無知で無垢な銃乙女は迷宮街で華開く   作:ねをんゆう

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122.あっちもこっちも

「と言う訳で!ブルードラゴンを討伐したい!!」

 

 

「おお〜」

 

 

 久しぶりの我が家、少々手狭になって来た我が家。膝の上でゴロゴロとしているシアンを撫でながら、リーダーたるリゼは言い切った。

 

 

「その前に、キャラタクト・ホエールは?」

 

「それは嫌だ!!」

 

「決心が雑魚過ぎる」

 

「リゼさんの危険種嫌いがまた……」

 

「でも、14階層調べないといけないんだし、いつかは倒さないといけないんだよねぇ」

 

「うぐっ」

 

 

 11〜14階層に広がる水源地帯の主である危険種キャラタクト・ホエール。超巨大モンスターであるその寝床を調べる事こそが、スフィアの売人デルタから依頼されたことである。偶然に見つけたその通路をギルドに報告し、広めてほしいと。本当にそれだけの依頼とは言え、危険種の寝床に潜り込むというのはあまりにも恐ろしい。特に今回の危険種は明確に次の階層主より強いと言われているのだし……

 

 

「……ま、いいわ。順当に行くなら先に倒すべきは階層主の方だもの。それに一応調べてはあるわ」

 

「流石スズハ!!助かるよ!!」

 

「生態としては本当にただの水竜ね、なんなら私も含めて戦わされたレイン・クロインの方がよっぽど強いくらい」

 

「まあ、あれは……」

 

「レイナは見て来たんでしょ?どうだったの?」

 

「まあ、縛られてるところだけでしたけど……正直、あんまり驚異には思えませんでした。鱗もありましたけど、レイン・クロインを見た後だと……」

 

「ちなみにこの竜、雷属性にめちゃめちゃ弱いみたい。レイナの雷を水面に叩き付けるだけで相当なダメージを与えられるはずよ」

 

「おお……!!」

 

 

 それは素晴らしいことである。漸く戦いやすい相手と戦うことができるのだ。これは今回そこそこ楽勝なのでは?……一瞬でもそう思ってしまったリゼに、スズハは睨みを効かせる。

 

 

「ちなみに、事故率はNo.1」

 

「え……?」

 

「この水竜は狡猾でね、攻撃の時にしか浮上して来ない。しかも隙を見つければ直ぐ様に超威力の水流で切り裂いてくる」

 

「……水流、ですか」

 

「水流は2種類。狙撃と切断。特に狙撃については水の中からでもしてくるわ、多少威力は落ちるみたいだけど」

 

「うわぁ……」

 

「この水流で過去に何人もの期待の新人が撃ち抜かれてるわ。調子に乗りはじめた奴等を殺すにはうってつけね」

 

「す、すまなかった……」

 

 

 とは言え、水流自体はレイン・クロインも使っていた。威力もそちらの方が強い。つまり全体的に彼の竜の劣化版と言っていいとは確かなのだ。正直そこまで苦戦するような相手ではない。……まあ、そんな意気込みのままにリゼは以前にワイアームにボロ負けしたのだが。

 

 

「ちなみに、他の方々はどんな風に倒してるんですか?」

 

「水の中に毒を投げ入れたり、雷属性を流し込んだり、そうして無理矢理に浮上させてから叩くのが一般的ね。今のレイナなら一発で気絶させられたりして」

 

「偶にはそれくらい簡単にいって欲しいですねぇ」

 

「まあ正直、今回は完全にレイナにとってボーナスステージだから。レイナとシアンで敵を浮上させて、リゼがズドン。これでイケるわ」

 

「私は〜?」

 

「踊って応援でもしてなさい」

 

「よぉし仕方ない、頑張って踊るかぁ」

 

 

 手渡された桃色のポンポンを手にモタモタと踊り始めたクリアに苦笑いを向けつつ、リゼは改めて思考する。

 話を聞いている限りだと、今回苦戦するのは階層主ではなく危険種の方なのだろう。これもまたレッドドラゴンが最大の関門と言われている所以なのかもしれない。危険種など無視していれば素通り出来るのだし、本来ならこのまま何事もなく16階層まで進むことが出来る。

