トムは次回出ます。
ダイアゴン横丁は騒がしい場所だ。
買い物客で賑わう店々、新品の箒に興奮する子供達の声や、ペットショップのフクロウの囀り。人の波が道を遮るのは日常茶飯事。それが休日なら尚更。寄せては返す人の流れに乗って通りを泳ぐ。
愛しの夏季休暇が来年へ去った九月。ホグワーツでは新学期が始まり、生徒も教師も忙しなく過ごしていた。今は教師の特権を大いに使い、休日の学校を抜け出して買い物へ訪れている最中。
ちなみに。心配だった夏季休暇限定特別合宿は大成功を収め、来年も引き続き開催と相成る。
特に特別講師として呼んだニコラスが大好評で興奮のあまり倒れる生徒が出たほど。鏡に映し出された錬金術師への質問で一日の大半が消し飛ぶが、両者共楽しそうだったのでよし。トムが大はしゃぎで目をキラキラさせて話に聞き入っていたのが印象的だった。
波乗りを終え、大通りから外れた脇道の入り口に立つ。ここは大抵の魔法使いが避ける通り。黒レンガの壁へ固定された腕型道標が目印の商店街。
呪具、禁術、密漁品、古今東西のあやしい品を扱う店舗が勢ぞろい。禁制品が並ぶ陳列窓と、どこからか漂う謎の香。通りをうろつく者の大半が脛に疵持つ輩。
ノクターン横丁へようこそ。価格と違法性、背後に注意。
「アルバス!」
突如肩をポンポンと叩かれ振り返ると、派手な包みを抱えた満面の笑みのホラスがそこに。
休日にまで君に会いたくなかったよ。大人しくホグワーツにお帰り。
「ごきげんようホラス。君も買い物か?」
「そうともそうとも。ほれ! 昔のよしみで珍しい品が手に入ってな。憶えているか? 一昨年卒業した元レイブンクロー生の──―」
「へぇ」
ニカッと歯を見せて笑い、恰幅の良い体を揺らして際限なく駄弁る魔法薬学教授に愛想良く頷く。おしゃべりに満足したのか、上機嫌で大切そうに包みを抱え直し、私の肩越しに薄暗い通りを覗き込んだ。
「ところで……ここで何を?」
「見ての通り買い物へ来たのさ」
「ノクターン横丁へ?」
「そうともそうとも。ノクターン横丁へ」
怪訝そうな表情を張り付けたホラスに肩をすくめてノクターン横丁へ。
暫しの逡巡の後、ホラスが慌てて追いかけ足元の水たまりを派手に跳ね上げ、挙動不審に周りへ目を走らせながら隣に並ぶ。少々言いづらそうに眉間に皺を寄せ、存在しない肩の埃を落としてやっと言葉を零す。
「ほら、君はその、こういう場所を毛嫌いするとばかり」
「嫌いではないよ。面白いじゃないか。色々あって」
耳元で囁くホラスへ曖昧に返答しつつ奥へ進み、曲がり角を曲がる。運悪く、反対側で丁度同じく曲がってきた人と衝突しかけたが、自前の反射神経を駆使して回避。残念なことにホラスはそのまま衝突した。
「あばっ! 失礼」
「これは、これは。奇遇ですな」
「……オフェアリス!」
ホラスが激突した相手はなんと、あのアブラクサス・マルフォイの父親、オフェアリス・マルフォイ。この男は何と言うか、苦手だ。鼻につく嫌味ったらしい態度や純血主義を煮固めた性格も……正直に言おう。嫌いだ。だからあっち行ってくれ。そこの魔法薬学教授は連れて行きたまえ。遠慮しないで。
初めにホラス、次にマルフォイ。濃すぎる面子に胃もたれを起こしそうだよ。一体全体何をしたらこんな目に合う。前世で悪行でも積んだのか?
「久しいなオフェアリス。パーティー以来か。あの時のワインは格別だった」
「ワインがお気に召して何より。先祖代々受け継いできたブドウ畑で栽培、厳選したブドウだけを使用したものでして」
世間話に花を咲かせる両者を他所目に少しずつ距離を置く。目的地は目の前。
さっと行けばバレないバレない。
「あぁ、ダンブルドア。貴方もいたとは。気付かず申し訳ない」
おま、白々しいな! おい!
ずっと気付いていただろお前! 今まで私の存在を無視してきただけでしょうが!
チラチラ見てきただろ! 目が合ったろ!
