無知で無垢な銃乙女は迷宮街で華開く   作:ねをんゆう

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14.宝箱のプレゼント

 

「これは、なんだろうか……?」

 

「ふふ〜♪と〜ってもいいものですよ♪いやぁ、偶然見つけられて良かったです♪」

 

珍しく上機嫌で戻ってきたマドカから手渡されたのは、一つの木製の小箱であった。マドカが普段から持ち歩いている物よりまた一回り小さく、材質も異なり、掌大くらいしかない様なそれ。

その箱自体はリゼも知っている。

その大きさに関わらず中には大量の物が入ると言う不思議な箱だ。ここにマドカは普段食料だったりダンジョンで採取して来た物を入れたりしているのだが、リゼはてっきりそれが何処かの道具屋で売っている様な高価な物だと思っていたのだ。

……その魔法の様な箱が、まさかダンジョン産の物質であるなどと夢にも思っていなかった。だってそれはつまり、この箱もまたスフィアや秘石と同じく正体不明の存在であるという事なのだから。

 

「この箱にかなりの値打ちがある事は確かね。箱の大きさ、材質、状態、その辺りの関係で低レアのスフィアなんかより遥かに高い価格で取引されるもの」

 

「そ、そうなのか!?」

 

「ユイさん、解説をお願いしてもいいですか?」

 

「はい、お任せ下さい。……リゼさん、基本的に私達はこれを宝箱と呼んでいます。箱の効果は当然として、この箱が階層主討伐以外でドラゴンスフィアを手に入れる唯一の方法でもあるためにそう呼ばれているんです」

 

「な、なんだって!?」

 

6階層で昼食用のパンを手に持ちながら、リゼは思わず立ち上がってしまう。マドカがリゼの前に置いている小さな木箱、マドカはそれをリゼに対するプレゼントだと言っていた。そしてその中にはスフィアが入っているとも。……だとすれば、この箱一つで一体どれほどの価値があるというのだろうか。いつもの様にサラッとこうして高価な物をプレゼントしてくるマドカに対し、リゼはまた呆然と視線を送るが、やはりそこもいつもの様にニコニコと笑顔で返されてしまう。

 

「とは言え、確実にスフィアが手に入る訳ではありません。スフィア以外の物が入っている事もあれば、ハズレ箱と呼ばれる開けようとした相手に襲い掛かる箱型のモンスターも存在します。それに当たってしまえば高位の探索者であっても重傷を負ってしまう事もあるので要注意です」

 

「な、なるほど……それはまた危険な代物だね」

 

「ふふ、大丈夫ですよ。そこは何かあっても私が全力で助けますから、安心して下さい」

 

「それと重要な要素として、宝箱の中身はステータスの幸運の値が関係するわ。統計的な話だけれど、レア度にも関係するみたいだから、最初に開ける人間は考えた方がいいわね」

 

「幸運……」

 

そう言われてリゼは、チラと自分のステータスを確認する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リゼ・フォルテシア 17歳 女性

スフィア1:

スフィア2:

スフィア3:

-ステータス-

Lv.8 初期値30+7

STR(筋力):D11

INT(魔力):G2

SPD(速力):E-7

POW(精神力):G+3

VIT(耐久力):E8

LUK(幸運):F+6

-スキル-

【星の王冠】…精神と引き換えに意識・思考・認識能力を一時的に高速化する。

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……特別低くはない。

G-1とか、それ程に極端に低い訳では無い。

それでも、決して高い訳でも無い。

初期値からほとんど変わっていないところを考えると、リゼより適した人物は他に確実に居るだろう。そもそも私生活からそう幸運であるという自覚もない身、進んで手を挙げるには少々無謀が過ぎる。

 

「ええと、マドカは幸運は高い方なのだろうか?」

 

「あ、いえ、ごめんなさい。残念ながら私はLUK(幸運)の値はF-4しかないんです。これでも上がった方なんですけどね」

 

「私より低いのか……ユイはどうだろう?」

 

「……私については論外です。私の場合はマドカさんよりも酷く、Lv.13の現在でも未だ最低値のG-1しかありません」

 

