トム・リドルのヘビィなアイ   作:空飛ぶほうき君

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純血しかいねぇ!
なんだここ!!

ヴォルデモート(にっこり)


第3章  ハロウィーン前哨戦

 空中に漂うパンプキンパイの香り。大広間を飾るジャック・オー・ランタン。かぼちゃかぼちゃ蝙蝠かぼちゃの本日はケルトの収穫祭。

 ハロウィーンである。

 

 子供達が大好きな秋の祭り。しかし、楽しみに待つのは子供だけでない。

 教師陣は冷えた態度でその日の職務に励もうと意気込んでは、飾り付けられた大広間や各教室を見回しそわそわニコニコ。アーマンド・ディペット校長も豪勢な夕飯に顔をほころばせ。仮装を纏った生徒達が、ハロウィーン本番に興奮を抑えきれず振動していた。

 

 さて、時は夕刻。興奮に染まるホグワーツの廊下をうろつく不審者がここに。手乗りサイズのジャック・オー・ランタンを配置する者の名は。

 

 そう。ダンブルドアだ。

 

 

 

 

 

「このっ、往生際が…悪いね!」

 

 手のかぼちゃを甲冑の隙間にねじり込みながら悪態をつく。魔法で隙間を開けてもいいが、実際に手を動かしたかった。

 なんせ今日はハロウィーン。楽しまなきゃ損。

 

 この男、御年57歳になってなお少年の心忘れず。さらに無類のお祭り男でもあった故、祭りに参加したいor祭りを開きたいマンだった。

 子供より子供らしく、すっごい強い魔法使いのおっさんが年甲斐もなく子供に交じってバカ騒ぎする光景は他教師陣の頭痛の種である。なおハッフルパフ寮監も混ざるので、混沌は拡大し続ける。

 

 ついに甲冑が押し負け、こぶし大のかぼちゃを挟むことに成功。その身に異物をねじり込まれた甲冑はひどく不幸そうではあったが、これもハロウィーンのため。肩を叩き彼(?)を労わって先へ進む。

 階段の暗がり、柱の隙間、手すりに無数のかぼちゃを置き、併せて宝探し用の紙も要所要所に貼り付けた。祭りといえばゲーム。ゲームは皆大好き。ダンブルドアも大好き。

 

 ということで、ホグワーツの全生徒を巻き込んだ一夜限りの宝探しゲームを開催。

 解く謎は全8個。全ての謎の頭文字を並べ替えると玄関ホール(ENTRANCE HALL)に。玄関に積まれたかぼちゃの中からシンボルが描かれたジャック・オー・ランタンを見つけ、トリック・オア・トリートと唱えればゲームクリア。お宝が手に入る。

 

 始めの謎を目につく場所に貼るべく寮のポイント集計用砂時計の近くへ。興味津々な生徒が遠巻きに眺めるのを背に歩き回り、丁度良く空間が空いた石壁へ謎が記された古紙を張り付けた。

 準備完了。

 

 周囲でざわめく生徒を置き、大広間へ足を向け──―

 

 ──―ると誰かが足を踏み入れて進行を阻んだ。

 

「こんばんは先生」

 

 お前はブラッド・ヘインズ!出たな! 

 

「こんばんはヘインズ。パンプキンパイはもう食べたかな?」

「まだです。今年のパイは切るとコウモリが飛び出すとか。楽しみです」

「それは面白い!早く食べよう」

「先生」

 

「トリック・オア・トリート!」

 

 輝く笑顔と茶髪をきらめかせ、寮監だろうと容赦せずお菓子略奪の先陣を切るヘインズ。

 グリフィンドールは伊達じゃない。

 

「大変だ~このままでは悪戯がくる~。はい、お菓子をお受け取り下さい騎士様」

「ありがとうございます先生!」

 

 嬉しそうに手に置かれたクッキーを懐にしまい込むグリフィンドール監督生と、集まりつつあるグリフィンドールの略奪隊。背後で機会を伺うレイブンクロー。戸惑うハッフルパフ。興味がないふりを装い、定期的にこちらを盗み見るスリザリン。

 見事に囲まれてしまった。やってくれたなヘインズ! 

