トム・リドルのヘビィなアイ   作:空飛ぶほうき君

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ファンタビダンブルドア、ハリポタダンブルドア、素敵なお菓子をいっぱい!
全部混ぜるとむっちゃマイルドな教授ができる…はずだった。だけどネビルは間違って余計なものを入れちゃった!
それは 「ロ ッ ク ハ ー ト」 

そして生まれたものがこちらになります。


※2023/12/1追記※

誤字報告ありがとうございます。
お礼にバタービールをプレゼント!

※2024/1/10追記※

誤字報告ありがとうございます。
マ――リンとは…?バタービールをどうぞ!


本編『トム・リドルのヘビィなアイ』
第0章  すべての始まり


 雨粒降り注ぐ曇天のロンドン。

 

 黒傘がグレーの背景を切り裂き、人々が足早に通りを行き交う中を佇む男がひとり。

 この空もレモンキャンディのようにサッパリと晴れてくれるなら。

 

 アルバス・ダンブルドアはコートに忍ばせた菓子袋から飴を一つ、ぽいっと口に放り込んだ。

 

 例年通り入学許可証を子供達に渡した後、傘一本を手にあてどなくぶらぶらとほっつき歩く。パン屋を覗き込んだり、カフェで喉を潤したり、路地裏を散策したり。

 よくわからないがなにか引かれるものがあったのだ。魔法で探知してみたが特に引っかからず。

 

 気のせいか?諦めて学校に戻ろうとして────あれは? 

 

 パブの裏、薄暗い路地に足を踏み入れると、艶めいた白い鱗を持つ小さな蛇がいる。

 ロンドンのど真ん中に?なんと珍しい。誰かのペットだろうか。ぐったりと力なく転がり、死んでいるように見える。

 

 どうやらこの蛇が、今日一日中私をソワソワさせた原因のようだ。

 

 

 

「そいつは死ぬんだ」

 

 

 

 路地に少年の高い声が響き渡り、咄嗟に見回すと建物の影へ溶け込むように少年が立っていた。血の気のない顔に、濡羽色の髪、灰色のチュニックやズボンにはところどころ継ぎの当たった箇所がある。

 

「君が飼っている蛇かな?」

 

 あまり怯えさせないよう少し笑みを浮かべて少年に声をかけたが、少年は押し黙ったままこちらを睨みつけてくるだけ。

 非常に気まずい。知らない大人に警戒しているようだ。

 

「あの蛇を見ても?」

 

 こちらの言葉が気に入らないのかますます顔を顰めて睨みつける。

 なにが気に入らないのか。心を見るに、あの蛇を少年が飼っているわけでもないのに。

 

 埒が明かないので蛇に近寄る。少年を下手に刺激したくないがどうしても気になった。スーツが水を吸うのを気にせず濡れた石畳に膝をつき、見下ろす。相変わらず動く気配はない。隠し持った杖を少年に見られないよう使うと、非常に衰弱しているが、生きていた。

 体温が下がりすぎて動けないようだ。可哀想に。なにかあった時のために元気爆発薬の小瓶を持っていたはず。

 あぁ、どこへやったか…おっ!これはハニーデュークスのチョコレート!後で食べよう。

 

「なにをしてる」

 

 あっちでもないこっちでもないとコートやスーツのポケットをまさぐるダンブルドアへ、音もなく少年が近づいていた。

 

 もちろん近寄ってきていることはわかっていたが、あえて気付かない風を装い驚くふりをする。

 

「お!君か。これを探していてね」

 

 見せびらかすように左手の平をひらひらと振って握りこみ、開くと小瓶が。これには少年も驚いたのか手と小瓶を凝視している。ちょっとした手品でやっと現れた子供らしい表情に満足した。

 小瓶の蓋を外し指で蛇の口を少し開く。小瓶を僅かに傾けてポタリ、吸い込まれるように一滴だけ零れた薬は蛇の口へ。少し待つとヒューッ!とやかんのように口から煙が噴き出し、飛び起きた蛇は私を見た瞬間嚙みついた。

 

「ぐあ!」

 

 黒い皮手袋を貫通した牙はぐっさりと指に食い込こむ。振りほどこうとしたがすぐ口を離し、シュルシュルと少年の足元へ隠れて元気いっぱいに威嚇してきた。

 これだから蛇は嫌いだ。

 

「元気になったようで結構!」

 

 噛まれた指を蛇に向けて非難する私と威嚇する蛇。足元に置いていた傘を拾い、ため息をつきながら空を仰ぐといつの間にか雨は止んでいた。

 

