トム・リドルのヘビィなアイ   作:空飛ぶほうき君

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※血塗れ&怪我に注意※

モブが沢山生える回。


第14章  ブラックプディングを召し上がれ

「生徒様! ナサリーのお料理教室へようこそ! 本日ダンブルドア先生はナサリーの助手です。助手のダンブルドア先生、生徒様にご挨拶してください」

「おはよう寝坊助諸君。助手のダンブルドアだ。ホグワーツ魔法魔術学校の変身術教員であり、夏季休暇限定特別合宿の開催者だ。この場所の主でもある」

 

 哀れな変身術教授と合宿メンバーが、朝の六時ピッタリに叩き起こされた挙句連行されたのはダンブルドア邸の裏庭。作業着を着た小さな屋敷しもべ妖精が授業の始まりを告げ、手袋と長靴の山の前で嬉しそうに跳ねる。

 

 わくわく勉強会の面々が目を擦り大きな欠伸を連発する中、はっきり目覚めているのはたった三名だけ。

 

 朝っぱらから箒で飛び回っていた狂人に、将来の闇の帝王、半小鬼の決闘者。

 因みに狂人はロボン、闇の帝王はトム、決闘者はフリットウィックである。

 

 レイブンクローの一年生、フィリウス・フリットウィック。

 真面目で優秀、友人思いの優等生。非の打ち所が無い彼だが、決闘が三度の飯より好きな決闘者。その小さな体格を見て侮った五年生を決闘クラブで吹き飛ばしたと聞く。合宿中の決闘を許可した十分後には戦っていた少年だ。覚悟が違う。

 

 最近はトム相手にド迫力の決闘を続け、他合宿メンバーは二人の戦いに賭けをしてヤジを飛ばすのが娯楽となっている。

 無論、私も参加したとも。勝った方と戦うと伝えた瞬間のトムの顔は壮絶だったね。

 

「ええ。存じておりますとも助手先生」

「なら少し便宜を図っても困らんのでは? 料理審査員とかソムリエなりが適任だと思うが」

「先生、食べるだけの係はいつもしていらっしゃるでしょう? 今日はナサリーの助手です。異論は認めません。さっ皆様! まず初めに、お野菜を収穫しますよ! 手袋と長靴をどうぞ」

 

 横暴な屋敷しもべ妖精に農作業用の手袋と長靴を押し付けられ、ぶつくさ文句を呟きつつ準備を始める。隅に重ねられた籠を持って畑に近づくと、同じ装備を身に着けた子供の大群がぞろぞろ続く。

 

「助手先生、お野菜を入れる用の籠はそことそこ、あそこへ。お野菜が籠いっぱいになったら貯蔵庫へ搬入を。それまでは適当にハーブの収穫でもしていてください」

「はいはい」

「はい、は一回でよろしい」

 

 どうやらこの小さなハウスキーパーは年老いた教授を酷使する気らしい。

 可哀想なダンブルドア教授。重い野菜を運ばされた挙句、投げやりにハーブを摘まされる。

 裏方はつらいね。

 

 野菜と戯れる合宿メンバーの真横を配達のおじさんにされた変身術教授が通り過ぎ、小さな区画に青々茂ったハーブを刈り込む仕事に着手した。バジルにローズマリー、タイム、ルッコラとイタリアンパセリ。鉢植えからミントも少々。次々にハーブをハサミで切り取り、同時に雑草を根ごと引っこ抜く。

 粗方刈りつくし野菜畑の方を伺うと、丸々とした新鮮なトマトに齧り付く生徒の姿が! 

 

 幸せそうに赤い実を食むはレイブンクロー四年生のプリシラ・ルリエ。実家が農家の彼女はやはり強かった。三口で大きなトマトを胃に収め「甘―い! サラダやスープにしたら絶対美味しい!」と高らかに宣言した後、手際よくトマトをもぎり出す。

 

 そんな農家の真横にはズッキーニを収穫中のノア・セルウィンと、ナサリーからパプリカの収穫方法を教わる合宿初参加のセシル・マクマホン。ノアをコンパートメント診療所へマクマホンが運び込んだのをきっかけに、二人は仲良くなったようだ。魔法生物に突撃、玉砕したノアを私のもとへ運び込むルーティンが確立される程度には固い友情を結んでいる。

 

 柔らかい野菜を圧倒的な握力で握り潰してしまうロボンはニンジン係。ちょっと離れた所でトムとレストレンジがジャガイモやニンニクを漁っていた。

 