 

「これが楽しみで。8時間しか眠れませんでした」

 

 眠れなかったなんちゃらかと思いきやガッツリ寝ている。 なんだお前。こちとらハロウィーンの準備をしてたんだぞ。手伝ってくれた屋敷しもべ妖精達ありがとう。

 

「あれは?」

 

 お菓子を手に入れてご満悦なヘインズが、なにやら書かれた古紙に顔を向けながら尋ねる。

 

「宝の鍵」

「宝ァ!?」

 

 素っ頓狂な叫び声を上げるはセプティマス・ウィーズリー。赤毛を振り回し、略奪隊と共に宝探しゾーンへ向かって行く。

 よし。人が減った。

 

「鍵?そうは見えませんが…。もしかして、謎を解くとかその手の?」

「正解。隠されたジャック・オー・ランタンの秘宝を手に入れろ!てね。謎解きあり、冒険あり。こういうの皆好きだろ?」

 

 話を聞いて興味が引かれたレイブンクローが私から遠ざかる。この調子で人を間引いてやる。

 

「宝とはどういった物で」

「言ったらつまらないだろう? ちなみに、早い者勝ちだ」

 

 悩んでいたハッフルパフが離れていく。勝ったな。

 

「君も見てくるといい。私は行くよ」

「はい。ではまた、先生」

「またなヘインズ」

 

 笑顔でグリフィンドールの監督生を見送り、勝利の余韻に浸る。簡単にお菓子を奪えると思うなど笑止千万。いつだって私は上を行くのさ。ヘインズは除く。

 今日はハロウィーン。子供でも容赦せん。

 

 自信に満ちた足取りで目的地へ歩み──―

 

 ──―それを阻む影。

 

 いつの間にか周りを囲まれている! 

 

 尊大な態度で見下ろすアブラクサス・マルフォイと無数のスリザリン。宝に他寮の学生が惑わされる中、スリザリンは粛々と包囲網を形成していたようだ。

 

「トリック・オア・トリート」

 

 子犬のような目でこちらを見つめる一年生を前面に立て、殴りたくなるほどスカした顔でニヤつくマルフォイ。目先の欲に囚われず欲しいものを必ず手に入れるスリザリンらしい団結力。

 スリザリンに狡猾ポイント10点! 

 

 というかお菓子欲しかったのね。もっと正直になった方がいいよ。

 

「あぁっ!どうかこの貢物でお許しください閣下!」

 

 

 

 

 

 スリザリンのハイエナ共に毟られた気力を豪華な夕食で回復し城の散策へ。

 せっかくのハロウィーン。仮装できなかった学生も楽しんでもらえるよう、グリフィンドールなら騎士、スリザリンなら王侯貴族、レイブンクローなら賢者、ハッフルパフなら学者と呼んでお菓子をばら撒く。あらゆる寮生からトリック・オア・トリートの略奪を受けたが残弾は未だ尽きず。

 

 驚くことにトムもお菓子を奪いに来た。コーヒー事件以来、授業と食事の席は最後尾、すれ違う事さえ回避、私を疫病のように避けてきたあのトムが。

 いかな心変わりが起こったかと思えば、私の”呼び方”が気になった様子。気付くと背後にいるレベルでトムの遭遇率が爆上がりしたから間違いない。

 

 トムのお気に入りの呼び方は我が君。流石、将来の魔法界の脅威(未定)気分は闇の帝王。

 お菓子を手にするより我が君と呼ばれたい11歳。

 

 地獄かな? 

 

「赤毛のウィーズリー。血を裏切る者と同じ空気を吸うとは…いやだいやだ」

「うー!やっぱりいたなマルフォイ。ずっと向こうまで差別主義者の悪臭が漂ってきて、臭いのなんの」

 

 地獄だわ。

 

 運悪く玄関で鉢合わせたウィーズリーとマルフォイ。仲が悪いという表現が生ぬるく感じるほど憎みあう両者の間で、幻想の火花が散る。

 祭りに付き物のトラブル回避のため、宝探し用の宝を隠した玄関付近で張って正解だった。

 

 玄関口で騒ぐのは二人だけじゃない。グリフィンドール側にユリウス・ロングボトムとハッフルパフのアレクサンドラ・フォーリー、スリザリン側にヴァルブルガ・ブラックとメレディス・レストレンジ、獅子&穴熊対蛇の両陣営がいがみ合う。

 

 聖28一族が集結。魔法界で一番強い純血を決める戦いでも始める気か。

 

「お前に構っている暇はない。宝は僕達のものだ、退け」

「どう見ても俺達の方が宝に近いだろ。退くのはお前らだ」

「は?」

「は?」

 

 どうやら今夜いがみ合う原因は宝探しにあるようで。

 道中に散らばる宝の鍵を集め、宝の在りかを導き出した彼らは因縁の再会を果たす。

 残念ながら先を譲る気のない両者は戦争寸前。どうするダンブルドア! 

