無かったですけどね……」

 

「それはそれでなんか悲しいわね……」

 

「い、1番お姉さんということで良いじゃないか!私はいつも頼りにしているよ!」

 

「スズハ姉さ〜ん」

 

「あ、それいいですね。スズハお姉さ〜ん。……さ、シアンさんも」

 

「……す、スズハお姉さん?」

 

「……なんなのよこの辱め」

 

 

 まあ今日の今日までそれほど年齢を気にせずやって来れたという意味では、良い関係を築けているということで。一先ずスズハが顔を真っ赤にさせる程度でこの話は終わりで良い。それにそうされながらもスズハは控えめな性格のシアンを気に入ったのか愛でているので、今後の関係も問題なさそうだ。

 ……そう、話さなければならないのは今後のこと。そしてシアンの事情についても、話しておかなければならない。

 

 

「……ま〜たマドカ・アナスタシアか」

 

「いえ、今度はマドカさんは殆ど無関係みたいなものです。どちらかと言えば問題は……」

 

「……生き返った、ってこと?」

 

「その辺りは確かに、容易く公言できることではないね」

 

「……」

 

 

 人が生き返った。

 

 その事実はあまりに重く、そしてあまりにも人々の心を揺らし動かす事実。これを公表することは絶対にしてはならないと、それがあの場で全員が統一した意見の1つ。

 

 

「まあ、割と毒になる話よ。……知り合いが死んで悲しみに暮れてるような奴なんて、それこそこっちの世界にはごまんといるでしょ。死んだら取り返しが付かないからこそ、人は時間は掛かっても心を処理出来るのよ」

 

「……その前提が、覆される」

 

「変な希望なんて持たせるべきじゃない。けどこの件を知った人間は絶対にその希望を持ってしまう、私達もね」

 

「……」

 

「それにリゼ、危険なのはこの子もよ」

 

「え?」

 

「生き返った人間に、生き返る方法を聞きたがるのなんて、当然の話でしょ」

 

「!!」

 

「どうやっても、そういう輩は出て来るわよ。必死な人間にとっては、相手の事情なんて知ったことじゃない。……後は言わなくても分かるわね?」

 

「……ああ、分かるよ」

 

「……噂、漏れますよね」

 

「ま、多少は覚悟すべきね。聞き耳立ててる奴なんて何処にでも居るものだもの」

 

 

 それはきっと、人が生きて死ぬ限り、どうしようもない問題だ。そして生き返るという異常を経験した人間が、どうやっても避けることの出来ない問題。

 

 ……まだ本人も状況が受け入れていられず、不安定なシアン。彼女の心を守ることもまた必要なことだ。少なくともクランの仲間として受け入れるのであれば、その責任は全うしなければならない。

 

 

「……私」

 

「大丈夫さ、シアン」

 

「……?」

 

「私はこのクランに入ってくれた君を、絶対に見捨てたりしないし、迷惑だなんて思ったりしない」

 

「!」

 

「むしろもう私は、君のことを手放したくないとさえ思っているよ」

 

 

 リゼのその言葉に、レイナも、クリアも、スズハも、笑みを浮かべながら頷いた。だって自分達のクランリーダーであるリゼ・フォルテシアという女は、そういう人間であり、そういう人間だからこそ、自分達は着いていくと決めたのだから。

 ……そして同時に、そういう人間の側にいられる自分でありたいとも思っている。ならば自分達もまた、リゼと同じだ。そんな些細な厄介ごとくらい、どうってことない。

 

 

「さあ、今度は私達から改めて自己紹介をしよう。……リゼ・フォルテシア、一応このクランのリーダーをしているよ。いつも銃を3丁持ちながらダンジョンに潜っているし、偶にマドカの母親に拉致されるよ。一応マドカの教え子の1人なのにね……よろしく」

 

「ら、拉致……?」

 

「え?これもしかして自虐する流れですか?……あ、えっと、レイナ・テトルノールです。記憶喪失の状態でダンジョンで見つかって、完全に身元不明の上に、多分記憶を失う前は槍で人と戦うような良くないことをしてたと思います……あ、でも今はリゼさん一筋です!よろしくお願いします!」

