無知で無垢な銃乙女は迷宮街で華開く   作:ねをんゆう

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88.精霊族

マドカのはじめての講義、それは大成功と言っても十分なほどの盛況を上げて終わりを迎えた。

こうして改めて終わった後に講義室に居残って出ていく人を見ていると見知った人間も多くて、なによりエルザとユイの2人も来ていたことには驚いた。彼女達もレッドドラゴン討伐はまだしていないということなので当たり前だが、その忙しさを置いても来たかったのかもしれない。

 

「リゼも来てたんだ」

 

「え?……クリア、君も来ていたのかい?」

 

「うん、勉強になるって勧められたからね」

 

そうして前の方で質問に受け答えしているマドカを見つめていると、肩を叩いて声を掛けて来たのはクリアスター・シングルベリア。つまりは先日そのレッドドラゴンの強化種との戦いに協力してくれた彼女である。彼女は相変わらずといった様子で、けれどそんな自分とクリアの会話に不思議な顔をしていたのはレイナとスズハだった。彼等は初対面であるのだからこの反応は当然だ。むしろリゼの説明が少な過ぎる。

 

「ああ、えっと……こっちはレイナとスズハ、私のクラン(仮)に所属してくれている2人だ。それでこちらはクリア、先日の強化種との戦いで私に手を貸してくれた女性だよ」

 

「どうも、手を貸した女性です」

 

「ど、どうも」

 

「また独特なやつを連れて来たわね」

 

それに関しては弁解の余地がないほどクリアは独特な人物である。しかしクリアの容姿については本当に美人であり、レイナとしては『こいつやっぱり美人引っ掛けて来たな』という思いの方が強かったり。そして……

 

「おや、青葉達は既に知り合っていたのか」

 

「!あなたは……シセイさん、でしたか」

 

「あ、お爺ちゃん。この人だよ、この前話してたの」

 

「……お爺ちゃん?」

 

「クランに居るお爺ちゃんの1人。ほら、うちのクランってお爺ちゃんとお婆ちゃんばっかりだし」

 

「ああ、そういう」

 

クリアの後ろから付いてきていたのは、以前に喫茶店ナーシャで出会ったあの老人である。名前はシセイ、クラン"青葉の集い"の幹部をしているという老人だった。

以前に話した時には団員を紹介してくれるという話をしたものだが、結局それは諸々の影響で延期されてしまったことを思い出す。

 

「……ということはまさか、以前に貴方が私達に紹介して頂けると言っていた団員というのは!」

 

「うむ、クリアのことだ」

 

「え?私追い出されるの?」

 

「本人が完全に蚊帳の外みたいなんですけど、大丈夫なんでしょうか……?」

 

なお、本人は本当に何も知らなかった模様。

今ここで初めてそんな話を聞いたのか、まあ当然ながら彼女は驚いてシセイの方を振り返っていた。マイペースな彼女にしても今回のこれは普通に驚くべきことだったらしい。

 

「クリア、お主もそろそろ同世代の者と歩みを共にすると良い。幸い、彼等はお前を受け入れてくれるのだろう?」

 

「……それはそうだけど」

 

「く、クリア!君さえ良ければ私は一緒に探索をしたいと思っているよ!」

 

「リゼ……」

 

リゼは身を乗り出してそう言う。

こここそが勧誘のポイントだと思ったからだ。

それくらいにリゼはクリアのことを気に入っていたし、一緒に探索をしたいと考えていた。何より魔法使いという彼女の役割は本当に必要な人材であるし、彼女の実力も十分以上。ここで必死にならず、他の誰に対して必死になるというのか。リゼは全力でクリアを勧誘する気だった。

 

「でも私、水系のスフィアしか使えないよ?」

 

「構わないとも!私など銃しかまともに使えない!」

 

「私はスキル構成上、雷系のスフィアしか使いません」

 

「あたしはそもそも戦えないしダンジョンにも潜らない」

 

「こんなパーティだから大丈夫さ!」

 

「うん、それは普通にパーティとして汎用性が無さすぎると思う」

 

「う"」

 

「急に正論言うわね」

 

「ちなみに攻撃力なら最強ですよ、私とリゼさん」

 

「なにそれ超面白そう」

 

「急に興味持つじゃない」

 

ただ実際、防御力に難のあることは理解している。その点、クリアは"水壁のスフィア"を持っている。これがあるというだけでも違ってくるし、3人とも偏りがあるとは言え、扱う属性がバラついているのは決して悪いことではない。もしクリアが入ってくれるのであれば、これ以上のことはないだろう。

