「………なるほどね」
「あ、ああ……」
「……」
「……ええと、エルザ?」
「……………こふっ」
「エルザぁぁああああああ!!!!?!?」
その報告を聞いて、きっと彼女は最早限界だったのだろう。もう既に見るからに体調が悪そうだったというのに、更にとんでもない仕事を増やされて。なんなら抱えていた問題に匹敵するか超えるくらいの情報を持ち込まれて。そんなの当然にこうなる。倒れる。
「ええと、リゼさん。エルザさんを後でユイさんのところに連れて行ってあげて下さい。後は私が引き継ぎます」
「マ、マドカも早速ギルドで働いているんだね……」
「ええ、流石に忙しいので」
「す、すまない。そんな時にこんな話を持って来てしまって……」
「いいえ、気にしないで下さい。これに関しては確かに衝撃の大きい情報ではありますが、対処自体は単純なので。リゼさんとお母さんが実際に見て来たというのなら、わざわざ確認しに行く必要もありませんし」
気を失って倒れたエルザを解放しながら、多少疲れてはいるだろうが、変わらずニコニコとした笑顔でマドカはリゼ達に笑いかける。彼女も今はギルド内の処理を必死で手伝っているらしく、遠征から帰って来た直後にこれなのだから、本当に元気なものである。
もちろん、彼女の背後ではリゼも見知った人達が顔を真っ青にしながら只管に働いている。エリーナでさえも大量の書類を持ちながら一階と2階を往復しているのだ。これは相当な有様である。
「マドカ、必要なら何かしらあの部屋に入れないように仕込んで来るが」
「大丈夫ですよ、お母さん。何をしたところで、破れる人は破ってしまうんですから。……それよりかは、キャラタクト・ホエールから『武士のスフィア』が見つかったという噂を出します。対策はこれで十分です」
「なるほどな」
「うん……?」
「単純な話、地上と54階層の入口は確保してあります。恐らくアルファさん達は今ダンジョン内に居ませんし、そうでなくとも人の目があるだけで相当動き辛いでしょう」
「あ、そういうことか」
「それに『武士のスフィア』が見つかったというだけで、少なくともアルカさん達は確実に14階層に向かうでしょう。そうでなくともお金目当てに、多くの中級探索者が様子を見に行く筈です」
「お前も『武士のスフィア』を持っていることは容易く口外するなよ、面倒事に巻き込まれる」
「確かにあれは、すごいスフィアだった……」
あれほどの巨体を持つキャラタクト・ホエールを粉砕したレイナの一撃は、彼女のスキルによる影響はあっても、それでも異様な破壊力を有していた。『武士のスフィア』とはそれほど強力なスフィアであり、あのアルカでさえも必死に探し求めているものだ。持っていると分かった時点で、少なくとも彼女からは交渉を持ちかけられるだろう。
ラフォーレまでわざわざこうして忠告してくれているのだから、それは素直に聞くべきだ。
「他の階層についてはどうする?15階層以降の管理装置もあるだろう」
「そうですね……ステラさんとリエラさんがまた小遠征に向かうと言っていたので、その時に軽くお願いしてみます。とは言え、基本的に見つからないと考えた方がいいかもしれません。まあ見つからなくとも問題ありませんが」
「あの2人か……そういえばまだ殆ど話せていないんだなぁ……」
「ふふ、まあ彼女達は強くなることに必死なので。今回の攻略でもベインさん達と一緒にかなり頑張ってくれました」
「そ、そうだったのか……」
「ええ、私と一緒に45階層のインフェルノ・ドラゴンを倒してくれたので。次は黒龍を倒すんだ〜って気合いを入れてましたよ」
「………遠い先の話だなぁ」
「そうだな、あと一年は必要だな」
「ラフォーレ?もしかして私のこと、あと一年で50階層に連れて行こうとしていないかい?流石に無理だからね?」
「愚図、お前レベル幾つになった」