目敏く退避中の私を呼び止め、薄緑の目を細めるオフェアリス・マルフォイへ向き合う。
その加虐的で嬲るような視線に臆さず足掻くことにした。脱出を目指すのだ。希望はある。
「お気になさらず。私はこれで失礼……」
「つれないなアルバス。親交を深める折角の機会だぞ」
「えぇ。ホラスの言う通り。仲よくしようではありませんか」
にやついた表情で臆面も無くおっしゃる高貴な顔面に麻痺呪文を叩きこみたい衝動に駆られる。この不穏な空気を意に介さず、笑顔のホラスが開いた手で私の肩を掴み、仲良しの輪に引きずり込んだ。お前もかホラス。
真の敵は味方。ヘルベルトではっきりしていたがね、君は違うと信じたかった。
「お気になさらず……」
「ときにアルバス。君も買い物のようだが行先は?」
観念し、数ある店舗の一つを戯けて大袈裟に指し示す。「ボージン・アンド・バークス? 闇の魔術関連の危険な物しか置いとらんだろあそこは」と顔をしわしわにするホラスへ「役立つ品も多いのですよ。店主とは懇意の仲で、色々世話になっております。ささ、参りましょう」とオフェアリスが優雅に歩を進める背を追って店へ。
ドアベルが音を立てて来客を告げ、カウンターで誰かの頭蓋骨を磨く男が胡散臭い笑みを向ける。
「いらっしゃいませマルフォイさん。つい最近新商品が入荷しまして。お知らせをしようと思っていたところです」
「ほう。カラクタカス、ぜひ聞かせてほしい」
「もちろんですとも。後ろのお二人はご友人で?」
「……そのようなものだ」
しれっと友人(仮)にされた事実に嫌悪感を抱くも顔に出さず、代わりに笑顔を振りまいて極悪仲良しグループから離脱。どんより淀んだ空気の店内を大股で散策してアレを探す。
ここ、ボージン・アンド・バークスにメローピーが言っていたロケットがあるらしい。モーフィン曰く”大切なロケット”、話しぶりから察するにゴーント家の家宝かもしれないロケットが。
ゴーント家の者が重要だと思うなら、スリザリンに関係した品と推定。さぞ高値が付いたであろう。働けず、金に困っていたメローピーの生活をさぞ潤したに違いない。そうならなかったようだが。
さて、彼女が私のような部外者に手放したロケットの所在を知らせる理由はただ一つ。あるべき場所へ戻せ。つまり息子のトムへ戻せ、そういうことである。
知るか! 直接トムへ言え! トムに! どうして私がこんなお使いせにゃならんのだ! トムは父親に似たとばかり。やはりゴーントは厄ネタだった。自分が手放したのだから自分で何とかしろ、メローピー・ゴーント。
しかし、トムに母親の形見を渡すのは悪くない考えに思う。生まれてこの方孤児院で過ごしてきた少年だ。家族がおらず寂しい思いをしてきたのは間違いない。目は口程に物を言うとの通り、トムの目が物語っていた。
店主とオフェアリスの商談中、ざっと店内を確かめるもそれらしい品が見当たらない。人目につかない場所へ保管している、又はもうこの場所にはないか。
顎髭を撫でているとホラスが近づいてくる。
「うげ! 見ろ、ありゃ栄光の手だぞ。気味悪い」
「んー? そうかね」
「目当てのものはあったか?」
「ない」
「何かお探しですか?」
ホラスに続き、いそいそと近寄って来た店主がもみ手をしてこちらを伺う。離れた場所に並べられた用途不明の器具をオフェアリスが眺めている──―振りをして耳をそばだてていた。
「えぇ。ロケットを探しておりまして。知人が以前この店に売ったようで、買い戻したいのです」
「ロケット? ふむ。ロケットならあそこの棚に集めてありますが。それ以外となると、覚えが」
「鮮やかな緑色の『S』が刻まれた金のロケット。十年ほど前、妊婦から買い叩いたでしょう?」
一瞬で顔を曇らせた店主に確信する。この男は知っていて隠していると。メローピーが家宝を売ってなお、生活苦に喘いでいた原因がこの男だと。
泳いだ目をすぐさま戻し、普段通りの態度を装って店主が宣う。
「申し訳ございませんがなんせ昔のこと、まるで見当がつきません」
「思い当たりませんか。仕様がありません。ただの古びた金のロケットです。スリザリンの遺品など記憶にも残らないでしょう」
「何故それを」
