東方雪月花   作:くらんもち

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桜花のそばに夏の葉あり
18話


 

「ええ〜っ!?」

 

烏天狗の叫びが、早朝の里に響く。

 

「う、うるさいなぁ…」

「いや叫びたくもなりますよ!鞍馬天狗様のご令嬢との縁談を断って桜さんと結婚ですって!?」

 

「鞍馬様は笑って許してくれたし、ご令嬢も友人として親交もあるし」

 

何とついこの前、川から戻ってきた反動か体調を崩していた時、鞍馬様とご令嬢がお見舞いと言って訪ねてきてくださった。

 

「はぁ…、ちなみにそれでもものすごいことだって分かります?鞍馬天狗様が親交があり、ご令嬢と友人ですよ?」

 

「…確かに」

 

しかも破れてしまったとはいえ、令嬢は雪華に懸想しているのだ。その気になれば、天狗を掌握することも可能だ。

彼に限ってそんなことはないと知っているが。

 

「そういえば、颯香(さやか)様の好きなものって知ってる?」

 

颯香様とはご令嬢のことだ。

 

「甘味がお好きですよ。最も、あなたからもらったものなら何でも喜ばれるでしょうが」

 

「そうかな…?」

 

「そうですよ」

 

文はため息まじりに答える。

 

「そうか。なら、外の菓子でも作って差し上げるか」

 

「それは普通に喜びそうですね」

 

「ティラミスとかかな…、チョコケーキとか」

 

「聞くだけでお腹空いてきました……」

 

「あ、ごめん」

 

「まぁ、早いとこ帰って朝餉にします。では」

 

「うん、じゃあね」

 

そして、文は飛び去っていった。

 

「さて、僕もご飯作らなきゃ」

 

喫茶店はしばらく休みだ。僕はともかく、桜は僕の術で無理やり連れ戻したのだ。しばらくは経過観察。

 

「桜、起きて」

 

「んぇ…?」

 

「おはよう、桜」

 

「…え、せ、雪華様!?」

 

「うん、僕だ」

 

笑って言う。そして、桜は僕に抱きついてきた。

 

「えへへ…」

 

「いきなりどうしたんだい?」

 

「その、雪華様と結婚できたのが、嬉しくて…」

 

「…そっか。僕もだよ」

 

「えへへ…」

 

本当に、可愛らしいと思う。誰にも反論させない。

 

「今日は、霊夢さん達が来るんですよね」

 

「だね」

 

「私、生きてられるかな…」

 

「何で?」

 

「…本人達から聞いたほうがいいと思います」

 

「?そうかい」

 

「まぁ、何があっても死なせないから」

 

「…だからってご自分の命を擲つのはやめて下さい」

 

「…覚えておくよ」

 

その時、桜のお腹が小さく鳴った。桜は真っ赤になって俯く。

 

「はは、すぐにご飯にしよう」

 

「はい!」

 

 

 

そんな風に笑い合う彼らを、見つめる影があった。影は、料理を始めた彼を見てほんの少しだけ微笑むと、身を翻し、姿を消した。影の、彼女の髪は、瑞々しい緑。彼女がいた場所には、花の香りが漂っていた。

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