1話
これは、「楽園」へと迷い込んだ少年の物語。
彼は何を思うのか、とくとご覧あれ。
冬の、雪降る星月夜。
「う…、ここは、どこ…?」
1人の少年が、楽園へと至る。
「あら、気がついたかしら?」
「あ、あなたは…」
「私は八雲 紫。よろしく」
「よろしくお願いします。…八雲さん」
「紫でいいのよ、もう」
紫と名乗る彼女はクスクスと笑った。
「あの、ここは…」
「ここ?幻想郷よ。忘れ去られたものが行き着く
「幻、想郷…」
「ええ。だけど、あなたは忘れ去られたわけではないわ」
「では、何故…?」
「私が連れてきたの」
「…理由を、お聞きしても?」
「秘密。じきに分かるわよ」
「そ、そうですか…」
「さあ、もうすぐお目覚めけれど、能力の要望はあるかしら?」
「の、能力?」
「そうね…、例えば、空を飛んだり魔法を使ったり、本来人間では出来ないことを可能にするもの」
「出来ないことを、できるように…」
「そう。リクエストはあるかしら?」
「複数でも良いんですか?」
「ええ。3つくらいまでなら、なんとかできるわ」
いきなり言われても中々思いつかない。彼女は辛抱強く待ってくれているが、やはり頭には何も浮かんでこない。
沈黙すること数分、漸く口を開いた。
「…武器を生み出せる力が、欲しいです」
「あとは?」
「あとは、武器を使いこなす力。最後に…」
「最後に?」
「僕の切り札にするであろう能力、それは…」
「これで、能力の付与が出来たわ。さあ、いってらっしゃい」
「ありがとうございます」
「大丈夫よ。じゃあ、また会いましょう」
「はい!」
「…あら?人間、かしら…?」
彼女は身構える。彼女は人間に疎まれているから。だが、目の前で倒れている人間を見捨てるのも気分が悪い。
「う〜ん……」
しばし逡巡した後、やはり助けることに決めた。例え石を投げられても、人が死ぬのを見ていることなんてできない。
ましてや冬の山。雪だって降っている。
「あなた、大丈夫?」
「ん……」
「こんなとこじゃ死んじゃうわよ」
「あ…、ごめん、ありがと…」
「良かった、目が覚めたわね。じゃ、私はこれで」
「ちょっと待ってよ。せめて名前だけでも教えて」
「…鍵山 雛」
彼女は少し迷ったように言った。
「雛だね。ありがとう!」
「気にしないで」
「ばいばい!」
「ええ。…それと、あっちを下っていけば山を下りることができるわ。あとは道に沿って行きなさい」
「うん、わかった。ありがとうね、雛!」
「どういたしまして」
これより、楽園に流れ着いた少年の物語を語るとしよう。
では、またいつか。