「え?今から海岸線にですか?」
「ええ、行って貰えますか?」
「そりゃマドカさんに言われたら行くけど……いいよね、ステラ」
「うん……分かった」
休息終わりの交代として、戻って来た2人にリゼ達を追うように指示を出してマドカは見送る。そんな彼女を後ろから見守るのはカナディアだ。彼女はそんなマドカの姿に特に何かを思うこともなく、ただ街の地図を取り出して何かを書き込み続けている。それが彼女に与えられた役割だ。彼女もまた必死にその役割をこなしている。
「マドカ、出来上がった。多少抜けている箇所はあるかもしれないが……これでいいか?」
「ありがとうございます、カナディアさん。十分な出来です。事が起き次第、これを元に移動します」
「やれやれ、あのアルファというやつも意外とこんな風にしてお前に対する策を練っていたのかもしれないな」
「さあ、そこまでは分かりません。ですが一度はしてやられましたから。……今回はアルファさんに対しての嫌がらせをします。仕掛けられた策を今から取り除くことは難しいですが、思い通りにさせない程度のことは出来るんですよ」
「………」
この子のこういう茶目っ気というか、悪戯性というか、見ている分には本当に可愛らしい。けれどきっと、その内はとてもではないが悪戯で済ませられるものではないのではないとも思ってしまう。
カナディアはマドカのことを知っている、それこそこの都市で2番目にはよく知っていると自負している。だからこそ、彼女は決して敵にしてはいけない相手であると知っている。それは策士であるとか、やり方がエゲツないとか、そういう意味ではなくて……
「……お前なら、あの男に勝てるのか?」
「種さえ分かれば誰にでも勝てますよ、あとはどれだけスフィアを知っているかです。知らないスフィアには対抗出来ませんからね」
「罪のスキルについてはどうなんだ?」
「考えるだけ無駄です」
「?」
「カナディアさんも知っての通り、あれは裏返ったら終わりですから。適切な対処法なんてありません、裏返ったら即撤退です」
「……お前も、出来るのだろう?」
「出来ませんよ」
「え?」
「私は裏返せませんよ、幸いにも」
「幸い……?」
その言葉の真意を聞くことは出来なかった。
――――――――――――!!!!!!!
「っ!?」
それは直後に都市が揺れたから。
テントの外から聞こえて来た轟音、振動、そして悲鳴。予想出来ていたことではあるけれど、分かっていたことではあるけれど、ここまでの衝撃となるとカナディアも眉を顰める。やはり少しの小競り合い程度で収まることはないようだ。そしてこの感じでは先程向かわせたブローディア姉妹がリゼ達の元へと着くのは少し時間が掛かりそうではあるが、もうそちらのことはを心配していられる余裕もない。
慌てて立ち上がったカナディアに、マドカもまた頷く。
『モ、モンスターだぁぁあ!?』
『何処から湧いて来やがったこいつら!?』
『探索者は!?探索者は何処だ!?』
「……ではカナディアさん、この辺りのことはお願いします。予想ですがダンジョンの方でも同時に、より大きな事が起きていると思います。恐らく今日までの強化種騒動は、このための布石というか、使い所としてはここになってくると思うので」
「アタラクシアとレンドの足止めか……分かった、街の統制を取りつつ適度に戦力を管理しよう。あまり無茶をするなよ」
「ええ。捕縛するのは無理だと思いますが、奥の手の1つくらいは看破して来ます。……他の方が行くのであればまだしも、私が行ったところでアルファさんは何も面白くないでしょうからね」
「やれやれ……」
さて、その嫌がらせが何処まで意味を持っているのか。カナディアはそれを期待するだけして、マドカの後ろ姿を見送った。自分もここから観客達の避難誘導をしつつ、都市中に散らばる探索者達の指揮を取らなければならない。マドカの言う通り、どうせレンドもアタラクシアも何らかの方策で足止めを食らっているのだろうから。それこそ最初の地響きは、そこから来たものであるのだろうから。
「………アゼリア!!!」
「はいは〜い♪何か用ですか〜、カナディア様〜♪」
「見ての通りだ……が、お前には別の線で動いて貰う」