 

「よぉアルバス。ここにいたのな」

 

 そんな時、私の隣へかぼちゃジュース入りゴブレットを持つ、ハッフルパフ寮監ヘルベルト・ビーリー教授がのんびり出現した。

 

「ヘルベルト!親睦会を抜けだしたか?」

「まあ。あんたが最近飲みに誘ってくれないってホラスがくだまいて迷惑でね」

「ホラスは、ほら。酒が絡むとちょっと…」

「わーってるよ。同じ話を五度もされたんだぞ。アシュリーが、アシュリーが、べらべらべらべら」

 

 かぼちゃジュースを呷り、魔法薬学教授の愚痴を始める酔いどれ薬草学教授。

 教師だけの親睦会(またの名を酔っ払いの会)で振舞われた飲み物にはもれなく“元気の素”が混入している。不幸にも翌日グロッキーになった教師はウィゲンウェルド薬をキメて二日酔いを凌ぐ。

 

「そうだ、ドラゴン脳みそトライフルは? この後でも間に合いそう?」

「わからんが急いだほうがいい。バケツが如く浚うアーマンドを出ていく前に見た」

「うわ。ダメかもしれん」

 

 絶望に顔を覆う。デザートは虫の息…いや…もう…ないな。後で屋敷しもべ妖精にドラゴン脳みそトライフルが作れるか聞こう。

 

 ゴブレットを揺らしぼんやり虚空を見つめていたヘルベルトが急に肩を掴む。座った眼で「それはそうと」と、ある一点を指さした。

 

「あれ、拙いのでは?」

 

 

 

 そこには杖を突き付けるウィーズリーとマルフォイの姿が! 

 

 

 

「待て!」

 

 すでに詠唱途中の両者に慌てて割って入る教授二名。ウィーズリーを私、マルフォイをヘルベルトが引き離した。

 

「喧嘩はやめろ」

「…ただのじゃれあいですよ。ビーリー教授」

「お黙り。ヘックスぶっ放しかけただろ。かぼちゃジュース濡れになりたくないなら、大人しくしな」

 

 暴れるウィーズリーを抑え込む。あっちは楽そうで羨ましいなぁ。

 

「やめろ!落ち着けウィーズリー!」

「離してダンブルドア先生!あいつ、目にもの見せてやる!!」

「やめろと言うに!」

 

 これ以上騒ぎを起こせば罰則がつくと伝え、暴れ獅子を鎮めた。ひとまずじゃんけんで先行を決定しようと提案。

 勝利者はマルフォイ。

 

「ハッハー!僕の勝ちだウィーズリー!」

「くそ!」

 

 悔しがるウィーズリー他グリフィンドールを捨て置き、マルフォイグループがシンボルの描かれたジャック・オー・ランタン前でトリック・オア・トリートを唱えた。すると、伽藍洞のかぼちゃ内部を照らす温かな光が冷たい青の炎へ変わり、不気味な笑い声が響き渡る。

 ビビり散らすスリザリンへ炎が噴出。叫ぶスリザリン生。驚くグリフィンドール生。

 

「安心しろ!炎はただの幻影。燃えも火傷もしない」と伝えておく。

 

 炎が収まった空間に浮かぶ紙切れとお菓子の詰め合わせ。紙切れをマルフォイが読み上げる。

 

『おめでとう6番目の冒険者諸君。残念ながら宝は持ち去られた後…。だが、お前達の健闘を称え代わりの品を用意した。受け取ってほしい。ハッピー・ハロウィーン!』

 

 仕掛けに施したログを確認するべく、呆気にとられたスリザリン生を追い抜く。かぼちゃ内部に忍ばせておいた魔力監視記録装置を起動。空中に透けたスコア表が出現した。

 