「に、22だけど……最近色々あったし」
「今度レベリングするぞ、1月は地上に帰れると思うな」
「マドカ助けて!!殺される!!」
「ふふ、仲良くなりましたねぇ」
「今になって分かるギルド長の気持ち!!」
母親の関係になると途端に目が節穴化してしまうマドカに対して絶望するこの気持ち、あの時のエリーナの気持ちが今更になって分かってしまう。せめて1月籠るのならマドカと一緒がいいのに、きっとその願いが叶うこともないのだろう。あまりにも憂鬱が過ぎる。絶対に強くなれるだろうという確信はあるけれど。
「一先ず、この件については口外はしないで下さいね。後はこちらで対応します。ただ階層主の調査の時にはリゼさんにお願いするかもしれませんので、お願いしますね」
「あ、うん。任せて欲しい、そこは是非やらせて欲しいくらいさ」
「マドカ、55階層以降の攻略についてはどうなっている?」
「まだ話は出てないですね。今はエリーナさんがギルド長から降ろされたことで、レンドさん達も混乱しているようでして」
「え!?そうなのかい!?」
「チッ、そんなクソ程どうでもいいことに無駄な時間を使っているのか。……使えそうな人間は居るか?」
「んー……3つ目のスキルが解放されることが判明したせいで、各クラン55階層以降の攻略より、50階層の攻略について力を入れ始めている感じです。正直50階層を攻略した人達の中で今直ぐに55階層を攻略しようとしている人は居ませんね」
「……クソが、なんのために50階層を攻略したと思っている。これでは何の意味もないだろうが」
「……」
ラフォーレの落胆したような、悔しがるような、そんな表情に何とも言えない気持ちになる。ギルドが騒々しいのも分かるが、ラフォーレの気持ちもリゼには分かる。せっかく50階層を突破して、ここから先は完全に未知の領域だというのに。そこから先に進めない悔しさ。同じ立場ならリゼだって多少ヤキモキしてしまうかもしれない。それこそ55階層の階層主を倒した次の世界なんて、リゼだって知りたいくらいなのに。
「少なくとも、暫くは何処も動かないと思います。なんならお母さんも、有望な探索者を集めて50階層を攻略した方が早いくらいかもしれません」
「……はぁ。あまり簡単に言ってくれるな、私はそういうのは苦手なんだ」
「わ、私達は無理だからな!?」
「分かっている、お前達はさっさとイエロードラゴンを倒して来い。……マドカ、有望な探索者を教えてくれ」
「先ずはリエラさんとステラさん。あとベインさんが最近、とある男性とペアを組んで居ます。45階層でも参加していましたが、彼も将来有望かと」
「ああ、アレか……確かに奴等には以前にはなかった必死さが見えた、少しは使えるか」
「"青葉の集い"の方々も良いかもしれません。基本的にギルド運営とは無関係ですし、ご老人が多いことから長期の遠征に行けないことを悩んでもいましたので。他メンバーの50階層突破にもそれほど熱意はないでしょうし」
「ふむ、この際にジジイ共に甘やかされたガキ共を叩き治してやるのも一興か。盾役が手に入るのも良い」
「盾役ならバルクさんはどうなんだい?ラフォーレの弟の。彼は今回の遠征では地上戦力として残っていたと聞いたけど」
「アレは駄目だ、クソの役にも立たん」
「え……?」
「この遠征の間、奴は地上で何もしていなかった。最低限の鍛錬のみ、自身の力量を伸ばすための努力を殆ど怠っていた。……3週間だぞ?それを奴は無にした。今更そんな男の何に期待する?アレを連れて行くくらいなら、お前を連れて行った方が100万倍マシだ」
「……」
そんな冷たい言葉を前に、流石のマドカも何も言わない。リゼとしても反応に困る。けれどラフォーレの性格を知った今なら、その反応が当然のものだとも思ってしまう。
ブローディア姉妹とベインは、それぞれの目的のために本気で必死になって努力をしている。ラフォーレはそういう人間を好む。