 

 

「……ちなみに、キャラタクト・ホエールの方の情報は」

 

「ん?そうね……14階層に鎮座する超巨大モンスターで、毎日21時に起きて3時に寝る生活をしているわ。起きて直ぐに周囲の全てを飲み込む勢いで食事をしていて、基本戦闘をすると階層そのものがボロボロになるみたいね」

 

「規模が……規模がおかしい……」

 

「必殺技は吸い込んだ大量の水を一斉に放出する横向き大瀑布。ある程度しっかりとしたVITがないと水圧で粉々になるらしいわ。あと単純に押し潰されても当然死ぬ」

 

「……戦いたくない」

 

「タフ過ぎてラフォーレ・アナスタシアも滅多に殺さないみたいね。ギルドとしても討伐は推奨してない。どの上級探索者も好きで戦おうとはしないわ」

 

「なんでそんな怪物の寝床に忍び込まないといけないんですか……」

 

「まあ上手く行けば大丈夫でしょ、上手く行けば」

 

「それで上手く行った試しがないんだが……」

 

 

 定期的にこれに挑みに行く馬鹿は出て来るが、基本生きて帰って来るのは稀である。彼のモンスターが眠っている間に通り抜ける、それこそが定石。

 

 

「ちなみに過去にキャラタクト・ホエールが暴れた影響でダンジョンの床が抜けて、ブルードラゴンと邂逅したことがあるみたいよ」

 

「ダンジョン間の床ってそんなに脆くない筈なんだけれど……それで、どうなったんだい?」

 

「一方的にブルードラゴンが食い殺されて、キャラタクト・ホエールが強化種になった。"青葉の集い"のシセイ・セントルフィを中心としたパーティがこれを葬ってるわ」

 

「クランじゃなくてパーティで処理したのか……」

 

「シセイさん凄い……」

 

「うーん、お爺ちゃん流石だなぁ」

 

 

 過去を掘れば誰かの武勇伝が出て来るもの、それこそがこの探索者と言う職の楽しいところでもある。意外な人物が意外なところで活躍している、そんな話がここには溢れている。その中の一つにいつか自分もなることになるのだろうが、それを実感することになるのはいつになるだろうか。もしかすれば既に名前が残っていることもあるかもしれないが……

 

 

「ま、基本レイナが中心になるのは間違いないわ。逆に次の階層からは活躍し難くなるんだし、ここらで一発かまして来なさいな」

 

「そうですね、頑張ります!」

 

「クリアは次の階層から頑張りなさい」

 

「いえい」

 

「シアンはもう少し先までは全然余裕よ」

 

「うん、ホーリードラゴンは無理だよ」

 

「リゼは休める時ないから」

 

「うん……分かってるヨ……」

 

 

 まあ、まあ、気にしない……むしろそんな日が来ることの方が困るし、もっと強くならないといけないし、危険種と戦うのだって別に全然怖くなんか……なんなら今直ぐにでも戦いに行ったって構わないとも。流石にダンジョンから帰って来たばかりの今日にそれをすることなんて絶対にあり得ないけど……

 

 

 

 

「おい貴様等!!支度をしろ!!キャラタクト・ホエールを殺しに行くぞ!!」

 

 

 

 

「「「ギャァァアアア!!!!!!」」」

 

 

扉が吹き飛んだ。

 

 

「で、出たぁぁあ!?!?」

 

「鬼……!悪魔……!!」

 

「いきなり過ぎんでしょ!!」

 

「ラ、ラフォーレ!?なんで!?なんでキャラタクト・ホエール!?先にブルードラゴン!!ブルードラゴン!!」

 

 

「訳の分からないことをガタガタ抜かすな!!今更ブルードラゴン程度が貴様等の腹の足しになるか!!奴は今夜中にブチ殺す!!さっさと立て!!また蹴り飛ばされたいか!!」

 

 

「ひぃぃいん………!!」

 

 