「知人が売ったと申し上げた通り。知らないとでもお思いで?」
「スリザリンの遺品? 面白い。水臭いぞカラクタカス、教えてくれても良かったのに。私と貴方の仲じゃないか」
この期に及んでなお白を切る店主へ、鎌をかけて徐々に追い詰めているとオフェアリスが参戦。そして店主の反応によるとロケットはスリザリン由来で確定。世間知らずとはいえ、金に困った妊婦の足元を見たに違いないこの男が心底不快だ。
スリザリンの遺物へ興味津々なオフェアリスがこちらを加勢し、ボージン・アンド・バークスの店主、カラクタカス・バークが顔に汗を滲ませ唸る。
「だとしても貴方に売るつもりはございません。あんな貴重な品、どれほどの価値が付くと」
「もちろん、金に糸目をつけません。私は本当の持ち主へ返したいだけ。スリザリンの遺品はスリザリンの血脈へ。そういうものでしょう」
「返すだかなんだか知りませんがね、アレは資産家の顧客がコレクションに欲しがるほどの貴重品です。いくらでも出すと言っているのですよ。貴方に出せるとは到底思えない金額をね」
静かな店内で欲深い男と静かにいがみ合う。オフェアリスとホラスは困ったように目を合わせ、成り行きを静観する。
貼り付けた笑みの裏、こいつをどう料理してやるか沸々考える私の耳へ、この場の雰囲気にそぐわない軽いベルの音が響いた。
「バークスさん! ロケットの件ですけど……あらっお邪魔したかしら?」
目に染みる桃色のローブを着たご婦人が扉の隙間から顔を出す。その姿をみた店主が「スミスさん! いいところに! この方が貴方のロケットが欲しいと言って聞かないのです」とご婦人を見つけて安堵の吐息をつく。
ご婦人は私を見、ホラスを見。オフェアリスを見た途端笑顔で店内へ。
「ごきげんようオフェアリス」
「ごきげんようヘプジバ。お元気でしたかな?」
「ええ! 貴方は? 先月はとても楽しかった──―」
金持ち同士の世間話を始める二人に毒気を抜かれどっと疲れが襲う。今はただただ帰って安らかに眠りたいのをグッと堪え、上流階級同士の交流が終わるのを待つ。
「それで……?」
「アルバス・ダンブルドアと申します。こちらの店主とロケットの件でお話しをしておりまして」
「ヘプジバ・スミスよ。申し訳ないけれど、お譲りできないわ。スリザリンの遺産をみすみす見逃せないの。バークスさん、お決めになられて?」
「えぇ、えぇ。ロケットは貴方の物ですスミスさん。毎度ありがとうございます」
悪意ある目つきで素早く私をねめつけ、胡散臭い笑顔でさっさと良い値で売り払う店主。事あるごとに神経を逆撫でする言動をする男だ。クソ爆弾で爆撃してやろうか。
ヘプジバ・スミスといえば。確か、ホグワーツの創設者ヘルガ・ハッフルパフの子孫、イギリス魔法界有数の資産家及び蒐集家。つまり直接金で殴り合っても勝てない相手。
ならば搦め手で行く。ロケットを渡してもらおう。
心から申し訳なさげなスミス婦人へ、わざとらしく肩を落として「すまないトム……」と小さく呟く。こういうご婦人は劇的な仕草が効くのだ。特に哀れな境遇であればあるほど共感を抱き、涙なしで語れないドラマティックなストーリーを好む。
見事に食いついたスミス婦人が懸念を滲み出させおずおずと口を開く。
「差し支えなければ理由をお聞かせくださる? きっと事情があるのでしょう?」
「……はい。十年ほど前、とある女性がこの店に黄金のロケットを売りました。彼女はゴーントの生まれ。由緒正しいスリザリンの子孫でした」
「なんてこと。本当に? ゴーントはマールヴォロの息子、モーフィン・ゴーントしか……いえ、もう一人……」
「そう。マールヴォロ・ゴーントには二人の子供がいた。モーフィンと……メローピー」
さらに憂鬱な雰囲気を纏い、ゴーント家とトムをだしに懐柔を試みる。
「メローピーは決して叶わない恋をし、恋に破れた。彼女に残されたのは家宝のロケットと身重の体だけ。戻る場所も行く場所もなく、腹の子供のために家宝を売り払った」
ハッと息を飲み口へ手を当てる婦人。ホラスも息を飲む。
なお、オフェアリスだけは面白そうにニンマリ笑っていた。
「彼女は……」
「子供を産んですぐに……。極貧生活と妊娠が体に負担を掛けたのでしょう。ですが、子供に名を残すことはできました」
