紅魔館…
「そうなのね…」
「ほぼ確実と見ていい。やつは曇りの日に行動する。雲を見る限り、今日の昼が予想時間だ」
「分かったわ。厚かましいとは分かっているのだけど……」
「勿論。そのために来たんだから。任せてくれ!」
「ありがとう。感謝するわ」
「そうだ、咲夜か美鈴と手合わせをしてもいいかな?」
「いいけど…、なぜかしら?」
「『切り札』の状態を確かめておきたい」
「分かったわ。存分にやりなさい」
「ありがとう」
そして、昼。
僕は紅魔館を巡回していた。今のところは何もない。すれ違う妖精メイド達に挨拶をして、たまに仕事を手伝っていた。
そして、やつは突然に現れた。
「この魔力は…!」
間違いない、来た。能力を使い、魔力反応のもとへと瞬時に移動。
「やっぱりか!」
「雪華!」
「レミィ、そいつに近付くなよ!」
剣を生み出し、斬る。斬った先は霧散したものの、瞬きする間に再生する。
「…あれじゃないとだめか」
そして、『切り札』を召喚する。
「来い!
それは、明らかに異質な剣だった。見た事もないような金属で形成され、刃の根元には光る何かがある。しかし、見事な白銀で、とても美しい。
「はぁっ!」
刃が一閃し、靄を切り裂く。しかし、今度は再生しない。
『グォォォォォォォォ!』
「お前だったか、『ナイトメア・フィアー』」
『お前は…、修羅!』
憶えている。覚えていなくとも、憶えている。
「僕は、霜月 雪華だ!」
『騙されぬぞ!その剣、その闘気!我が知るものと寸分と違わぬ!』
「生憎、記憶を喪ってしまってるんでね!」
連撃を繰り出す。奴の纏う瘴気を、確実に剥がしてゆく。
「彼女の、桜の両親を、何処へやった!」
『ふん、教えるほど愚かでないわ!』
反撃を紙一重で回避。だが、ナイトメア・フィアーはレミィに目標を変えたようだ。
『動くなよ、小娘!』
「させるかよ!」
能力を使い、回り込む。
「ちょっと我慢してくれよ!」
「え!?せ、雪華!?」
弓手でレミィを抱える。
「レミィは大切な友人なんでね!易易と渡してたまるかよ!」
『ならば、人間、お前だ!』
今度は咲夜へと。
「させないと言っているだろう!」
能力を使い、咲夜の前の空間数ミリの時間を止める。時が止まった空間は、最強の壁となる。
『おのれ……!』
そこで、奴の体が透け始めた。
『覚えておれ、修羅!』
そうして、消えた。
「ふぅ……」
「雪華…、その……」
「あ、ごめん!」
慌ててレミィを下ろす。
「怪我はないか?」
「え、ええ…」
「咲夜は?」
「大丈夫です…」
「なら良かった。儀式は、失敗だ。籠目は意味を為さなくなる」
「……」
まだ、心臓が早鐘を打っている。とても驚いたが、腕の中から見る彼は、とても格好良かった。顔が熱い。だけど、兎に角今は。
「ありがとう…」
「あ……」
美しかった。舞うように戦い、お嬢様のみならず自分まで守ってくれた。強い。美しく、強い。気付けば、彼から目が離せない。
「うん、レミィ達に怪我がなくて良かった。…まぁ、さすがに館のことまで気にしてる余裕はなかったのだけど」
「全然、構わないわ。直せばいいもの」
「いや、それじゃ僕の気が済まない。…これでどうかな」
能力を起動し、時間を戻して瓦礫を元の場所に戻し、魔法を使って固定する。
「とりあえずはこれでどうかな?」
「お見事の一言に尽きるわね…」
「そりゃ光栄だな」
悪戯っぽく微笑んだ。
「…さて、そろそろ帰るよ。桜も心配してるだろうし」
「…ええ、分かったわ」
少し残念そうだ。どうしたのだろう。僕は何もしてないと思うのだけど。
「なら、送らせて。私だけじゃなくて、咲夜まで守ってくれたんだもの。それくらいしないと罰当たりなんてものじゃないわ」
「あー、分かった。ありがとう」
「いいのよ、別に」
「私も同行致します」
「咲夜まで?私は構わないけれど」
「ありがとうございます」
そして、僕は時折レミィと咲夜と談笑しながら、紅魔館を後にした。