 レストレンジ。驚くことに初参加ではない。

 トムの影に隠れて合宿メンバーから距離を置き、心底居心地悪そうにしていたのが昨年。

 本年ではトムの専属執事としてある程度社交的に振舞っている。

 

 見ろ! レストレンジがせっせと畑を掘り、土を落とし、ジャガイモを渡すのを。

 トムは野菜を磨く係りだ。奴隷根性丸出しで働くレストレンジに涙が出る。

 ついにニンジンさえ破壊し出したロボンの助けにトムが赴き、レストレンジが捨てられた子犬の目で見送るのを最後に他へ視線を移す。

 

 かぼちゃを転がして遊ぶグリフィンドール二年生のドミニク・ベーア、キャベツの芯が上手く切れないレイブンクロー五年生のエゴール・セロフ、レタスと格闘するレイブンクロー四年生のソニア・マックスを補佐するフリットウィック。

 

 和気藹々とした空気は、ベーアが投じたかぼちゃがセロフへぶち当たることで終わった。

 

 オレンジの砲弾が美しいカーブを描いてセロフの尻に激突、キャベツごと土に身を投げ出し、畑の一部に溶け込んだキャベツマンが怒鳴り散らす。しかし、怒りのあまりロシア語で喚くセロフの訴えをベーアは全く理解できなかった。

 

『テメェ! 俺の尻にかぼちゃぶつけやがって! 体中泥だらけだぞ! どうしてくれんだオイ!!』

「あー……えっと。ごめんね」

『誠意が足りねぇんだよ、このかぼちゃ野郎! お前の頭もそのかぼちゃみてーに投げてやろうか!?』

「ごめんって! というか何言ってるのかわからないよ! 怖いって!!」

 

 これだけでも十分地獄だが、三十分以上かけて収穫できたレタスが一個だけだと理解したマックスが絶望、次いで号泣。

 

「えっ、なっなっなんで? 嘘でしょ……?」

「頑張ったねマックス! 見て、君の立派なレタスだよ」

「あんた! 今隠したの見せなさいよ! こ……こんなに取って! 裏゙切゙り゙者゙~゙!!」

 

 マックスの分までフリットウィックがせっせと収穫していたレタスを指さし、鼻水を垂らして泣きじゃくるマックスを必死に宥めるフリットウィック。ベーアの首元を掴んで振り回すセロフを見なかったことにし、満杯の野菜籠と孤独なレタスを回収、纏めて魔法で浮かせ貯蔵庫へ向かう。

 ハーブと野菜を貯蔵庫の箱へ移し、一息。

 

 騒ぎが収まるまでここにいよう。きっとナサリーが何とかしてくれる。

 

「仕事はまだ終わっていませんよ、助手先生」

 

 突如生えた小生意気な妖精を少し睨む。

 動かんぞ。あんなのに巻き込まれるのはごめんだ。赤ちゃんみたいに振舞う彼らが悪い。

 

「ナサリー」

「生徒様が困っていらっしゃいます。ほら行って」

「ナサリー……」

「先生らしいことをしてください」

 

 はい。

 

 

 

 

 

 お気に入りのベストが鼻水と涙と涎塗れになる程度の犠牲で騒ぎは収拾し、我が家のキッチンへ。やっとこさ料理教室の料理部分へ移れるらしい。

 

 貯蔵庫で料理に使う分だけ野菜を回収。調理台へ並べ、合宿メンバーはベイクドビーンズ班、ハッシュドポテト班、焼物班、サラダ班に分かれて各々分担作業で料理に挑む。ナサリーと私は、生徒が食べ物を燃やしたり溶かしたり刃物を自分へ突き立てないように巡回しつつ、パンや他の付け合わせを揃える係りだ。

 

 レタスの収穫に苦戦していた姿は何だったのか。まぶたの腫れあがったマックスが手際よくジャガイモの皮をむき、彼女の隣のトムも慣れた手つきで皮を落とす。やけに達者な包丁捌きをしげしげ観察していると少年と目が合い、笑みを向けられた。

 

 スリザリンの化身が向けた不気味な笑みに怖気を感じるも、目を顰めて思考を脳の隅へ追いやる。今は子供達が怪我を負わんよう見張らねば。

 

 屋敷しもべ妖精がグループを飛び回るのを尻目にパンを焼き、ベーコンが炭になる運命から救い、ハッシュドポテトが地面に落下するのを防ぎ、まな板のシミになったトマトをベイクドビーンズに入れて軌道修正。