 

「記憶喪失……」

 

「順番的には私かしら?……スズハ・アマギリ、ダンジョンに潜らないで頭使ってるわ。こことは別の異世界から邪龍の力で飛ばされて来たらしいけど、リゼのおかげでなんとかやってるわ。あと私マドカ・アナスタシアのことは好きじゃないから、よろしく」

 

「い、異世界……邪龍……」

 

「ん〜、私かぁ……クリアスター・シングルベリア。水の女神の怨霊?みたいなのに付き纏われてて、☆5の水神のスフィアを持ってる。水魔法は得意だけど、水の近くに長く居ると引き込まれちゃうから。……あ、私もリゼ一筋ね。よろしく」

 

「ほ、☆5のスフィア……水神……」

 

 

「……とまあ、こんな感じで。私が1番衝撃が薄いくらいに凄い事情を持った人間ばかりが、何の因果か集まっているのがこのクランなんだ」

 

「だから安心しなさい。バレたらヤバい迷惑度合いで言えば、私とクリアの方が断然上よ」

 

「いえい」

 

「まあそんな人達ばかり連れて来るリゼさんも、割りかし変なところあると思うんですけどね……」

 

「い、言わないでくれレイナ……私も最近そういう変な星の元に生まれてしまったような気がしているんだ……」

 

 

 改めて語ってみると、確かにこれはまあ酷い。

 よくもまあここまでこんな人材を集めることが出来たものだと、いっそ惚れ惚れするほどに。それはリゼのクランを外から見ている者達は、例えばカナディアなんかは、酷く面白そうな顔をするだろう。

 

 だって実際面白いのだから。そんな変な人間ばかり集めておいて、こうして和やかなクラン運営をしている様子もまたおかしいのだから。面白おかしくて、たまらないのだなら。

 

 

 

「………ふ、ふふ」

 

 

「「「「!」」」」

 

 

「すごい、変なクランだね」

 

 

「……ああ!でも、私の自慢のクランさ。だからそこに新しく入る君のことも、君の言葉で聞かせて貰ってもいいかな」

 

 

「うん。……シアン・アーリア。何年も前に死んだはずなのに、ダンジョンで生き返った探索者。ミライさんも居ないし、知ってる人も居なくて、不安だったけど……ここでなら私も、やっていけるかもしれない」

 

 

「ふふ。大丈夫さ、きっと」

 

 

 

 

 

 

 さて、そんなことはさておき。

 

 

 

 

 

 

「シアンの力を貸して欲しい!」

 

 

「え……」

 

 

「……う〜ん、情けない」

 

 

 リゼ・フォルテシア。

 悲しいことに、彼女はそこまでカッコいい女ではない。

 

 

「えっと、どういう……?」

 

「端的に言えば、戦力不足でして」

 

「……4人も居るのに?」

 

「私は戦えないから3人よ。それとそんな貴重な3人が、現状実質2人になってるわ」

 

「うへぇ」

 

「……?」

 

 

 そこでリゼは改めて説明する。12階層以降の攻略に自分達が手詰まりを起こしていることを。というか、そもそも生い立ちだけでなく、自分達は戦力的にも極端が過ぎるということを。

 

 そもそもこれからクランとして活動していくのだから、その辺りは先ず話しておかなければならなかったことかもしれないけれど。

 

 

「……水属性しか使えない魔法使いと、雷属性特化の槍使い」

 

「1番汎用性あるのが銃をぶっ放すリゼとかいう変態構成よ」

 

「へ、変態……」

 

「そのリゼさんも魔法は全然ですし」

 

「でも一撃はすごいよ」

 

「瞬間火力は上級探索者並でも、ダンジョン探索においては中級以下でしょうが。あと属性が偏り過ぎて基本耐性持ってるモンスター相手に1人は役立たずになるのが問題過ぎる」

 

「……ちなみに、シアンはどういう探索者なんだい?」

 