「はにゃ?」
「召喚のスフィアを3つ使って都市内のモンスターを排除し、特に避難誘導を優先しろ」
「なんか割と普通な指示じゃな〜い?」
「いや、可能な限り派手にやれ。今回の件でオルテミスの評判を落とす訳にはいかない、お前の力を観客共に見せ付けてやれ」
「なるほどなるほど〜?そういうことなら了解で〜す♪龍をぶっ殺せないのは残念だけど〜、暴れちゃうからね〜♪」
「なるべく被害は出すなよ、逆効果になる」
何も守ればいいのは人や物だけではない。戦うのであれば完全勝利。カナディアが同じ"龍殺団"のアゼリア・ボードウィンという猫獣人の探索者に指示したのは、そのための布石。
「さて、地上に残っていた探索者の中に何人戦える奴が居るか……ここが私の腕の見せ所だな」
どうせ大半の上級探索者はレンドとアタラクシア目当てに地下に居て、使えそうな中級探索者はマドカの指示のもと海岸線に駆り出されているのだから。残った探索者がどれだけ居て、そんな彼等をどこまで上手く配置出来るのか。それすら試されているようで気に食わないが、やるしかないのならやってみせよう。それをやって来た結果の今があるのだから。
時は戻って30分ほど前。
リゼ達一向は暗い雰囲気で、主にリゼが泣きそうな顔でラフォーレと共に街の外を歩いていた。この祭りの日に祭からどんどんと離れていく、この事実だけで心が辛い。しかも装備はフル装備、こんなもの何か変なことに巻き込まれるのだろうと、誰であっても想像することが出来るというもの。
「あの、わたしは本当に戦闘も何も出来ないんだけど……」
「だからなんだ?」
「……え、これ死にに行かされてる?」
「私はマドカほど甘くはない。戦闘が出来ないからといって一度も戦場を見たことがないなどと、そのような愚図を許すことはない」
「………」
「絶望しろ、恐怖しろ、その身で味わえ。そうして始めてお前は隣に立てる」
「ラ、ラフォーレ。私達は別にそんな……」
「貴様等の思いなど糞ほどどうでもいい、重要なのはその女が許せるかどうかだ。安全圏から責任感のないゴミ指示を飛ばした挙句に、失敗して仲間を殺した時の己の姿をな」
「………」
あいも変わらず酷いことを言いながらも、割とためになる助言をくれる彼女に、リゼは複雑な表情で口を閉じる。
「最悪、3時間後にはお前達の誰かは死んでいる」
「「!?」」
「そ、そんな奴を相手にすんの!?どうして!?」
「知らん、全体像を把握しているのはアルファと精々マドカだけだ。我々はあいつらがしている盤上遊戯の駒に過ぎん」
「そんなふざけた話……!!」
「そもそも前提は盤上遊戯すら成立していなかった。それをマドカが無理矢理にここまで引き上げている、何を文句言うことがある?」
「っ!」
「せいぜい有能な駒として機能しろ、そしてなるべく長く生き残れ。恐らく増援の準備はあるだろうが、敵の詳細まではマドカとて分からん。そもそも海岸線に出現するというのもマドカの想像だ、騙し合いで負けたのならここには何も現れん」
だとするのなら、ここには何かが現れるのだろう。
リゼはひとつ息を大きく吐き、意識の切り替えを行う。マドカが言ったのであれば、きっと間違いない。リゼの中では彼女の言葉とはそれほどに強い意味を持ち、そんなリゼの姿を見て同じようにレイナも意識を切り替えた。クリアはいつも通りではあるが、しっかりとレイナから防具を受け取り杖も取り出したし、ラフォーレはそもそも既にその辺りの準備を終えていた。…‥未だ切り替えが出来ていないのは、こういうことに慣れていないスズハだけ。しかしそれを責めることは出来やしない。ああは言ったものの、スズハを一緒に連れて行くことにはリゼだって納得してはいない。せめて少し離れた場所から見ているだけ、普通はそれで十分だろう。
「仕方ない……クリア、スズハを守ってあげて欲しい。防御手段を持っているのは君だけなんだ」
「うん、いいよ。頑張る」
「……悪いわね」
「おい愚図、お前に確か【炎弾のスフィア】を渡したな?」
「え?あ、ああ、一応ここにあるけれど……」
「それをそこの女に渡せ、それと私からもひとつ貸してやる。杖はあるか?」
「いや、まだ無いけど……」
