東方雪月花   作:くらんもち

16 / 57
16話

 

「さ、くら……?」

 

主が死んだことで影の騎士(シャドウナイト)は消滅し、桜はその場に倒れた。

 

「なん、で……!」

 

「なんでって、当、たり、前、です……。私、が、貴方を、愛、して、いる、から…………」

 

「……!」

 

包帯を出し、傷を固く縛る。だが、それでも血は止まらない。

 

「まだ、だめか……!」

 

「もう…、そんなに、しな、くて、いい、のに」

 

「ダメ、生きろ、生きてくれ、桜…!」

 

「ああ…、とって、も、楽し、かった、です……。あり、がとう、ござい、ま、した………」

 

そして、彼女は微笑んだ。胸の赤いものが、広がるのをやめる。

 

「桜…………!!!」

 

彼女の亡骸を、力いっぱい抱き締める。

 

「なんで、こんなこと………!」

 

絶対に、死なせない。

 

「桜…」

 

桜、君は知らないだろう。僕もまた、君を想っていたことを。

 

「死なせて、たまるものか……!!」

 

君は知らないだろう。僕は、いや、俺は。朝霧 修羅は。執念深いということを。

 

「赦せ……」

 

お前は知らないだろう。お前と過ごしたことで、徐々に記憶が戻っていたことを。

 

「謹んで勧請奉る…」

 

お前は知らないだろう。いつか、お前と笑い合える日を待ち望んでいたことを。

 

故に、愛しき者の魂を、現世(うつしよ)へと戻す。

 

「帰ってきてくれ……、桜………」

 

(ぼく)の命を、あげるから。

 

「秦山府君、彼の者の魂を、現世へと戻したまへ……」

 

そして、彼は彼女を抱き締めたまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと、河原に居た。

 

「なるほど。三途の川ってやつか」

 

「お前さん、どうしたんだい?」

 

「え?ああ、ちょっと、色々ありまして」

 

「そうかい?お前さんは川を渡るには随分若いじゃないか」

 

「まあ、大好きな人の、身代わりとして、死んじゃいまして」

 

「そうなのかい」

 

「貴女は?」

 

「あたしは、小野塚 小町。死神さ」

 

「へぇ〜…、死神って本当に鎌持ってるんだ…」

 

「飾りだけどね」

 

「え?ならなんで?」

 

「いや、今のお前さんみたいに、亡者の方が喜んでくれるんだよ」

 

「死神って、随分とサービス精神高いんですね……」

 

苦笑する。

 

「まあ、ね」

 

「さて、舟はどこかなっと」

 

「は?何で舟に乗るんだい?」

 

「だって、死んだから…」

 

「お前さんを乗せることはできないよ」

 

「な、なんでです?」

 

「ほら…」

 

彼女は、後ろを指した。

見ると。

 

 

 

 

 

光が、灯っていた。

 

「お前さんは随分と人気なんだねぇ。あんなに強い想い(ひかり)、初めて見た」

 

「……」

 

涙が、零れ落ちた。

 

「そいつらを、置いていっていいのかい?」

 

「悔いはないけど、未練は、やっぱりありますね……」

 

涙が、止まらない。

 

「本当のところは、どうなんだい?」

 

「…置いて行って、良いわけないじゃないですか……!!」

 

「なら、戻りな。ただし、大切なもんと引き換えにね」

 

「大切なもの…。分かりました。では、『修羅』としての記憶を」

 

「うん、これならまあ、いいかな。じゃあ、ね」

 

「…はい!」

 

そして、彼は駆け出した。

 

 

そして、1人残された死神のもとへ、小柄な影が。

 

「わわっ!?あたしはちゃんと役目は果たしましたからね!?」

 

「ええ。渡るべきでない命は還す。よくやりましたね、小町」

 

「…明日は雪かなぁ」

 

「なんですかその言い草は!」

 

「お説教は勘弁してください!……映姫様のめっちゃ長いから」

 

「なにか?」

 

「いえなんでも!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を、開けると、みんながいた。その中の1人に向けて、微笑む。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。