 これはホグワーツ生の顔と魔力を基に個人を特定、所属寮と名前だけを順位毎に記録する監視記録装置。三大魔法学校対抗試合の『炎のゴブレット』に着想を得て構築した、大規模監視魔法の“簡易版”である。監視魔法自体は珍しくなく、魔法界の重要施設に必ずと言っていいほど組み込まれているごく一般的な魔法だ。

 私が構築した魔法システムは、杖や容姿だけでなく魔力も測定、登録された容姿と魔力を照合し精度を高めている。また、幅広いカスタムが可能。

 ただのハロウィーンに精密高度な監視魔法を組み込むのは流石にやりすぎなので、精度を下げたものがコレ。

 

 スコア表を埋めるレイブンクローの青。予想通りの展開で安心した。一番下の段にスリザリンの緑とマルフォイとその仲間達の名が載る。

 システムに不備はなさそうで良かった。宝は一位から三位まで。三位から下は残念賞だ。

 

 三位レイブンクロー。二位レイブンクロー。それで、一位は? 

 

 

 一位スリザリン トム・リドル

 

 

 トム!いつの間に!?私を付け回して忙しかったはずでは!? 

 

「残念だったな、マルフォイ」

 

 驚愕に慄きフリーズする私を他所に煽るウィーズリー。やめろと言ってるだろ! 

 青筋立てたマルフォイと笑うウィーズリーが、本気で血で血を洗う争いをやらかす前に自分を再起動。スリザリンを横に除け、素早く次のグリフィンドールを炎で炙り、残念賞を押し付けて各々の寮へ幽閉。

 

 当分の間危機は去った。

 

 当分の間は。

 

 

 

 

 

「どうして」

 

 あれから数週間後。

 ダンブルドアは色とりどりの呪い飛び交う決戦場にいた。

 




・アーマンド・ディペット
現ホグワーツ校長。ダンブルドアとデザートを奪い合うのが趣味。

・セプティマス・ウィーズリー
グリフィンドール四年生。年上の幼馴染に片思い中。純血。
アブラクサス・マルフォイとくっそ仲が悪い。
ロンの祖父。

・ユリウス・ロングボトム
グリフィンドール二年生。魔法薬学が苦手。純血。
オーガスタと結婚したロングボトム氏。ネビルの祖父という設定。

・アレクサンドラ・フォーリー
ハッフルパフ三年生。父親が魔法大臣のお嬢様。姉が二人いる。純血。
生やしたモブ。

・アブラクサス・マルフォイ
スリザリン四年生。家族仲がいい。純血。
セプティマス・ウィーズリーとくっそ仲が悪い。
ドラコの祖父。

・ヴァルブルガ・ブラック
スリザリン三年生。純血大好き、マグル生まれ大嫌い。純血。
婚約者にいとこのオリオン・ブラックがいる。

・メレディス・レストレンジ
スリザリン二年生。昆虫解体が趣味。純血。
全然情報が無いレストレンジの人。すでにトムと仲がいい。

・ドラゴン脳みそトライフル
鼻から白い霧が吹き出すドラゴンの頭の器に、固めのカスタードを飾るピンクのホイップクリーム、フルーツ、スポンジケーキ、赤いジュースやらなんやらがドサッと入ったハロウィーン限定デザート。
作者のこんなのあったらいいよね、で生まれた産物。

・ウィゲンウェルド薬
ホグワーツ・レガシーなどのゲームで登場する謎の回復薬。この作品では栄養ドリンク扱い。
これ一本で二日酔いもスッキリ!

・魔法薬学
魔法薬を調合する科目。この授業では杖を振ったり馬鹿げた呪文を唱えたりはしない(威圧)
配合を間違えて事故を起こす生徒が多い。
現魔法薬の先生(魔法薬学教授)はホラス・スラグホーン。

・薬草学
薬草の栽培と、取り扱う術を学ぶ科目。そこにマンドレイクがあるじゃろ?これを引き抜いてだね…。
現薬草学教授はヘルベルト・ビーリー。

・三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)
ホグワーツ魔法魔術学校VSダームストラング専門学校VSボーバトン魔法アカデミーの生徒が命を懸けて(誇張じゃない)競う、エクストリーム運動会である。
学校の競技にドラゴン出るってマジ???
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