 ある程度子供達が作業に慣れ小康状態に入った後、休憩がてら血のソーセージを手に取り、パッケージを破いて中身を包丁で均等に切る。一人二枚。おかわり用に数枚追加。

 

 一本分を切り終わり、二本目を取り出して包丁を入れ────

 

 

 

 ────刃先が横にズレる。

 

 

 

「い゙っ!」

 

 自慢の反射神経で回避するより先に銀色の刃が沈み、痛みに指を引こうとして傷を広げたのか血が吹き出した。凶器をなるべく穏やかに投げ、まな板とソーセージから遠ざかる。

 まな板の上は惨劇の有様。後退った際に血が床のタイルに飛び散りスプラッタ状態。

 

 おいおい『豚の血ソーセージ』が『豚とダンブルドアの血ソーセージ』になってしまった。

 血だから変わらんか。

 これをピピっと血を振ってフライパンにな? 

 

 っておい! 

 

 人の血入りソーセージとか不気味すぎる! 

 お馬鹿! 

 

 周りで悲鳴が鳴り響き、集団パニックの渦中に必死こいて傷を抑える変身術教授へハウスキーパーがすっ飛んでくる。

 

「あらまあ! ダンブルドア先生! 大丈夫ですか!?」

「おお……指をちょーっとばかり、まあ、この通り。切った」

「指を切った? 気を付けてください! ナサリーのキッチンで血を見たくありません!!」

 

 怒りと呆れを器用にこなしたナサリーが押し付ける布切れを有り難く貰う。

 血がドバドバ出る中、杖なし呪文はちとハードルが高かったが床とまな板に飛び散った血液を掃除呪文で洗い、キッチンの片隅で再度の診察。

 結果は重傷。ギリギリ骨まで達さずに済むも暫く左手の人差し指は使えない。

 

 ベストに忍ばせた包帯と、少量のハナハッカエキスで応急処置を施しながら今さっきの異変を振り返る。包丁が勝手に動いた今回の事件。下手人は誰か。

 自分は除外、ナサリーも除外、残るは合宿メンバー。

 

 まあ、おおよその目星はついていると言えよう。

 

「お騒がせしたな諸君! 今日は包丁も張り切っているようだ。元気なキッチン用品に皆も気を付けてくれ」

 

 大袈裟な身振り手振りで己の怪我から注意を逸らし、動揺した子供らを一人一人チェックしていく。心配、不安、恐怖の感情を湛えた目は私の目くらましで幾分和らいだ。

 

 顔面蒼白なトムを除いて。

 やはり彼が犯人か。

 

 隣で落ち着かずにエプロンを弄り続け時折トムをこっそり伺うレストレンジを見るに、彼もトムが変身術教授に悪戯したのをわかっている様子。

 トムは前方を見つめたまま石になって動かず、普段から白い肌は青みを帯びて貧血一歩手前の色合い。口は万力が如く噛み締められ、拳は腰の横で握りしめられたまま。ただ、どこも見つめず前を向いて何かを待っている。

 

 今日のトムは一段とおかしい。

 最近の奇妙な嫌がらせはいい。害は無いのだから。

 だが人を傷つけるのは駄目だ。

 

 突然、孤児院の院長ミセス・コールから聞き出した”よくないこと”が脳裏を駆け巡る。

 

 トムに意地悪した孤児が飼っていたうさぎの不可解な死。ある時から口を閉ざし、引きこもるようになった孤児達。

 

 箪笥の中に隠された持ち主のイニシャル入りの戦利品。

 

 

 

 手遅れなのか? 

 君を二年間見守ってきたが、不十分だったか? 

 私が気にする誰かと、また、戦わせるのか? 

 

 いいや。まだ絶望するには早い。きっと。

 

 

 

 今にも倒れそうなトムへ近づくと、一層強く拳を握りしめて目線を床へ移すのを見逃さなかった。酷く狼狽えた少年の肩に無事な方の手を置く。

 

「トム、大丈夫か?」

「はい」

「顔色が悪いぞ。座った方がいい。ほら、来なさい」

 

 ついてこようとするレストレンジはナサリーへ擦り付け、少年の肩を握ってコンサバトリーへ。

 魔法で気温と日差しが一定に保たれた温室兼多目的室の落ち着いた雰囲気に肩の力を抜く。

 花やハーブなどの植物に囲まれた室内を横断し、柔らかいクッションが乗ったソファへトムを埋め、その前に膝をついて少年と目線の高さを合わせる。

 

 この部屋へ来たのは眼前のスリザリンと二人きりで話し合うため。不安に怯える彼が少しでも落ち着くと良いが。

 

「君がわざとやったのは知っているぞ、何故あんなことをした?」

「……」

 

 黙りのトムに内心頭を抱える。

 言い方を間違えたか? もしや、怒られると思っていたり? 