「きょ、極端過ぎる……!というかこのパーティが全体的に不運が過ぎるのか!?」

 

「あら、一緒にしないで貰えるかしら。私はこれでもLUK(幸運):D-10もあるのよ?SPD(速力)はG-1だけれど」

 

「SPD(速力)も低かったのかい!?VIT(耐久力)は低いと聞いていたけれど!?」

 

「失礼ね、VIT(耐久力)はG2もあるわ。Lv.11になるまでに1しか上がらなかったんだから」

 

「何がどうなったらそんな事になるんだ!?というかエルザもわかっていて言っているだろう!?」

 

「ふふ、ごめんなさい。リゼの反応が面白いのだもの、それにこれは私の鉄板ネタみたいなものだし」

 

まさかのパーティ内2番目の幸運を持っていたと言う驚愕の事実を知ったリゼ。ステータスが偏る者は稀に居るとは聞くが、確かにきっとエルザほどに尖った人間もそう居ないだろう。

……というか、もしかすればそもそもある程度尖ったステータスを持っていなければ探索者として成功するのは難しいのかもしれない。それともマドカの弟子がそういう人間ばかり集まるという可能性もあるにはあるが。話を聞いているとリゼ自身、『INT(魔力)が育たず尖っているなぁ』と思っていたのが恥ずかしくなるくらいだ。

 

「という事で、私が開ければいいのね?」

 

「す、すまない。こんな危険な事を任せてしまって……」

 

「別にいいわ。それに忘れてない?幸運の低いユイが開ければ箱型モンスターだとしても、幸運の高い私が開ければ当たり箱になるのよ?私が開ける以外にそもそも選択肢が無いじゃない」

 

「え、そうなのか……?最初から箱の中身は決まっているんじゃないのか?」

 

「ん〜、どうでしょう。そこまでは私もちょっと分かりません。ですが結果的に幸運が高いほど中身が良いと示されていますから、そういう考え方も出来なくは無いかもしれません」

 

「はい、開けるわよ〜」

 

「わわっ!?せめてもう少し躊躇を……!」

 

「時間の無駄」

 

「エルザ様……!ちゃんと御自分のスキルを発動させてから開けて下さい!」

 

何の容赦もなく箱を開けたエルザに、リゼはあわあわと慌てながらも興味深そうに箱の中を覗き込む。一見真っ黒に見える箱の中は、しかしエルザの手がそこに突っ込まれると波打ち、何らかの黒の水面の様になっているのが分かった。そして何はともあれ、箱型モンスターでは無い事だけは確かであり、静かに胸を撫で下ろす。

どうやらそれはユイも同じだった様で、彼女も珍しく普段の冷静な表情を崩して息を吐いていた。マドカも腰の剣にかけていた手を下ろした事から、完全に問題はないと判断されたらしい。

 

「……ん?これスフィアね」

 

「ほ、ほんとかい!?」

 

「ええ、取り出してみるわ。……ほら」

 

「「「!!」」」

 

エルザが箱の中から取り出した一つのスフィア。

それは赤色でも青色でもなく、無色透明なスフィアであった。リゼもそれについては知っている、以前に貰った初心者用の冊子のページに書いてあった筈だ。

 

「無属性の、スフィア……!」

 

「星の数はどうですか?」

 

「えっと……3つかしら。またとんでもない物を引き当てたわね、これ」

 

「い、いったいどういう物なのだろう!?私の貰った冊子には星2までのスフィアしか載っていなかったんだ!」

 

「星3の無属性スフィア……需要が少ないものでも500,000Lは決して下らない上級探索者必須級のスフィア群です。その中でも更に珍しく強力な『指揮のスフィア』は、以前の競売では48,000,000Lの価格で落札されました。それも元々買い手が決まっていた様な物だったので、かなり安い部類の話にはなりましたが」

 

「よ、よんせん……」

 

金額の規模に足が震える。エルザから箱と共に手渡されたこの小さな宝石。もしかすればこれ一つで田舎なら一生遊んで暮らしていけるだけの価値があるというのだから、冷静さも失うというもの。