"青葉の集い"の彼等も、甘やかされているとは言いつつ若さに合わない実力を持っているのは確かだ。当然そこに努力はある。
リゼ達だって殆ど成り行きで手酷い目に遭っているのは事実だが、それ以外でも確かに努力はしている。毎日のようにダンジョンに潜っているし、依頼も欠かす日は無いし、今回の遠征中も3週間、自分達に足りないものを自分達なりに必死に磨いたつもりだ。それがキャラタクト・ホエールとの戦闘中でも一部ではあるが功をなした。
……だが、ラフォーレの話したそれが本当のことなら。ラフォーレの弟であるバルク・エルフィンはこの3週間を大きな挑戦や工夫もすることなく、ただ平然と過ごした。その間に同じパーティメンバーのラフォーレやクロノスは50階層突破のために全力を尽くしていたというのに。地上で何の問題も起きなかったことを良いことに、怠惰を貪った。
ラフォーレが怒りを通り越して見放してしまったのも、仕方がない。いくら弟であろうとも、彼女にとって血の繋がりというのはそれほど大したものではないのだから。
「その点、あのベインという男は良い目をするようになった。奴は1年もすれば最上位まで登るだろう」
「そうですね、私もそう思います。元よりそれだけの才のある方でしたから。意思が伴った今、登り詰めるのに然程時間はかからないかと」
「……意思、か。それは私にとってもよく分からないかもしれない」
「まあお前には確かに奴ほど熱の伴った意思はないな」
「うぐっ……わ、分かっているよ。前にラフォーレに言われた時に散々悩んださ」
「……だがまあ、それが無くとも結果を出しているのだから。そろそろ認めなければならないだろう」
「え?」
「お前のマドカに対する執着は本気で気持ち悪いとな」
「褒めて?そろそろ普通に褒めて?それに私だって好奇心とか楽しさとか、そういうのもあって努力が出来ているだけで……」
「ふふ、つまり探索者に向いていたんですね。何をするにしても、それを楽しめる人間が一番強いですから」
「あはは、そうかな」
「マドカに褒められて露骨に嬉しがるな、気持ちが悪い」
「痛いっ!!」
褒められてデレデレとしていたところを引っ叩かれる。
しかしマドカの言う、結局のところそれを楽しむことが出来るのが一番強いかもしれないというのには、ラフォーレも納得したところがあった。金や名声を求めるより、憎悪や憤怒で動くより、それは好奇心と楽しさで動いている人間の方が動き続けられるに決まっている。
それに実際、きっとラフォーレだって同じだ。未知への好奇心と、その楽しさで探索者をやっている。そしてそれこそが探索者として最も優れた才能なのだろう。なんだかんだ言いつつ結局こうしてリゼの面倒を見てしまっているのは、そういう既視感があるからなのかもしれない。
「それで、50階層の再度突破を目指すのかい?」
「愚図共が燻っている以上、やるしかあるまい。幸いにも黒龍の情報は揃っている。私自身もそれなりの力を手に入れた。……ああ、そういえばこの"魔砲のスフィア"を見つけたのはお前達だったか。それについては感謝してやる」
「感謝されてる気がまるでしない……」
「ギルドの方がひと段落したら、私もカナディアさんと一緒に51階層の調査をするつもりです。そのついでで良ければ手伝いますよ、お母さん」
「ああ。ありがとう、マドカ」
「ラフォーレが普通に感謝してる……何故それが私には来ないんだ……」
仕方がない。だって愛娘なのだから。
そこはリゼでは食い込めない領域である。
――――――――――――――――――――――――
久しぶりにお祝いも兼ねて外で食べよう!なんて話になって、連れて来られたのは何故か例の喫茶店。
どうやらポストの中に『最近来てないけど珈琲胃の中に入れる準備出来てる?』という文章があったのをリゼが発見したらしく、これはと思い彼女も危機感を感じたらしい。