 私はなにをしている。

 

 傘をたたみ、手袋を外して傷を確認…うん。思っていたより出血が多い。毒蛇では無いようだが、帰ったら医務室へ行こう。

 内ポケットから上品にハンカチを取り出して止血し、少年へ向き直った。

 

「君もこんなところへいないで帰ったほうがいい」

 

 怪我した手を見つめていた少年は、そのままジッと今度は穴が開きそうなほど顔を見つめる。

 心配をかけたか?でも見つめすぎだ。不気味だよ、君。

 

 表通りへ歩き去ろうとしてふと立ち止まる。少年を近くで見るとよくわかる、継ぎの当たった古着に痩せた体。この子供はきっと碌な食事をとってない。パブの裏にいたのも事情があるんだろう。

 そんなことを憂鬱に考えつつ先程発見した未開封のチョコレートを差し出す。

 

「持っていくといい。チョコレートだ」

 

 少年はチョコレートを見つめるだけで動かないが目は釘付け。おじさんはお見通しだぞ。

 これ見よがしにチョコレートを開封し、パキリと折って小さな欠片を口にほうる。

 

「ん~!最高!」

 

 もう一度差し出すと警戒しながらも受け取る。受け取った直後は目をキラキラさせていたくせに次の瞬間ひどく睨んできた。

 

 帽子を少し持ち上げて別れの挨拶をする。もうここに用はない。

 

「さようなら少年」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨模様のいつものロンドン。現在ウール孤児院に訪問中。

 トム・リドルという今年入学予定の男の子に、入学許可証を渡し魔法界の説明をするため足を運んだ。

 

「トムに面会ですか?面会の方なんて初めてです」

 

 孤児院の院長ミセス・コールに連れられながら院内の階段を上る。彼女から漂うジンの香りが風に乗って鼻をかすめ、眉間に皺を寄せる。

 孤児院の経営や、子供たちの世話が大変だろうがこんな昼前から? 

 

 たまに通り過ぎる子供たちは痩せてあまり笑わないけれど、服はちゃんと洗濯され肌に目立った汚れもない。一応世話されているように見える。

 

「ほかの子供たちと…少し、その、色々ありまして。よくないことが」

 

 ミセス・コールはダンブルドアに廊下でヒソリと小声で囁く。

 

 その言葉にますます眉根を寄せた。聞いてみると、どうやら問題がある子らしい。

 

「トム!お客様よ。ダンバートン、失礼。ダンダーボアさんがお話したいそうよ」

 

 扉の一つをノックし開く。酒で舌が回らないのか、もともと覚える気もないのか適当に紹介される様子を冷ややかに見つめていると、ミセス・コールは室内に入らず二人で話せと目で訴えてくる。小さな子供と見知らぬ大人を部屋で二人きりにするのは少し不用心ではなかろうか。

 

「はじめまして、トム」

 

 スチールベッドと古い箪笥、簡素な机と椅子。ベッドの上には黒髪で蒼白い子供がいたが…いつぞやの少年だ! 

 おまけにあの白蛇が灰色の毛布の上に鎮座しこちらを睨みつけている。表情が無いのでそう感じる程度だが。少年も驚いたのか一瞬目をまん丸にして、すぐ子供らしくない凪いだ表情に戻る。

 悠々と室内に足を踏み入れ、椅子に座ってもいいか尋ねたが、案の定雨音しか聞こえず勝手に座った。

 

「私はアルバス・ダンブルドア教授。ホグワーツという学校に勤めている」

「教授?嘘をつくな、詐欺師」

 

 どうやらこの幼気な少年は私を詐欺師と断じたようである。手品を見せただけじゃないか。

 せめて奇術師(マジシャン)と言ってほしい。

 

 敵意を剝き出しにするトムに戸惑いを隠し、ダンブルドアは毅然とした態度で首を振る。

 

「詐欺師じゃない」

「信じないぞ。僕を騙して人買に売るんだろう。僕が特別だから」

「君が特別なのは知っているがね、もう一度言うが詐欺師じゃないし君を売ったりもしない」

「それじゃサーカスででも働かせる気か?まともじゃないやつが行く場所だってビリー・スタッブズが喚いてた。騙されないぞ!」

 

 ヒートアップしたトムが蒼白な顔面を酔っぱらったように真っ赤にし、吐き捨てた勢いそのままにベッドの上に立ってこちらを睥睨する。

 マーリンのヒゲ! どうしてこうなった。助けてくれ。このままでは上がり続けた右眉が額を超えて外に飛び出してしまう。

 

 落ち着け、アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア。お前は何年教員を務めてきた? 