いや、まあ流石にそこまでの物では無いだろうという事くらいは分かっているが……

 

「まあ、何をするにも試してみるのが1番です。……はい、もちろん所有者のリゼさんが試してみて下さいね?」

 

「い、いいのか私が!?」

 

「いいもなにも、貴女の物でしょうに。他の誰が試すのよ」

 

「そうですね、私も少々気になります」

 

足の秘石にマドカによって自然と取り付けられるそのスフィア。せめて他の誰かが少しでも自身の所有権を主張してくれればまだ楽だったのに、この場にいる人間達が皆善人であっただけに既にこのスフィアの所有者がリゼで確定してしまっていた。

最初の『炎打のスフィア』はまだいい。

そこからの色々な支援も、まあまだ返せる範囲内だ。

しかしこれは無理だろう。

最低でも50万L、一歩間違えれば数千万L。

こんな物をプレゼントされてしまった日には一生頭が上がらなくなってしまう。そうでなくともマドカは自身の食費によって普段から生活に苦しんでいるというのに。……本人はニコニコ笑顔で優しく見守っていてくれているとは言え、どうしてもその考えだけは頭から抜けてくれない。

 

「ユ、ユイぃ〜、私は一体マドカにどう恩を返せばいいんだぁ……」

 

「その気持ちはよく分かります。しかしこれは個人的な忠告ですが、返せる物が無い以上は素直に受け取るしか無いかと」

 

「し、しかしだな……!」

 

「そもそも、最初のマドカさんからの贈り物。宝箱は相場で言えば大凡100,000Lほどの価値になります」

 

「うむ……うん?うん……」

 

「次にエルザ様が宝箱を開けた行為について。これは様々な考え方がありますが、そういった代行を頼んだ場合、エルザ様の幸運の値も含めて、固定費用10,000Lか内容物の5%あたりが妥当でしょう。今回は仮に25,000Lと仮定しておきます」

 

「今回はサービスでいいわ」

 

「そ、そうか、助かるよ」

 

「つまりただ金額だけを見るのであれば、リゼさんが感じるべき恩はマドカさんの100,000L分とエルザ様の25,000L分で十分ということです。残りはリゼさんの運によって手に入れたものなのですから、そこは有難く受け取る……と考えては如何でしょう?」

 

「なるほど!そうか!………いや、でも100,000Lの贈り物ってそもそも普通なのだろうか?他人へのプレゼントとしては些か高価が過ぎないか?」

 

「そうね、一般的な恋人へのプレゼントだってもう少し安いわ」

 

「……私達も同様の物を贈られた身ですが」

 

「マ、マドカ!?どうしてこんなに高価な物を私に!?」

 

「え……だって便利じゃないですか。せっかく見つけたんですし。それに私よりリゼさんの方が有効活用出来る物ですから」

 

「売ろうとは思わなかったのか!?」

 

「?売るよりリゼさんが役立ててくれた方が私は嬉しいので」

 

「………おおぅ」

 

「ま、まあそういうことなので……」

 

「諦めて受け取っておきなさい。死なずにそれを役立てるのが貴女の役目よ」

 

「わ、分かった……ありがとうマドカ、これはありがたく使わせて貰うよ。その分、君のことを助けられる様に」

 

「ええ、頑張って下さいね、リゼさん」

 

恩を金額で表すのはやめよう。

未熟な自分は今、ただ受けた恩を返すための努力をすべきなのだ……

 

そう思いつつもどうしてか頭の切り替えが行われないので、リゼは持っていたパンを食べ尽くすと、その場で立ち上がり早速スフィアを使用してみる事にする。

星3の無属性スフィア、どんな効果があるかは分からないので3人から少し離れたところで使用してみるが、マドカ曰く星3の無属性スフィアはどれもそこまで危険のない物だそうだ。