 

「だからクリア、私は君を勧誘したい」

 

「………」

 

クリアは考える。

チラとシセイの方を見るが、彼も静かに見つめ返すだけ。彼がするのはあくまで引き合わせるだけであり、実際に決めるのはクリア本人でなければならないからだろう。別に今のクランに居心地が悪い訳ではない。確かに同世代の人間とは距離があるが、高齢の探索者たちとは上手くやれている。……ただ。

 

「……リゼ、私ちょっと厄介な体質持ってるんだよね」

 

「厄介?」

 

「ちょっと誤魔化して伝えると、水辺に入れない」

 

「水辺に?水魔法を使うのにかい?」

 

「うん、それと周りにバレるとヤバい事情もあるんだよね。ちょっと価値が付けられない物を持ってる」

 

それすらも口にするのは勇気がいるものだったのだろう、周りの人達が聞いていないことを確認しながらもリゼ達に小さく囁いた。……ただ、そんなことを言われてもリゼ達にとっては今更というもの。

 

「……だとするとクリアさん、私達も周りにバレると不味い物を持っているのですが」

 

「え?そうなの?」

 

「まあ、そうだね……確かにレイナのあの槍は不味いのかもしれない」

 

「あ、ごめん。言い忘れてたけど、あたしも割とバレるとヤバいスフィア持ってるから」

 

「それを今ここで言うのかい!?」

 

「仕方ないでしょ、忘れてたんだから」

 

「あ、後でしっかり説明してくださいね!絶対ですからね!!」

 

「あたしのは価値がつくだけマシよ、あんたらの槍と銃の方がよっぽどでしょ」

 

とまあ、色々と変な物を持った素性の怪しい集団がリゼ達のクラン(仮)なのである。たとえ変な物を持っていたとしても、素性がはっきりとしているだけクリアはまともなのだ。

 

「ふ、ふふ、ふふふ……」

 

「ク、クリア?何かおかしかったかい?」

 

「ふふ……うん、みんなそんなに変な人達なんだ」

 

「あ、ああ。簡単には話すことが出来ないのだけれど……」

 

「否定出来ないのが悲しいところです」

 

「それじゃあ、私が入ったらもっと変な人達の集まりになるんだね」

 

「え?」

 

ここなら自分は疎外感を感じずにいられるかもしれない、3人の会話を聞いてクリアはそう思った。振り返りシセイの方を向いてみれば、彼は小さく頷いてくれる。クリアはリゼの性格を知っている、彼女であれば受け入れてくれるだろう。一度はダンジョンに共に潜り、成果を上げることもできた。これ以上の証明もない。

 

「おじいちゃん」

 

「なに、クランが変われどお主は儂等の大切な青葉。それは変わらん」

 

「うん……偶には顔見せに行くからさ、ちょっと行ってくるね」

 

「うむ」

 

そもそも、"青葉の集い"はそういうクランだ。

高齢になった探索者を集め、若い探索者を育てる。そうして巣立っていく彼等を見守り、いつでも帰って来られる場所として有り続ける。だから巣立ちというのはむしろ歓迎すべきことであり、所属が変われども関係性まで変えることはない。

高齢の探索者と若い探索者の繋がりを保持したままに、彼等の人生の受け皿となる。それは今は若い彼等が老いてしまった後だとしても、変わることなく。

 

「リゼ」

 

「ああ」

 

「私もリゼのクランに入るよ、なんか面白そうだし」

 

「ふふ、今更だけど変なことに巻き込まれるかもしれないよ?この前の強化種みたいな」

 

「えぇ〜、それはちょっと勘弁して欲しいなぁ」

 

「でも、退屈はさせないと約束する」

 

「……口説くの上手いなぁ、これも惚れた弱味ってやつかぁ」

 

「「え?」」

 

何気無く発したその言葉に、レイナとスズハが反応する。まさかこいつも?と思ったが、正にそのまさかである。まあ彼女の場合は本心がどうなのかは分からないし、それが恋愛的なそれなのかは分からないが、それでも彼女はリゼの心に惚れた人間の1人。

 

「クリアスター・シングルベリア。得意魔法は水属性、この世界で唯一存在が確認されている星5のスフィアを持っています。どうぞよろしくお願いします」

 

「「「え」」」

 