 それだ。普通は怒るものだ。

 

「トム、私は……怒ってないよ。驚いたがね。君は年老いた教授を心底怖がらせた」

 

 真っ白い少年の固く握った拳に手を伸ばす。手が触れた瞬間目が揺れたが、相も変わらず視線は床を焼いて一言も喋らず。トムの小さな拳を右手で包み込んでやると、トムの目がやっと床以外に移った。

 

「あなたが」

「ん?」

「あなたが、怖い?」

 

 当然至極の事実を、さもこの世の常識が引っ繰り返ったと言わんばかりに呟くトムに目を丸くする。

 

 何故か人々はアルバス・ダンブルドアという男は恐れ知らずの超人か完璧人間と考えるのを好むが、私はただの魔法学校に勤めるだけの教師で、人で、時々怪物かもしれんが、決して完璧でも恐れ知らずでもない。

 私は誰よりも臆病者なのさ。

 

「怖がるのは当たり前だ、人なのだから。怖いものなんざ数え切れんくらいあるぞ。レモンキャンディの紛失や、ポケットでとろけたチョコレート、怒ったナサリーに、機嫌の悪いミネルバ……」

 

 ゲラートとの戦いや妹の死の真実。

 身近な誰かが傷つくこと。

 君。

 

 自分自身。

 

「フンッ」

 

 戯ける私へトムが発した鼻で笑う音に、いつもの傲慢不敵なスリザリンの蛇が帰ってきた気がして口角が上がった。我が体温を生贄にトムの手が温まり、拳の力が抜ける。

 

「大切な生徒が傷つくのを考えるだけで震えが止まらなくなるし、それに君は」

 

 君は何だろう。

 次世代の闇の魔法使い? 監視対象?

 ホグワーツ始まって以来の秀才? ウール孤児院の孤児? 

 サラザール・スリザリンの末裔? 

 

 君が誰であれ目が離せない。これをどう定義するか。

 

 そう、つまり。

 

「お気に入りの生徒だから」

 

 トムはお気に入りの生徒で、危険で、監視が必要だ。

 それだけ。

 それだけでなくてはならない。

 

「お気に入り? 僕が?」

「君を好まぬ教師などいるかね? 聡明で優秀、勉強熱心ないい生徒。だけどね、私が気に入ったのは能力や上辺の魅力でなく、君自身だ。失礼で生意気なクソガキをね」

 

 吐き捨てた口調とは裏腹に、目を泳がせた少年の胸を左手で突く。

 白い首を飾るロケット。『S』を描く緑の蛇が振動で揺れる。

 

「今日の君は……普段の慎重な君らしくない。何か気がかりな事でも? トム、どうしたんだ?」

 

 口を固く締め、黙秘を貫く少年に心の内で失望のため息をついた。トムが不安定な理由は闇の中。無理やり聞き出そうとすれば、これまでの進歩は全て水の泡。他の人々に向けるあの”完璧で優しい謙虚なトム・リドル”しか見せなくなるだろう。

 

 精神の居候(パーシバルとでも名付けようか)も不承不承肯定している。

 

 この居候を認識して早一年。未だ脳みその片隅で燻るパーシバルはトムとの接触時に強く反応する。他数人にも反応を見せる時があるが検証不足で不明点が多い。奇妙なのは段々とパーシバルの気配がしっかりしてきたということ。その内喋り出したりして。

 

 本格的に頭が狂ってきたようだ。聖マンゴ魔法疾患傷害病院の隔離病棟で涎を垂らし、独り言を呟く自分を生々しく思い描く。

 ぞっとする妄想に、思わず歪んだ顔を咳で誤魔化し平静を装った。

 

「よし、わかった。話したくないならそれで大丈夫」

 

 伸ばした背中と膝からボキボキと不快な音が鳴り響き、中年を全力で感じる。

 魔法使いの寿命は長い。ニコラス並みに生きられるなどと思い上がりはせんが、せめて平均よりは長生きしたいのさ。

 現在の世界情勢と闇の魔法使いが許さないだろうが。

 

「そろそろ戻ろう。私が血塗れにしたソーセージを救わねば」

 