「ならばこれも貸してやる」
「ど、どうも……」
それこそ無属性の【生存のスフィア】しか持っていないスズハの元に、リゼからは【炎弾のスフィア】が、そしてラフォーレから不明な無属性のスフィアと、彼女の予備の小杖が一本手渡される。
自分の武器やスフィアを貸し渡すと言うその行為に意外な顔をしたスズハであるが、そろそろラフォーレのことが分かってきたリゼにとっては特段驚くことではない。もしこの後に及んでも嫌だ嫌だと逃げたり騒いだりしていれば容赦していなかっただろうが、スズハは不安気にしながらも言われたことを自分なりに納得して、足を遅めることもなく着いてきていた。きっとそういうところが気に入られたのだろう。
「それ、何のスフィアなんですか……?」
「【指揮のスフィア☆3】だ、使用すると味方と認識している対象全体の攻撃力を上げる」
「な、そんな便利なスフィアが!?」
「最近の相場であれば1つ300万Lを超える」
「「「ぶふっ!?」」」
「……汚いな貴様等」
「さ、さんびゃくまん!?」
「価値としてはかなり下がった方だがな、未だ希少なスフィア故に容易に市場には出回らん。無くすなよ」
「は、はい……」
マドカ然り、ラフォーレ然り、珍しいスフィアを持っていることは理解出来るが、そのスフィアに重きを置き過ぎていないことは良く似ている。スフィアは確かに珍しく、便利で、高価な物ではあるが、彼等にとってはそれほど重要な物ではないのだろう。無いと困るが、無ければ他の手段を取る。固執していないから他者に貸し出したり提供することに抵抗は少なく、有効的に活用出来る。
その点、リゼはまだそこまでの境地にはない。レイナやクリア、スズハに貸し出すことは出来るが、これが関わりの少ない相手となると難しい。そりゃマドカだって見ず知らずの相手に貸し出すことはしないだろうが、そもそもリゼはスフィアに固執している意識がある。元々スフィアに憧れがあった人間だ、それは仕方がない。妙なコレクション意識も芽生えて来ていることもまた原因だ。……もちろん、それが悪いことだとは誰も言うことはないだろうが。最低限、仲間内で貸し借り出来ればラフォーレだって何も言うまい。
海岸線が見えて来る。
今のところは特段なにか異変はない。
いつも通りの波風に、変わらない砂浜。そもそも街の左右にかけて砂浜は広がっているのだから、リゼたちが辿り着いたここに正に事が起きるという訳ではないはずだ。そう考えると街の高台から海岸線を見張り、何かが起きてから走った方が良かったのではないかとも思ってしまうが、リゼは直ぐにその考えを捨てる。
「ラフォーレ」
「なんだ」
「あのアルファという男、何者かと予想ついていたりはしていないだろうか」
「………なぜそれを私に聞く」
「……その、これでも私は貴女のことを信用しているんだ。経験とか思考とか、今は全く追い付けないけれど、目標にはしている」
「ほう?お前はてっきりマドカを目標としていると思っていたがな」
「そ、それは変わっていない。……けど、色々と付き合ってみて分かったんだ。貴女の思考は合理的で建設的で納得が出来るものだと。最初はとんでもないことに聞こえても、色々と知るにつれて、それが納得出来る理由の元に生まれたものだと理解出来た。……だから私は、貴女の意見を聞きたいんだ」
「……ふっ、ひよっこが一丁前なことを言うようになったな。阿呆なりに頭は回していたということか」
「むっ、私だって色々と考えているんだ。ちゃんと貴女のことも尊敬している」
「なるほどな」
正直言って、マドカの思考について真似をするのはリゼは絶対に無理だと思ってしまっている。それはレッドドラゴン討伐の講義の時に、より顕著になった。リゼが単独であれほどまで徹底的にレッドドラゴンを追い詰める策を作るには、あと何十年か後になっても同じ物の考え方が身に付いているとは思えなくて。現実的ではないし、道筋も分からない。