 

「サーカスには行かない!精神病院だって行かない!僕はおかしくなんかない!!」

「トム」

「動物を思い通りに操れるし触れずに物を動かせる!あなたを傷つけることだって簡単だ」

 

 トムの暗い目が私を見透かすように射抜き、心を覗こうとする感覚がした。魔法の魔の字さえ知らないうちから心を探る術を知っているとは。トムが形の良い眉をしかめる。

 しかし残念。

 

 私の方が「経験豊富」なのだよ。

 

「私の勤めるホグワーツは魔法学校。つまり魔法使いの学校だ。君や私みたいな魔法使いのための、ね」

「魔法使い?僕が?」

 

 燃え上がる怒りが一気に鎮火する。トムの真っ赤な頬が急激に蒼白く色が失せ、倒れないか心配していると、今度は頬をピンクに染めて喜色満面に唇を三日月に描いた。

 

「わかってた。僕は…特別だって!それじゃ僕が使っていたのは…魔法?」

 

 座り込み、獣じみた喜悦を隠しもせず、ギラギラ光る眼でブツブツと呟いていたトムが突然胡乱げに見遣った。

 

「証明しろ。あなたも魔法使いなら、証明しろ」

 

 高圧的な命令にまたもや眉が上がりそうになるのを堪えて杖を出す。傲慢な少年に灸を据える。

 そう思い古箪笥へ向けようとしたが、流石に箪笥を燃やすのは子供の精神上よくないと思いとどまる。それにこれは勘だが、暴力的であればあるほどドツボにハマる気がする。

 

 この手の子供は力に敏感だ。

 私はよく知っている。

 

「手を出して」

 

 噛みつくとでも思っているのか恐る恐る差し出した手に杖を向ける。

 

「アグアメンティ」

 

 杖先から水が飛び出し、みるみるうちにトムの手の中へ水が溜まり溢れ出す。零れ落ちた水は下へ落ちず、上に落ちていく。浮かぶ水球を呆けたように見る少年に口の端が上がる。

 

「覗いてごらん」

 

 頭上の水球を目の前まで降ろし覗き込ませる。水の中にミニチュアのマーピープルやグリンデロー、大イカが優雅に泳ぐ、ホグワーツの黒い湖を再現した即席のアクアリウム。

水面に浮上した大イカと握手するトムは嬉しそうだった。

 

 縦横無尽に泳いでいた水棲生物達が渦を巻きはじめ、アクアリウムも渦巻いてハリケーンとなる。ハリケーンが徐々に手紙を形成していき最後にマーピープルが封蝋へ変化し封じた。

 

「君が入学するのを楽しみに待っている」

 

 浮かぶ入学許可証を震える手で掴み、夢のように消えるのを恐れ目を離さないトム。

 実に年相応でよろしい。蛇くんも口を開けて呆然としていた。

 

「ホグ、ワーツ」

 

 穴が開くほど見つめた後、丁寧に開封し手紙を読み進めるトムを横目に部屋を観察する。窓辺の小石、海岸を写したであろう写真、本。殺風景だ。孤児院の一室だとしても殺風景過ぎやしないか? ここが本当に子どもの部屋? 孤独な老人が住んでいると言われた方がまだ納得できる。

 それに────ミセス・コールは正しいかもしれん。

 

 ダンブルドアは僅かに眉根を寄せ、入り口近くの古箪笥を見ないよう注意し、すぐに暗い表情を消す。学校の子供たちに向ける笑顔と同質のもので顔を塗り替え読み終わるのを待つ。

 顰め面で子供と向き合いたくない。

 

 ホグワーツや魔法界についてなど簡単に説明していると。

 

「ダンブルドアさん?」

「君の先生になるのだから、教授か先生で大丈夫」

「はい、先生。あの…僕、お金がありません」

 

 人格が変わったように高圧的な言葉が鳴りを潜め、至極丁寧な態度に変化したのである。

 

 暴君が瞬きの間に優等生へ転じた様を至近距離で目撃した私は、背中に冷や汗を流していた。闇の魔法使いセンサー(別名ゲラート予備軍探知機)が脳内でけたたましい警告音を鳴らす。

 冗談じゃない。二人の闇の魔法使いを相手にする余裕なんかない! 