彼女もまた特大の爆弾を持って、リゼのクランに加入した。

 

 

 

 

 

 

「ふ、ふふ、ふふふ」

 

「マ、マドカ?流石に笑いすぎだ」

 

「だ、だって、まさかクリアさんもリゼさんのクランに入ることになるなんて……リゼさんは本当に私の想像の斜め上を行くんですね」

 

「斜め上」

 

「まあ、うん……変なパーティであることは否定出来ないわよね」

 

クリアがリゼのクランに参加することになったと決まった後、4人は講義室に居残り、質問を全て終えたマドカと対面していた。

彼女はクリアがリゼのクランに参加したという事実が本当に面白かったらしく、上機嫌に笑っていた。これもなかなか珍しい光景である。

 

「でも、これで漸く正式にクラン申請が出せますね。個人証明の出来る方が入ってくれましたから」

 

「本当に、本当にね……」

 

「意外と税の優遇は大きいですからね、引越しか追加で部屋を借りることを検討してもいいかもしれません。4人では少し手狭でしょう?」

 

「確かにそうですね、引越したばかりではありますが……」

 

「まあ今でも寝れないことはないんじゃない?どうせ女しか居ないんだし」

 

「へえ、なんかそれも面白そう」

 

「……あの、そうなると私も一緒に寝たいんだが。仲間外れにされているようで少し寂しいというか」

 

「あんた体大きいから狭くなるでしょ」

 

「うぅ」

 

「寝る時だけ机をリゼさんの部屋に入れれば出来ないことはないですよ」

 

「そうなるとマジで何のためにこいつに部屋与えてんのか分かんなくなるけどね」

 

「わ、私はそもそもみんなと一緒が……」

 

「なんかいいね、こういうの。私にも後で見せてよ、リゼ達の部屋」

 

そんな風にこれからの生活のことについて話していると、ふと気付けばそんな自分達のことをニコニコと嬉しそうに見ているマドカの姿。なんだかそれがこの成長を嬉しがる母親のように見えてしまって、リゼは少し恥ずかしくなる。

 

「なに変な顔して見てんのよ」

 

「いえ、やっぱりクランというのはこうでないとなぁと思いまして」

 

「マドカさんも羨ましいんですか?」

 

「マドカも入りたいの?」

 

「いえいえ、私にはやらないといけないことが沢山ありますから。それに私が入ると皆さんの楽しみを奪ってしまいます」

 

「楽しみ、というのは……?」

 

「未知に対して全員で力を合わせて取り組む、そんなかけがえのない機会のことです」

 

「な、なるほど……」

 

 

……まあ確かに、マドカはこうして講師ができる程には色々なことを知っている。彼女がこのクランに入れば、知らないことを調べながら話し合う楽しみというのは無くなってしまうだろう。

少し前と比べてリゼの周りは一気に騒がしくなったし、今はそれも嬉しいと思っている。しかし最初はマドカとそういう仲になりたいと思っていたリゼとしては、むしろ彼女と距離が出来てしまったようで少し寂しくも感じてしまう。そもそも彼女にはそんな気は最初から無かったようにも思えるが。

 

「さてさて、それでは皆さん。今日の私の講義はどうでしたか?」

 

「す、すごかったよ!本当に自分たちの勉強不足を思い知らされたというか!!」

 

「半分くらいしか分からなかった」

 

「というか私達では事前にあそこまで調査出来ませんでしたよね、勉強にはなりましたが」

 

「気持ち悪かった、どんだけ調べてんのよ。解剖でもしたの?」

 

「ええ、やはり赤竜というのは関門として大き過ぎましたからね。傾向分析のために生かさず殺さずで相手をしたり、両手足を切って麻痺毒を注入した後に身体の構造を徹底的に調べ尽くしました。興味があればその辺りの資料も後ほど提供しますよ」

 

「……貰っておくわ、何かに使えるだろうし」

 

「何に使えるんですかね?」

 

「ほら、次の龍種の対策とか」

 

「龍種の体構成のイメージが無いのよ、生物関係はあんまり得意じゃないけど必要な知識でしょう」

 

「ええ、その通りです。この世界で生きていくのであれば、龍種との戦いは避けては通れませんからね」

 

そう言いながらマドカがスズハに手渡した資料の一部を覗き込んでみれば、骨格から体の部位等がまあ綺麗な写生されていて、スズハもそれを見て少し感心しているようだった。そして研究者というのはこういう人間のことを言うのだと思い知らされて、マドカが言っていた"クランに1人は研究者が居るようにしたい"という意味がなんとなく分かった。