「その子の名前は?」
「トム・マールヴォロ・リドル」
唐突にオフェアリスが声を上げる。思慮深い目で合点がいったと何度も頷き、私へ目線を合わせ、口角を吊り上げて問う。
「今年ホグワーツ二年生になった少年。彼ですな? 息子から聞いた時は半信半疑だったが、いやはや。驚いた」
「そう。スリザリンの継承者。メローピーの一人息子。それがトム・マールヴォロ・リドルなのです」
置いてけぼり状態の店主を無視して話を締めくくる。決まった。雰囲気に呑まれているぞ。
後はこちらの希望を呑むよう誘導するだけ。
「あの子は母親の顔を知らず。家族もいない。せめて母親の形見を遺してやりたかった」
「安心してください。貴方からロケットを奪うような真似はいたしません。ですがせめて、実物を拝見させていただきたい。本当に彼女が遺したロケットなのか、この目で確かめたいのです」
陰鬱に顔を歪ませ深く腰を折り頼み込む。私の役者魂を正面から浴びたスミス婦人は目を涙で潤ませ、片手を胸に握りしめている。やはりこの女性はこういう演劇じみた展開に弱いようで、昂る感情のまま店主にロケットを持って来いと命じ「私にはこれくらいしか……」と悲しそうに零した。
言葉巧みに裕福な女性を誑かすこの状況に罪の意識を感じるも、急いで感情を握り潰す。私のような悪人に目を付けられたのが運の尽き。野良犬に粗相されたとでも思って諦めてくれご婦人。
店主が保管庫らしき場所から急いで豪奢なケースを引きずり出す。ケースを開くと、ベルベットに包まれたロケットが姿を現した。
店内の鈍い照明を照り返す金属製のフレーム。黄金に埋め込まれた曲線を描くエメラルド。
メローピーのロケット。
「あぁ、まさしく。このロケットだ」
すぐさま魔法で鑑定。無論結果は白。ついでに創設者独特の古い魔法の痕跡も感知した。
これがスリザリンの魔法の痕跡なのだろうか。グリフィンドールと随分違う。当たり前か。
「ありがとうございます。確認できて良かった」
劇的に背を向け肩を丸めて店の出入口へゆっくり歩を進める。圧倒的な敗者の姿を見せつけられたスミス婦人は動揺を隠せない。ホラスも雰囲気につられて泣きそうだった。
騙されてんじゃないよホラス。君、私と何年いるん──―そういえば君もこういうドラマに弱かったね。忘れていた。
「待って!」
スミス婦人が涙を湛えて叫ぶ。やっと、この臭い三文芝居以下の演劇を終えられる見通しに心を弾ませ、緩む頬を引き締めて振り返る。悲劇的な物語に同情した心優しい女性の眼差し。一歩二歩小さく歩み寄り、止まり、躊躇いを色濃く乗せた声が零れた。
「ホグワーツ創設者の遺品であり、亡き母の形見……男の子にとってどれほどの意味があるか。想像もつかない」
年季の入った床板を眺め、震える息を吐き出すご婦人。
「だけど、貴方の言葉を信頼できるかわからない。可哀想な子供はおらず、ロケット欲しさに馬鹿な女を騙り取る嘘つきかもしれないもの。ごめんなさい、ダンブルドアさん。貴方を糾弾したい訳じゃないの。どうか理解してちょうだい」
些かスミス婦人の勘の良さに肝を冷やされるが耐え「承知しております。信じがたいのも当然でしょう」と深刻そうに頷く。ついでに目をきらめかせておいた。輝かせると開心術の成功率が上がり、信頼も得やすくなる。
今の状況で必要だと思えんが一応。
「一度その子と合わせてくださる? 話が真ならロケットをお譲りします。お金もいりません」
「ただ、確かめたいの」
「その子が本当にスリザリンの正統な子孫か」
ヘプジバ・スミスの朗々たる声色が店内に響き渡り、誰かが喉を鳴らす。緊迫した空気に背中を汗が伝うのを感じる。
面倒事だ。面倒事が来たぞ。ロケットが欲しいだけなのに。くそ。
「なんと興味深い。かつての栄華も今は昔。ゴーント家は衰退の一途をたどるまま消え行くと思われていたが。人生何が起こるかわからないものだ」
ぬるりと話に割り込んだオフェアリスが芝居掛かった仕草で大袈裟に謂う。再度ダンブルドア劇場の舞台へ乗り込んだ挙句、役者として演じ始めた男を狐疑深く見つめる。
また来たな。やめてくれ、話がややこしくなるだろう。十分ややこしくなっているのだよ! やめろ!