 

 待て。トムは子供だ。闇の魔法使いでもなければ、信者を集め人を扇動したり、誰かを拷問したり、死の呪いを滅多矢鱈に連発してもない。

 ただの、子供だ。

 

「お金に関して気に病む必要はない。経済的に余裕がない家庭へ、制服や学用品を買うための資金を援助する制度がホグワーツにある」

 

 経済的に余裕がない、という言葉にピクリと反応し、途端無表情になる目の前の少年へ慎重に語りかける。

 

「さっきの…ああいった物も手に入りますか?」

 

 ダンブルドアが杖を仕舞った胸元へ手を意味あり気に向けてトムが尋ねた。

 

「もちろんだとも。しかし、資金も有限でね。授業に使う大鍋やら呪文の教科書などは…すまないが、中古になるだろう」

「わかっています。お古には慣れているので」

 

 わざとらしい品のある微笑みにこちらもわざとらしく微笑み返す。トムの目元が一瞬痙攣した。

 潮時だ。

 

「ダイアゴン横丁へ学用品を買いに行く必要がある。明日はどうだろう?特に問題なければ、明日買いに行こうと思うが」

「僕一人でできる。あなたは必要ない」

「未成年者を一人で彷徨わせるわけにはいかん。君がどれだけしっかりしてても、だ」

 

 ひどく不満そうに顔を顰めるトムを通り過ぎ扉へ歩みを進める。すると、古箪笥からガタッガタッとなにかが当たる音が響く。

 

「なにか出たがっているようだ」

 

 古箪笥をコンコンと叩くと突如箪笥の扉が開き、箱が飛び出した。空中を飛行した箱はトムのベッドにボトリと落ちる。

 

「その中のものは、君のものではないね」

 

 瞬間、顔を跳ね上げて無表情を向ける様子を眺めつつ、箱に顎をしゃくる。

 トムが箱を開けると中身にハーモニカやヨーヨー、薄汚れた指貫なんかのガラクタがごろごろと収まっているのが見えた。

 

 ふんふん、戦利品かね? 

 

 ガラクタの間からミニチュアのグリンデローが転び出す。トムを非難するように肩に頭突きし、どこかに泳いでいった。

 

「明日までに持ち主へ返しておきなさい。盗みはご法度さ。もちろん、ホグワーツでも」

 

 無感情な貌の眼の奥深くを、憤怒の炎で燻らせる少年を諌め、ダンブルドアは退散した。

 

 波乱の気配だ。絶対なにかある。あの少年から目を離せば悪いことが起きる。

 蛙チョコレート2つとウリックのカード5枚を賭けたっていい。

 

 マーリンよ、いやニコラスでも構わん。助けてくれ。

 




・ダンブルドア
アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア。
本名長スギィ!アリアナとハリーと他色々✟悔い改めて✟
ファンタビ基準の姿で登場。中年。
弟の修正パンチを4度食らい、俗っぽくなったという独自設定。

・トム
トム・リドル。お辞儀をするのだ…。
ヴォルデモートの幼年期。
蛇と喋れるし、なんなら目だって赤く光る。

・ハニーデュークス
お菓子屋。みんな大好き。
ホグズミードという魔法使いの村にある。

・元気爆発薬
魔法界の風邪薬。
飲むと体ポカポカ、耳から蒸気が出る。

・ゲラート・グリンデルバルド
ダンブルドアの元お友達。
信者がいっぱいいて信者が暴れまわってる。
より大きな善のために、魔法使いのマグル支配を目指す激ヤバ思想魔法使い。

・アグアメンティ
水を杖先から出す呪文。
この話では重力操作や他高度な変身術を重ね掛けてアクアリウムを作った。
ヴォルデモートを水の球に閉じ込められるんだからこれ位できるじゃろ。

・黒い湖
ホグワーツ敷地内にあるでっかい湖。
マーピープルやグリンデロー、大イカなんかの水棲生物が住んでる。
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の試合場として使われた。

・マーピープル
水中人。マーメイドとも言う。

・グリンデロー
薄緑色の肌、小さな角の水棲生物。

・大イカ
でっかいイカ。人に優しい良い奴。

・蛙チョコレート
躍動感溢れる蛙のチョコが封入されたお菓子。
カードがおまけについてる。

・ウリック
奇人ウリック。クラゲを帽子にした面白魔法使い。
蛙チョコレートのカードになった人。

・マ―リン
アーサー王伝説の魔法使い。
「オーマイゴッド!」の代わりに、魔法使いは「マ―リンの髭!」を使う。
蛙チョコレートのカードになった人。

・ニコラス
ニコラス・フラメル。ダンブルドアのお友達。
賢者の石を錬金した、偉大なフランス人魔法使い。
しわしわのおじいちゃんかつ骨がよわよわ。
蛙チョコレートのカードになった人。
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