 

「……マドカ、この後時間あるかしら?この資料含めて幾つか聞きたいことがあるんだけど」

 

「ええ、構いませんよ。……ふふ、なんだか添削されている気分ですね」

 

「お前の知識全部奪ってやるからな」

 

「スズハさんって顔怖いね」

 

「こらクリア」

 

まあそんなことはさておき、話は講義の件について戻っていく。そしてリゼ達のこれからについても当然。具体的にはレッドドラゴンをどうしていくか、という件について。

 

「……正直に言ってしまうと、クリアさんが加入することになればレッドドラゴンは大した相手ではなくなってしまうんですよね」

 

「あ、やっぱりそうなのか」

 

「イェイ」

 

「それってやっぱり☆5のスフィアのおかげですか?」

 

「いやぁ、あれ使わなくても水属性は得意だからさ」

 

「クリアさん1人でブレスは防げるので、リゼさんなら翼を破壊出来るでしょうし、レイナさんならダメージも与えられると思いますし」

 

「………なんだったのよ、今日までの努力は」

 

「安心してください、多分次の青竜でまた詰みます」

 

「うん、私水辺は無理だし」

 

「その感じだと次の黄竜でも詰みますよね、私がダメージ与えられませんし」

 

「ねぇ、3人しか居ないのに毎回1人役立たずになるのどうにかならないわけ?リゼしかまともに働いてないじゃない」

 

「そ、そんなことは……」

 

「安心して下さい、その次の白竜はリゼさんの天敵ですから」

 

「もうどうしろっていうのよ」

 

「やっぱりパーティメンバーを増やすしかないんでしょうか……」

 

「普通の奴を連れてきなさいよ普通の奴を、どうしてこうも偏った奴ばかり集めるのよ」

 

「リゼの趣味じゃないの?」

 

「違うよ!?」

 

「こうなるといよいよ"主従の誓い"のお二人と共同探索を申し出た方がいい気も……」

 

「そうは言っても、ブレスを攻略出来れば赤竜を倒せる訳ではありませんから。一先ずは目の前の敵に集中するのが良いと思います、そもそもステータス的な話をすれば皆さんまだ適正には達していませんからね」

 

「「「そうだった……」」」

 

結局、安全に安定して倒したいのであれば、レベルを上げて装備を整えるのが確実。それをせずに倒す方法を今回マドカは教えてくれたとは言え、そもそも敵が危険な存在であることに変わりはない。

先ずは安定して倒せる手順を模索して、試して、それを安定して出来るようにしなければならない。これから先、それこそワイアームと同じくらい嫌でも戦うことになるのだから。

 

「さて、それでは最後に今回のお二人の宿題について話しましょう」

 

「「!」」

 

その話題が出た瞬間に、リゼとレイナの背筋が伸びる。

クリアの加入の話ですっかりと頭から抜けてしまっていたが、これこそ今日ここに来た大きな理由の一つでもある。別に出来ていなくともマドカが怒ったりしないのは分かってはいるのだが、怒ったりしないからこその緊張感というのもこの世にはある。

 

「宿題ってなに?」

 

「私がお二人に今日までの宿題を出していたんです。まずは赤竜についての知識を調べること、これは今日の講義中の様子を見ても十分に出来ていたと判断しました」

 

「み、見られてたんですね……」

 

「個人的にはその、足りなかったとも思ったのだが……」

 

「そう思えたということが大事なんですよ、そうやって少しずつ精度を上げていくんです。最初から完璧に出来る人なんてそう居ませんから。……それと今回の私の調査は過剰だったのでお手本にはしないで下さいね、私も殆どやらないので」

 

「あ、ですよね」

 

「一先ず調査については合格です、よく頑張りましたね。ちゃんと全員で協力して情報を集めていたようですし、クランの空気も良さそうです。心配はいらなさそうですね」

 

つまり必要最低限の調査能力はあると認めて貰えたということだ、それはそれで安堵する。平均と言葉で言うのは容易いが、その平均の能力もないと自覚してしまうのはなかなかにキツイものがある。それは自分がそれほど優秀な人間ではないと自覚しているほどに恐ろしくなるものだ。少なくともレイナはほっと胸を撫で下ろした。

 