 しかし、悲しいかな。

 リゼ・フォルテシアの本当のお師匠様は、そんなに優しい人間ではなかった。『早速明日ブルードラゴンに挑戦してみよう』程度でも許されない。『今直ぐにキャラタクト・ホエールに挑みに行く』を強制してくる悪魔である。

 

 

 そうしてリゼ達は本日2度目のダンジョン探索に赴くことになった。

 

 断れる訳があるまい。彼女だってこうして遠征から帰って来たばかりなのに自分達に付き合ってくれているのだから。その行為を無碍になど出来るはずもない。

 

 

 

 ……などというのは完全にリゼの勘違いであり、実際のところはラフォーレも自身の手に入れた新しい力を試しに行きたいだけであり、そのついでに彼等は連れられただけだったりするのだが……それはまた後の話。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ざっけんじゃねぇ!!!」

 

 

 バァァンッ!!と、大きな音を立ててその場に立ち上がったレンドを見て。都市最強を誇る経験とステータスを保持する人間の圧を正面から向けられて。けれど彼は決して表情を変えることはなかったし、それに恐怖さえしていなかった。

 集まる視線は嫌悪ばかり、そんな最中でも太々しく腕を組んでいる態度には、隣に立つエリーナでさえ何とも言えない顔をするしかない。

 

 

「理由なんざどうだっていい!!エリーナを今ギルド長から外す意味が分かってんのかテメェ!?これから否が応でもオルテミスは混乱すんだ!!そこにギルド長の交代って……あり得ねえだろ!!」

 

「レンドさん……」

 

「逆に聞くが、今この状況だからこそエリーナ・アポストロフィをギルド長から外すべきだとは思わないだろうか?都市最強」

 

「何ぃ……?」

 

「そもそも前提として、エリーナ・アポストロフィにギルドを治めるに相応しい執行能力はない。それ故に違反ギリギリの行為を繰り返し、結果として彼女はこちらが多少譲歩したところで"ギルド長補佐"まで降格させざるを得ない状況に陥った。……つまり、これまでが間違った状態だったということだ。それを正すことの何に問題がある」

 

「問題大アリに決まってんだろ!!エリーナだからこそ言うこと聞いてた連中も居たんだ!!ポッと出のギルド長の言うこと聞くような奴なんざ商業連中にも居やしねぇ!!それもテメェみたいな胡散臭い男の言うことなんか誰が聞くか!!」

 

「酷い言いようだが、そもそもギルドは公的組織。その人事に対して探索者が口を出すことは不可能だ。これは連邦としての決定であり、覆すことは出来ない。否定するより適応して貰いたいものだ。真にオルテミスのことを考えるのであれば、それが最善ではないだろうか」

 

「っ……ふざけんじゃねぇ、俺は認めねぇ。こんだけ馬鹿げた情報が手に入って、これからそれを公表しなきゃならねぇんだ。そんな状況をエリーナ以外に纏められるかよ、冗談も休み休み言いやがれ!」

 

 

 一瞬だけ冷静になったレンドの言い放ったその言葉に、きっとその場に居た何人かも共感したのだろう。少なくともこの場に居た者達は今回手に入ったその情報の内容を知っているし、その重大さも知っていた。

 各方面の人間から強い信頼を得ているエリーナをギルド長から下ろした状態でその情報を公表することなど、絶対に出来ないと誰もが分かっていた。故にその男の横暴な態度も相まって、レンドが部屋から出ていくのを追って彼等も部屋から姿を消していく。

 

 そうして残ったのは、僅か数人。

 

 事情を知っている者、知らなくても分かっている者、何も知らないけど恐らく問題ないと分かっている者。それくらい。

 

 

 

「ど、どど……どうするんだ新ギルド長ぉ!!あの様子ではレンド達は絶対に認めないだろう!!何か策はあるのか!?」

 

「……ねぇ、当人が一番役割を外されたこと受け入れてるのもどうなのよ」

 

「誰が好き好んでオルテミスのギルド長なんてやるものか!!変わって貰えるのなら変わって欲しい!!私は常々そう連邦に伝えていたんだぞ!!」

 