しかし一方でラフォーレの考え方はとても分かりやすく、そして身近なものだった。探索者としてはとても優秀な存在ではあるのに、リゼとしても十分に努力次第で追い付けそうな範囲であり、何より簡潔だ。例えば7階層〜9階層を進むために森の中央を爆破していくという方法も、最初はとんでもないと思っていたが、何度も踏破した今では間違いなくそれが効率の良い方法だと納得して結論付けている。もし炎弾が十分に使える環境があれば、リゼは迷いなくそれを使うだろう。
リゼはラフォーレの思考を理解出来る。
つまりはそういうことだ。
そもそもの思考が何処か似通っているのだ。
彼女の考え方こそが自分の完成形であると、そう思えてしまうくらいには。
「……こっちに来い」
「あ、ああ」
リゼを3人から引き離して、ラフォーレは腕を組む。他の誰にも話せない話なのか、リゼに対してだからこそ話してくれるのか。そこも大事なことではあるが、だからこそ、これから話される事も非常に重要な事であると分かる。それを本当に聞いていいのかと、迷う様子を見せでもすればラフォーレは殴って来るだろう。ここまで来たらリゼにはもう覚悟を決める意外に他にない、この件に首を突っ込むという覚悟も同時に。
「恐らく、奴は龍神教から抜けて来た大聖人と呼ばれているゴミ共の1人だ」
「大聖人……」
「罪のスキルという特殊なスキルを持つ奴等の集まりだ。奴がそれを持っていることは既に確認している、問題は恐らく奴が龍神教から自分の意思で抜けているという点だ」
「それに何か問題が……?」
「以前の龍神教による襲撃、あれの目的を思い出せ」
「目的?……あ、確かマドカを狙ったとかエルザが言っていたような」
「マドカは罪のスキルを持っている」
「な!?……え!?そ、そうだったのか!?」
「ああ、他言無用にしろ。他者に話せばお前の首を刎ねる」
「そ、それは分かったが……」
これを伝えることが、果たしてどれだけのラフォーレからの信用に基づくものなのか。知らないのが当人だけであるのだから報われないが、構わずラフォーレは言葉を続ける。
「つまりは、奴等は罪のスキルを持っている人間を集めようとしていると考えられる。それが何の目的のためかは分からないが、普通に考えろ。そんな奴等がせっかく集めた罪のスキル持ちを容易く手放すと思うか?」
「………!大聖人達はアルファも探している!?」
「その可能性は高い。…‥そうでなくとも、既に奴等は2度この街に襲撃を仕掛けている。1度目はマドカを私が龍神教の施設から連れ出した時、2度目はお前も居たな」
「罪のスキルを探し出すためなら、手段を選ばないということか……それこそオルテミスの全探索者を敵に回しても構わないというくらいに」
「そうだ。そしてマドカだけではなく、アルファもまた龍神教の起爆剤になり得るということでもある。そして奴の場合は、それすらも自身の目的の為に利用して来る可能性が高い」
「!まさか今回の件には龍神教も絡んで……!!」
「さあな、そこまでは知らん。だが今回絡んでいなくとも、何れは絡んで来ると考えていいだろう。そういう見方をすれば、奴にとって探索者共に対して与える試練というのは、まだまだ弾が残っているということになる。……さっさと捕まえなければ、より面倒なことになるだろうな」
「こ、ここにアルファが現れる可能性は!?」
「恐らくない、少なくともマドカの予想ではな。ここに居る面子を見ろ、誰があの男に勝てる?私とてマドカほど近接戦闘は出来んぞ」
「な、なるほど……」
アルファと龍神教の関係性、そして龍神教の脅威。龍神教の恐ろしさについては、リゼもその片鱗程度ではあるが味わった。あの今思い出しても恐ろしく感じる異形の怪物達、あんなものを使役している集団。そんなものがまともである筈がない。恐らくこの街の探索者の大半が思っていることだろう、出来れば龍神教と対立などはしたくないと。しかし自分達が探索者であり、彼等が龍神教である限り、その対立は切っても切り離せないものでもあるのだ。そこに罪のスキルという要素が加わってしまえば、間に生じる溝は決定的で。
「……さて愚図、貴様に一つ問題を出してやる」
「え?も、問題?」
「これから我々が対処するであろう敵について考察しろ、ヒントは先程までの会話の中に残した」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!?そんなの分かる訳が……!」