「次に個人個人に与えた課題についてですね。リゼさんは文句無しで合格です。むしろ最初は"パーティを組んで帝蛇を倒せ"だったはずなのに、妙に大きな話になってしまいました」

 

「あ、あはは。あれはクリアとエクリプスのおかげだよ、でも良い勉強になったのは間違いないかな」

 

「うん、私も楽しかったよ」

 

「ふふ、クリアさんはどう思いましたか?リゼさんのパーティとして参加してみて」

 

「特に不自由はなかったかな。知識が足りないところも素直に聞いて取り入れてくれたし、安心感があった」

 

「そうですね、それがリゼさんの良いところだと思います。分からないこと、知らないことがあれば見栄を張らずに他人を頼ることが出来る。当たり前のことのように思えますが、指揮を取る人間として大切な資質です。クリアさんも言っていましたが、そういう姿勢は付いていく人達も安心感と信頼感を抱けます」

 

「そ、そうかな?そうだと嬉しいのだけど……」

 

「今度そういう関係の本をお渡ししますね。これからも優秀な指揮官となれるように成長して欲しいので」

 

なんだか思った以上に褒められてしまいリゼは見て分かるほどに照れてしまっているが、そんな様子を見て哀れに思っているのがスズハである。

優秀な指揮官だのなんだのと言われているが、この女は間違いなくリゼを将来の都市最上位の幹部辺りまで押し上げる気満々であると分かってしまうからだ。この女が他人に対して異様に期待を押し付けていることは身をもって知っていたが、もしかすれば一番重い期待を押し付けられているのはリゼなのではないかとすら思えて来る。

…‥だってこの女は確実に、リゼを邪龍討伐の頭数の一つとして数えているだろうから。それがこの女の目的であり、これまでの全てがそのための行動であるとするならば、ここまでリゼに手を貸す理由も分かるというもの。だとすると、リゼと一緒にいる自分もヤバいのではないだろうか?そんな風に考えたが、それも既に手遅れである。スズハにもう逃げ場などないのだから。戦闘に参加しないだけマシだろう。……それも含めてこいつの計画通りという可能性もあるが、それはもう気にしても仕方のないことで。

 

「さて、それではレイナさんの"6階層以降の探索は、なるべく地面に足を付けずに移動すること"という課題はどうでしたか?」

 

「あ、はい。一応あれ以降続けてはいまして、少しずつ慣れてはきました。今は最低限の移動くらいは問題なく」

 

「なるほど……となると、一度私が直接見た方がいいかもしれませんね」

 

「え?」

 

「今度私と2人きりでダンジョンに潜ってみましょうか、レイナさんの動きも見ておきたいですし」

 

「ふ、2人で!?」

 

「いや、どうしてリゼさんがそこで反応するんですか」

 

「いや、羨ましくて……」

 

「リゼさん、たまにはレイナさんも他の人とペアを組む経験も必要なんですよ。レイナさんはこんな機会でもないとそういうことが出来ないんですから」

 

「うぅ……わ、分かったよ……」

 

「リゼさんも、今度久しぶりに2人きりでダンジョン行きましょうね」

 

「あ、ああ!絶対だ!忘れたら駄目だからね!」

 

などというやり取りを冷たい目で見ていたスズハは、3人のその奇妙な関係性にとあることを思い付く。

 

「……もしかしてこの世界、レズしか居ない?」

 

単に周辺に女性が多いというだけである。

しかし、それに対して答えたのはクリアだった。

 

「えっとね、確か世界の2割くらい」

 

「多くない?よくこの世界人口保ってるわね」

 

「エルフの女の人とアマゾネスは同性愛者が多いらしいよ。あと精霊族は性別気にしないし」

 

「確実にそこのせいでしょ」

 

「その代わり、アマゾネスと獣人はたくさん産むから。ヒューマンだけはハーフを作れるし、エルフは長寿だし」

 

「精霊族だっけ?それはどうなってんの?あんた精霊族なんでしょ?」

 

「私達は同性でも子供産めるから」

 

「…………」

 

「?」

 

「………マジで?」

 

「うん、マジ」

 

「どうやって……?」

 

「聞きたいの?えっちじゃん」

 

「いや、だって……それ男でも妊娠するってことでしょ?」

 

「精霊族はアマゾネスと一緒で女しか居ないよ?」

 

「……ちょっと頭痛くなって来た」

 

「あんまり私達のこと知られてないからね」

 

精霊族がえっちなこととか、よく知られていない。

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