「こんなことだろうと思ったが……」

 

「ネーナさんもエルザさんも目の下が……」

 

「……ねえ、もう監査は終わったんだけどぉ?いつになったら連邦に帰れるのかしらぁ?」

 

「私そもそもギルド職員でもなんでもないんだけど?いつまで付き合わされればいいわけ?そろそろ探索者に戻らせてくれてもいいんじゃない?」

 

「あ、あはは……」

 

 

 ギルド内部は現在、まさに地獄絵図。

 そしてそれはギルド長どころか監査官さえ同じ。

 なんならそう、こうして太々しい男さえ……

 

 

「あの……リロイズさんも、大丈夫ですか……?」

 

「ああ、問題ないよ。マドカさん」

 

「指震えてますけど……」

 

「……腱鞘炎が酷くてね」

 

「治療魔法使いますね、多少マシになると思います」

 

「助かるよ、本当に」

 

 

 リロイズ・セルガ。

 今回の監査において連邦から派遣されて来た監査官であり、同時にこのオルテミスの新たなギルド長として任命された、若くして非常に優秀な青年である。そしてそんな彼もまた、色々と持病を患っていた。しかしそれも仕方がない、彼は常に激務と戦い続けているのだから。

 

 

「それにしても、マドカはともかくカナディアまで残ってくれるとは思わなかったな。流石に今回ばかりは反対するかと思ったが」

 

「私はマドカが残ったから残っただけだ。まあマドカの表情を見て、何かしらの理由があるのだとは予想していたが……」

 

「このマドコンめ……」

 

「……なるほど、彼女もマドカ信者なんだね」

 

「?」

 

「レイナという少女が言っていた。マドカ・アナスタシアに熱心な人々を彼女はそう呼んでいるらしい」

 

「ああ、なるほど」

 

「し、信者だなんてそんな……」

 

 

 まあ実際その筆頭というか古株がカナディアであるのだから、何も間違ってはいないのだけれど。実際この件についても何より先にマドカの表情に気が付いて、諸々の理由は頭の中にあったのに、その全てを捨てて彼女はマドカを待っていた訳で。

 

 

「それで?実際のところはどうなっているんだ?」

 

「エリーナの力不足」

 

「よくもまあオルテミスのギルド長なんてやってられたわねぇ、このザマでぇ」

 

「……少なくとも、これだけの異常事態を処理出来るほどの能力が今の彼女には本当にない。身内の不足故にあまり表立っては言えないが」

 

 

「……と言われているが、当人の意見は?」

 

 

「無理だ、絶対に破綻する」

 

 

「は、恥ずかしげもなく……」

 

「だって無理だ!絶対に無理だ!!50階層の先に人工物があって!?ダンジョンの真相が描かれていて!?しかも過去に踏破された形跡があっただけでなく!?3つ目のスキルが発現する!?それも一部のスキルは変えられるだと!?こんなものどう処理すればいいんだ!!」

 

「……まあ、それはな」

 

 

 元よりエリーナはそれほど事務仕事が得意な訳ではないし、殆どの仕事を優秀な部下の協力もあって何とかこなしていた形だ。彼女に求められていたのは何より人望と信頼であって、ギルドの方針にもマドカやレンドを含めた探索者達が密かに口添えしていたからこそ、上手く回っていたところがある。

 そんな彼女の元に舞い込んで来た、こんな大事。混乱するのは当然で、最早どうしたらいいのかも分からない。元より自分はギルド長になんか向いていないと思っていたのだが。自分より優秀な人間に任せられるのなら、これ以上のことはない。

 

 

「だが実際のところ、この状況でギルド長が変わるというのは確かに好ましくはない。その点においてはレンド・ハルマントンの言い分は正しい」

 

「良かったわね。もう10年はギルド長から逃げられそうにないわよ、エリーナ」

 

「嫌だぁあ!!」

 

「つまりリロイズさんは、何か考えがあって一時的にギルド長を引き受けているということですね」

 

「ああ、そうだ。俺に権力欲は無いからね、君なら分かるだろう?マドカさん」

 