「制限時間は1分だ、やれ」
「うぇ、うぇええ!?」
あいも変わらず始まるラフォーレからの無茶振り。わざわざ彼女がそれを大声で良い、直後に少し離れた場所に待機していたレイナ達も呼び戻したことを考えるに、ここから先は彼女達が聞いても良い話ということだろう。というかまあ、単純にこれからの敵の話なのだから、むしろ居てくれなければ困るくらいのものであるが。いやそれにしても……
(か、考えろ……考えろ……さっきまでの話の中にヒントがあるとラフォーレは言った。これから戦う相手の特徴。普通に考えれば海岸線なのだから、こう海系のモンスターが妥当ではあるが)
海岸沿いには林もあるが、正直そこに何かが隠れているようにはリゼの眼で見ても思えなかった。だとすればやはり海に関係して来るのかとも思うが、そこでリゼは思い出す。
(ま、待てよ?そう言えば"龍の飛翔"の時には毎回この海岸線の何処かから龍種が生まれるとマドカが言っていた。つまりはここから龍が出て来るのではないか?……いや、しかしそんなことまでアルファに操作出来るのだろうか?未だにオルテミスでもよく分かっていない現象なのに)
単純な想像で選択肢をいくつかに纏めることは出来た。しかしどの選択肢も根拠に乏しい。あまり明確な答えというものが浮かんで来ない。
(いや、ここまでは誰でも考え付くことだ。ようはここから、ここから先の推理に、恐らくラフォーレの言っていたヒントが関係するのではないだろうか)
先程までのラフォーレとの会話、その中でも何かしら関係しそうな会話というのは精々……リゼが質問した、この場にアルファは現れるのか?という質問くらい。それに対してラフォーレはあり得ないと言い切った。理由としては"マドカが明らかにアルファには勝てそうにない人間をここに向かわせたから"。
……であるならば、ここに居るメンバーはどういう共通点を持つ?どういう相手なら勝つことが出来る?つまりは、どういう理由で集められた?
「………!!!」
そんなこと、少し考えれば分かる。
何故なら自分で集めた仲間達なのだから。
自分の大切なクランのメンバーなのだから。
このクランに所属している者達が最も得意としている戦闘、そんなものは大型相手に他にない。得意としているというか、大型相手にも十分に効果を発揮する力を持った者達ばかりが集まっている。
リゼの"大銃"、レイナの"雷散月華"、クリアの"水弾"、そしてラフォーレの"炎弾"。
「大型の龍種、またはモンスター……マドカが予想出来たのはそこまで。ただ、そのためにどんな属性に対しても対抗出来るように私達とラフォーレを組ませた。スズハを無理矢理にでも組み込んだのは、未知の相手に対する早期の解析のため」
「ふむ、70点だな。まあ合格点か。……もう一つ重要なのは、お前達の戦闘は遠距離攻撃が多く、酷く目立つという点だ。当然私もな」
「目立つ……?」
「オルテミスの高台には魔法砲が設置してあるのは知っているな?」
「あ、そうか……狙撃……」
「そうだ。ある程度離れた位置に出現したとしても、派手な攻撃をメインに中長距離でやりあっているだけで、狙撃手にとってはかなり楽になる。援護射撃というのは単純な戦況だけでなく、精神的にも意味のあるものだからな」
「そもそも街から離れた位置に出現したのなら、そこまで焦ることでもないと……」
「そういうことだ、魔法砲の有効射程範囲まで引き込んでからでなければ戦う意味もない。……まあ敵にも狙撃手段があればどうにもならんがな、その時はお前が気張れ」
「そ、そんな……」
そう言いながらもラフォーレの口元が若干嬉しそうに上がっていたのを見たのはレイナだけで。やっぱりリゼは少しずつ彼女に認められて来ているのだなと、本人には言わないがレイナは嬉しく思った。それと同時にやっぱりお前はラフォーレ・アナスタシアの弟子なのではないかと全員が思っていたが、それもまたいつものことのように黙って飲み込む。これもそろそろ慣れて来たルーティンだった。
ーーーーーッッ!!!
「っ、この音は!?」
「海洋からか!!」
「なっ、都市の方からも揺れが!?」
「来るぞ!全員戦闘態勢を取れ!!」
試練が始まる。