「今度息子の誕生日パーティーを開くのですがね、息子の友人の一人として招待しているのですよ、件のリドル君を。実にタイミングが良い。まるで運命が導いたようだ」
「運命? 面白いこと言うのね」
「ヘプジバ、これを運命と呼ばずしてなんというのです。さてこの話は置いておきまして、パーティーで真偽を確かめるのはいかがでしょう。素晴らしい余興になると思いませんか?」
それが狙いか、このプラチナブロンド頭。トムの一大事なんだぞ! 息子の誕生日の余興にするんじゃない!
「んー。私も出席予定ですし、リドルさんもいらっしゃるのでしょう? 問題ないわ。ダンブルドアさんはどう思われる?」
「私はその日おりませんので、日を」
「おっと失敬。貴方も招待しますダンブルドア。ホラスも出席されるのですよ。そうですね? ホラス」
「え! おっおお。そうとも」
突如話を振られたホラスが面食らう。私は唖然としていた。
ロケットを買う話がスリザリンの正当な子孫を確かめる話になり、いつの間にかマルフォイ家の誕生日パーティーに出席する話になっている。一体全体どうして。
待て。焦るな、まだ焦る時間じゃない。
「いきなり私が来てもご子息がお困りになるだけですので。スミスさん、ロケットは日を」
「ハロウィーンの時に世話になったと聞いていますよ。息子も喜びます。ぜひ、いらっしゃってください」
「往生際が悪いぞアルバス。諦めろ。それに、君が来れば全部解決するじゃないか。話が本当ならスミスさんからロケットを受け取り、トムに渡せばいい」
嫌です。行きたくないです。周り純血だらけの純血パーティーだろ。
トムがいるので勘弁してください。
呆れた様子のホラスがダンブルドア討伐隊に加わり四方八方を囲む。前門の虎後門の狼ならぬ、前門のスミス婦人後門のオフェアリス~お傍にホラスを添えて~が出来上がり。
にっちもさっちも行かず、無様に足掻くも敗北。無理やり目尻を上げて微笑みを作り、死んだ目と強張った苦笑いでぎこちなく頷き、
「素晴らしい! 判別はやはり蛇語ですかな? サラザール・スリザリンはパーセルマウス。ゴーント家の者は皆、蛇語を話すと聞く。当日に蛇を用意しましょうか」
「えぇ。子孫なら蛇語を話せるはず。蛇と意思疎通が簡単にできるわ」
「実はパーセルマウスも見るのも蛇語を聞くのも初めてでして。興奮で少年のように心が弾んでいるよ」
当人はつゆ知らず、楽し気にキャッキャウフフと話を弾ませるお三方。
遠い目で成り行きを見守る私。
すまないトム。
私のせいで蛇語一発芸を友達の誕生日パーティーで披露することになってしまった。
恨むなら私とホラスを恨んでおくれ。
ついでにオフェアリス・マルフォイも。
・オフェアリス・マルフォイ
生やしたアブラクサスの父。純血。そして大富豪。
家族大好きな良夫。しかし、家族以外には容赦ない男。
・カラクタカス・バーク
ボージン・アンド・バークスの店主。金にがめつい。
・ヘプジバ・スミス
ホグワーツ創設者、ヘルガ・ハッフルパフの子孫。資産家であり蒐集家。
原作でトム・リドルにハッフルパフのカップ、スリザリンのロケットを奪われ、分霊箱の生贄にされた。
・スリザリンのロケット
サラザール・スリザリンが遺した遺物。
スリザリンの子孫であるゴーント家が代々受け継いできたが、メローピー・ゴーントが持ち出し売却。ロケットはボージン・アンド・バークスに渡り、ヘプジバ・スミスが買い取った。
蛇語で開く。
・麻痺呪文(ステューピファイ)
相手を麻痺・失神させる呪文。
・栄光の手
罪人の手を乾燥させた闇の魔術の道具。持ち主だけに光を当てる。