「ほ〜ん。で?ブルードラゴンは?」
「レイナの一撃で多分浮かび上がって来ると思う」
「あとは私が頭部をズドンと」
「……つまり、余裕なのね」
「レイナが凄かった」
「私もびっくりしました」
「いつの間にか普通に探索者してたんですね、ご主人様」
「私は最初から普通に探索者していたつもりだけど?あと鼻に肉を詰めようとしないでくれ、私をどうしたいんだ君は」
当然のように机に混ざって、何故か一緒になって食事を摂り始めたいつものふざけた店員。フォークに肉を突き刺してウリウリとリゼの鼻に押し付けて来るその様子から、彼女が変わらず元気そうだと言うことが見て取れた。
そして今日も店主エドは静かに食器を磨いている。なぜ彼はこの店員を叱らないのだろう、リゼは不思議で仕方がない。
「にしても、こんなお洒落な店をリゼが知ってたなんて思わなかったわ。少し高めだけど良い店ね」
「ありがとうございますぅ♡お陰様で毎月そこそこ黒字なんですぅ♡」
「ま、また生々しい話を……」
「確かここの出資者がマドカさんなんですよね、今でも時々来たりするんです?」
「げっ、そうだったの?」
「結構来ますよ〜?単に食事に来ることもあれば、マスターとなんか話してる時もありますし。私のことも可愛がってくれるのでぇ♡」
「……なぜ私を見ながらそれを言うんだ」
「私もこのお店知らなかったかも」
「ん?クリアも知らなかったんだね、シセイさんはここに来てたけど」
「"青葉の集い"の方々はそれなりに来られますね〜。まあターゲット層が時間と金の有り余ってる御老人なので当然なんですけど〜」
「そう考えると、何故かメイド服を着ているリコの存在が一番この店に相応しくないのでは……?」
「え?なに?オムライス10人前おかわり?」
「い、言ってない!!あと"おかわり"ってなんだ!そんなもの一度だって頼んだ覚えはないぞ!!」
「えぇ!?じゃあ20人前も食べるんですかぁ!?こ、これには流石の私も見直さざるを得ませんわね、なんて立派なご主人様……」
「い・ら・な・い!!」
危うく注文票にオムライス20人前を書きそうになった彼女を、リゼは必死になって止める。リゼは知っている。この女は放っておけば本当に20人前のオムライスを持って来る女だと。そしてそんなリゼの様子を、クリアやスズハは珍しいと見ていた。その気持ちはレイナにも分かる。リゼがこういう珍しい取り乱した方をする相手はそれほど居ないのだから。
「冗談はさておき」
「それが冗談だというのなら、今直ぐにそのペンを机に置いてくれ」
「現実はさておき」
「絶対に現実にはさせない!!」
「ご主人様は知ってます?最近の都市外の情勢とか」
「ん?」
それまでの冗談が嘘のような真面目な話をぶっ込まれて、リゼは思わず戸惑ってしまう。しかし改めてそう言われると、実はそれほど知らなかったりする。何なら最近は自分達のことで手一杯で、都市の外で何が起きているのかなんて触れることさえ出来ていなかった。それどころではなかった。
「まあどうせそんなことだろうとは思いましたけど〜……なんか色々大変みたいですよ〜?主に邪龍とか、龍神教とか」
「!!」
「……邪龍」
「シアンさん……」
「良ければ、軽く教えて貰ってもいいかな?デザートの一品くらいなら奢るよ」
「やれやれ、仕方ないですね〜。マスター、超ジャンボフルーツパフェを1つ〜」
「本当に何の遠慮もない……」
邪龍と聞いて、シアンの表情が曇ってしまうのは仕方のないこと。そういう意味ではこの話をしてくれたのが空気を壊してくれるリコであって良かったのかもしれない。リゼのお小遣いも悲鳴を上げるが。
「最近、超龍アバズドルの動きが活発らしいんですよね〜。なんでも活動範囲が広がって?町が一つ消えたんだとか」