「えっと……見たほうが、分かると思う」

 

 

 そうしてシアンは自身のステータスを表示させた。

 

 

ーーーーーーーーーー――――――――――――――――

シアン・アーリア 15歳

Lv.22

スフィア1:

スフィア2:

スフィア3:高速☆4

ステータス30+21

STR:D-10

INT:D-10

SPD:B-16(A+21)

POW:G+3

VIT:G+3

LUK:E+9

スキル

・【生者光進】…体力の消費量が非常に激しく、光属性以外の威力が弱まるが、光属性の威力が強く、SPD+5。

・【定命打破】…極稀に死地を打破する。

――――――――――――――――――――――――

 

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「……また、極端ですね」

 

「完全にスピード特化だ……」

 

「しかも実質属性縛りで、短期決戦型……」

 

「その……ごめんね……」

 

「い、いや、責めているわけじゃないんだ……!むしろ私達としても待望の近接戦闘を得意とした仲間だし!」

 

「でもさ、あれだよね。むしろ私達味があるっていうか」

 

「……まあ、それは確かに」

 

「しかも属性バラけてるのも凄いわよね……」

 

「……リゼさん、もしかして全属性揃えることで問題解決しようとしてませんか?それはちょっと脳筋過ぎると思いますけど」

 

「私は何もしていないよ!?」

 

 

 しかしクリアの言う通り、シアンのステータスは正にリゼのクランの色というか、らしさがあるというか。むしろここで普通のものを見せられても困っていたくらいかもしれない。

 全く意図はしていなくても、徐々に徐々に自分達のクランの方向性が(勝手に)出来上がっていくこの感覚。これもクラン運営の面白さの1つと言ってもいいだろう。

 

 

「にしても、2つ目のこのスキルは何なの?極稀に死地を打破するって………死んだのよね?」

 

「うん、でも多分生き返ってから発現したスキルだから」

 

「まあ、お守り程度に思っておけばいいんですかね……」

 

「死地に赴くことの多い私にとっては、この上ないほどに頼りたいお守りだけれど」

 

「ああ……」

 

「ん〜、レイン?クロイン?と戦わされるなんて思わなかったよね」

 

「……今後も似たようなことに巻き込まれるんでしょうね、きっと」

 

「頭が痛い……」

 

「そういうのに巻き込まれることも覚悟しておくといいわよ、シアン」

 

 

「……?探索者は邪龍を倒すために居るものでしょ?」

 

 

「「「………」」」

 

「だそうです、頑張ってくださいねリゼさん」

 

「邪龍は流石にきつい……!!」

 

「邪龍は許せない……頑張ろうね、リゼ」

 

「期待が重い……!!」

 

 

 幸いなことは、シアンの性格という面でも、ここに馴染むことが出来そうなことなのかもしれない。そしてこうなると、徐々に浮かび上がってきたクランの色。そして良い加減に、決めないといけないクランの名前。未だにそれを決められていない、優柔不断なクランの長。

 

 

「それで……ここのクランの名前は……?」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………リゼさん、そろそろ決めました?」

 

「………まだ、です」

 

「まだかぁ」

 

「あんたの決めたものなら何でも良いって言ったでしょ、さっさと決めなさいよ。税優遇が使えないじゃない」

 

「うぅ……」

 

「みんなどうやって決めてるのかな?」

 

「さぁ……?」

 

「アンタ明日それ聞いて来なさい。シアンの探索の準備とかはやっておくから、知り合いは腐るほど居るんでしょ」

 

「……はい」

 

 

 最早カナディアからの金銭的な支援はこちらから断って無くなっているし、人数が増えるほどに日々の生活費は増えていく。研究費や弾薬費も含めて徐々に減っていく貯金を見ていると、こうして悩んでいることさえも責められるのは当然。

 

 これはこれで死活問題なのだ。

 

 新しくメンバーを加えるのならそれこそ……なにより優先して、クラン長として最初の仕事たるそれを、リゼは成し遂げなければならなかった。

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