果たしてその中の何になるのか、本当に自分のスタイルに合ったものなのか。もし絶望的に自分と無縁のスフィアが来た時には売って別のスフィアに変えたり……いや、でもせっかくマドカからプレゼントされた物を手放すなど言語道断……などと頭をいっぱいにしながらも、リゼは見つめていた無色のスフィアに切替時間の1分を待ってから手を伸ばす。

 

「!」

 

3つのスフィアの真ん中に嵌め込まれたそれにリゼの人差し指が触れた瞬間、白銀色の光が放たれると共に変化は生じた。

 

(これ、は……)

 

変わったのは武器でも防具でもなく、視界。

元よりどれだけ書物を読み漁ろうとも全く弱くなるどころか、むしろ人より過剰であった視力が更に跳ね上がる。加えて視界の範囲、距離の調整、目に関する諸々が殆ど強化されており、いざ戦闘になってみなければ分からないが、動体視力も上がっているかもしれない。

元々人並外れた目を持っており、そこにスキルでの強化がされていたリゼ。このスフィアとの出会いは、それでもまだ足りないのかと呆れる様なものだ。もしこれらを同時使用した時、果たしてどうなってしまうのか……それはもうちょっと怖いという領域にまで足を突っ込んでいる。

 

「リゼさん?どうでしたか?」

 

「……マドカ、目を強化するスフィアという物はあるのかな」

 

「あ、『視覚強化のスフィア』でしたか。それはまた珍しい物を引きましたね、なかなかの当たりですよ」

 

「それ以上自分の目を強化してどうするのよ、その目で私の事は見ないでくれるかしら」

 

「ひ、酷いな……いやだが、やはり綺麗な肌をしているのだな、マドカは」

 

「ふふ、そうですか?」

 

「え、そこまで見えるのですか?」

 

「気持ち悪い」

 

「エルザ!私だってそう面と向かって悪口を言われれば傷付くのだぞ!」

 

とは言え、実際この視覚強化はかなり便利な代物である事は確かだ。遠くを見通すだけではなく近い物や細かい物も難無く見る事が出来る。リゼのスキルはあくまで情報処理の強化、しかしこちらのスフィアはその情報を収集する為の肉体強化に当たるのかもしれない。

そうなると役割分担はしっかりと出来ているという事で、決して過剰ではなく足りない部分を補ったというか……いや、どちらも動体視力だけは向上させる部分が被っているので、単純な分け方は出来ないのだろうが。

 

「……だが、これは暫くは使えないか。スフィアを3つ使うのは事故の危険性が高いとマドカも言っていたからね」

 

「そうですね、慣らすにしても視覚強化はやめた方がいいです。ある程度スフィアの戦闘が慣れてきたら代わりに『投影のスフィア』を付けてみましょう。その時に配信中の注意点についてもお伝えしますよ」

 

「ああ、助かるよ」

 

瞬間、『視覚強化のスフィア』の効果が切れる。

継続時間は60秒といった所だろうか。星3スフィアの再使用感覚が60秒という事を考えると、戦闘中は切り替わりのタイミングにも気をつけるべきなのかもしれない。戦闘中に秒数管理までしなければならないとなると、本当に扱いが難しいスフィアだと感じる。それに使用一度に対しても、それなりの精神力を持っていかれた様な感覚だ。使い所には気を付けたい。

 

「マドカ、午後からはどうするのかしら?一度戻って依頼の報告だけしておく?」

 

「そうですね〜。思ったより早く予定が進みましたし、新しい依頼が張り出されているかもしれません。そうしましょうか」

 

「それでしたら途中でマッチョエレファントを倒して頂いてもよろしいでしょうか?今ドロップ品の牙を探してるのですが、薬の材料に……っ!?」

 

「ユイ?どうかしたのかい?」

 

「…………」

 

「ユイはまだしも、マドカまでどうしたの?……5階層の入口?」

 