「超龍アバズドル、か……」
「その邪龍は私もよく知らないです……スズハさんは分かります?」
「まあ最低限だけど……簡単に言えば、レッドドラゴンの最終形態みたいな奴よ。基本は世界の端の火山帯を縄張りにしていて、現状だと最も討伐難度が低いと考えられてるわ」
「……いやでも、確かアバズドルは」
「ええ、200年近く前に討伐対象になって、人類側が返り討ちにされてる。難度が低いって言われてるのは、持ってる能力が単純だからよ。やってる事は熱線を撒き散らしてるだけだし」
「熱線……シナスタンみたい……」
「陽龍シナスタンは光を操って敵を焼いてたけど、超龍アバズドルは自分の身体から熱線を撒き散らすの。地形破壊と集団殲滅を得意としてる。過去の記録だと、人間が近付いただけで消えた、ただの一撃で大きな湖が蒸発した、なんて巫山戯た話もあるわ」
「あ、相変わらず邪龍というのは……」
「そ、そんなアバズドルが活動を……?」
「最近は大人しくしてたみたいなんですけどね〜。それで龍神教も活動を増してるって感じなんですよ〜」
「……!」
最近はその言葉も聞いていなかったけれど、今でもリゼの記憶には確かに残っている。ラフォーレやエルザ達と対峙した、あの異形の怪物達。龍神教、邪龍こそが世界を救うと信じて疑わない者達。
「龍神教は何を?」
「アバズドルの被害があった場所で、救命活動を行ってまして。実際に龍神教の活躍でかなりの数の人達が命を救われたんですって」
「それ、は……」
「まあそうなると?龍神教の評判も上昇、信徒も倍増、そんな話が広がって少しずつ各地で影響力を強めてるみたいな。『隣に座る人間が龍神教徒だと思って話せ』なんて言葉もありますけど、本当にそんな感じになってきたと言いますか」
「……まあ、そこは実際に人命救ってんだから当然の報酬でしょ。気に入らないなら先に助けるべきだったのよ」
「そ、それはそうだが……」
「割と世の中がきな臭くなってきましたからね〜。獣人にだけ感染する熱病とか、邪龍が増えた疑惑とか。他にもこの前のアイアントで起きた紅嵐で、汚染地域が増えたなんて話もありましたし。滅亡の日は近い、みたいな悲観的な話も多いみたいですよ〜」
「……滅亡の日、か」
リゼは知っている。
邪龍が増えてしまった事は事実だと。
スズハは知っている。
獣人にのみ感染する熱病の存在を。
つまり恐らく、アイアントで汚染地域が増えたというのも本当の話なのだろう。
ダンジョンのある各都市で、こうして良くないことばかりが続いている。それを考えれば滅亡の日が近いというのも決して嘘とは言い難い。
「スズハはどう思う?滅亡の日だなんて」
「いや、割と現実的にこの世界やばいでしょ」
「やっぱりそう思います……?」
「少なくとも、邪龍が1匹気分を変えて大暴れしただけで半壊するような現状。しかも邪龍だけじゃなくて、グリンラルには怪荒進が、アイアントには紅嵐がある。……元の私の世界並みの平和を手に入れるのに、あと何百年かかるのよ」
「まあ私は私が生きてる間に何もなければいいかなって思いますけどねー」
「君は本当に…………ん?いや、君はエルフだからあと100年以上は生きるじゃないか」
「何も起きないといいですね〜」
「……そうだね」
そんなリコの言葉に、リゼは素直に頷く。あくまでリゼは探索者としてダンジョン探索を楽しんでいたい訳であり、邪龍討伐を目的にしている訳ではない。なるべくなら今のままこの生活を楽しんでいたいとは思う。……なるべく平和に、誰も悲しむことのないように。
「……あ、そういえば今日はマドカさんから伝言を預かってるので呼び出した訳なんですけど〜」
「先にそれを言わないか!!」
「明日とある"錬金術師"さんがここに来る予定なんですけど、会っていきます?」
「「会いたい!!」」
それは会いたい。
リゼはスズハと一緒に身を乗り出した。