「ええ、分かりますよ。リロイズさんは本当に世界の未来を思って行動している人ですからね、アタラクシアさん達と同じで」

 

「はは、彼女達と同列にされるのは少し恐縮かな。俺はただ、今より少しでもマシな未来を作りたいだけさ。……せめて、今を生きる子供達が大人になった時に、俺達なんかより明日に希望を感じられるような世界にしておきたい。そう思っているだけさ」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「お前より若い彼がこんなことを言っているが、お前は恥ずかしくないのかエリーナ」

 

「うぐっ」

 

「リロイズさんは孤児院も経営しているんですよね。様子はどうですか?」

 

「お陰様で順調だよ。マドカさんに贈って貰った本も喜んでいた。それに先日、年長の3人が遂に独り立ちしてね。連邦職員の試験にも合格したんだ」

 

「それは凄い!おめでとうございます!」

 

「ありがとう、俺も嬉しかった。まさか部下になるとは思わなかったからね、正直かなり驚かされた」

 

「……お前は本当に恥ずかしくないのか、エリーナ」

 

「うぅ、分かってるよぅ……」

 

 

 元よりマドカとリロイズに面識があったのは知っていたものの、何故か妙に仲が良さそうな雰囲気があるなと思っていたが、どうもこのリロイズという男も彼等と同類の人間らしい。

 マドカやアタラクシアほどイっちゃってる訳ではないが、世界の将来のため、もっと言えば今を生きる子供達の未来のために、全身全霊をかけている。連邦職員という立場で、自分に出来ることをやっている。そんな彼なのだから、なるほど監査官としての立ち位置は相応しいのだろう。確実に賄賂なんか受け付けないだろうし、何よりそういう人間を絶対に許さない。

 

 

「一先ず、1月以内に現在のギルド運営で障害になっている規則を全て変えようと思う。その間に今回判明した件について公表する情報を整理して、ギルド長をエリーナさんに返した後の概ねの方針を作るつもりだ」

 

「規則を変えるって……そんなに簡単に出来ないでしょ」

 

「そうだね、だからここからが地獄だ」

 

「「「………」」」

 

「だが少なくとも、俺からの起案というだけで上には随分と通り易くなる。エリーナさんなら20年かかる変革も、俺なら1月で終わらせられる。それにこれが終われば、今後は君たちも随分と動き易くなる筈だ。断る理由はあるかい?」

 

「……有能過ぎる」

 

「流石はリロイズさん……」

 

「本当にギルド長やってくれないかしら」

 

「おい?私はそれでもいいが、何かこう傷付くんだが?」

 

 

 なんとなく、カナディアは思った。

 きっと何処の組織もこういう異様に優秀で献身的な人間が1人は居て、それ故に今この世界はそれなりにまともに動いているのではないかと。少なくとも今の連邦がかなり良心的な運営がされているのは、こういう人材の影響が大いにあるのではないかと。

 

 

「ああ、それとネーナさん」

 

「はいぃ?」

 

「君は今日付けで俺の正式な補佐に異動が決定した。おめでとう、異例の昇格だ」

 

「は?………はぁぁぁあああ!?!?」

 

「く、くふっ、くふふふふ……よ、良かったじゃないネーナ。能力が認められて」

 

「ふっ、ふっざけんじゃないわよぅ!?こんな仕事人間の補佐なんて自殺しに行くようなものじゃないのぉ!!わたしには本気で世界の将来を憂うようなイかれた思考はないんだけどぉ!?」

 

「そんなもん誰にも無いわよ」

 

「働き甲斐は保証するよ」

 

「働き甲斐搾取を公言!?せめて報酬を出して欲しいのですがぁ!?」

 

「公務員だからね、それは難しい相談だ」

 

 

 悲しいかな、どうやらネーナも連邦に帰れるのは暫く先の話になりそうである。そしてこれから始まるデスマーチに、嘆いても喚いても巻き込まれていく。

 仕方がない、世界の未来のためなのだから。優秀な人間が搾取されてしまうのは、世の常である。

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