リゼがスフィアを外した直後に、ユイとマドカが同時に何かを感じ取った様に顔を向けた事に、2人は困惑する。

彼等が見つめている方向にあるのは6階層から5階層に登る階段のある入り口の方向。何かあるのかとそちらを見てみれば、しかし特に何か変化が起こっている訳でもなく、強いて言えば妙に風が吹いているというくらい。しかしそうは言ってもワイアームが居るのならば風くらいは吹くだろうし、ダンジョン内でも原理は不明ながら風は吹くので、偶々強めの風が吹いていた所で不思議では無いというか……

 

「……毒です、エルザ様」

 

「毒……?」

 

「ワイアームの存在する筈の5階層から、強い風と共に少量の毒物が漏れ出ています。……やはり、これを見て下さい」

 

ユイが自らの鞄から取り出した紫色の紙を少し水で濡らし空で振ってみれば、その紙は所々が少しずつ赤くなっている事が分かる。

そのままの勢いで彼女は鞄の中から口元と鼻を隠す灰色の布製の立体マスクを取り出し、何かの薬品を振りかけた上で全員にそれを着用する様にと指示をした。特にVITの弱いエルザには水色の液体を飲ませるほどに彼女は徹底していた。

一方で相変わらずマドカはじっと入り口の方へと顔を向けて様子を伺っている。

 

「……マドカさん、どう思われますか?」

 

「……リゼさん、スフィアを全部外してこの3つを付けて下さい」

 

「え、や、そう言われれば付けるが……何に使うんだい?というより、これは何のスフィアなのか」

 

「『炎弾のスフィア』が2つ、『バリアのスフィア』が1つです。色が全て同じなのでセットする順番には気を付けてくださいね。それと私の予備の小杖も渡しておくので持っておいて下さい、あとは私の指示を」

 

「ま、魔法なんて私は使った事が無いぞ!?」

 

「問題ありません、スフィアによる魔法は扱いが簡単ですから。ユイさんは救出と毒の対処を、エルザさんは防衛とお二人の指示をお願いします」

 

「それはいいけれど……もしマドカの考えていることが本当なら、1人で倒せるの?アルカ・マーフィンは昨年に返り討ちにあっているのよ?同じ個体とも限らないけど」

 

「他の探索者の方々がいつ帰ってくるのか分かりません、今討伐しておかなければ階層を破壊して地上へ登ってくる可能性があります。仮に降っていったとしても、他の探索者が帰って来た頃には手が付けられなくなっているのは確実です」

 

リゼは今一体どういう状態になっているのかは全く分からない。ただ話の内容から何か異常事態が起きており、マドカが対処しなければならない程の事が起きたという事だけは確かだと分かった。

腰に付いた3つの赤いスフィア、これが使用可能になるまであと1分はかかる。しかしその1分すら待っていられる余裕も無いのが雰囲気でも分かっているので、今はとにかくマドカのことを信用してついて行くしかない。

 

「とにかく救助を優先、その後は4階層に続く階層で治療と援護をお願いします。なるべく撤退は視野に入れますが、私でどうにもならなければ見捨てて地上へ報告に向かって下さい。その際は私が指示をするか、エルザさんが決定を」

 

「分かったわ」

 

「ふ、2人ともなにを……!!」

 

「そうでもしなければより多くの死者が出ます、反論は受け付けません。救助も難しければ見捨てて下さい、他人に情けを掛けている余裕があるかも分かりませんから」

 

「!」

 

まさかマドカの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったリゼは、驚き困惑しつつも彼女の後ろを歩き始めた。もしかすれば少しの幻滅もあったかもしれない。勝手に期待しておいてという話ではあるが、失望だって少しだけしたかもしれない。

けれどこの時、なにより分かって居なかったのはリゼの方だった。

ダンジョンの恐ろしさを、

本当の命の駆け引きを、

そして……本当に強い生物というものを。

 




スフィアの価格……あまりに珍しいスフィアを売る際にはギルドによる競売を掛けられることが多く、これには他の公共機関も参加することがある。アーザルス連邦軍が参加する際には他の商人達も身を引くことが多く、金額としては平凡に落ち着くことが多い。しかし有力なクランや地方の有力貴族が参戦する際には凄まじい額の応酬となり、☆3のスフィアであっても億単位の値がついてしまうことも……
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