 トムは部屋に入ってきた時と打って変わって機敏に動き、私を置いてキッチンへ歩き去った。

 置いて行かれた一抹の悲しさを胸に蛇の後を追う。キッチンへ戻ると料理教室はすでに終了しており、隣のダイニングルームで楽しそうに朝食を囲む合宿メンバーが見えた。元々そこにいたと言わんばかりにトムが自然に合流し、狐色のトーストを食む。

 

 さっきの内気な少年はどこへやら。上品に愛想笑いを貼り付けて隣席のロボンと交流する姿は立派な優等生。

 離れた席で怪訝な目を向けるフリットウィックを除き、普段通りの平和な空間がそこにある。

 

 悪魔は身近に潜んでいるぞ、ロボン。

 

「ダンブルドア先生! 皆様はもうお食事を始めていらっしゃいますよ! ほら、行って!」

「はいはい、先生」

 

 帰還した助手を見つけて騒ぐナサリーを優雅に避け、血液が綺麗に消えた事件現場に戻った。

 現場は事件当時そのまま。まな板に転がる切りかけのソーセージ、調理台に投げ捨てられた包丁。掃除呪文で風味が抜けた血のソーセージを一切れ手に取る。何となく捨てるのが忍びなく、切り残しを切ってフライパンに放り込んで炒め、様々な調味料を放り込んで味を誤魔化したソーセージ炒めを皿に盛った。

 

 豚とダンブルドアの血ソーセージ炒め。バジルを添えて……っとな。

 料理も錬金術も同じ。分量を量り、混ぜ、蒸し、熱を加え、冷やし、乾かす。簡単なものさ。

 

 出来上がった料理を味見。血のソーセージ本来の血の風味は消失したが、追加のハーブとバター、刻みニンニクと塩コショウが良い塩梅。

 

 トラウマを負った子供らの目前でこれを食らうのは酷に思い、キッチンで立ったまま行儀悪く指で摘まんで口に運ぶ。油で光る指に嫌悪感を抱くが、世話焼きの妖精が置いていったフォークを拾うのも面倒。

 壁紙の模様が世界一奇妙な謎であるかのように無意味に見つめて、熱々の楕円に皮膚と舌が焼かれるのも構わず咀嚼し飲み込む。美味しいはずの料理からどんどん味が抜けていくのを感じる。

 

 味蕾の消失。胸を襲う圧迫感。

 ダンブルドア軍団の指導者の一人、ニコラス・フラメルの共同研究者でもあるアルバス・ダンブルドアは奇病を患ったらしい。

 

 どうか、この選択が正しいものでありますように。

 

 何もうまくいかない人生に嫌気がさし、習慣化した眉間を揉む作業を行う。

 指に纏わりつくバターの存在を忘れた馬鹿の末路を知っているか? 

 

 

 

 こうなる。

 




・フィリウス・フリットウィック
小鬼と人間のハーフ。
原作の最終決戦時に死喰い人を薙ぎ払ったとんでもない御仁の一人。人格者であり呪文学教授。
今作ではホグワーツ一年生として登場。すでに戦闘への並々ならぬ頭角を現し、上級生を決闘クラブで吹き飛ばしている。

・プリシラ・ルリエ
生やしたモブ1。レイブンクロー四年生。実家は農家。
作物をこよなく愛し、食べる事に余念がない。趣味は作物の品種改良及び料理。
マグル生まれ。

・ドミニク・ベーア
生やしたモブ2。グリフィンドール二年生。
無邪気な性格が災いし、気付くとトラブルになっている自然災害のような少年。
半純血。

・エゴール・セロフ
生やしたモブ3。レイブンクロー五年生。
ロシア人の両親を持つ。長身のモデル体型。しかし手先が不器用。
興奮するとロシア語が飛び出る。
マグル生まれ。

・ソニア・マックス
生やしたモブ4。レイブンクロー四年生。
生まれつきの虚弱体質。少々傲慢で感情の起伏が激しい。
成績優秀、容姿端麗とトムに迫るスペックを持つが、スタミナ不足が祟り頻繁に体調を崩す。
純血。

・掃除呪文(スコージファイ)
唱えればあら不思議、ピカピカ新品同様に早変わりな掃除呪文。
石鹼の泡が出る。

・聖マンゴ
聖マンゴ魔法疾患傷害病院。魔法使いのための病院。
マグルの病院と違い、聖マンゴに勤務する医療従事者は『医者(ドクター)』ではなく『癒者(ヒーラー)』と呼ばれる。
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